「Suicaのペンギンみくじ」はこうして生まれた。郷土おみくじを現代にアレンジ
SNSをながめていたら、写真付きである投稿が流れてきました。「かわいい!」という言葉と共に、そこにはSuicaでお馴染みの「ペンギン」の人形たち。
興味が惹かれ検索してみると、「ころんとしたフォルムがいい」「陶製なのも好き」など、ペンギンファンや鉄道ファンを中心に反響を呼んでいます。さらに、中には「おみくじ」も入っているそうで、買う人の喜びのひとつになっていました。
早速買い求めてみると‥‥手のひらに収まるほどの大きさで、ぽってりした姿が愛くるしい。おみくじを楽しんだ後にも、ちょっとした場所に飾れるのもいい塩梅。
この「Suicaのペンギンみくじ」は、ジェイアール東日本商事と中川政七商店がコラボレーションして作られました。生活雑貨メーカーの中川政七商店といえば、全国の郷土玩具をモチーフにしたガチャガチャなど、古くからあるものを活用したものづくりをしているのも特徴です。
まさに、「Suicaのペンギンみくじ」も、それらの「古き良き」味わいをどこかに感じさせます。さて、この感覚は、正しいものか。コラボレーションの経緯などを、中川政七商店でデザインに携わった村垣利枝さんに尋ねてみました。
全国にある動物をかたどった「おみくじ」がヒントに
──ペンギンみくじのポーズは、もしや招き猫がモチーフですか?
いえいえ、これは「敬礼」している姿です!(笑)
中に込められているおみくじの内容は「おでかけして素敵な一日を!」がテーマなので、Suicaのペンギンが「いってらっしゃい!」と送り出してくれているようなイメージですね。
──失礼しました!それなら、玄関あたりに飾るとぴったりですね。今回の制作が決まった経緯を教えてください。
さいたま市にある鉄道博物館のミュージアムショップがリニューアルするのに伴って、売り場が広くなったんです。そこへ置く新商品の開発を検討されていたジェイアール東日本商事さんからお問い合わせをいただき、そこで私たちから「ふきん」と「おみくじ」を提案したことで、実現に至りました。
Suicaのペンギンはキャラクターとしてもとても人気で、すでにグッズも多くありました。さらにキャラクターの魅力をより活かす方法として、おみくじという立体物への再現がよいのでは、と話が弾んだのです。
──立体物であれば、プラスティックなどを用いることもできたと思いますが、なぜ陶器を選んだのでしょうか。
中川政七商店では「招福干支みくじ」や「だるまみくじ」といった、陶器のおみくじを作っています。
もともと神社仏閣では、その土地にゆかりのある動物、その神社のお使い物である動物、あるいは「招き猫」や「だるま」といった縁起物をかたどった、木や陶器で作ったおみくじが存在しています。その流れから生まれたものなんですね。
──なるほど。これまでも日本にあったものに、現代のアレンジを加えたといえそうです。一つずつ表情が違いますが、絵付けは人の手で行われているのでしょうか?
はい。絵付けは人の手で行われています。おみくじの中身の紙も、一つひとつ手で巻かれています。
──おみくじの内容もユニークに感じましたが、文面はどのように決めましたか。
Suicaは「スイスイ(とスムーズに)」電車に乗ったり、お買い物ができるICカードということもあり、「運気上昇」や「上手くいく」といった意味合いを込めました。
「何事もスイスイ お出かけ運が急上昇! 行く先々で幸運が訪れるでしょう」
といった言い回しにしました。お出掛けすることで「スイスイな一日になるよ」というお告げと、「素敵な一日になりますように!」という気持ちを込めています。
古くから親しまれてきたものを、現代のキャラクターで
日本で親しまれてきた、動物をかたどったおみくじ。そこに、現代の人気者である「Suicaのペンギン」も仲間に入り、ファンを魅了するアイテムとして生まれたことがわかりました。
最新の技術や、まだ見ぬ新素材も、たしかに心惹かれるものがあります。でも、私たちの身の回りには、昔から愛されてきたものたちがあり、視点を変えてあげれば、こんな活かし方もできるんだ!と気付かされたようでした。
「Suicaのペンギンみくじ」は、前述の鉄道博物館ミュージアムショップ「TRAINIART」のほか、JR東京駅構内の「TRAINIART TOKYO」などでも発売中です。
文・写真:長谷川賢人