【デザイナーが話したくなる】化粧箱

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中川政七商店の化粧箱

毎日のスキンケアやお化粧って、私はダイニングテーブルかリビングのテーブルでするけれど、そういえばみんなどこでお化粧してるんだろう・・・。
という岩井さんの疑問からはじまった化粧箱作り。

スタッフに聞いたところ、まずは「洗面台」派と「リビング・ダイニング」派の2つに大きく分かれたということ。
洗面台は収納場所もあるし、大きな鏡もあるので、今回は「リビング・ダイニング」派が使うことを設定して考えはじめました。

母親の世代には、多く使われていた鏡台も、最近の住宅事情で自分達の世代では少なくなってきました。
さらにお婆ちゃんの時代、さらにそれよりも遡ると、化粧台はコンパクトで機能的な小さな箱型で持ち運びが出来ました。
その箱型の上に手鏡が置いてあるものが主流だったのです。



働く女性も多くなり、テレビを見ながら、洗濯機を回しながら、子供が準備しているのを見ながら、など「ながら準備」をする人が多くなってきた現代に、昔の持ち運べる箱型のものの方が合うのでは、と考えました。


実際、私も小さな子供がいるので、見守りながら声をかけながら朝の準備をします。
夜は、リビングでゆっくりテレビを見ながら、スキンケアでリラックス。
と、ここで気づいたのが、朝はダイニングテーブル、夜はリビングと、場所が違うのです。
自分一人でも場所が違うのだから、みんなそれぞれ使う環境が少しずつ違うのではないでしょうか。

この環境が少し違うことで、一番私が面倒だなと思っていたのが鏡問題。
座る場所がダイイングでは椅子、リビングではカーペット(床)になると、それに合わせたテーブルに鏡を置いた際、毎回自分が鏡に合わせて体勢を調整しないといけない。
ダイニングテーブルでは調度良かった鏡の角度も、リビングでは顔の位置を下げないといけないんです。
こういう思いしないですか?とみんなに聞いたら「ある!すごくわかる!」と即答だったんです。

そうして化粧箱の開発がスタートしました。



今回一番こだわりたかった鏡のイライラ解消は、3つの解決案を盛り込みました。
鏡は蓋の裏に取り付けているので、スライド式で引き抜いたら、ひっくり返して使います。






鏡へのこだわりその1:「角度を変えることができる」

みんなが「それわかる!」と即答だった、鏡の角度に自分が合わせるというイライラ。
そこでよく使われるシーン「椅子に座る」「ソファーに座る」「床に座る」のパターンに合わせて角度を変えれるようにしたんです。


この角度も平均身長や椅子とテーブルの関係、平均的な高さを想定して計算しました。



鏡を見た時に、自分の顔がぴったり見えると、それだけで気持ちがいいんですよね。






鏡へのこだわりその2:「汚れが付きにくい」


化粧品を使った手で鏡に触れると、あっという間に鏡が指紋だらけになりませんか。
せっかく綺麗になるために見ているのに、鏡が汚れていると残念な気持ちに。
多くの鏡は、ぎりぎり端まで鏡なんです。そこで余白をもたせたサイズにして、持った時に汚れないようにしました。






鏡へのこだわりその3:「滑り落ちにくい」


朝バタバタしてるときに、鏡を持とうとしてスルッと落ちそうになったことは、ありませんか。
今回の差し込み方式の蓋に鏡を付けることで、自然と持ち手ができて、しっかりと握ることが出来るんです。
手鏡としても持ちやすいし、鏡をセットする時や蓋としての開閉時、ヒヤッとする気持ちから開放されました!




鏡の角度が解決できたら、佇まいはなるべくシンプルに、主に天然の素材をいかしたものを検討しました。
風合いの良さと固くて丈夫なブナ材にたどり着くまで、いくつもの素材で試作して乾燥や強度を試しました。




形は、A4サイズ以上の本が入る本棚に入って、収まりの良いサイズと形を考えました。





化粧品の量は個人差があるので、誰もがすべての物が入るというより、これくらいで調度いいねと思える容量にしました。
私なら化粧水、乳液、クリーム、ヘアオイルを立てて入れて、小物立てにリップクリーム、口紅系、ハンドクリーム、メイクブラシやビューラーを入れています。
引き出しは、コンパクトやアイシャドウ、チーク、ヘアゴムなど細々したものも入れています。




持ち手をシンプルなものにして、収納したら化粧箱とはわからないくらいのデザイン。
毎日のことだから、取り出しやすい場所に置いてもらいたいし、持ち運べて便利だけど、それでいて元に戻せばインテリアの邪魔にならないさりげなさを目指しました。




今回、たくさんの時間を費やし、たくさんの試作に付き合っていただき、丁寧に最後まで仕上げてくださったのは、福井県鯖江市の「ヤマト工芸」さん。





1500年の歴史をもつ越前漆器の産地で永く漆器の木地作りをされてきた会社です。
その木工技術をいかした職人の手仕事で化粧箱が作られています。



お化粧やスキンケアの時間は、特別な自分だけの時間でもあります。
現代の忙しい女性に、お気に入りの場所で少しでも快適な時間が過ごせるお手伝いができたら嬉しいです。
(最初に作った自作のダンボールの試作品は、今は娘のお気に入りになっています。)


企画担当:岩井


<掲載商品>
化粧箱

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