年間1万5千食売れる加賀パフェとは。「温泉とパフェ」という旅の提案
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パフェ、それは心を踊らせる食べ物。しかしそれだけではありません。最近では地域おこしのフックとしても一役買っているのをご存知でしょうか。
札幌発祥の「シメパフェ」に始まり、各地でもご当地パフェが登場しています。そんな中、ちょっとユニークなパフェを石川県加賀市で発見しました。
それは「加賀パフェ」。地元の食材だけではなく「伝統工芸」もキーワードに誕生したパフェです。
デビューは2016年3月。北陸新幹線が金沢まで開業し、山代温泉・山中温泉・片山津温泉を訪れた人に、朝昼晩のほかにプラス1食楽しんでもらう「1泊2日3湯4食作戦」が打ち出されたことがきっかけ。加賀市のおもてなし喫茶メニューとしての「地産地消5層パフェ」を考案しました。
ただのパフェじゃ、「加賀パフェ」と呼べません。
加賀パフェは現在、市内の6店で提供しており、各店で見た目や素材が違います。しかし、加賀パフェと称するためにはルールがあります。
・加賀市産の加賀九谷野菜(ブロッコリー・味平かぼちゃなど)、牛乳、お米、はちみつ、吸坂飴、献上加賀棒茶などを使用する
・パフェは5層とし、その上にトッピングをのせる
・パフェの1層目(底から数える)は「色鮮やかなゼリー」とする
・パフェの2層目は「はちみつ生クリーム」とする
・パフェの3層目は「野菜スポンジケーキ」とする
・パフェの4層目は「ポン菓子」とする
・パフェの5層目は「ブロッコリーアイス・味平かぼちゃアイス・温泉卵など」とする
・パフェのトッピングは「加賀九谷野菜など」とする
・名物菓子「吸坂飴」を使った各店こだわりのオリジナルソースをつける
・急須に入れた献上加賀棒茶をつける
・料金は980円(税込)以下とする
などなど。細かく規定されているのですね!
加賀パフェは毎年バージョンが変わり、上記の規定を踏まえつつ各店が自由に味や見た目をリニューアルします。3月12日より2019年度にバージョンが一新されたばかり。さて、今年の加賀パフェはというと……。
ますますパワーアップした2019年バージョン。
1:加賀片山津温泉総湯 まちカフェ
屋形船を模したさつまいもクラッカーにご当地キャラ「かもやん」が乗り、3つの野菜ゼリーで虹を表現。柴山潟の美景を写し取ったパフェはボリューム&遊び心たっぷり。
住所:石川県加賀市片山津温泉乙65-2
営業時間:10:00~17:00(L.O.16:30)※ランチ11:30~14:00
定休日:木曜
2:加賀フルーツランド
自社果樹園で収穫した旬のフルーツを、生、ドライ、クッキー、クリームなど形を変えて盛り込みました。濃厚なチョコ感を味わえる吸坂飴ソースをディップにしても。
住所:石川県加賀市豊町イ-59-1
営業時間:9:00~17:00(L.O.16:30)
定休日:火曜(12~2月)、年末年始
3:カフェ・ランチ 加佐ノ岬
ほうれん草ロールケーキで新緑、ビーツ白玉や紫芋餡で季節の花を表現。さらにゼリーとプチトマトで日本海の夕景をイメージ。レモン味の吸坂飴ソースで味変を!
住所:石川県加賀市橋立町ふ23
営業時間:3~10月10:30~17:00
11~2月10:30~16:30 ※ランチ混雑時はパフェ注文不可の場合あり
ランチ11:30〜14:30
定休日:金曜
4:くいもんや ふるさと 加賀店
加賀大聖寺藩にちなんだ紅梅最中をはじめ、加賀梅酒のゼリーや赤紫蘇ゼリー、梅ロールケーキなどとことん梅と赤紫蘇づくし。赤紫蘇入りの吸坂飴ソースでさらに甘酸っぱく。
住所:石川県加賀市小菅波町1-55
営業時間:11:00~23:00(金・土曜 ~24:00)※ランチ 11:00~15:00
※混雑時には提供に時間がかかることがあります
定休日:火曜
5:ギャラリー&ビストロ べんがらや
生野菜や漬物に加え、口の中でパチシュワッと弾ける「炭酸氷」がアクセント。白ネギを練り込んだクッキーや炭れんこん、季節ごとの団子やあしらいなど工夫が盛りだくさんです。
住所:石川県加賀市山代温泉温泉通り59
営業時間:10:00~17:30、ランチ11:00~15:00
※ランチ混雑時はお受けできない場合もあります。
定休日:水曜
6:はづちを茶店
加賀棒茶ゼリー、ブラックペッパー味のおからクッキー、麩せんべいなど、甘さ控えめの組み合わせで男性にも好評。縁結びの祈りを込めた手作りの結び求肥と水引で食後も幸せに。
住所:石川県加賀市山代温泉18-59-1
営業時間:9:30~18:00(L.O.17:30)
11~2月は~17:00(L.O.16:30)
定休日:水曜
器も、お盆も、手織りコースターも、このパフェのために。
何よりも特徴的なのは、加賀パフェに使う食器などを地元工芸品で作り、全店で同じものを使用すること。このパフェに合わせて地元作家が新たに作り下ろしています。
半月型のお盆は山中漆器。加賀温泉駅の近くにある山中温泉では、安土桃山時代から続く山中漆器が伝統産業として根付いています。
パフェには、山中漆器連合協同組合の作家がパフェに合わせてオリジナルサイズで作ったお盆を使用。総黒漆塗を用い、華やかなパフェを引き立てる風合いに仕上げています。
また加賀は九谷焼の発祥地。パフェグラス皿とソースカップは加賀九谷陶磁器協同組合の作家が作ったもので、5色のカラーは「九谷五彩(緑・黄・紫・紺青・赤)」に基づいています。
献上加賀棒茶の急須に敷かれた手織コースターは、加賀市の「手織・草木染工房いとあそび」の作品。加賀市内にある町屋の格子をイメージした縞模様で、繰り返し洗っても弱らない耐久性の強い麻糸で織り上げました。
加賀には食だけでなく工芸、ものづくりの文化が息づいているのですね。
加賀パフェプロジェクトを主導する「加賀ご当地グルメ推進協議会」の鴨出会長にお話を伺いました。
「加賀パフェを通して、加賀の魅力を伝えたい」
加賀パフェより1年前の2015年にまず「加賀カニごはん」がスタートし、こちらの盛況を受けてパフェバージョンも考案されたそう。プロデュースは「空飛ぶご当地グルメプロデューサー」として有名なヒロ中田氏です。
鴨出会長は「加賀には温泉以外にも素晴らしいものがたくさんあります。加賀九谷野菜、加賀棒茶、伝統工芸、個性的なお店。朝昼晩のご飯プラス『パフェ』で、もっと加賀の深い魅力に触れて欲しいですね」と話します。
鴨出会長は加賀温泉駅前で『くいもんや ふるさと』というお店を経営しています。
今回は、こちらで提供している加賀パフェを実際に作っていただきました(取材当日に提供していた2018年バージョンのものです)。
加賀特産の味平かぼちゃで作ったプリンはかぼちゃそのものの甘みが際立ち、クリーミーで濃厚。ポン菓子で作ったフレークのサクサク感が小気味よく、加賀産のゴマを使ったブラウニーのしっとり感もたまりません。かぼちゃチョコレートをコーティングしたクッキーもポリポリと美味。まさに味平かぼちゃを堪能できるパフェです。
加賀パフェは2019年で4期目を迎えますが、2018年は1年間で1万5千食以上を販売。当初の狙い通り、金沢から足を延ばして来るお客さんや、近隣から加賀パフェ巡りを楽しみに来る人も増えているのだとか。
また、加賀パフェ効果は観光客だけでなく地元にも及んでいます。居酒屋やビストロといった加賀パフェ提供店に普段は訪れなかった客層が増えたり、男性でも食後のデザートとしてオーダーする人が増えたり。
地元の人も、自分の知らなかった味や工芸、お店に出会い、「加賀にこんなものがあったなんて」と再発見しているのだそう。
お店同士の結束や意識にも影響があった
「加賀パフェがきっかけでお店にも変化がありました」と鴨出会長の奥様、円さんは話します。
「加賀パフェを通じて集まり、協力することで、それまでつながりのなかったお店同士が結びつき、情報交換をするようになりました。またお店のメニューも『地産地消』を意識するようになり、地元の食材の魅力をもっと発信していこうという気運が高まりました」
パフェが地元の意識を変え、訪れた人に新たな気づきをもたらす。朝昼晩の食事だけでなく、“ベツバラ”なパフェにこそご当地の知られざる魅力が詰め込まれているのかもしれません。
現在は2019年バージョンを提供中。ホームページで詳しく紹介しています!
<取材協力>
くいもんや ふるさと 加賀店
住所:石川県加賀市小菅波町1-55
営業時間:11:00~23:00(金・土曜 ~24:00)※ランチ 11:00~15:00
※混雑時には提供に時間がかかることがあります
定休日:火曜
文:猫田しげる
写真:長谷川賢人
*こちらは2019年5月20日の記事を再編集して公開しました。ご当地パフェ巡りも、旅の計画にぜひ入れてみてはいかがでしょうか。