金網つじの焼き網で「トーストが美味しく焼ける」秘密

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金網つじの焼き網で焼いたパン

「美味しいトーストが焼ける!」と評判の焼き網をご存知ですか?

焼き網で焼いたトースト
コンロの上に乗せただけの焼き網で、ほんの1〜2分あぶったパン。表面はカリッ、中はふわふわに焼きあがりました

作っているのは京都の「金網つじ」。手で編む京金網の美しさと、道具としての使いやすさが評価され、世界からも注目されている工房です。

辻さんの金網づくりには図面があります。美しい京金網をうみだしています
フリーハンドで編むことが一般的だった京金網作りの現場に図面を取り入れ、使いやすさと見た目の美しさを高めました

平松洋子さん著「おいしい日常」の表紙になった焼き網

金網つじの焼き網は、暮らしの道具に精通した方々が愛用していることでも知られています。エッセイストの平松洋子さんの著書、「おいしい日常」の表紙も飾りました。また、大手パンメーカーのCMで女優の深津絵里さんも使用。パン好きの間で人気が耐えない商品で、生産が追いつかないほどの売れ行きなのだとか。

この焼き網は、何が特別なのでしょう。お話を伺いに京都を訪ねました。

高台寺にある金網つじ
京都 高台寺にある金網つじの店舗。2階では、京金網の製作体験ができます (要予約)
金網つじ 2代目 辻徹 (つじ とおる) さん
金網つじ2代目 辻徹 (つじ とおる) さんにお話を伺いました

網で焼いたパンの美味しさをもっと広めたい

「我が家では、私が子どもの頃から毎朝焼き網でパンを焼いていました。芳ばしいパンの香りが漂う食卓の風景は私の原体験となっています。

家業を継いで自分で金網を作るようになってから、もっと多くの方にこの美味しさを知ってほしい、焼き網を使ってみてほしいと思っていました」

パンの焼き方を映したインスタグラムの投稿
焼き網の活用法や、季節のお勧め食材を調理する様子をインスタグラムで発信している辻さん。使い込むことで変化する網の状態や、パンの焼き方も紹介されていました
焼き網での調理にお勧めの食材の紹介も
こちらは練り物を焼く様子。見ているだけでお腹が鳴りそう‥‥

プロが使う「焼き網」を家庭に

「セラミックから出る遠赤外線は、食べ物を美味しく焼く効果があると言われています」

焼き網に付いている白い部分がセラミック
焼き網の下に付いている白い部分がセラミック

「遠赤外線を出せるのは、『石焼き芋の石』、『炭』、『セラミック』の3つだけ。

実は昔から、料理人の間では『炭の香りはつけたくないけれど、遠赤外線効果で焼き上げたい』時、セラミックが付いた焼き網が使われていました。

プロ用の道具を一般家庭で使っていただけるよう商品化することにしたんです」

金網つじのお店入り口
元々は料理人や和菓子職人などプロ向けの道具を作っていた同店。辻さんが継いでからは一般向けの道具も作り始めました

「発売当初は、プロと同じように昔ながらのセラミックを付けていました。料理人にとっては問題ないのですが、家庭で使う場合の難点がありました。

それは、『洗えない』ということ。脂の乘った魚やお肉を焼くとニオイが残ってしまうので、他のものを焼くならもう一つ焼き網を持たなければいけなかったり、やはり汚れが気になる方もいらっしゃいました」

汚れが気になって、洗ってしまうという人も。洗うと効果が半減してしまうので、辻さんはなんとかしたいと奮闘します。

「いろんな素材を調べていて、行き着いたのが工業製品である『ファインセラミック』です。最先端のセラミック研究を行う企業に依頼して、金網つじ用のオリジナルを製作してもらいました。これなら洗えるし、何より従来のセラミック以上に遠赤外線効果が高いものだったんです」

つじさん

暮らしの道具は、使い勝手が良くてこそ

「せっかくの工芸品に工業製品を加えるなんて‥‥という否定的な声をいただくこともあったのですが、この焼き網を良くするために必要なことでした。

私たちが作っているのは暮らしの道具です。使い勝手が良くて、より美味しいものが作れてこそ喜んでいただけると信じて進めました」

こうして新しくなった辻さんの焼き網は大好評。多くの家庭で使われることとなりました。

焼き網
作られたのは、一般的な大きさの焼き網と、トースト1枚がちょうど乗る小ぶりなサイズ。コンパクトなキッチンでも使いやすい大きさです

長持ちする道具を目指して

辻さんの工夫はセラミック選びだけにとどまりません。使い勝手の検証と、金網つじの技術を生かした仕上げがなされています。

「一般家庭のコンロの火と網の距離を考えて台の高さを調整しました。

それから、金網の枠に巻きつける針金の先端は1本ずつ溶接してなめらかにしています。こうしておくと、壊れにくいですし、スポンジが引っかからないので洗いやすいんです」

枠に巻き込んだ網の仕上げも滑らか。指で触れても滑らかで引っかかりがなく、怪我をしにくい上にスポンジなども引っかからないので洗いやすい
整然と枠に巻きつけられた金網。枠の裏を指で撫でてみると、見事に溶け合っていて尖ったところがありません。そのなめらかさに驚きました

「素材にもかなり迷いました。ずっと使ってもらいたい道具なので、安全性と耐久性を考えてステンレスを選びました。

ステンレスって、すごく硬くて編むのが大変なんです。まさかこんなに売れると思っていなかったので、『失敗したなー!』なんて冗談を言いながら作ってます (笑) 」

ゴルフ手袋で手を守りながら編んでいきます
金属から手を守るため、強くて滑りにくいゴルフ手袋をして編んでいくのだそう。しっかりした生地の手袋でも針金を押さえる指先には穴が空きます。金属を編むハードさを感じました

伝統の技術を現代にアップデートしていく

「工芸に工業製品を取り込んだり、海外向けの道具を作ったりしていると、革新的なことばかりやっているようにイメージされることもありますが、やっていることはずっと変わっていないと思っています。

伝統工芸を受け継がせてもらっている身としては、その技術を守って伝えていくことはとても大切なことです。ただ、守るだけではダメだと思うんです。

今の時代を生きるお客さんにとって、使い勝手の良いものであることが何より大事です。それが伝わったから使っていただけてるんじゃないかなと思います」

金網つじ パン焼き網

使い込むほどに美味しく焼きあがるようになるという辻さんの焼き網。使い方も細かく教えていただいて、トーストサイズを買ってお店をあとにしました。

金網でパンを焼く朝が始まりました。毎日この時間を楽しみにしています。次回は、辻さん直伝の美味しいパンの焼き方を紹介します。

 

<取材協力>
高台寺 一念坂 金網つじ
京都市東山区高台寺南門通下河原東入桝屋町362
075-551-5500
http://www.kanaamitsuji.com/
instagram @kanaamitsuji

文:小俣荘子
写真:山下桂子・小俣荘子

*こちらは、2018年9月17日公開の記事を再編集して掲載しました。毎日の朝ごはんを少しだけ贅沢に過ごせば、1日シャキッと頑張れそうですね。

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