プロに教わる、服の汚れの落とし方。意外なコツは「ゴシゴシしない」こと
衣替えの季節。キッチンやお風呂場といった家中の汚れはもちろんだけど、お気に入りの洋服の汚れだってなんとかしたいもの。
たとえば、白いシャツの襟ぐりについた黄ばみ。市販の洗剤で洗っても「落ちない‥‥」とがっかりして、泣く泣く「おさらば」なんて悲しい選択を迫られること、ないだろうか。
「さよならしなくても大丈夫!1年越しの黄ばみだってきちんと落とすことができますよ」
なんと!そんな頼もしいことを言ってくれたのは、洗剤メーカー「がんこ本舗」の代表“きむちん”こと、木村正宏さん。
生分解率100%を誇る洗濯洗剤「海へ・・・」や、キッチン洗剤「森へ・・・」シリーズなど、機能的でありながら、水環境改善や自然保護を目的とした製品を数多く生み出し続ける、洗濯のプロだ。
そんな木村さんが教えてくれる、洋服の汚れ落としのワークショップ、はじまり、はじまり。
吸着、剥離、溶解‥‥「汚れの落ち方もいろいろです」
まずは、ちょっとした実験から。参加者の手元に配られたのは真っ白な1枚のお皿。
「油性マジックで好きな絵を描きましょう」
そこに水を少し垂らし、消しゴムでこすったり、また新聞紙でふき取ると、あら不思議。すっきりきれいに落ちちゃった。
「なにも不思議なことじゃないんです。これは『吸着』という方法。消しゴムや新聞紙に汚れを移動させることで落とすことができるんです」
ちなみにこの新聞紙は、1ページ分を1/4にカットして折り畳んだ、木村さん流“新聞ナプキン”。
木村家では食卓にいつも新聞ナプキンを用意し、食べ終えた皿の汚れを拭くという。この方法を使えば「あとは水でさっと流すだけ。油汚れもきちんと取り除くことができるから、キッチン洗剤なんてほとんど必要ないんです」
なるほど。これなら、油汚れを海に垂れ流しにすることはないのだ。
新聞ナプキンを使うときは、破れないほどの力加減でクシュクシュと揉んで柔らかくするのがコツ。このクシュクシュ加減が、後に衣類の汚れ落としにも大切なポイントになるというから覚えておこう。
さて、今度はアルカリ剤を使って。マジックで円を描いた皿に、パウダー状の酸素系漂白剤をふりかけて、
水を注いで、くるくると馴染ませると‥‥
汚れが浮いてきた!
「これは『剥離』という落とし方。今度は汚れが水に移動しました。
先ほどの『吸着』もそうですが、お皿から汚れは落ちたものの、それは油が新聞紙なり、水なりに移動しただけ。あくまでも油は油のまま、水は水のまま‥‥この状態で海に流してもいいのでしょうか」
「しかも洗濯をしたとき、布の汚れが水に移動したとしても、脱水時にはその汚れはまた衣類に戻ることになるんです。それでは洗濯の意味がありませんよね」
続いては「溶解」という落とし方。お皿に口紅で3本のラインを描き、①にはサラダ油、②には市販の食器用洗剤、そして③にはがんこ本舗のキッチン洗剤「森へ・・・」をそれぞれかけて指で軽くこすってみると‥‥
なんと③だけが、きれいな状態に。
「①と②は原料に油が多く含まれています。洗剤の油と口紅の油が反応して、いわゆるオイルクレンジングみたいな効果が得られます。しかしやっぱり汚れは落ちるものの、なくなりはしません」
では、③はどうだろう。
「③は99%が中性の液体、つまり水です。しかも粒子が非常に細かく、皿の奥にまで入り込んで汚れを落とだけでなく、この洗剤は“水中油滴”という状態をつくることができる。簡単に言えば油そのものを『分解』へと導くことができるんです」
がんこ本舗の洗剤は、海洋タンカーの事故によって流出した油処理の研究から生まれたもの。粒子の細かい泡を生み出すファインバブル技術を開発し、生態系の邪魔をすることなく、海に負担をかけないような洗剤を生み出したのだ。
「キッチンでもお洗濯でも。汚れを落としたはいいけれど、それで海や自然が汚れるようでは困りますからね」
ゴシゴシこするのではなく“ゆすりをかける”
洗剤の基礎知識を学んだところで、本題の洗濯へ。
木村さんが用意したのは、肉の脂に焼肉のタレを混ぜた液体。これを綿とポリエステル混合の布に塗って、シミのある状態を再現した。
ここで使用したのは、がんこ本舗の部分洗い用洗剤「海をまもる シャチッとスプレー」。
「まずは汚れた部分に洗剤をシュシュッとかけてやさしくゆすりをかけます。強い汚れがあるとどうしてもゴシゴシとこすりたくなりますが、それでは繊維を傷めることに。あくまでも優しくゆすりながら洗浄成分を中にまで浸透させていきましょう」
先ほどの新聞ナプキンを思い出してほしい。新聞紙が破れないほどの力でクシュクシュするのと同じ要領で、生地にゆすりをかけるようにしよう。
「ゆすりをかける」×「ドライヤー」を3回繰り返す
次に取り出したのはドライヤーだ。これで、スプレーした部分に熱を加えていく。
「ドライヤーで熱を加えることで洗剤の温度を上げて、よりその効果を促進させます」
参加者より「ぬるま湯に入れて洗うよりドライヤーがいいんですか?」「スプレー自体を温めてはいけないの?」との質問が。
「ぬるま湯に入れると洗剤成分の濃度がそれだけ薄くなりますから、より効果的に汚れを落とすためには直接塗って温めたほうがいい。またスプレー自体を温めてしまうと成分に影響が出て、これもまた効果が失われることになります」と木村さん。
この「スプレーしてゆすりをかける」×「ドライヤーで熱を加える」を3回ほど繰り返したら、あとは普通に洗濯するだけ。
油シミはきれいに落ちていた。
「1回の作業で落ちなければ、これを何回か繰り返すことで、ワインや醤油をこぼしたときのシミから、口紅やファンデーションに至るまで、クリーニング屋さんに出しても落ちなかった汚れが、みーんな落ちますよ」
白いシャツがよみがえる!
当日は参加者に、汚れが落ちなくて困っている衣類などを持参してもらった。
お一人が持ってこられたのは、いや~な黄ばみがついてしまった白いシャツ。
「洗ったときはきれいだったのに、時間が経つとシミや黄ばみができていたってことがあるかもしれませんが、それは完全に汚れが落ちきってなかったから。空気中の酸素と汚れが結び付いて酸化したことによって生じるんです」
先ほどと同じ要領で、汚れている部分にスプレーしてゆすりをかけ、
ドライヤーで熱する。これを3回ほど繰り返していくと‥‥
こんなに白くなっていた。まだ完全ではないものの、何度か繰り返せば真っ白に生まれ変わるのも時間の問題である。
また、リネンバッグの取っ手の汚れ。よく使う部分だからこそ手垢などで黒く汚れがちだ。
ここにも「シャチッとスプレー」をシュシュッとかけて軽くゆすり、ドライヤーで熱すること3回。
ここまできれいな状態に。
洗濯とは、好きなものを長く使い続けるためのメンテナンス
ほかにも、木村さんはいろいろな洗濯のコツを教えてくれた。
その1 大事な洗濯物はなるべくネットに入れて洗うこと。
「このとき洗濯物にぴったり合うサイズを使うこと。ネットのなかでぐちゃぐちゃになっては意味がありませんから。ちょうどいいサイズのネットにきちんと折り畳んで洗濯物を入れましょう」
その2 色柄ものは裏返して洗う。
「そのまま洗うと色柄が薄くなったり、痛みが早くなりますし、洗剤を生地の中により入れ込むという意味もあります」
その3 干すときにも裏返しのままで。
「色柄側を直接太陽の光にさらさないということもありますが、濡れているときには糸が縮んだ状態。それをきちんと延ばしながら干すために裏側を表に向けて乾かしましょう」
最後に木村さんは言う。
「洗濯とは汚れを落とすための作業でもありますが、なにより好きな服を長く着るためのメンテナンスでもあるんです。お気に入りの服がきれいになると嬉しいでしょう。僕自身、黒ずんでいたシャツが白くなるとちょー嬉しいし、ちょー楽しい。みなさんも、ご自分が笑顔になれるようなお洗濯をしていただけたらと願っています」
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THE 洗濯洗剤
<取材協力>
がんこ本舗
神奈川県茅ヶ崎市中海岸2-5-5-112
0467-84-5839
http://www.gankohompo.com
文:葛山あかね
写真:池田昂樹
*こちらは、2018年12月28日の記事を再編集して公開しました