「たかがふきん」がグッドデザイン賞を受賞したのには、理由がありました

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「残したい」から誕生したロングセラー

「よく水を吸い、風を通してすぐ乾く。蚊帳(かや)の生地でふきんをつくったらどうだろう?」

中川政七商店のロングセラー商品「花ふきん」は、そんな一つのひらめきから誕生しました。

日本の夏の風物詩、蚊帳 は、かつては地元・奈良の一大産業。しかし、時代とともに需要が減り続けていました。

「せっかくの地元の特産品をなくしたくない。何かに生かせないだろうか」

そんな思いで改めて手に取ると、糊のついていない蚊帳の生地は、とてもやわらかく手に馴染みます。もともと虫を避けて風を通すための目の粗い織りは、吸水性や速乾性に優れていました。

「毎日の暮らしで使うふきんに、ぴったりかもしれない」

こうして奈良特産の蚊帳生地を「ふきん」に再生するものづくりがはじまりました。サイズは、目の粗い生地を生かすため、一般的なふきんの4倍ほどの大判に。重ねて使えば水をよく吸い、広げて干せばすぐに乾きます。色は、毎日の台所仕事に彩りを添えられるよう、季節ごとの花の色で染め上げました。

1995年、こうして奈良特産の蚊帳生地を美しく機能的に再生した、中川政七商店の「花ふきん」が産声を上げました。

一枚のふきんを支える、たくさんの手しごと

花ふきんは、薄手ながら丈夫で、使い込むほどやわらかな風合いが楽しめるのも魅力です。一見、シンプルなつくりですが、そのものづくりは一筋縄では行きません。

例えば「織り」の工程では、糸の張り具合が少しでも緩めば目が歪み、糸を張りすぎればすぐに切れてしまいます。職人さんは糸の素材や湿度、天候、機械の癖を見ながら、片時も休まず織機の間を行き来して、糸の具合を調整してまわります。

ふきんの質感や色味を決めるのが「染め・糊付け・幅出し」の工程。生地に熱を通すため工場内の温度が40℃にも達する過酷な環境の中、高度な技術に支えられて、ふんわりとした風合いや繊細な色合いが生み出されます。最後の重要工程「縫製」は、目の粗い生地を2枚重ねて縫うため、1枚1枚人の手でミシンがけをしています。

こうしてたくさんの人の手に支えられて、「丈夫で使い込むほどやわらかな花ふきん」が完成します。

2008年、「たかがふきん」に嬉しい事件。

発売以来、人気商品となっていた花ふきんに2008年、嬉しい事件が起こります。全国から毎年3000もの応募作品があるグッドデザイン賞の中で、ベスト15 に該当する金賞(経済産業大臣賞)を、花ふきんが受賞したのです。

ロボットなど最新技術を駆使した商品が受賞作の多くを占める中、日用品であるふきんの受賞は異例のことでした。

たかがふきん、されどふきん。奈良のものづくりを残したい一心で生み出したアイテムが、今の時代に受け入れられた瞬間でした。

蚊帳生地から「かや織」へ

発売から20年以上の時を経て、「花ふきん」は中川政七商店の代名詞とも言える商品になりました。そして今、私たちは蚊帳生地の可能性をさらに広げるため、この「奈良に伝わる目の粗い薄織物」を<かや織>と名付け、新たなものづくりをはじめています。

例えば、やわらかさと吸湿性を生かしたおくるみ、夏場にさらりと羽織れるブラウスやストール、PVC加工を施すことで織り目の美しさに機能をプラスしたビニールバッグなど。<かや織>の特性を生かしたふきん以外のアイテムを開発することで、より多くの人に、この織物の魅力に出会って欲しいと思っています。

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