キッチンばさみ「とりあえず」から乗り換えるなら、この一本
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こんにちは。細萱久美です。
家にいる日は台所に立たない日はありませんが、手にする頻度が一番多い台所道具は、キッチンばさみかもしれません。
使用時間にしたら短いですが、使用回数が多いのと、毎日必ず使っている気がします。無いと困る調理道具の一つです。
ただし調理と言えるのは海苔や昆布を切る程度で、大かた袋を切ることに使っています。現代では袋に入っている食材が相当多いこともあり、昔に比べてどこの家庭でも必需品になっているかもしれません。
手で切れる袋もありますが、乾物など使い切らない場合は綺麗に切ってゴムなどで留めるのがささやかなこだわり。
またレトルトやラーメンのスープ、最近よく使う素材では、缶ではない紙箱入りのホールトマトやホールコーンなど、液体が跳ねる可能性がある包装資材はハサミで切ります。
そうすると自ずとハサミが汚れるので、洗うことになります。頻繁に洗われるというのが、文具や裁縫など他の用途ばさみと違う特徴でしょうか。
一度買ったらあまり買い換えない印象のキッチンばさみ。私の実家のハサミも恐らく40年くらい使い続けている気がします。
それも使い勝手が良い証拠。使いやすいハサミを選べば、よほどヘビーに使わない限り半永久的に使えるのではないでしょうか。
キッチンばさみを選ぶ主なポイントは、
切れ味
手入れのしやすさ
握りやすさ
の三点です。
素材は、主にステンレス製とセラミック製があります。ステンレスは金属なので丈夫で切れ味が良く、刃先が分厚ければカニの殻など固いものもカットできます。
オールステンレスなら洗浄や消毒もしやすく衛生面も安心。ただし金属なので、やはり濡れたまま長時間放置は避けたいところ。
セラミックは陶器の一種で錆びることなく、ステンレスに比べて軽いので、長時間使用しても疲れにくいのが特徴です。ただあまり硬い食材をカットするのには向きません。
切れ味だけで選ぶならステンレスに軍配かもしれませんが、何をどんな頻度で切るのかを考慮して選ぶのが良いのでは。
手入れのしやすさとは、洗いやすく乾かしやすいこと。衛生的に使いたいのでこの点はマストと言えます。
ネジ部分に汚れや水が溜まりやすいので、ネジを外して両方の刃を分解できるタイプは優れもの。
私は食洗機は使いませんが、最近は食洗機対応も選ばれやすい重要ポイントとなっています。
握りやすさは、使いやすさに直結するので、手に馴染むか必ずチェックします。食材を切るのにキッチンばさみを長時間使う方は特にグリップのフィット感を確かめましょう。
ものによって、グリップの中心にギザギザのくぼみがありますが、キャップオープナーや栓抜きとして使うことができ、グリップに突起がついていれば、栓抜きや缶開けに役立ちます。
アウトドアでも便利なタイプかと思います。実家のはさみもこのタイプで、信州に親戚が多いせいか、子供の頃はよくクルミの殻剥きの手伝いに使っていた記憶があります。
私がここ数年愛用しているのは、「鳥部製作所」のキッチンスパッターというハサミです。
こちらは、金属と刃物の産地として有名な新潟県三条市のメーカーです。業界でもいち早くステンレス製の鋏の製造を始め、キッチンスパッターはメーカーを代表する製品です。
燕三条は、年に1回工場の見学や体験ができる「燕三条 工場の祭典」が今年で7回目を数えすっかり恒例行事になっていますが、イベントとリンクした産地紹介書籍「燕三条の刃物と金物」(中川政七商店編 平凡社出版)の編集に携わった関係で、鳥部製作所さんにも訪問する機会がありました。
それが、以前から気になっていたキッチンスパッターを入手したきっかけとなりました。
このキッチンばさみは、オールステンレス。ネジ部で簡単に取り外しが出来るので、確実な洗浄と完全に乾かすことが可能で、食洗機にも対応しています。
熟練の職人が一つ一つ調整をして仕上げるので切れ味も文句なし。硬い甲羅も滑らず、さらに繊細な野菜も滑らかに切ることができる絶妙な波刃の設計です。
グリップも持ちやすくて重さも程よく、機能的に優れているのはもちろんのこと、機能から生まれたデザインも美しいのです。
グリップ部には棒材を使用するなど、実は製造工程の効率も重視された作りになっているのが、結果的に機能や美しさにも繋がっているという点も、産地の専門メーカーならでは。
製造背景を含めてトータル的にお気に入りの定番調理道具です。
鳥部製作所・キッチンスパッター
株式会社鳥部製作所
新潟県三条市田島1-17-11
鳥部製作所 HP
細萱久美 ほそがやくみ
元中川政七商店バイヤー
2018年独立
東京出身。お茶の商社を経て、工芸の業界に。
お茶も工芸も、好きがきっかけです。
好きで言えば、旅先で地元のものづくり、美味しい食事、
美味しいパン屋、猫に出会えると幸せです。
断捨離をしつつ、買物もする今日この頃。
素敵な工芸を紹介したいと思います。
文・写真:細萱久美