修繕しながら長く使う#3「包丁の研ぎ直し」
エリア
修繕現場を取材しながら、末永く付き合うお手入れのコツを教えてもらう短期連載。これまで、「漆椀」「染めの服」の修繕現場を取材しました。
今回は、「包丁」の研ぎ直しについて、お届けします。
#3 包丁の研ぎ直し
今回訪ねたのは、株式会社スミカマの炭竃太郎さん。
スミカマは、日本を代表する刃物の産地である岐阜県関市で、創業以来100年以上にわたり刃物製造を行う企業。新素材、新技術にもいち早く着目しながら、切れ味と機能性を追求したものづくりを続けられています。
「研ぎ直しを受けているのは、自社で製造した包丁のみですが、週1件くらいのペースで依頼をいただきます。研磨専用の機械を使い、新聞がすーっと切れるくらいの切れ味にしてお戻しします。今回は中川政七商店で販売する『最適包丁』で、1年半ほど使ってくださっているようです。『最適包丁』の依頼は他の包丁に比べて多いんです。長く大切に使いたい方が多いように感じて、作り手としても嬉しく思います」
「当社では、専用の研磨機で研ぎ直します。別の金物屋さんで研いでもいいですか?っていうお問い合わせがたまにあるんですけど、研がれる方の実力が分からないので、単純に『いいです』とは言いづらいんです。現状よりはよくなるとは思いますけど、購入した状態に近しいところまでいくかどうかは分かりません。やっぱり購入したメーカーに研ぎ直しに出すのが1番いいと思います」
BEFORE
AFTER
研ぎ直した直後の包丁。新聞がすーっと切れるくらいの切れ味にして戻していただけます。
日々のお手入れのコツ
「お客様がご自身で研ぐ場合は、側面は触らず、先端部分のみ研ぐのをおすすめします。毎日3食分の調理をされる方でも、2か月に1度研げば十分。慣れていない場合は、砥石に押し当てるのではなく、引きながら当てると刃先をつぶしにくくなります」
「なるべく傷めないように使うためには、木製かゴム製のまな板を使うのが1番です。食材を切るときは、スライドさせながら切るのも長持ちのコツ。スライドする方向は、押しても引いても、どちらでも構いません」
「洗う際は、スポンジの柔らかい面を使ってください。スポンジで挟んで横に滑らせるように洗う方が多いと思いますが、背から刃先に滑らせるように洗うと、摩耗しづらくなります。
とは言え、傷付くのを恐れてそっと洗い食材が残ってしまうと、錆びに繋がってしまいます。洗った後はしっかり水気をふき取っていただけるとなおよいです。
ちょっとしたことで、刃持ちが変わるので、できそうなところから試してみていただけると嬉しいです」
<関連商品>
最適包丁
<取材協力>
株式会社スミカマ
文:上田恵理子
写真:阿部高之