これがプラスチック?調理・食事・保存の3役を一つで担う、陶器のような「9°」の器

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9°

近年、よく耳にする海洋プラスチックごみ問題。大手スーパーではプラスチックごみを減らすべく、徐々にレジ袋の有料化やプラスチックストローの廃止へと舵を切っています。

このような社会の流れもあり「プラスチック製品は環境によくない」というイメージが先行しますが、本当に「プラスチック」だけが悪者なのでしょうか?

そんなプラスチックのことを、ちょっと違った視点から考えさせられる器を見つけました。

それが「9° (クド) 」の器です。

目指したのはプラスチックらしからぬ器

9°は、都内でプロダクトデザインを手がけるカブ・デザインとデザイン事務所のPORT、富山県のプラスチック製品メーカー、シロウマサイエンスの3社による共同開発から生まれました。

プラスチック (合成樹脂) の付加価値を高めるべく、「素材の寿命と同じくらい長く使い続けてほしい」という思いからスタートしたブランドです。

もともとシロウマサイエンスが食品関連のパッケージに使われるプラスチック部品を製造していたことから、「食」に着目し、ブランド初のアイテムは器となりました。

まず、驚くのがその見た目。

プラスチックといってイメージする、無機質な感じとはまるで違います。ほどよい色ムラで手仕事で作られたような色味です。

9°
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「製造元のシロウマサイエンスが白馬岳という山の麓にあるので、その山の自然、『雪』と『大地』と『緑』をイメージした色なんです」

そう教えてくれたのは、カブ・デザインの市橋樹人さん。

カブ・デザインの市橋樹人さん
カブ・デザインの市橋樹人さん

9°の器の見た目にも驚かされましたが、実物を手にしてみて、見た目以上に驚いたのが、その質感でした。

少しざらっとするような、まるで陶器のような感触なのです。

「五感で感じられる部分は、プラスチック感を出さないようにしています。そうすることで愛着を持って長く使ってもらえると思うんですよね。見た目の雰囲気や触ったときのテクスチャーはもちろん、音にもこだわっています」

そう言って市橋さんが9°の器をテーブルに置くと、「コトン」という重みを感じさせる、きれいな音が響きました。

愛着を持って長く使ってもらえるものを

長く使ってもらいたいという思いは、その形にも込められています。

シンプルで飽きのこない、時の風化に耐えうるフォルム。

一見、何の変哲もない形に見えますが、実は隅々まで計算しつくされています。

器の底から口にかけての角度が9度であることから、ブランド名を「9°」にしたといいます。

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9°はきれいにスタッキング収納できる角度でもあるそう

また、神前式などで執り行われる日本古来の儀式「三々九度」の「九度」にもかけられているそう。「三々九度」が夫婦や親族の絆を結ぶ「固めの盃」と呼ばれることから、末長く愛されて繁栄するようにという願いも込められているのだとか。

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作って、食べて、保存。ひとつで3役を担える理由は素材にあり

私たちが想像するプラスチックの器とは、何から何まで違う9°の器。

ひとくちにプラスチックと言っても、何か特別な素材なのでしょうか?

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「『エンジニアリングプラスチック』と呼ばれるSPS樹脂を使っています。高い成型技術を必要とするもので、車の内部パーツなどの工業部品に使われることが多いです。

PP (ポリプロピレン) などのいわゆる汎用プラスチックと比べると耐熱温度が−20℃〜220℃と高く、強度もあって耐久性が高いのが特徴ですね」

耐熱温度が幅広いだけに、冷凍も電子レンジによる加熱も可能。電子レンジで調理して、そのまま食卓に出したり、余った料理をそのまま冷凍・冷蔵したりすることができます。

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写真提供:9°

また、強度や耐薬品性にも優れているので、食洗機や食器乾燥機はもちろん、塩素系漂白剤も使えるとのこと。後片付けやお手入れにも手間がかかりません。

ひとつで「調理」「食事」「保存」と3つの役割を果たしてくれるので、食事の時間にゆとりが生まれそうです。

どんなシーンで使えるかを提案するレシピも

器のサイズは直径90mmと150mmの2種類。「1人分の食事」というコンセプトで作られています。

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上が「U90」、下が「U150」。Uは「器」の頭文字、数字は器の直径を表しています

9°では、使うシーンにあわせてレシピも開発。Webサイトで公開しています。

これから寒くなる季節には、小さい方にお酒を入れて電子レンジでチンして燗酒にしてみるのもおすすめだそう。ふたの部分をプレート代わりにしてお好みの肴を盛れば “ひとり晩酌セット”が簡単にできちゃいます。日本酒でなく、ホットワインにチーズ、なんていう組み合わせもよさそうです。

ただモノを作って終わりでない、使い手に寄り添う気持ちがうれしいところです。

大量消費でないプラスチックの時代へ

「プラスチックに希少性はないですが、デザイン的にも自由度が高くて、大量生産にも向いている素材です。もはやプラスチックなしでは生活できないくらい、僕たちの身のまわりにはプラスチック製品であふれています。

便利な素材であることには違いないので、その上手な使い方を考え直すべきだと思うんですよ。

プラスチックの製品も、愛着を持って長く使ってもらえれば、安易に消費されないと思うんです」

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写真提供:9°

技術の力で機能性を、デザインの力で愛着を生み出し、プラスチック製品を末長く使ってもらえるものにした9°。

日々の食卓に豊かさと便利さを届けてくれる9°の製品は、プラスチックのことを改めて見直す機会になりました。

<取材協力>



公式サイト

文:岩本恵美

写真:中里楓

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