100年先の日本に工芸があるように。中川政七商店のものづくり
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100年先に残したいものづくりを
時代がどんなに変わっても、100年先の日本に工芸があるように。
もし、中川政七商店がものづくりをする理由を聞かれたら、そう答えます。
全国のつくり手たちと共にものづくりをする私たちが日々目の当たりにするのが、今にも失われてしまいそうな各地の工芸や技術の数々。
日々工芸に向き合う社員一人ひとりの「これがなくなるには惜しいな」という想いを根っこに、中川政七商店は「日本の工芸を元気にする!」というビジョンを掲げ、自分たちでものづくりを続けることを大切にしています。
これは、そんな「中川政七商店のものづくりってどんなもの?」のお話です。
つくり、伝えることで残す
例えば、ロングセラーの花ふきん。
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素材には、地元・奈良でかつて一大産業だった「蚊帳 (かや) 」の生地が使われています。時代の変化による需要減少で、存続の危機にあった蚊帳を、何か別の用途で今の暮らしに生かせないか、という思いで開発されました。
もともと虫を避けて風を通すための目の粗い織りは、吸水性や速乾性に優れ、使うほどにやわらかく、ふきんの生地にぴったり。一般的なふきんの4倍ほどの大判に仕立てたことで、重ねて使えば水をよく吸い、広げて干せばすぐに乾く、現在の花ふきんが誕生しました。
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残したいものづくりは、地元の奈良に限らず全国に広がっています。
例えば2019年にデビューした歯ブラシスタンドは、岐阜県多治見で底引網用につくられてきた、陶の「おもり」がベースになっています。
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おもり自体は漁師さんの減少により需要が減っていましたが、歯ブラシスタンドとして見立ててみると、もともと海で使うものなので耐久性はお墨付き。水周りに気兼ねなく置けて、適度な重さで安定して使えます。
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こんなふうに、各地には生かし方を変えれば今の暮らしに沿うものづくりが無数にあります。時代の変化の中で、「しかたない」と失われてしまうのはもったいない。ならば、私たちが今の暮らしに沿うように、つくり、伝え続けることで残していこう。これが、私たちのものづくりの原動力です。
全国に800を超えるつくり手と残す
中川政七商店には、全国50を超える直営店があります。これが、つくったものを「伝える」拠点。ですが実は、「つくる」拠点としての自社工場は持っていません。
つまり私たちのものづくりは、膝を突き合わせて新商品に共にチャレンジする、つくり手の存在がいて初めて成り立ちます。
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その数、全国に800社以上。織物に焼きもの、金属と、素材も技術も多様で、世の中にあまり知られていない貴重なものも多くあります。だからこそ、開発の上で共通して大切にしていることがふたつあります。
ひとつは、産地の「素材・技術・風習」に向き合ったものづくりをすること。産地のプロフェッショナルであるつくり手の知見や技術に学び、お互いにアイデアを出し合い、協力しながら新たなものづくりに挑戦しています。
例えば全国の焼きもの産地と開発した「産地のうつわ」シリーズでは、それぞれの焼きものの特徴を生かすために、暮らしの中で使いやすい基本的なサイズ感や形状は統一しながらも、産地の素材や技術によって培われた製法に従ってつくっています。
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そして大切にしているふたつ目は、「今の暮らしに沿うようにアップデートすること」です。
使ってもらうことで残す
自分たちが残したいと思ってつくったものでも、使われなければ世の中に残っていきません。そのものがもつ本質的な魅力を伝えながら、今の暮らしの中で使いやすいことを常に心がけています。
先ほど登場した歯ブラシスタンドでは、歯ブラシが立てやすいよう、穴の大きさを微調整し、色合いも家の中で使うことを想定して、従来なかった鮮やかな色合いに挑戦。
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「産地のうつわ」シリーズは、気軽に各地の焼きものを取り入れられるよう、和洋中、朝昼晩と使いやすいデザインにし、高台裏に水がたまりにくいようにするなど、工夫を重ねました。
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もうひとつ、日本有数の刃物産地、岐阜県関市のメーカーさんと開発した「最適包丁」も、「今の暮らしに最適な道具」という考え方をたっぷり詰めこんだアイテムです。
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例えばサイズは、核家族・共働き家庭が多い今の暮らしを想像して、一般的な万能包丁よりもひとまわり小さくしました。これなら、短い時間でさっと取り出せて取り回しが楽です。また、ひと家族の人数が減っていることから、キャベツひと玉よりも半玉がちょうど切りやすい刃渡りにサイズを調整しました。
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刃先はお手入れにかける時間が最小限ですむよう、切れ味が長続きする薄刃仕上げを採用。
一方で素材はステンレスの中でも最高級のものを使うことで、小さいサイズながら、切れ味はプロ並です。
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産地で培われた素材・技術・風習を大切にしながら、今の暮らしに沿うように、アップデートする。ひとつひとつに向き合うものづくりは簡単ではありません。しかし、私たちが「いいな」と思うものが、使い手にとっても「いいな」と思えるものであれば、きっとその先に、来年も、再来年も、100年先も誰かが「いいな」と思い、暮らしの中に生き続けるものづくりの未来があるはずです。
私たちが残したいと思うものを、使い手の視点を添えてつくり、伝える。受け取った人が使うことで、ものづくりが残る。
遠回りのようですが、100年先にも日本の工芸が残っているように、私たちは今日もつくり手と使い手の間に立って、この挑戦を続けます。
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