「堀田カーペット」のご自宅を訪問。お風呂とトイレ以外、すべてカーペットの暮らしとは?

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大阪は堺に、お風呂とトイレ以外、リビングもキッチンも寝室も廊下も全てカーペット、というお家があります。

しかも予約制で見学も受け付けているそうです。

「快適に暮らすのに、カーペット以外を選ぶ理由がなかった」と語る堀田さんのご自宅にお邪魔して、カーペットのある暮らしの魅力を伺いました。

実は梅雨どきこそ、おすすめなのだそうですよ。暑くないのでしょうか?

堀田将矢(ほったまさや)さんが大阪・堺に一軒家を建てたのは2年ほど前。男の子2人、女の子1人と奥さまとの、5人暮らしです。

「カーペットの良さを身をもって知っているのは、実家がカーペット敷きだったというのも大きいと思います。大学通いで一人暮らしを始めた時に、なんとなくフローリングがかっこいい気がしてそういう物件に住みましたが、実家に帰るとやっぱり、落ち着きましたね」

堀田さんのご実家は1962年創業のカーペットメーカー「堀田カーペット」。

全国シェアの8割を誇るカーペットの一大産地・大阪の中でも糸から開発できる企業としてその名を知られ、有名ブランドのブティックや高級ホテルの内装にも携わっています。

ご自宅と一緒に見せていただいた「堀田カーペット」の製造現場。一度に何百という糸巻きから、奥の織機へ糸が送られる。いいカーペットは糸使いが鍵、と堀田さん
ご自宅と一緒に見せていただいた「堀田カーペット」の製造現場。一度に何百という糸巻きから、奥の織機へ糸が送られる。いいカーペットは糸使いが鍵、と堀田さん
カーペットの織機。堀田カーペットは18世紀イギリスの産業革命の頃に世界で初めて機械化されたカーペット織機「ウィルトン織機」を代々使っている
カーペットの織機。堀田カーペットは18世紀イギリスの産業革命の頃に世界で初めて機械化されたカーペット織機「ウィルトン織機」を代々使っている
堀田さんにご案内いただいた生地のデッドストック。日々様々な質感・デザインが開発されている
ご自宅と合わせて見せていただいた工場のデッドストック。様々な質感・デザインのカーペットが開発されている

堀田さんはその3代目。幼い頃から暮らしの中に当たり前にカーペットがありました。

「家族を持って家を建てようとなった時から、自宅を公開することは決めていました。今では年間100人くらいの方が来てくださっています」

お風呂とトイレ以外すべてカーペットの床にして、ご自宅を一般公開する。まず、日本中を探しても堀田さんが史上初なのではないでしょうか。

家業であるカーペットを普及させるためと言えばわかりやすいですが、堀田さんの語る言葉からはそれだけでない、深いカーペットへの愛情や信頼が感じられます。

「はじめはカーペットとの比較対象としてフローリングの床も一部入れようか、と考えていたのですが、結局選ぶ理由が見つかりませんでした。カーペットが一番いい、となったんです」

そこまで思わせるカーペットの魅力とは、一体どこにあるのでしょうか。

答えを探るべくご自宅を訪ねると、玄関のドアを開けて、靴を脱いだ瞬間からもう、床がカーペットです。廊下も、そこからつながるリビングも。

堀田カーペット

どうぞ、とすすめられてリビングの床にそのまま座ります。思えば床に直接座りながらインタビューするのは初めてかもしれません。

大阪のこの日の最高気温は29度。外はむっとする暑さです。カーペットというと暖かいイメージですが、不思議と座っていても、ちっとも暑苦しく感じません。むしろ、手で触れるとひんやりとするような。

触れるとひんやりとすら感じるカーペットの表面
触れるとひんやりとすら感じるカーペットの表面

「これはウールカーペット、つまり羊毛が織り込まれています。カーペットにも作り方、素材でいろいろな種類があるんですが、一般家庭の床材には、ウール織りのカーペットが一番適しています。

羊毛には調湿機能があって、部屋全体の空気を一定に保ってくれるんですよ。夏は冷たい空気を、冬は暖かい空気を均一に保ちます。だから湿度の高い日本の夏や梅雨にもさらっとして快適なんです。エアコンの効きもよくなるので、省エネにもなりますしね」

そう話す堀田さんの足元は裸足です。気持ち良さそう‥‥普段はお子さんたちも裸足で過ごすことが多いそうです。私も足裏でそのさらっとした質感を確かめてみたいところでしたが、取材中に人の家で靴下を脱ぐわけにもいかないのでここはぐっと我慢。

それにしても、小さなお子さんたちがいてカーペットをきれいな状態に保つのは大変ではないでしょうか。私も3人兄弟で、子どもの頃はしょっちゅう食べこぼしたりジュースを倒して畳にシミをつくっていましたが‥‥

「掃除はとっても簡単です。ちょっと見ててくださいね」

と、堀田さんがおもむろに、テーブルの上のお茶を‥‥カーペットに!

堀田カーペット

わあ、と血の気が引く私の横で、堀田さんはゆったり。そばにあったふきんでそっと押さえたら、さっきまでつるんとカーペットの上に乗っかっていた大きな水滴が、きれいになくなっていました。跡もほとんど見えません。

「羊毛は汚れがつきにくいんです。こぼした直後なら、乾いた布で吸い取ればOKです。水っぽい汚れならお湯を含ませたふきんをゆっくり当てると、よりきれいに取り除けます。ウールは髪の毛と一緒、タンパク質でできています。だから水溶性の汚れなら、お湯だけでも落ちやすいんですよ」

気になって普段のお掃除の仕方を伺ってみると、あまり汚れに過敏にならなくても大丈夫、と堀田さん。汚れはついたその時に6割とっておいて、あとは普段の掃除の時に掃除機で吸い取れば、カーペットの中に織り込まれている「遊び毛」が汚れを一緒にからめとってくれるそうです。

お掃除の様子を見せてくださいました
お掃除の様子を見せてくださいました
掃除機の中からつまみ出されたのはカーペットの遊び毛。これに汚れやホコリがからめ取られる
掃除機の中からつまみ出されたのはカーペットの遊び毛。これに汚れやホコリがからめ取られる

「一時期、カーペットはアレルギーによくない、という誤解を招く情報が流れていましたが、むしろ逆です。一本一本の毛がホコリをからめ取るので、人が動いた時にもホコリの舞い上げが起こりづらい。カーペットが部屋の空気をきれいにしてくれるんです」

掃除で汚れやホコリを遊び毛と一緒に取り除いても、掃除機をかけるくらいで生地が痩せることはないとのこと。一度敷きこんだら15年、日焼けの心配のない部屋なら30年は持つそうです。

丈夫で、汚れがつきにくく落ちやすい。ちょっとお話を伺うだけで、目からウロコがポロポロ落ちてきます。ウールやカーペットについて、知らないことばかりです。

「せっかくなので、他のスペースもご案内しますね」

すっかりくつろいでしまっていた腰を上げて、お家全体を見せていただきました。

脱衣所の際までカーペット敷き
脱衣所の際までカーペット敷き
お風呂場とキッチンの間をつなぐ収納スペース。人が歩くところにあわせてカーペットがカットされて敷き込まれている。こういうカスタマイズができるのもカーペットの良さ、と堀田さん
お風呂場とキッチンの間をつなぐ収納スペース。人が歩くところにあわせてカットされたカーペットが敷かれている。こういうカスタマイズができるのもカーペットの良さ、と堀田さん

キッチンの横を通りがかると、カウンターの後ろで奥さまが娘さんと遊んでいるところでした。取材に気を使ってくださっていたようです。向き合って座っていたキッチンの床も、もちろんカーペット。

堀田カーペット

「こういうのも、カーペット敷きならではですね。空間の使い方が自由になるんです」

確かに台所の床に直に座って遊ぶことは、他の床材ではちょっとイメージできません。
階段を上がってお子さんのお部屋や寝室のある2階へと向かいます。

階段ももちろんカーペット敷き。見た目にもきれいなようにと、段の部分までカーペットでくるんである
階段ももちろんカーペット敷き。見た目にもきれいなようにと、段の部分までカーペットでくるんである
子ども部屋の様子
子ども部屋の様子

「照明のスイッチは、床に座ることを想定して低い位置につけています。ここの窓も、床座りでちょうど向こうの緑が見えるようになっているんですよ」

言われるままに床に座ってみると、確かに目線の先の窓に、きれいな木々の緑がよく映えています。

堀田カーペット

「こうして床に座ると、目線が低くなるのでその分空間を広く感じられるんです。そこは畳と似ていますね」

うっかりするとゴロン、と寝転がってしまいそうになるのを押さえて、再びリビングへ。すると次々に「ただいまー」の声が。2人の息子さんが帰ってきて、あっという間に堀田さんと取っ組み合いの遊びが始まります。

堀田カーペット
堀田カーペット
堀田カーペット

かなりアクロバット。ですがカーペットがクッションになってくれるので、少々元気に遊んでも平気なのだそうです。

丈夫で、汚れがつきにくく落ちやすく、空間が広く使えて子どもたちが走り回れる。堀田さんの家で過ごすうちに、カーペットのある暮らしがどんどんうらやましくなってきました。

「ここで僕は、暮らしの提案をしています。メーカーとしてものづくりで人の暮らしを豊かにしたいと考えているのはもちろんですが、何より個人としてどういう暮らしをしたいかを考えたら、自然とカーペットを敷き込んだ家になりました。カーペットは、暮らし方を変える力を持っていると思います」

堀田さんのお家を見学に来た人の中から、いつか同じように全室カーペット、というお家を建てる人が出てくるかもしれません。カーペットデビューに、何かコツなどあるでしょうか。

「色で迷ったら、無地よりも汚れが目立ちづらい、混色のものがおすすめです。きれいに使わなきゃ、と気負いすぎずに付き合えると思います。

もし、リフォームの時に一部屋だけカーペットの床にするなら、ぜひリビングをおすすめします。寝室にという方が多いのですが、暮らしの変化をはっきり実感できるのは、リビングです。

張替えは一般のお家なら1日でできますよ。一人暮らしの方や、いきなり床に敷き込むのはハードルが高いな、という方は、まずはラグでお部屋の一部から取り入れてみるのもいいと思います」

最後には色、おすすめの場所まで、しっかりアドバイスいただきました。

家の中の全てが暮らしのショールーム。床が変わるだけでこんなにも暮らし方が変わるのか、と驚きと「うらやましい」の連続の1日でした。

見学は事前予約制でどなたでも参加できるので、一度訪ねてみてはいかがでしょうか。堀田さんの愛情たっぷりの解説と共に、ご家族との何気ない暮らしぶりからカーペットの魅力がひしひしと伝わって来るはずです。

<取材協力>
堀田カーペット株式会社
http://www.hdc.co.jp/

*堀田さんのご自宅見学は上記HPのお問い合わせページから申し込みできます
*工場の見学も事前予約で可能です

<関連商品>
COURT(堀田カーペット)
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文・写真:尾島可奈子

*こちらは、2017年6月14日の記事を再編集して公開しました

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