【暮らすように、本を読む】#08「柳宗民の雑草ノオト」
自分を前に進めたいとき。ちょっと一息つきたいとき。冒険の世界へ出たいとき。新しいアイデアを閃きたいとき。暮らしのなかで出会うさまざまな気持ちを助ける存在として、本があります。
ふと手にした本が、自分の大きなきっかけになることもあれば、毎日のお守りになることもある。
長野県上田市に拠点を置き、オンラインでの本の買い取り・販売を中心に事業を展開する、「VALUE BOOKS(バリューブックス)」の北村有沙さんに、心地好い暮らしのお供になるような、本との出会いをお届けしてもらいます。
<お知らせ: 「本だった栞」をプレゼント>
先着50冊限定!ご紹介した書籍をVALUE BOOKSさんでご購入いただくと、同社がつくる「本だった栞」が同封されます。買い取れず、古紙になるはずだった本を再生してつくられた栞を、本と一緒にお楽しみください。詳細は、VALUE BOOKSさんのサイトをご覧ください。
足元に咲く、春を見つけに。『柳宗民の雑草ノオト』
春は散歩が楽しい。都会も田舎も関係なく、足元の草花が一斉に芽吹き、つやつやと健康そうな葉を付ける。
民芸運動の創始者・柳宗悦の息子である園芸研究家・柳宗民による、足元の草花にスポットをあてた本書は、60種の植物の鮮やかなスケッチと共に、奥ゆかしい解説が掲載されています。自宅の庭、あるいは散歩に訪れた野辺や山道で出会う雑草。それらを専門的な知識だけでなく、自らの体験と共に語られる、図鑑としても、エッセイとしても楽しめる一冊です。
例えば、「ツクシ」の本名は「スギナ」であって、「ツクシ」はその胞子茎のことであること。藤紫色の花を持つ「ムラサキハナナ」はホウレンソウに似た味がすること。「オオイヌノフグリ」や「ヘビイチゴ」など、植物名の頭に付いた動物の名前は、「贋(にせもの)」という意味で使われるものが多いということ。「どんな草でも、どこかに美しさがあり、役立つ面がある」と語る通り、身近で出会う雑草の名前やそのルーツ、性質を知ると、慣れ親しんだ景色が新鮮なものに感じられます。
「空色のカーペットを敷き詰めたように咲くオオイヌノフグリの姿は、春の訪れを告げる早春の風物詩だ」「厄介な雑草の一つだが、いざ抜きとろうとすると、その花の可憐さに、しばし躊躇してしまうのが、このカラスノエンドウだ」と、美しい表現と共に景色を切り取り、嫌な顔を向けられがちな雑草すら、我が子のように可愛がる著者。彼の語り口がどこか可笑しく、「次はどんな雑草がくるのだろう」と、飽きずにページをめくってしまいます。
そんな雑草たちは時々、「グルメ」の一面をみせます。寒天に実を閉じ込め、冷やして食べる「シロバナノヘビイチゴ」。佃煮にして炊きたてのご飯の上に載せて食べる「ツクシ」。食糧難の時代にひたし物として食卓を支えた「ナズナ」。「栽培物の葉菜にはない、自然の恵みの味わいがする」と、ご馳走としての雑草の魅力を語ります。
2月。肌寒さを残しながら、ふいに注ぐ陽気に春の気配を感じる頃。本書を片手に草花と友人になった気分で、足元に咲く、ちいさな自然を訪ねてみませんか。
ご紹介した本
『柳宗民の雑草ノオト』 文:柳宗民、画:三品隆司
本が気になった方は、ぜひこちらで:
VALUE BOOKSサイト『柳宗民の雑草ノオト』
先着50冊限定!ご紹介した書籍をVALUE BOOKSさんでご購入いただくと、同社がつくる「本だった栞」が同封されます。買い取れず、古紙になるはずだった本を再生してつくられた栞を、本と一緒にお楽しみください。詳細は、VALUE BOOKSさんのサイトをご覧ください。
VALUE BOOKS
長野県上田市に拠点を構え、本の買取・販売を手がける書店。古紙になるはずだった本を活かした「本だったノート」の制作や、本の買取を通じて寄付を行える「チャリボン」など、本屋を軸としながらさまざまな活動を行っている。
https://www.valuebooks.jp/
文:北村有沙
1992年、石川県生まれ。
ライフスタイル誌『nice things.』の編集者を経て、長野県上田市の本屋バリューブックスで働きながらライターとしても活動する。
暮らしや食、本に関する記事を執筆。趣味はお酒とラジオ。保護猫2匹と暮らしている。
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