京都の鍛金工房WESTSIDE33で「行平鍋」をメンテナンス。10年使った愛用品がプロの手で蘇る
エリア
京都七条、三十三間堂の西隣の通りにある鍛金工房「WESTSIDE33」。
明るい店内には、オリジナルの調理器具や器、テーブルウェアが並べられています。料理好きだけでなく、プロの料理人も通う人気店です。
これらはすべて、手作業で形づくられたもの。銅やアルミ、真鍮などの金属の板を、金槌で叩いて形をつくる、鍛金(たんきん)という技法で作ります。
職人さんがひとつひとつ打ち出して作るため、槌目(つちめ)と呼ばれる模様がそれぞれ異なります。規則性がありながらも大きさや形がランダムな槌目には、職人さんの手作業を見てとることができ、大切に使いたいなと思わせてくれます。
私がお店を訪ねるのは、実は3度目。最初に小さな行平鍋を、次に料理を取り分けるスプーンを購入。どちらもすこぶる使い勝手がよく、毎日の料理に欠かせません。
愛用の行平鍋をメンテナンスへ
今日は10年以上使っている行平鍋のメンテナンスへ。柄の部分がぐらぐらしてきたので直してもらおうと、「WESTSIDE33」を訪ねました。
持参した鍋を渡すと、まずは「柄の根元が黒ずんでいる」と指摘が。
「黒くなるのは、水の中に入ってる塩素やらいろんな薬品に反応してるから。柄まで洗えばこうならへん」
そう言うと、店の奥にある作業場へ。
柄がついているネジを外し、柄を鍋に打ち込むと再びネジを閉め、あっという間にメンテナンス終了。
ゴシゴシ洗うことが長持ちの秘訣
「洗いも教えてやろか?」と言って、今度は台所へ。
ナイロンたわしに洗剤を付け、ゴシゴシと洗っていきます。
こんなに擦っていいのだろうかと思うくらいゴシゴシ、ゴシゴシ。
「表面に何にも加工してないから、なんぼ洗うたかて大丈夫」
なるほど。確かに、剥がれて困るようなものは塗られていません。
でも、なんとなく、洗いすぎるときれいな槌目がなくなってしまうのではないかと思っていました。
「そんな簡単に取れるもんじゃない。プロの料理人でも、槌目がなくなるまで使うには何十年もかかる」
洗うときのコツはあるのでしょうか。
「自分の洗いやすいように工夫して洗ったらいい。洗うものは、タワシでもナイロンでも」
おすすめは石鹸付きのスチールウール。洗うと光沢が出るそうです。
「これは長いことちゃんと洗ろうてないから力がいるけど、普通はこんな力いらへんよ。毎日丁寧に洗ってれば、そんなに汚れもつかへんし」
…いかにいい加減に洗っているか。お恥ずかしい限りです。
洗うこと3、4分。
「きれいになったやろ?」
わ!すごい!さっきまで霞がかかっていたお鍋がピカピカに。
WESTSIDE33の調理器具は、いいものだからこそ長く使いたいとメンテナンスの依頼も多いそうです。
「空焚きして柄が燃えちゃったとか、やっぱり柄を直すことが多いかな。これもまだまだ10年以上使える。普通の家庭なら一生使えると思う」
そして、きちんと洗う。肝に銘じました。
見違えるほどキレイになった愛用の行平鍋。
槌目もキラキラと輝いています。
良いものは、正しく使ってきちんと手入れをすれば長く使えるのだと、メンテナンスを通して改めて感じました。
これからも付き合える一生ものの鍋。愛情と技術を込めて作ってくださった職人さんのことも思い浮かべながら、大切に大切に使っていきたいと思います。
<取材協力>
WESTSIDE33
京都市東山区大和大路通七条下ル七軒町578
075−561−5294
※取っ手の修理期間・料金などは、直接お問い合わせください
文 : 坂田未希子
写真 : 太田未来子
*こちらは2018年11月13日の記事を再編集して公開しました。