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小石原焼とは

特徴と歴史に見る、「用の美の極地」

小石原焼

日常使いのうつわでありながら、柳宗悦らが「用の美の極地」と称えた小石原焼。

素朴かつあたたかな持ち味を生かしながら、現代的な作風も取り入れている。そんな小石原焼の特徴、歴史とは。

共に取り上げられることの多い小鹿田焼との関係性も紐解きながら、その魅力を追う。

小石原焼とは?

小鹿田焼

小石原焼とは、福岡県朝倉郡東峰村の小石原地区で作られる陶器のこと。東峰村は、平成の大合併により小石原村と宝珠山村が合併して生まれた村で、原生林に囲まれた自然豊かな土地である。

その中でも小石原地区は、修験道で知られる霊山・英彦山 (ひこさん) の麓、標高1000メートルの山々に囲まれたおだやかな盆地にある。この地区の山々からは赤土が取れ、これが小石原焼の原料となった。

ここに注目 小鹿田焼とは「兄弟窯」

この柔らかな赤土は、飛び鉋 (かんな) 、刷毛目、流し掛けといったその独特な技法を生むのに適した上質な陶土である。幾何学的でモダンな小石原焼の独自の技法は、県を隔てた隣町である大分県日田市の小鹿田焼にも伝わり、現在では同じ技法を祖とする兄弟窯として知られている。

◯小鹿田焼と小石原焼の違いは?

先に焼き物づくりが始まったのは小石原。黒木十兵衛が大鶴村に小石原焼の陶工である柳瀬三右衛門を招き、作られたのが小鹿田焼の始まりとされている。

小石原焼には以下のような代表的な技法があり、小鹿田焼にも受け継がれている。

◯小石原焼の代表的な技法

小石原焼に刷毛で模様をつけている様子
小石原焼に刷毛で模様をつけている様子

・飛び鉋 (がんな)
かんなの刃先を使って、規則的に小さな削り目を入れていく技法のこと。かんなが当たったところに鋭い模様ができる。

・刷毛目 (はけめ)
ろくろを回しながら、白土に刷毛で模様を入れていく技法のこと。丸い皿に用いると菊の花のように見える。

・流し掛け
化粧土や釉薬を掛けた装飾的技法。ろくろを回しながら、表面にスポイトなどで一定の高さから釉薬を垂らすように掛けていく。

・打ち掛け
流し掛けと同じく、化粧土や釉薬を掛けた装飾的技法。ろくろを回しながら、柄杓などで釉薬を浴びせ掛ける。

しかし、兄弟窯である小鹿田焼と小石原焼では違いもある。

まず、小石原の土は柔らかな赤土であるのに対し小鹿田の土はより硬く黒みが強い。また、うつわの生地となる坏土 (はいど) の作り方も異なる。小鹿田焼では年2回の割合で小鹿田の陶工が全員で原土の採掘を行うが、一方小石原焼では、約20年前に集落近郊の採取場に40年分ほどがまとめて採掘された。 粉砕機で粉砕された原土は、こののち水簸 (原土を水を使って濾過すること) を経て、坏土として地区に蓄えられる。

また、窯元の数にも大きな違いがある。窯元数が10軒である小鹿田焼に対して、小石原焼は現在44軒 (※2020年時点)の窯元がある。街道に面している小石原は人の往来が多く、窯元たちが営業に出かける事もあったそう。

小石原にある昔ながらの登り窯
小石原にある昔ながらの登り窯

小鹿田焼が黒木家、柳瀬家、坂本家の3家の世襲制を取っているのに対して、小石原では後跡を継がない長男以外が職人となったり、外部からの職人を雇った事により窯元の数・焼き物の多様性が増していった。

伝統的に一子相伝で受け継がれてきた小鹿田焼と、様々なバリエーションに富んだ小石原焼といえるだろう。

小石原焼に民藝の風をもたらした、バーナード・リーチと柳宗悦

柳宗悦、バーナード・リーチらが小石原焼を「用の美の極地」と賞賛したことは有名な話である。

柳は名もなき職人たちの手仕事により作られた日常的な生活の道具を民藝と呼び、その民藝品の中に宿る美、そして工芸の発展性を見出そうとした。

このように始まった「民藝運動 (1926年〜)」にはイギリス人陶芸家のバーナード・リーチや、同じく陶芸家の濱田庄司らも参加。

運動が広まっていく中で柳やリーチらが小石原地区を訪れ、小石原焼の飛び鉋、刷毛目、流し掛けといった技法に触れ、「用の美の極地」という言葉で賞賛した。

柳らの小石原訪問は、当時のマスコミにも大きく取り上げられ、山間の小さな村で細々と作られていた小石原焼が全国に知られる大きなきっかけとなった。

小鹿田焼の豆知識 日本で初めて国の伝統的工芸品に認定されたやきもの

小石原焼の壺
小石原焼の壺

昭和49年に制定された「伝統的工芸品産業の振興に関する法律」では以下の5つの要件に該当するものを伝統的工芸品として指定している。

1. 主として日常生活の用に供されるものであること。
2.その製造過程の主要部分が手工業的であること。
3. 伝統的な技術又は技法により製造されるものであること。
4. 伝統的に使用されてきた原材料が主たる原材料として用いられ、製造されるものであること。
5. 一定の地域において少なくない数の者がその製造を行い、又はその製造に従事しているものであること。

小石原焼は上記の要件を満たし、1975年、陶磁器では日本で初めて国の伝統的工芸品に認定された。(同年では九谷焼や輪島塗、南部鉄器など35項目指定されている。)

小石原焼の歴史

◯小石原焼の始まりは江戸時代から

1665年、高取焼 (※)の初代、高取八蔵の孫である八之丞 (はちのじょう) が小石原地区中野で質の良い陶土をみつけ、中野皿山に開窯し、茶陶を中心に焼き始める。そのため、初期の小石原焼は中野焼とも呼ばれていた。

※高取焼 (たかとりやき)

福岡県で開窯された焼き物。1600年、福岡の藩主だった黒田長政が西麓に藩窯を開からせたのが始まり。

1682年になると、筑前福岡藩の3代目藩主である黒田光之が肥前藩より伊万里の陶工を招き、中国風の磁器の製法を伝える。そして、すでに小石原にあった窯と交流することで、現代に続く小石原焼の原型がスタートした。

初期はすり鉢やとっくりなどの日常使いの雑器が主に作られていたが、江戸中期になると黄土色のなまこ釉の製品なども作られるようになった。酒器や花器、茶瓶などが作られていたことが、当時の手記から判明している。

◯民藝運動の広がりによって小石原焼の認知度が広がる

明治から昭和の初期までの小石原焼は、当時の小石原村全体で共同の登り窯を用い、大型の鉢や皿や甕、すり鉢などの製作を主としていた。

1929年にバーナード・リーチや柳宗悦、濱田庄司らが小石原村へ訪問し、小石原焼を絶賛したことで脚光を浴び、一躍人気のやきものとなった。

民藝がブームとなったことから小石原焼を求めに村へ訪れる人も増え、世襲制だった窯が広く人材を集めるようになり、個人窯元も増加した。ピッチャーなどの暮らしにあった器づくりに取り組むようになったのも、この頃である。

1958年には、ベルギーのブリュッセルで開催された万国博覧会で最高賞グランプリを受賞し、小石原焼は世界にも知られることとなった。さらに1975年には、陶磁器では日本で初めて経済産業省の伝統的工芸品に指定された。

現在、東峰村にある窯元は50以上。小石原焼の伝統技法は現在に引き継がれ、日常の食器として今も多くの食卓を彩っている。

現在の小石原焼

椀、平皿など様々な種類の小鹿田焼
椀、平皿など様々な種類の小鹿田焼

◯伝統を守るため。人間国宝に選ばれた福島善三さんの新たなものづくり

2017年、小石原焼の「ちがいわ窯」の16代目、福島善三さんが57歳の若さで重要無形文化財保持者に認定された。いわゆる人間国宝である。

福島さんの作品の陶土や釉薬などは、すべて小石原地区から採取したもの。小石原焼独自の飛び鉋、刷毛目、流し掛けといった技法を使いつつ、鉄釉や赫釉といった小石原焼以外の技法も用いた、現代的でシャープな焼き物が評価されている。

「伝統を守るには変えていくこと」という福島さんの信念のもと、小石原焼の新たなチャレンジが試みられている。

◯小石原焼・太田哲三窯の飛び鉋のうつわ

小石原焼・太田哲三窯の飛び鉋のうつわ
小石原焼・太田哲三窯の飛び鉋のうつわ

みんげいおくむらの奥村さんが綴るうつわと料理の連載「わたしの一皿」で、小石原焼・太田哲三窯の飛び鉋のうつわを紹介している。

<関連の読みもの>
わたしの一皿 グルグル飛び鉋に納豆グルグル
https://sunchi.jp/sunchilist/fukuoka/87277

今の小石原焼を感じられる「民陶むら祭」

小鹿田焼民陶むら祭に並ぶ小鹿田焼
小鹿田焼民陶むら祭に並ぶ小鹿田焼

福岡県朝倉郡東峰村の小石原地区では、5月と10月の春秋2回、「民陶むら祭」を行っている。小石原焼はもちろん高取焼も扱う大陶器市で、通常の価格よりリーズナブルな価格で購入できる。およそ50の窯元が祭りに合わせて窯出しする新作を探しに、県外からも多くの人が訪れる。各窯元の陶芸家にも出会えることが可能で、より深く小石原焼を楽しむことができる。 (2020年春季は「ネットで民陶祭」が開催)

<関連する工芸品>

小鹿田焼:
「小鹿田焼とは。「世界一の民陶」と絶賛された特徴と歴史」

小石原焼のおさらい

◯概要

・誕生:1682年
・主な産地:福岡県朝倉郡東峰村の小石原地区
・主な技法:飛び鉋 (かんな) 、刷毛目、流し掛け
・窯元数:44軒
・文化財指定:1975年、国の伝統的工芸品に指定

◯関係する人物

・柳宗悦 (民藝運動の提唱者)
・バーナード・リーチ (イギリス人の陶芸家。柳宗悦の民藝運動を支持した)
・福島善三 (小石原焼の「ちがいわ窯」の16代目、重要無形文化財保持者に認定されている)

<参考>

・萩原健太郎 著、久野恵一 監修『民藝の教科書① うつわ』グラフィック社 (2012年)

・環境省 水・大気環境局 大気生活環境室『残したい日本の音風景100選』環境省

・下中直人 編『増補 やきもの事典』平凡社 (2000年)

・仁木正格 『わかりやすく、くわしい やきもの入門』主婦の友社 (2018年)

・やきもの愛好会 編『よくわかる やきもの大事典』ナツメ社 (2008年)

<画像・協力>
小石原焼陶器協同組合

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