【暮らすように、本を読む】#14「ボタニカル・ライフ – 植物生活 -」

自分を前に進めたいとき。ちょっと一息つきたいとき。冒険の世界へ出たいとき。新しいアイデアを閃きたいとき。暮らしのなかで出会うさまざまな気持ちを助ける存在として、本があります。

ふと手にした本が、自分の大きなきっかけになることもあれば、毎日のお守りになることもある。

長野県上田市に拠点を置き、オンラインでの本の買い取り・販売を中心に事業を展開する、「VALUE BOOKS(バリューブックス)」の北村有沙さんに、心地好い暮らしのお供になるような、本との出会いをお届けしてもらいます。

<お知らせ: 「本だった栞」をプレゼント>

ご紹介した書籍をVALUE BOOKSさんでご購入いただくと、同社がつくる「本だった栞」が同封されます。買い取れず、古紙になるはずだった本を再生してつくられた栞を、本と一緒にお楽しみください。詳細は、VALUE BOOKSさんのサイトをご覧ください。



いい加減に愛したい。ベランダで育む、都会の植物生活

住宅街を歩く時、ふと見上げた先に鮮やかな花々が飛び込んでくることがある。それはベランダから覗く鉢に詰め込まれた、ちいさな自然。鉢から飛び出さんばかりに伸びる幹や、季節によって顔ぶれが変わる花は、どこか懐かしく、味のある景色として街中を賑わせてくれる存在です。

そんなベランダ園芸の日常をエッセイにしたのが、本書『ボタニカル・ライフ』。書き手は、小説家やラッパー、タレントとして活躍するいとうせいこう氏。庭のない都会暮らしを選び、ベランダで植物生活を楽しむ人のことを「ベランダー」と称し、約3年間の季節ごとの植物との戯れが描かれます。小説家ならではの表現力とユーモアのある文体で、写真がなくとも、その時々のベランダの様子がありありと眼に浮かんできます。

朝顔やモミジ、ヒヤシンスなど素人にも馴染み深い植物も登場しますが、ベランダーの手にかかれば、食べ終わった野菜の種すら、愛おしい植物のひとつ。そして時には、道で拾ったアロエの破片や、スーパーで買ったハーブも、鉢に植えて育ててみる。水草がほしかっただけなのに、気づけば金魚の世話に追われている、なんてことも。子どものような純粋な好奇心で、植物(と、たまに魚)と触れ合う、ありのままのボタニカルライフは、園芸書として読むには役に立ったり、立たなかったりするけど、とにかくおもしろいし、なぜか癖になります。

「どんな冷たい人間も凶暴な輩も等しく植物を育てる。いい加減で自己中心的な人間も、まめで思いやりにあふれた人間もやはり等しく咲いた花に目を細める」

本書のなかで語るように、著者も植物に対して甲斐甲斐しく世話を焼くというより、いい加減だし、うっかり枯らしてしまうこともしばしば。それでも一喜一憂しながら、人間にはコントロールできない自由さと、それでも繰り返し命をつなぐ植物の力強さを、都会の角で楽しんでいます。まるで我が子を愛するように、時には恋人に寄り添うように、いい加減に愛する植物との暮らしは続く。

ご紹介した本

いとうせいこう『ボタニカル・ライフ – 植物生活 -』

本が気になった方は、ぜひこちらで:
VALUE BOOKSサイト『ボタニカル・ライフ- 植物生活 – 』

ご紹介した書籍をVALUE BOOKSさんでご購入いただくと、同社がつくる「本だった栞」が同封されます。買い取れず、古紙になるはずだった本を再生してつくられた栞を、本と一緒にお楽しみください。詳細は、VALUE BOOKSさんのサイトをご覧ください。

VALUE BOOKS

長野県上田市に拠点を構え、本の買取・販売を手がける書店。古紙になるはずだった本を活かした「本だったノート」の制作や、本の買取を通じて寄付を行える「チャリボン」など、本屋を軸としながらさまざまな活動を行っている。
https://www.valuebooks.jp

文:北村有沙

1992年、石川県生まれ。
ライフスタイル誌『nice things.』の編集者を経て、長野県上田市の本屋バリューブックスで働きながらライターとしても活動する。
暮らしや食、本に関する記事を執筆。趣味はお酒とラジオ。保護猫2匹と暮らしている。

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