【暮らすように、本を読む】#05『道具のブツリ』

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自分を前に進めたいとき。ちょっと一息つきたいとき。冒険の世界へ出たいとき。新しいアイデアを閃きたいとき。暮らしのなかで出会うさまざまな気持ちを助ける存在として、本があります。

ふと手にした本が、自分の大きなきっかけになることもあれば、毎日のお守りになることもある。

長野県上田市に拠点を置き、オンラインでの本の買い取り・販売を中心に事業を展開する、「VALUE BOOKS(バリューブックス)」の北村有沙さんに、心地好い暮らしのお供になるような、本との出会いをお届けしてもらいます。


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道具への愛着が深まる、やさしい物理学の入門書
『道具のブツリ』

離乳食からはじまり、スプーンは私たちにとって最も身近な道具のひとつ。でも、あの丸く少しくぼんだ形状について、深く考えをめぐらせる人は多くはないでしょう。

「ながす道具」「さす道具」「きる道具」「たもつ道具」「はこぶ道具」の5つの章にわたって、日々活用する暮らしの道具の仕組みを解説する本書。スプーンのほかにも、ハサミ、扇風機など、生活に欠かせない道具に隠されたブツリを、弾むような文章でやさしく紐解いていきます。

突然ですが、私はお酒が好きです。外でおいしい料理と共に嗜むお酒もいいけれど、自宅でのんびり夜が耽るまで飲むのも大好きな時間です。常にストックをするビールや日本酒、そしてワイン。簡単なおつまみとお気に入りのグラスを用意し、いざ飲むぞ!という瞬間に、盛り上がった気分が、しおしおと萎んでしまうことがあります。それは、ワインの開栓に失敗した時。ぼろぼろと砕けたコルク栓を前に、悲しみに打ちひしがれてしまった経験は、一度や二度ではありません。

本書で紹介される25の道具のうち、酒飲みにとって身近なアイテムであるワインオープナーが「さす道具」のひとつとして紹介されています。らせん構造を用いることで、コルクを引き抜く役目をはたしているのは、一目瞭然ですが、そこに「摩擦」の力を意識して、じわじわと、慌てず引き続けることで、スポンっとうまく開けることができるのだそう。ブツリを学ぶことは、道具を効率よく使う助けになるのです。仕組みがわかれば、あれだけ憎たらしく感じていたワインオープナーも、不思議と頼もしい相棒のように感じられます。

ポップでわかりやすいイラストや、背中の綴じ糸をそのまま見せた美しい装丁も、本書を暮らしのそばに置きたくなる理由のひとつ。身近な道具を使うシーンを想像しながら、ブツリの世界に足を踏み入れてみる。使い慣れた道具への愛着がちょっぴり深まった気がします。

ご紹介した本

『道具のブツリ』
田中 幸(著)、結城 千代子(著)、大塚 文香(イラスト)

本が気になった方は、ぜひこちらで:
VALUE BOOKSサイト『道具のブツリ』

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VALUE BOOKS

長野県上田市に拠点を構え、本の買取・販売を手がける書店。古紙になるはずだった本を活かした「本だったノート」の制作や、本の買取を通じて寄付を行える「チャリボン」など、本屋を軸としながらさまざまな活動を行っている。
https://www.valuebooks.jp/

文:北村有沙

1992年、石川県生まれ。
ライフスタイル誌『nice things.』の編集者を経て、長野県上田市の本屋バリューブックスで働きながらライターとしても活動する。
暮らしや食、本に関する記事を執筆。趣味はお酒とラジオ。保護猫2匹と暮らしている。


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