【工芸の解剖学】ワイングラスに学んだ日本酒器

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口にした瞬間、香りがぶわっと広がる
晩酌の楽しみを変える、有田焼酒器

吟醸酒などフルーティーな香りが魅力の日本酒は、選ぶグラスの形状によって印象が大きく異なります。

お正月に向けて、自宅でもちょっといい日本酒を楽しむ機会が増えるなか、そのポテンシャルを味わい尽くしてほしい。

日本酒の香りを最大限に引き出すよう、形状は赤ワインのグラスに学びながら、和の食卓に合う「日本の焼き物」にこだわって作ったのが、この酒器です。

香りと旨味を強く感じる形状、手入れが簡単で実用的な素材。その品質の細部をご紹介します。

指や水滴の跡、キズが目立ちにくい装飾

ガラスに代わる素材として選んだのは、その薄さから「エッグシェル(卵の殻)」とも呼ばれる特殊な有田焼磁器です。

ワインのソムリエがいいグラスの条件を「薄くて軽いこと」と挙げるように、この酒器は、厚さ1mm以下と非常に薄く軽量に仕上げました。

薄いことで、お酒が口に入る際の段差が少なく口当たりがなめらかに。軽いことで、持った瞬間にお酒の重みや揺らぎを100%に近い状態で感じられるため、五感が研ぎ澄まされ、味覚も鋭くなります。

表面に施した刷毛目の装飾には、デザイン性だけでなく、指紋や唇の跡を目立たなくする役目も。 お酒を楽しんでいる最中、余計なストレスがありません。

ガラスと比較した場合、洗ってから水滴の跡が残らないようクロスで拭き上げる必要がなく、使うにつれて細かなキズが付いて曇ってくることもないため、普段から気軽に使っていただけます。

器の中で香りが回り、鼻まで届くカーブ

お酒は3cmほどの高さまで注ぎます。グラスを傾けたとき、大きくとった中央のふくらみの部分に一度お酒がたまり、空気に触れることで中で一気に香りが開く仕組みです。

約8cmの口径は、お酒を口にするときにちょうど鼻まで覆うことを狙ったサイズ。飲むたびに、新たな香りが鼻へと届きます。

口元にも、ほんの少しカーブを付けました。口の中へ流れ込むスピードを落とし、ゆるやかに舌に広がることで、舌全体の味覚センサーが働き、お酒の旨みも強調されるのです。

今の形状に行き着くまでに、大きさやカーブなど、デザイナーが何度も微調整を繰り返しました。これは酒器を半分に切ったところ。底から口に至るまで、左右対称に繊細なカーブを描いています。

薄くても割れにくい、丈夫な素材と形状

薄くて繊細な見た目とは裏腹に、実は割れにくく丈夫なエッグシェル。

主な理由は、1300度の高温で焼成することで素材を結晶化させていること。

薄さが均一なため、衝撃を全体で吸収できること。

さらに、内側に釉薬、外側には化粧土を塗り、その2層のベストバランスによって外から衝撃を受けた時に中で発生する力(応力)を最小限に抑えていることです。

そもそもワイングラスのように脚がないため、酔いでうっかり倒したり、出し入れの際に倒して割ってしまうリスクも高くありません。

底の直径は、約5cm。安定感を持たせながら、佇まいの美しさも損なわないバランスを追求しています。

香りを楽しむ飲み物全般に使える、多用途グラス

「ワイングラスに学んだ日本酒器」の製造は、エッグシェルの製法を確立し、量産を成功させた佐賀県の有田焼窯元「やま平窯」に依頼しました。

主原料は、熊本県天草産の鉱物で、透光性を高めるためにガラス質の成分を多く配合。粒子が細かく、白さの度合いが強い特殊な陶土を使っているのが特徴です。

生地の成型から焼成まで工程は一般的な磁器と同じですが、カスタマイズした道具を使い、作業のほとんどが一般とは異なるため、熟練の職人の指先の感覚と勘が安定した品質を支えています。

出来上がった商品の印象について、やま平窯の山本代表は「香りが立ちやすい形状。容量もあるため、日本酒、ワインと多用途に使える機能性に富んだグラス」と評価します。

器から入る、新たなお酒の楽しみ方。これで、日本各地のお酒をぜひ味わってみてください。

取材協力/やま平窯元

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