ガラスは液体?シークレット工場見学で知った真実

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菅原工芸硝子

こんにちは。さんち編集部の尾島です。

さんちは2018年11月1日、おかげさまで2周年を迎えました!

そこで、編集部が2年間の取材を通して体感してきた、ものづくりの美しさやかっこよさを読者の方に直に感じて欲しい!と思い、シークレットな工場見学ツアーを企画しました。

応募の際の記事はこちら。たくさんのご応募、ありがとうございました!

先日行われたツアーの様子を、そこで出会ったものづくりの現場の熱気を、至近距離から前後編2本立てでレポートします!

晴天の九十九里へ、さんち旅スタート!

11月25日、朝9時の渋谷。

6名の参加者と編集部を乗せてバスは千葉・九十九里へと出発しました。

目指すは菅原工芸硝子株式会社さん。

菅原工芸硝子

年間を通して一般の方の見学やガラス作りの体験を受け付けています。

硝子作り体験の見本
硝子作り体験の見本

さんちでは以前、代表作である「富士山グラス」の製造の様子を取材。そのご縁で今回のツアー企画が実現しました。

富士山グラス
富士山グラス

富士山グラスの取材記事はこちら:「1月9日 成人の日。二十歳に贈る、富士山グラス」

しかし!今回は2周年を記念した「シークレット」な工場見学。

菅原さんのご協力で、通常の見学にはないプログラムを組んでいただけることになりました!

集まった6名の方は「工場見学は初めて」という方もいれば、さんちの記事を見て自ら窯元めぐりをされたことのある方も (嬉しい!) 。

バス内でさんち立ち上げの背景を紹介したり、菅原さんやガラス作りについて一緒に勉強したりしているうちに、あっという間に目的地に到着です。

さんちの取り組みをクイズ形式で紹介したりもしました
さんちの取り組みをクイズ形式で紹介したりもしました

社長自らご案内!

バスを降りた瞬間に感じたのは東京よりもぽかぽかと暖かい空気。

敷地内の様子

実は菅原さん、初代社長が東京から移転先を探していた時、たまたまお花見に来ていた九十九里の温暖温厚な土地柄に惹かれて移転を決めたのだとか。

敷地内にはそのエピソードを象徴するように、桜がずらりと植わっています。

春には花見のお客さんで賑わいそうな、敷地内の桜並木
春には花見のお客さんで賑わいそうな、敷地内の桜並木
みんなでいざ、工場見学へ!
みんなでいざ、工場見学へ!

私たちを出迎えてくれたのは三代目の菅原裕輔社長。

菅原裕輔社長
菅原裕輔社長

シークレット工場見学の目玉のひとつ、社長直々に場内をご案内いただきます!

ガラス作りの原点、るつぼ

まず最初に教わったのはガラス作りに欠かせない「るつぼ」の存在。

るつぼ

液状になった高温のガラスを、職人さんたちはこのるつぼの穴から長い竿に巻き取って様々な姿に成型していきます。

実際の現場では「炉」の中にすっぽりとおさまっているため、るつぼの姿は見えません。

日本独特の形で、今では全国でも製造できるメーカーが1軒のみだそう。猫背なので「ねこつぼ」というかわいい別名も。

大切なガラス作りの原点を守るためにも、菅原さんではできるだけ多くのガラス製品を作り続けることを心がけているそうです。そのアイテム数はなんと5000種にのぼります。

菅原工芸硝子の器

いざ、ガラス作りの現場へ

建物の中に入ると、ぐんと体感温度が上がりました。

中心には大きな宇宙船のような炉が!

どこか近未来的な雰囲気すら感じさせます
どこか近未来的な雰囲気すら感じさせます

丸窓のような部分が、先ほどのるつぼです。

鮮やかなオレンジ色に包まれているのが、るつぼの口部分
鮮やかなオレンジ色に包まれているのが、るつぼの口部分

その明々とるつぼの中で輝くガラスの「素」について、菅原さんが教えてくれました。

ガラスは砂からできている

「これは珪砂 (けいしゃ) と言ってガラスの原料になる砂です」

入口に置いてあった珪砂
入口に置いてあった珪砂

そう、ガラスはもともと、砂からできているのです。

砂があんな透明な物体になると思うととても不思議ですが、何十時間も高温で煮続けることで、液状になっていくそう。

その時にもうひとつ大事なものがあるそうです。それがこちら。

ガラスくず

「製造の工程で生まれるガラスくずです。ガラスのいいところは、溶かせば何度でも再利用できるということ。ですから割れてしまったガラスも、色別に分けて保管して活用しています。

珪砂をガラスに変化させる時にも、ガラスくずを一緒に混ぜることで変化を助けることができるんです」

ガラスは液体!?

砂から液体へ、美しいガラスの器へ。熱によって変幻自在に変化するガラスは、液体か、固体か?という議論も生んでいるそう。

ガラス作りの様子

「え、個体でしょ、と思うかもしれませんが、僕個人としては、ガラスは液体だと思っています。個体のように見えるものは、変化が『止まっているだけ』とも言えますから」

ガラスが液体?にわかには信じられませんが、「確かに」と思わせる姿が、現場にありました。

普段は立ち入れない炉のそばまで接近!

ここからがシークレット工場見学続いての目玉。普段の見学は立ち入れない炉の近くまで、入らせてもらいます!

さっきまではぽかぽか暖かいな、ぐらいだったのですが、近づくほどに暑い、熱い。

そーっと覗いてみます
そーっと覗いてみます

るつぼの中も覗かせてもらいました。煮えたぎるガラスにはこわいくらいの美しさと迫力を同時に感じます。

みんな恐々と覗いて、あつい!と離れます
みんな恐々と覗いて、あつい!と離れます

「冬場は暖かくていいですが、夏場は50度近くに達します。本当にガラスが好きじゃないと、続けられない仕事ですね」

菅原さんがそう誇らしげに語る職人さんたちは、総勢31名。今日は日曜でいつもより人数が少ないそうですが、全体に若い印象です。さらに、うち11名は女性とのこと。

当日も、黙々と作業に集中する女性の職人さんの姿が
当日も、黙々と作業に集中する女性の職人さんの姿が

ずっと見ていると、決まった人が炉に近づいては離れ、近づいては離れ流れるように体を動かしています。先ほどのるつぼから、ガラスの塊を竿に巻き取って次の工程の職人にパスしているのです。

各工程が同時進行で進められていきます
各工程が同時進行で進められていきます

富士山グラスの製造を目撃!

るつぼから取り出したガラスは、空中に向かって空気を吹き込んで自由に成形する宙吹きと、型に入れながら空気を入れる型吹きなどに製法が分かれ、様々なガラス製品に姿を変えていきます。

ガラス作りの様子

中でも難しいのが、菅原工芸硝子を代表する「富士山グラス」。今回のツアーでそのものづくりの様子を見学できるように、製造のタイミングを合わせてくれていました。

厚さなどが記された製造見本を持つ菅原社長
厚さなどが記された製造見本を持つ菅原社長

空気を吹きいれると硝子玉は自然と丸みを帯びますが、富士山グラスは台形です。

富士山グラス

均一な厚みを保ちながら台形の型に合わせて空気を吹き入れることは、相当な技術を要します。現在も3名の方しかできない技なのだとか。

富士山グラス
製造の様子

こうして完成した器はこの後ゆっくりとトンネル型の低温装置で熱を取り、商品が完成します。

成形が完成した富士山グラス
成形が完成した富士山グラス
急に冷えると外側と内側で温度差が出て割れてしまうため、ゆっくりとコンベアー式の低温装置で冷やされます
急に冷えると外側と内側で温度差が出て割れてしまうため、ゆっくりとコンベアー式の低温装置で冷やされます

もうひとつ、菅原さんがアイテムを見せてくれました。

富士山グラスは外部のデザイナーさんとのコラボ商品ですが、実は菅原さんの通常アイテムは全て、職人さんがデザインから考えます。

例えばこの道53年、一番のベテランだという塚本さんが作っているのは、持ち手部分に美しく気泡が入った器。

持ち手部分のガラスの表面に突起をつくり…
持ち手部分のガラスの表面に突起をつくり…
そこにさらに液状ガラスを巻き取る
そこにさらに液状ガラスを巻き取る
凹凸が空気を含み、内側に気泡が現れる
凹凸が空気を含み、内側に気泡が現れる

「こういうものは、ガラスの特性を知り抜いた職人だからこそ思いつけるデザインなんですね」

説明をしながら工程を見せてくれた塚本さん。長年の経験から、常に新しいものづくりに取り組まれています
説明をしながら工程を見せてくれた塚本さん。長年の経験から、常に新しいものづくりに取り組まれています

確かに、職人さんの手にかかればガラスは液体のように変幻自在で、いくらでも形の可能性があるように思えます。

菅原さんではこうした職人の自由な発想を大事にするため、あるユニークな取組みを行っています。

通常は一般の方がまず入れないという、その「ある取り組み」の現場を、今回のツアーでは特別に見せていただけることに。

後編は、ものづくりの深部に迫る「撮影NG」のある場所の見学や、全員初挑戦のガラス作り体験に続きます!

<取材協力>
菅原工芸硝子株式会社
千葉県山武郡九十九里町藤下797
http://www.sugahara.com/

文:尾島可奈子
写真(一部除く):西木戸弓佳

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