現代でも役に立つ一生物の着物入れ。老舗つづら店に聞く「つづら」の魅力

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日本人は古くから、ふだんの生活を「ケ」、おまつりや伝統行事をおこなう特別な日を「ハレ」と呼んで、日常と非日常を意識してきました。晴れ晴れ、晴れ姿、晴れの舞台、のように「ハレ」は、清々しくておめでたい節目のこと。こちらでは、そんな「ハレの日」を祝い彩る日本の工芸品や食べものなどをご紹介します。

江戸時代からの嫁入り道具「つづら」

日本のおとぎ話に出てきそうな「つづら」。実際に目にしたことがない方も多いのでは?つづらは元々、ツヅラフジのつるで編んだ衣服などを入れる蓋つきのかごのこと。のちに、竹やひのきで編まれたかごの上に和紙を貼り、柿渋や漆などを塗ったつづらがつくられるようになりました。

元禄時代に葛籠屋甚兵衛(つづらや・じんべえ)という江戸の商人が婚礼の道具としてつづらをつくったことで庶民へと広まったそうです。

つづら製造の最盛期は明治時代から大正時代。呉服の町として名高い東京・日本橋にはつづらかごの職人も多かったそうですが、今では人形町の「岩井つづら店」たった1軒だけに。文久年間に創業したこちらは、元々は人を乗せて人力で運ぶ駕籠屋(かごや)だったそうですが、いつしかつづらをつくるようになり、現在では6代めの岩井良一さんがつづら屋をつとめています。

天然の素材だけでつくられるからこそ、長持ちする。「岩井つづら店」のつづらづくり

岩井つづら店のつづらづくりを見せていただきました。その工程を追ってみると材料の素材は天然のものばかり。そして、工程の一つひとつがやはり職人の手作業です。

つづらの下地となる竹かご。茨城県や新潟県・佐渡の職人さんに協力してもらって編んでもらっているそう
6代目岩井良一さん。海藻である「ふのり」を刷毛で塗り、竹かごに和紙を貼ります
和紙を張ったあと、独自の道具で表面をシャカシャカと擦ります。和紙がはがれないように、かご目がしっかり出るように
大きなつづらの補強には、古い蚊帳生地と和紙で裏打ちしたものを貼ります。この蚊帳は古道具屋さんから仕入れているものだそう

さまざまな素材で土台をつくったら、この上に防虫・防カビ効果のある柿渋を塗ります。さらに、カシューナッツを原料とした漆を表面に塗ることにより、独特の光沢を持ったつづらができあがります。

そして、嬉しいのがつづらに紋入れ、名入れがオーダーできること。

伝統的な家紋はもちろん、自分なりのマークにも対応してくださるそう(要相談)
こちらは手文庫サイズ。左から、溜(茶)、黒、朱
紋入れ・名入れの様子

一生ものの美しいつづらはお嫁入り道具だけでなく、出産、就職など人生の節目の贈りものにも最適。まさに、ハレの日にふさわしいものですね。着物を収納するような大きなものから小物入れまで、サイズもさまざまなので現代の生活の中でも活躍してくれそうです。

手がかかっているからこそ、オーダーしてから1年待ちということもありますが、今なら数ヶ月待ちで手に入ることも。ぜひご相談ください。古いつづらの修理も受けてらっしゃいます。長く世代を超えて受け継いでいきたい工芸品です。

<取材協力>
岩井つづら屋
東京都中央区日本橋人形町2-10-1
03-3668-6058
http://tsudura.com

文・写真:杉浦葉子

※こちらは、2017年6月18日の記事を再編集して公開しました。

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