「鋼の包丁」の魅力とは。料理好きおすすめの1本からお手入れ方法まで

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こんにちは。バイヤーの細萱久美です。

日頃、奈良と東京を行き来しており、家を留守にすることもままありますが、奈良にいる時はなるべく自炊を心がけています。若かりし頃は料理が趣味という時期もありましたが、今は日常のことに。ただ調理道具は好きで厳選しています。

料理の基本・調理道具の基本といえば、包丁でしょう。他の道具はある程度の代用もありますが、包丁だけはなかなか代用が効きません。

100円ショップやスーパーでも安価なものが売っているので、とりあえずで購入した人も多いのではないでしょうか。

しかし、長く使うことを考えるならやはりそれなりに良い包丁を選ぶことをおすすめします。

切れ味が良く、切り口が綺麗なだけでも料理が楽しくなるのと、仕上がりの味にも実際に差が出てきます。

とは言え、良い包丁を選ぶのも難しいですよね。素材、形などを整理した上で、私のおすすめをご紹介したいと思います。

素材、形、色々ある包丁の種類

デパートのキッチン売り場でも結構な種類があり、木屋や有次のような調理道具専門店だとズラリと並んでいて、ある程度マトを絞らないと途方に暮れてしまいます。

店員さんに相談すると、初めの一本としておすすめされるのは大概「三徳包丁」もしくは「牛刃」だと思います。

三徳は、別名万能包丁と言われ、大きな肉やキャベツなども切りやすい「牛刃包丁」と、様々な野菜を切るのが得意な「菜切包丁」の良いとこ取りをしたものなので、まずは基本の一本に選ぶと良いと思います。

本格調理におすすめ!「鋼」の包丁

次に素材の違いですが、大きくは「鋼(ハガネ)」「ステンレス」「セラミック」があります。セラミックは耐久性がやや劣るので、出来るだけ鋼かステンレスを選びたいところ。

切れ味の良さと耐久性では鋼に軍配ですが、錆びやすいので手入れに少々気を使います。ステンレスは錆びにくく切れ味も合格点。若干研ぎにくいことはありますが、バランスは良いので初心者や料理は気軽に!という方にはおすすめです。

鋼包丁でのトマトの切れ味

私は鋼とステンレスの両方を持っていますが、調理に時間を取れる時は鋼の包丁を使います。切れ味を優先、そして本格的に料理をする気分になります。

ちなみに鋼は、刃金と同じこと。鋼が持つ、堅さと粘りという二つの要素が包丁にたるポイントです。鋼は「焼き入れ」で堅く、「焼き戻し」で粘り強さが出ます。

焼き入れは約800度に加熱してから急冷し堅くする工程。そして、堅いだけだと折れやすい状態の鋼を180度位で再加熱する焼き戻しをすることで折れにくい弾力性を生みます。

私が選んだのは、600年の歴史を持つ堺 打刃物「佐助」

私が愛用している鋼の三徳包丁は、大阪・堺の「佐助」製。「鋏鍛治」と名乗っており、植木鋏や盆栽鋏などの鋏から包丁、小刀など幅広い刃物を作る老舗です。

大阪の堺市は、新潟県燕三条市や岐阜県関市などと並ぶ包丁の主だった産地で、いずれも「打刃物」という「鋼と鉄を打って鍛えて作り出す刃物」で発展してきました。

堺打刃物は600年以上の歴史があり、プロの料理人が使用する和包丁のシェアが圧倒的に高いと言われ、それだけの品質と信頼を維持している産地です。

大阪・堺の鋏鍛治「佐助」

鋼と鉄という事なる金属を合わせる事で、切れ味と耐久性が出るので、この「刃金付け」は打刃物において重要な行程。更に佐助では独自の焼き入れ法で刃の硬度を高めているそうです。

佐助は種類豊富な刃物を作っていますが、現在5代目が一人で製作をしています。伝統的な製法で火を使う工程もありますが、予約で見学も出来ます。私も間近で迫力の鍛造を拝見しました。

職人が作っているのを間近に見たらすっかり欲しくなり、手に馴染む一本を選んで名入れをしてもらいました。名前が入るとマイ包丁という感覚が強くなって、大事に長く使おうと思います。

手入れをしながら一生使える包丁が欲しいとなれば、研ぎやすくて耐久性のある鋼の包丁をまずは一本手に入れてみてください。

大阪・堺の鋏鍛治「佐助」の製作風景
名前の彫られたマイ包丁

鋼の包丁のお手入れ。サビないためのコツ

気になる錆びやすさについては、料理中も水分をこまめに拭き取りながら使うことで避けられます。ちなみにステンレスも金属なので、水に浸けたままにすれば錆は出るのでご注意を。調理中の板前さんを目の前で見る機会があると、こまめにふきんで包丁やまな板を拭き取っています。

清潔な調理は、美しい一皿を作る気がするので、自分も心がけています。拭き取りには私は「晒し」を使っていますが、薄手でかさばらず便利です。

包丁を晒でふき取る

ちょっと錆が出た場合は、市販の錆落としで表面を軽く磨けば大丈夫。
切れ味が落ちてきたら研ぐ必要がありますが、それはステンレスでも同じこと。

慣れてしまえば、扱いはさほど難しくないと思います。包丁に限らず、台所道具は使うことが一番のお手入れ。ポイントを押さえて使い、そして手入れをすることで自分の手にしっかり馴染んでいくと感じます。

<紹介したお店>
佐助
大阪府堺市堺区北清水町3-4-20
http://www.sasuke-smith.com/
※不定休のため、ご訪問の際は事前のご連絡がおすすめです。

細萱久美 ほそがやくみ

元中川政七商店バイヤー
2018年独立

東京出身。お茶の商社を経て、工芸の業界に。
お茶も工芸も、好きがきっかけです。
好きで言えば、旅先で地元のものづくり、美味しい食事、
美味しいパン屋、猫に出会えると幸せです。
断捨離をしつつ、買物もする今日この頃。
素敵な工芸を紹介したいと思います。

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文・写真:細萱久美

*こちらは、2019年8月21日公開の記事を再編集して公開しました。

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