修繕しながら長く使う#1「漆椀の塗り直し」

若い頃は「とりあえず」で購入することもしばしばありましたが、最近は長く使えるかどうかの視点で物を選ぶことが増えました。
そういう気持ちで購入するのだから、ちょっとした不注意で欠けてしまったり、汚れてしまったものも、なにかあれば修繕しながら長く付き合いたいと思っています。

でもそう言えば、修繕サービスに出す発想って、私自身、中川政七商店に入社してから身近になったことでした。中川政七商店のお客様は、道具に何かあれば相談してくださる方がたくさんいらっしゃいます。作り手さんに聞いてみると、思っていた以上に修繕できるものも多く、こういうものも修繕できるのだな、と日々学びがあります。

何かあれば修繕しながら長く付き合う。物との向き合い方が素敵だなと感じたので、今回改めて、「漆椀・染めの服・包丁」の修繕現場を取材しながら、末永く付き合うお手入れのコツを教えてもらいました。

「漆椀」「染めの服」「包丁」の全3回でお届けします。
今日は、漆椀のお話です。

#1 漆椀の塗り直し

最初に訪ねたのは、漆琳堂の内田徹さん。福井県河和田で200年余り8代に渡り、越前漆器を継承しています。「食洗機で洗える漆椀」や、洋食器の佇まいを持つ「RIN&CO.」など、現代の生活に合う漆器作りに取り組まれています。

「塗り直しの依頼は、少ない時でも週に数件あります。新年に使ったハレの器を塗り直しに出してくださる方が多く、例年1月から4月にかけて依頼が増えます。

今回のは『お椀やうちだ』のもので、毎食のように使ってくれていると聞いています。2017年に工場に併設する直営店で購入いただきました。翌年の2018年にも再訪いただいて、その際に一度塗り直ししています。そこから6年経って、再度塗り直しに出してくださいました」

「修理があることで、お客さまとも長く付き合える感覚があります。漆器を販売する時は、そこから関係性が始まるような感覚で、10年以上会わないままにやり取りしているお客さまもいます。その方の生活に寄り添えているようで嬉しいです」

BEFORE

AFTER

「塗り直し」で対応できること

塗り直しの方法は、個別に相談に乗ってもらえます。
漆琳堂では、漆器の割れているもの欠けているものを下地から補修していき、漆の塗り直しまで対応してもらえるそうです。
蒔絵や沈金などの加飾のあるものも、絵型をとって再生できるのだとか。お椀に限らず重箱、お盆、菓子器、屠蘇器、盃、など漆器の全てを修理できます。

また、他産地の物や、骨董市で購入した物にも対応してもらえるそう。少し傷んできたな、という方は、ぜひ一度お問い合わせしてみてください。
中川政七商店で購入されたものは、店舗にお持ちいただいても大丈夫です。

「漆琳堂」お問い合わせフォームはこちら

日々のお手入れのコツ

写真:奥山晴日

「堅いものを当てないのが傷つけないコツになるので、スポンジの柔らかい面を使って洗ってください。水で洗っても問題ありませんが、うつわに付いた汚れを無理にこすると塗膜が削れるため、お湯で浮かせながら洗うのがおすすめです。
乾かしたり運んだりする際には、陶磁器などの堅いものが当たらないように気を付けていただくことも大切です。洗ったあとそのまま食器置きに伏せて乾かしてもいいのですが、ふきんなどで水気を取りながら拭くと、ツヤが増していきます」


さらに詳しく、漆器の扱い方を知りたい方はこちら

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※複数のブランドがありますが、全て漆琳堂さんが手がける商品です。

<取材協力>
漆琳堂

文:上田恵理子
写真:阿部高之

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