「アルミの雪平鍋」が和食に最適な理由。上手に選べば長年使える相棒に
こんにちは。細萱久美です。
若かりし時、フードコーディネーターなど食の仕事に憧れた時期もありましたが、今は単なる美味しいものが好きな大人になりました。
この歳になると量より質で、なるべく良い素材をシンプルに味わう料理が好みです。外食では海外の食も色々試したいのですが、自炊は和食が中心です。
和食の基本と言えば、「出汁」。
汁物、煮物、おひたし、うどんなど出汁のきいた料理はしみじみ美味しいと思います。出汁を引いたり、煮る・茹でるも和食の基本と言えますが、道具として最適なのは、アルミ製の雪平鍋です。行平鍋とも言い、どちらも正解だとか。
雪平鍋の豆知識あれこれ
雪平鍋は底が丸く胴が上に広がっているので、火にかけると液体がうまく対流するので、煮炊きを中心とした和食をつくるのに最も適している訳です。
昭和初期の一般家庭では、伊賀焼の行平鍋があり、七輪などでお粥や煮物を作っていたとか。昭和20年代中頃になると、安価なアルミ鍋が一気に普及したそうです。
粥を炊くと米が雪のように見えるとか、槌目の模様が雪のように見えることから雪平鍋の字が当てられたという説があります。
槌目があるのは製造工程で出来る跡。丸いアルミの板を叩いて鍋の形に作っていきます。叩く理由は、表面積が広がって熱伝導が良くなる為と、叩くことで強度が上がる為です。
海外製の非常に安価な雪平鍋はプレス加工で模様を付けているだけのものも多く、それだと強度面で劣ると言えます。
特に和食料理屋の厨房でもよく見かけ、料理人にとっても欠かせない料理道具の一つです。プロが取っ手の無い丸鍋とヤットコを使いこなしているのをみると憧れますが、家庭ではやはり取っ手ありが安全で使いやすいと思います。
サイズは家族の人数に合わせて
アルミよりも更に熱伝導の良い銅鍋も見た目の美しさに惹かれますが、やはり高価であることと美しさを保つお手入れが必要です。
そう思うと、十分に熱伝導も良く、軽くて、比較的廉価なアルミの雪平鍋はサイズをいくつか揃えたくなるほど使い勝手は良いものです。
サイズとしては、一人か二人暮しなら15センチと18センチ、三人以上なら21センチもあると良いかと。二人暮らしなら、15センチで味噌汁、18センチで青菜を茹でるなり、煮物を作るなりのイメージです。
21センチ以上の大きな鍋は、家庭のガスコンロサイズと合いにくく、必要な対流が生まれない可能性があります。
私は少し小さめの14センチと15センチ、21センチを持っています。14センチはキリッとした片口があるので、ミルクパンとしても使いマグカップに注ぎやすく気に入っています。
ちなみに弱点としては、酸やアルカリに弱いので、酢やワインなどを加えて煮るには向きません。また泡立て器などの金属の調理道具も苦手なこともあり、こんな理由からも西洋料理より和食向きであると言えます。
あと、普及の進むIHで使えない素材でもあるのですが、ガスコンロ用の鍋類をIHでも使えるようにする便利な金属板も販売されているそうです。
新生活を期に、自炊をスタートされる方にもまずは雪平鍋を一つ持ってもらいたいなと思います。無理せず「一汁一菜」からでも良いと思います。
選ぶときには、なるべく伝統的に槌目の打ち込まれた雪平鍋が、長く使えておすすめです。
細萱久美 ほそがやくみ
元中川政七商店バイヤー
2018年独立
東京出身。お茶の商社を経て、工芸の業界に。
お茶も工芸も、好きがきっかけです。
好きで言えば、旅先で地元のものづくり、美味しい食事、
美味しいパン屋、猫に出会えると幸せです。
断捨離をしつつ、買物もする今日この頃。
素敵な工芸を紹介したいと思います。
文・写真:細萱久美
*こちらは、2019年7月10日の記事を再編集して公開いたしました。