新潟県燕市「ひうら農場」が拓く、800年目の米づくりとまちづくり

「新潟県といえば?」と聞くと必ずと言っていいほど上がる名産が「こしひかり」。

新潟出身の私は、もちろん子どもの頃からずっとお世話になり続けている、新潟自慢の一品です。

新潟県燕三条地域は江戸時代から続く金属加工製品の産地でありながら、実はお米をはじめとした農作物も豊富な土地柄。

2013年からこの地域ではじまった工場見学イベント「燕三条 工場の祭典」に、第1回から農家の皆さんが参加されています。

2016年からはイベントの3本柱として「工場」に加え、農家さんを中心とした「耕場 (こうば) 」と「購入する」の「購場 (こうば) 」が登場。総称して「KOUBA」とも呼ばれています。

今日のお話の主役は、「耕場」のネーミングの張本人であり、「燕三条 工場の祭典」で和洋中の料理を丸ごと一つのコースとして楽しめる前代未聞のパーティーを企画した樋浦幸彦 (ひうら・ゆきひこ) さん。

わずか2000グラムで生まれてきた息子さんのために挑んだ無農薬・自然肥料の米づくりが、家業から全力で逃げいていた青年を、地域の一大イベントを担う大黒柱へと変えていきました。

燕三条を「食」で盛り上げる樋浦さんの奮闘ストーリーに迫ります!

農薬0%・自然肥料100%の米作りに挑戦する27代目当主

突然ですが、今この記事を読まれている皆さんは、どちらにお住まいですか?

地方に生まれ育つと若い頃に「この町を出て、都会に行きたい」という思いが募りやすいもので、実際私も進学を機に一度地元である新潟から上京した一人です。

樋浦さんも学生時代に同じことを思ったそうですが、修行のために新潟県外で暮らした以外は、地元燕で街を盛り上げるべく活動されています。それはなぜか?樋浦さんの足跡もたどりながら、金物加工に留まらない“燕のものづくりの今”を紐解いていきましょう。

樋浦さんが代表を務める「ひうら農場」は、メインの生産物がお米ときゅうり。6ヘクタール (6万平米) にも及ぶ田んぼの米作りは、繁忙期以外樋浦さんがほぼ一人で行っています。

27代目樋浦幸彦さん。新潟県の名所・弥彦山を望む、ひうら農場の田んぼにて

ひうら農場の作るお米は

・一笑 (いっしょう) こしひかり…農薬0%、自然肥料100%使用栽培

・百笑 (ひゃくしょう) こしひかり…農薬30%、自然肥料99%使用栽培

・八百笑 (やおしょう) こしひかり…農薬30%、化学肥料90%使用栽培

の3種類。(2017年8月時点)

米作りは天候に左右され、体力も必要なハードな仕事。それなのにさらに除草剤を撒かずに草むしりを行い、有機肥料をたくさん撒くという手のかかる農法に、なぜチャレンジしているのでしょうか?

そこには、2000年に誕生したお子さんの存在が大きかったそうです。

「息子が生まれた時2,000グラムくらいしかなくて、原因は食べ物なのか、ストレスなのか?何がいけなかったのか嫁さんが悩んでいたんです。じゃあまずは息子を大きく育てることと、同じ悩みを持つ人が減ったらいいなと思って、無農薬栽培に力を入れ、17年続けてきました」

心が折れそうな時もいっぱいあるんですけどね、あっはっはと笑いながら語る樋浦さん。その背景にある、身近な人を大切に思う信念が伝わってきました。

美味しいは難しい、だから楽しい

研修先で勉強したとは言え、無農薬の米作りは苦労の連続。試行錯誤が続きます。

「最初はそんなに雑草も生えなくて『簡単じゃん』と思ったんですけど、3年目~5年目の頃は田んぼ一面が草だらけになって (笑) 。親からは『もうやめれば』って言われて、『来年は大丈夫』って返答するけど草がわーっと生えたり。大分勉強して、7年目くらいにようやく他の田んぼと同じくらいまで草がなくなりました。

今はかなり分かってきたので、ようやく面積を広げたり人にお手伝いも頼めるようになってきましたね」

取材時はちょうど白い稲の花が咲いていました。すぐに茶色くなってしまうそうで、かなりのレアなタイミングだったそう

樋浦さんの作るお米は通常の米作りよりも肥料を多く与えているので、その分甘みや旨味は格別!特に自然肥料を多く使う「百笑こしひかり」や「一笑こしひかり」は、「八百笑こしひかり」の4倍以上の肥料を与えているそうです。

そしてひうら農場もう一つの看板商品が、燕市の特産品でみずみずしさと甘さが特徴のもとまちきゅうり。

ツバメが飛ぶかわいいパッケージデザイン
きゅうり畑
夏きゅうりの収穫真っ盛り!

「春・夏・秋と3回育てられるので、毎月種屋さんを呼んで9軒あるきゅうり農家合同で勉強しています。種の精査・栽培管理・土作り、この3つがもとまちきゅうりの美味しさの鍵ですね」

1日に多い時で6,000本ものきゅうりを収穫するひうら農場。“アタリ”“ハズレ”が出ないように水やりや温度管理など、育てるのは油断できない作業とのこと。

ただ、毎日畑を見ているからこそ「今きゅうりには何が必要か」がわかるようになるそうです。

「赤ちゃんと一緒で、喋らなくても求めていることがわかるし、難しいからこそ面白いです」

こちらは秋きゅうり。花が咲き始めたばかりで、8月中旬から11月末まで収穫できます

「燕って食の器もあれば中身もあるじゃん」という気づき

地方に生まれ育ち、しかも家業は農業という体力的に厳しく自然相手の大変な仕事。それをニコニコと語る樋浦さんに、農業を継ぐことへの迷いはなかったのでしょうか。

「高校2年まで全力で逃げていました (笑) 。立派なサラリーマンになるか歌手になるかって本気で考えていたくらいで。でもその2年の夏に父親から進路の決定を迫られて、よくよく家の仕事を見てみると、早くから全国に発送していたり先進的な農法にチャレンジしていることを知って。1年間フル回転で考えて、継ぐことを決めたんです」。

「農業のための体が出来上がるのに3年かかりました。指先まで筋肉痛になったんですよ (笑) 」

そこからは農家の後継ぎを育成する農業大学校に進み、農業街道まっしぐら。

しかも樋浦さんはもとまちきゅうりのブランディングや、味噌屋さんとコラボ商品の開発など、受け継いだ農業をさらに“その先”へ進めています。

「樋浦家が継いできた土地は、もともとは吉田町というエリアで、2006年に燕市と合併しました。地元に貢献したい思いと、吉田町の特産物だった『もとまちきゅうり』が、合併後に燕市の特産として認知されない状況に危機感もあって。生産40周年のタイミングに、ロゴデザインやパッケージを刷新し、ブランディングを行いました」

「燕三条 工場の祭典」との出会い

全力で農家になりたくないと思っていた少年の面影はどこへやら、きゅうりのブランディングを皮切りに、樋浦さんの挑戦は加速していきます。そのステージが「燕三条 工場の祭典」でした。

「初めて『燕三条 工場の祭典』に参加したのが2015年。新米の試食ときゅうり収穫体験をすることは決めていたんですが、開催直前に『やっぱりうちは“工場”じゃないしなぁ。まだ何かできないかな』と考えながら稲刈りをしていたんです。そしたら『あっ、耕すって“こう”って読むじゃないか、“耕す場”で“耕場 (こうば) ”ってどうだろう』と思いついたんです」

実際に「耕場」と銘打って当日を迎えたところ、実行委員会からも「面白い!」と評判になり、そこからはトントン拍子で2016年からは工場と耕場、さらに地場産品が購入できる「購場」も加えた3本柱で打ち出していくことが決まったのでした。

迎えた2016年は、地元の味噌屋さんやシェフなど多くの出会いがあり、それらすべての経験が「燕三条 工場の祭典」で昇華されたそう。

この年のひうら農場は2015年のプログラムに加え、燕市の料理人とコラボしたきゅうり専用ディップBOXを販売。実は私も偶然購入していましたが、6種類ものディップがあり「次はどれできゅうりを食べようか」と、とっても楽しい食体験を満喫しました。

きゅうり専用ディップ。上段左から醤油麹マヨ・エビタルタル・ハニークリームチーズアーモンド、下段左からバーニャカウダ・クリームチーズと酒盗・袖振り肉味噌

2016年の「燕三条 工場の祭典」でもう一つの樋浦さんの大きな活躍が、レセプションパーティーの開催です。味噌や包丁などものづくりに携わる燕市の若手で「吉田のKOUBAーズ」というチームを結成し、1夜限りのディナーパーティーを開いたのでした。

レセプションで提供された「もとまちきゅうり・帆立貝・秋なしのミルフィーユ仕立」
燕の精肉店が生産から手がける豚肉を使った「うんめ豚のやわらかハンバーグ」

「洋食器の生産が世界一であったり、きゅうり・トマトの生産は県内トップクラス。燕市は料理の器や食材など、食にまつわるコンテンツが豊富なことに気づき、改めて金物加工だけではない、食も含めた“ものづくりの街”なんだなと思いました。

ある人に『ミラノは工業都市でもあるけど美食の街でもある、スペインのサンセバスチャンは、料理人や農家さんたちなどが食のまちとして盛り上げて、世界的な美食の街として一大観光地になってます。燕市もそうなりますよ!』って言われて、その気になりました(笑)」と樋浦さんは笑います。

「吉田の旨味を感じる調理デモ・レセプションパーティー」を開催した「吉田のKOUBAーズ」メンバー

先輩、仲間、そして次世代へとつなぐ燕市のものづくり

樋浦さんたちよりも上の世代までは、農家はいいものを作ればちゃんと売れてお客様にも喜んでもらえるから、ものづくりに専念しよう、という意識が強かったと言います。

「でも農家をただ『作り手』で終わらせてしまうのはもったいない。しっかり情報を整えて発信したら、喜んでもらえるんじゃないかなと。

燕三条には工業も農業もものづくりを盛り上げてきた先輩たちがいて、そのおかげで今があるし、同じ志を持った仲間とも出会えていろいろ企画して、広がりを実感しています」

2016年「燕三条 工場の祭典」ひうら農場チームの皆さん。家族・親戚に加え、心強いサポートスタッフも

「先祖が代々いい土地を残してくれたことに感謝しているし、だからこそ、次の世代、そしてまたその次の世代につなげられるような、持続可能な農法であったり経営をやっていきたいと思います。

それに自然相手の農家は休みがない仕事。生きるように働いているので、だからこそどうやって日常を楽しむかということに全力ですが、それが『一笑百姓』を謳う僕の生き方です」

お話を伺うほどに早く一面黄金色に輝く田んぼの風景を眺めてみたくなり、そしてお茶碗の中で白く輝く新米と出会いたい!と来たる秋の燕市の田園風景に、思いを馳せずにはいられなくなりました。

<取材協力>
ひうら農場
新潟県燕市吉田本町1064
0256-93-3668
http://hiurafarm.com

文・写真:丸山智子
2016年「燕三条 工場の祭典」写真:樋浦幸彦さん提供

*こちらは、2017年8月23日の記事を再編集して公開しました

日本有数の“社長の町”、新潟三条「本寺小路」ではしご酒

こんにちは、ライターの丸山智子です。

金属加工の産地である新潟県三条市は工場が数多く軒を連ね、必然的に社長さんも多い地域。そうすると、外せないのが打ち合わせや接待などに使われる飲食店です。

「本寺小路 ( ほんじこうじ ) 」と呼ばれる三条の繁華街は、人口当たりの飲み屋さんの軒数が全国有数で、「社長!」と呼ぶと近くにいるみんなが振り返るとも言われてきたエリア。

きっと企業同士の交流を深めたり商談をしたり、また時には息抜きに利用されることで、お店も増えてきたのでしょう。

今日ははしご酒をしながら、そんな三条の美味しい文化を楽しんでみたいと思います。

サバ缶を丸ごとひとつ!全国区でブレイクした「サバサラ」

まず一軒目は、インパクト大なサラダをいただきに、「キネマ・カンテツ座」へ。

※現在はリニューアルして、店名「酒場カンテツ」となっています。

インディーズのショートムービーを上演している飲み屋さんという、ちょっと珍しいお店のスタイルにワクワクしながら扉を開けると、広がるおしゃれなカフェバーの佇まい。

上映する作品は、店主の関本さん自らセレクト

ここに来たら頼まずにはいられないのが、蓋を開けたサバの缶詰ごとお皿に乗せて、粗みじん切りにした玉ねぎをトッピングした大胆なサラダ「サバサラ」です。

缶詰のアレンジにびっくりしていたら、お皿は三条の隣、燕市の伝統工芸品・鎚起銅器 (ついきどうき) であることに気づいて2度びっくり。

「スーパーであらゆるサバの缶詰を集めて、試食して選んだのがマルハニチロのサバ缶。しかもマルハニチロの前身の会社・マルハの創業者は三条の人なんですよ」( 名物店主の関本秀次郎さん )

もう一つの看板商品である「カンテツコロッケ」は、シメジが入ったお米のコロッケ。一口食べるとホワイトソースとお米の甘い風味が口いっぱいに広がって、シメジの食感がいいアクセントに。揚げたて熱々をホクホクしながらいただきました。

新潟県の海の幸・畑の幸をぞんぶんに

さて、もうちょっとしっかり食べたくなったので、「漁師DINING 日本海ばんや」を訪れることにしましょう。

漁師小屋を模した外観。今日のお勧めが書かれたボードに、期待が高まります

こちらはまさに“産地”にこだわったお料理をいただける居酒屋です。

まず出てきたのが、注文してから茹で上げる、三条の農家さんが育てた枝豆。
そして新潟県といえば日本海の海の幸、ということで、同店では佐渡や寺泊から届けられた新鮮な魚をお刺身でいただけます。

看板メニューの生牡蠣も、プリプリしていて、あっという間に食べ終わってしまうのが惜しいほどの美味しさでした。

この日の刺し身5種盛りは、佐渡の南蛮エビ、地物のコチなど

新潟のお酒といえば日本酒、ということで合わせたお酒は三条市唯一の酒蔵・福顔酒造の「五十嵐川」。さらりと飲めて、料理を引き立ててくれるので、さらにお箸がすすむ一杯です。

そして何よりも嬉しかったのが、スタッフのフレンドリーな空気。店長である関本康弘さんを筆頭に、お客さんもスタッフも一緒に楽しめる空間作りが感じられます。

美味しいお料理に厨房から店内に広がる魚を焼く匂い、あちこちから上がる笑い声に、なんとも幸せな時間を噛みしめることができました。

三条のディープな情報とクラフトビールの組み合わせ

最後にもう一軒、締めは三条市で唯一クラフトビールを樽で提供している「Beerhouse3」にお邪魔してみることにします。

こちらの店主・池野泰文さんは実は元三条市の職員で、三条の歴史や金物産業に精通している人物。2013年からスタートした、三条市と燕市の工場や農家を解放して、ものづくりを体験できるビッグイベント「燕三条 工場の祭典」や、食文化や生活技術など地域に根ざした新旧の知恵を再編集し、絶品のスパイス料理を提供する「スパイス研究所」の立ち上げにも関わっていたそうで、お酒と一緒に三条のディープな話もどんどん進みます。

鮮度を保つためにキンキンに冷やしていますが、飲む際は美味しく味わえる温度に調節してくれます

この日いただいたのは「IPA」というホップをたっぷりと使ったクラフトビール。

実は私、ビールの苦みがあまり得意ではないのですが、このビールは本当に香りが芳醇で、美味しくいただけました。もともと池野さんもクラフトビールに出会うまではビールが苦手だったというから驚きです。

5種類のスパイスを使ったチキンピックルやスモークチーズも自家製

「本当に本寺小路は社長が多いのですか?」と確かめてみると、「5割以上のお客さんが社長ですよ」とのこと。ちなみにこの日は、家業が包丁屋さんという次期社長が飲みにいらしてました。

外に出ると、あちこちで代行のタクシーやはしご酒をする人とすれ違い、いつの間にか辺りは真っ暗に。なんとも美味しく楽しい街・三条。この街の楽しみ方がまた一つ増えました。

ここでいただけます

酒場カンテツ
新潟県三条市本町2-13-3
0256-55-4504
https://www.facebook.com/sakabakantetu

漁師DINING 日本海ばん屋
新潟県三条市居島2-26-3
0256-36-7288
http://www.greatcompany.co.jp/banya.html

Beerhouse3
新潟県三条市居島3-15
0256-64-8312
http://beerhousecubed.hatenablog.com

文・写真:丸山智子

*こちらは、2017年8月16日公開の記事を再編集して掲載しました。ものづくりの町として盛り上がりを見せる燕三条。訪れたらぜひご当地でしか味わえないお店で一杯!

ものづくりの熱気に触れる、「燕三条 工場の祭典」へ出かけてみよう!

こんにちは。ライターの丸山智子です。

10月5日 (木) から8日 (日) の4日間、日本を代表する金物産地のひとつ、新潟県燕三条とその周辺地域で、「燕三条 工場の祭典」が開催されています!

普段は目にすることのない町工場の中を見学したり、現役の職人たちに教わりながら、さまざまな体験ができるイベントです。

見学できるのは、金属製品の「工場」 だけでなく、農業に取り組む「耕場」 、土地らしい産品を購入できる「購場」の3つのKOUBA。開催5年目の今年は、過去最多の103箇所のKOUBAが参加しています。

工場見学はもちろんのこと、それぞれのKOUBAならではのワークショップも楽しみのひとつ。そこで今回は、ワークショップを体験できる4箇所のKOUBAをメインに巡ってみました。

KOUBAめぐりのおともには「さんちの手帖」を忘れずに

「燕三条 工場の祭典」では、「さんち~工芸と探訪~」のスマートフォン用アプリ「さんちの手帖」が公式アプリとして採用されています。

各KOUBAの見学・体験情報に加えて、地図からKOUBAを探せる機能も搭載。さらにスマートフォンの位置情報をONにしておくと、103箇所全てのKOUBAにある「旅印 (たびいん) 」を取得することができます。たくさん集めると、どうやら良いことがあるようです。

イベントの合言葉は、「開け!KOUBA」。さぁ、KOUBAのまちへ出かけましょう!

【耕場】切り口から水が滴る!新鮮なアスパラガスの収穫体験

1軒目のKOUBAは燕市の「宮路農場」。コシヒカリの他、アスパラガスやトウモロコシ、ブロッコリーなどの野菜を栽培している“耕場”です。

ここで体験できるワークショップはアスパラガスの収穫体験。早速畑にお邪魔します。

宮路農場のオーナー・宮路敏幸さん

宮路さんから最初に手渡されたのは収穫用のはさみ‥‥ではなくなんとプリン。宮路農場で収穫したトウモロコシを加工したもので、卵とトウモロコシの風味が口いっぱいに広がって、本当に美味しい!

「流行の濃厚なプリンに対抗して、真逆のあっさりした味わいにしました(笑)」 と宮地さん

美味しくいただきながら、宮路農場で育てている作物の紹介や生産方法などを教えてもらいました。今年でアスパラガスを育てて4年目だそうですが、まだまだ試行錯誤を重ねているとのこと。

それでは専用の収穫バサミを借りて、いざ、広大なアスパラガス畑の中へ!

人の背丈ほどもあるアスパラガス畑。収穫は森へ分け入るようです!

葉が生い茂る畑の中から収穫できるサイズに育ったアスパラガスを探すのは、まるで宝探しのよう。はさみを入れると意外と力を入れずにサクッと収穫することができます。どんどん夢中になってしまい、さらに奥へ、奥へと進みます。

切るときはなるべく根元の方から。専用のハサミには収穫できるアスパラガスの長さの目安(28cm)になる棒が付いています
採れた!収穫中に落ちてくる葉っぱよけのパーカーが黄緑色だったので、期せずしてアスパラと一体化してました

この収穫体験で感動したのが、アスパラガスの切り口から滴る水滴!
新鮮な証拠であり、「こんなにみずみずしいんだ!」と実際に自分で収穫してみないと知ることができなかった発見でした。

切った先からぽたぽたっと水滴が落ちていきます。当日持ち帰っていただいたら、とってもジューシーでした

宮地さんが育てている新種の枝豆「越の秋姫」もお土産でいただき、燕の大地の恵みに感謝しつつ次のKOUBAへ向かいます。

収穫体験では、10~20本ほどを収穫することができます。アスパラガスは油と相性がいいので素揚げや天ぷら、唐揚げなどがオススメだそうです

そしてアプリでも、1箇所目の旅印を取得することができました!

位置情報をONにしておくと、近くにあるKOUBA情報の通知が届きます。通知から旅印画面を開くと‥‥
初めての旅印を取得することができました!通知を逃した方は、「訪問した見どころ」メニューからも旅印が取得できます

【購場】燕伝統の「鎚起」の技でオリジナルのしおり作り

宮路農場さんから車を走らせること約10分、2軒目は同じ燕市内の“購場”「MGNET (マグネット) 」へ。

こちらは隣接する「武田金型製作所」の子会社で、チタンや真鍮など5種類の素材を使った名刺入れなどを製造・販売されています。

さらにオープンファクトリー型施設「FACTORY FRONT presented by MGNET」も運営されており、MGNETに来るだけで燕三条の魅力的な製品に触れて実際に購入することができます。

「FACTORY FRONT」の「フロント」は、ホテルのフロントに由来。燕三条地区のフロントマンを目指して、商品や情報を発信されています

 

名刺入れは、チタン、真鍮、マグネシウム、ステンレス、アルミの5種類。同じ金型でも素材の特性が異なるため、熟練の職人技が込められています

こちらで体験できるワークショップは、「スプーンづくり」と「銅板しおりづくり」。私は「銅板しおり作り」に挑戦することにしました。

MGNETの拠点・燕市には、1枚の銅板を鎚 (つち) で打ち延ばしたり絞ったりして製品を生み出す、伝統工芸「鎚起銅器 (ついきどうき) 」の技術が受け継がれています。

「銅板しおり作り」では、たった1枚の板からカップややかんなど複雑な形を生み出せる「鎚起」の技術を、実際に体験することができます。

MGNETの社長であり今年の「燕三条 工場の祭典」実行委員長である武田修美さんがちょうどお店にいらっしゃいました

まずはじめに、鎚起銅器の製造過程を可愛いイラストとわかりやすい説明でレクチャーしてもらいます。

専門的な内容をわかりやすく説明してくれたのは、スタッフの木龍美紅さん。

しおりサイズの銅板に、金槌を何度も打ちながら「槌目 (つちめ) 」という模様をつけ、さらに厚紙で浮き上がらせたいモチーフを作って銅板に貼り付け、木槌で叩いて浮き出させていきます。

カンカンと打つのは、結構力を入れても大丈夫でした
意外と思ったところに当たらず、四苦八苦。でも目に見えて跡がついていくのが楽しい!

デザインは自由なので、燕市にちなんで「雲の間を飛ぶツバメ」を描いてみました。

工具の使い方も丁寧に教えてもらえます

 

だんだんツバメのシルエットが出てきました!

時間が経つのも忘れて黙々と集中して打ち込んでいくと‥‥

最後に研磨剤で磨き上げて、完成です!

オリジナルの銅板しおり、できました!

自分で作った世界にたった1枚のしおり。しかも伝統の技を体験できた、大満足のワークショップでした。

完成品はMGNETオリジナル封筒に入れてもらってその場で持ち帰れます
旅印2個目は、MGNET広報担当の気ままな正社員「まぐねこ」と一緒に

【工場】フォトジェニックな工場で、ミラーボール作り!

3軒目に訪れたのは三条市にある「永塚製作所」。大正初期の創業以来、家庭用の金属雑貨製品を主に製造されている会社です。昨年は「FIELD GOOD」というスコップブランドを発表し、グッドデザイン賞を獲得されています。

この形を新潟ではスコップと呼びますが、主に西日本での呼び方らしく、東日本ではシャベルと呼ぶそう

訪れるとまず目を引くのは、巨大なスコップのオブジェ!

能勢直征社長と長岡造形大学の学生さんたち。「コンセプトは『ものづくりから始まる永塚コミュニティ』です」

長岡造形大学の学生たちがアイディアを出し合い、「来場した人が楽しめる、インスタ映えするスポットにしましょう」と、初夏の頃から準備を進めたそうです。

工場内では、3台のマシンがプシュー、ガッコン、プシュー、ガッコンと規則的な音を立てながら連動して、平らなスチールの板をあっという間に立体的なスコップにしていく様子を見学できます。

1枚のスチール板からスコップがくりぬかれ、加工されていく段階が一目でわかる展示も
写真左のマシンがどう連動して1本のスコップになるのか、機械の目の前で分かりやすく解説いただけます

「やってみますか?」とプレス作業も体験させてもらえました!

2つのボタンを同時に押すと、硬いスチールに一瞬でスコップの立体感が現れました。少し携わっただけで、プレスしたスコップに愛着がわきます

こちらで体験できるワークショップは「ミラーボール作り」。プレスした時に端材として出る丸いスチールのチップを透明のボールに貼り付け、油性ペンで好きな色をつけます。

接着剤を出す「グルーガン」も本格的
ボール全面にチップを貼り付けてベースが完成!このあと色つけをしていきます
3つめの旅印もしっかりと取得です!

【購場】ウコンの葉の大きさに驚きつつ、ひとやすみ

続いては北三条駅近くの「三条スパイス研究所」へ。地元では「スパ研」の愛称で親しまれている食堂で、スパイスや旬の食材による料理を自分で混ぜながら食べる『ミクスチャースタイル』の料理が楽しめます。

「スパイス=異なるものをミックスして新しい何かを生み出すこと」という考えのもと、食だけでなく人もこの場所で混ざり合う、地域の交流施設としての役割も担っています。

大きなのれんが目印の「三条スパイス研究所」。もちろん旅印も忘れずに!

敷地内ではカレー作りに欠かせないスパイス「ウコン (ターメリック) 」を栽培しており、「燕三条 工場の祭典」期間中は自分でウコンの葉っぱを収穫してリーフティーを作る体験ができます。

このウコンの葉っぱの大きさに衝撃を受けました!

わさわさと生えており、軽く1メートル以上の背丈があります!これでも背が低い方だそうです。説明してくれたのは、養蜂家の草野竜也さん

畑では春ウコンと秋ウコンが栽培されており、その違いを学びつつ、お茶を作るために青々とした葉っぱを1枚カット。

春ウコンと秋ウコンと言っても栽培のタイミングや方法は全く同じで、花の咲く時期で名前が分かれているそう
大きめの葉っぱを選んでカット。アスパラガスとはまた違う手応えで、繊維の密度を感じます

切り取った葉から筋を取って煮沸消毒したら、くるくるっと巻いて、ここから細かくカットして茶葉を作ります。

5ミリメートル幅にカットしていくのですが、私の場合はかなりバラバラ‥‥。草野さんの葉はきれいな幅にそろっており、さすがの一言でした

カットしたあとは、ウコンの葉で作ったリーフティーの試飲でほっと一息。お土産に乾燥させた茶葉もいただきました。

切ったウコンの葉は作業台の中のストープに火を入れて4時間ほど乾燥させると、完成です
葉本来の風味がしっかりと感じられます。あまり煮出しすぎないのがポイントだそうです

集めた「旅印」で、プレゼント交換!

さぁ、4箇所のKOUBAめぐりを楽しんだ最後を締めくくるのは、「三条ものづくり学校」です。

「燕三条 工場の祭典」開催期間は、日本各地や海外の産地の逸品を集めた「産地の祭典」が開催されています

ここでは各KOUBAで集めた「旅印」の数に応じた会場限定のプレゼント企画を実施中なのです (※数量限定)!

もともとは体育館だった会場の入り口右手に、アプリの案内ブースがあります。ここで旅印の数をチェック

私がもらったのは、3軒分の旅印でもらえる「中川政七商店 特製 蚊帳のふきん (非売品) 」。

白地のふきんに色糸のステッチが入ったシンプルなふきん。赤・緑・黄色3色から選べます。私は赤をもらいました

ワークショップをメインにめぐった今年の工場の祭典。作る楽しさだけではなく、作ったものがそのままお土産になるところも嬉しいところでした。“コト”も“モノ”もかけがえのない燕三条の思い出になります。

また、KOUBAのみなさんは、どんな些細な筆問もひとつ一つ丁寧に答えてくださって、そんなやり取りもとても嬉しい経験でした。

燕三条エリアに広がる103ものKOUBAそれぞれが持つ魅力と出会いに、次はあなたが「開け、KOUBA!」。

燕三条 工場の祭典

公式サイト:http://kouba-fes.jp
燕三条 工場の祭典 公式アプリ「さんちの手帖」の使い方はこちら:https://sunchi.jp/sunchilist/kouba-fes/36621

<取材協力>
宮路農場
新潟県燕市吉田下中野796
090-7184-4141
「燕三条 工場の祭典」No.98 宮路農場ページ

MGNET
新潟県燕市東太田14−3
0256-46-8720
http://mgnet-office.com

「燕三条 工場の祭典」No.90 MGNETページ

永塚製作所
新潟県三条市塚野目6-9-1
0256-38-8275
https://www.eizuka-ss.com

「燕三条 工場の祭典」No.09 永塚製作所ページ

三条スパイス研究所
新潟県三条市元町11-63
0256-38-8275
http://spicelabo.net

「燕三条 工場の祭典」No.03 三条スパイス研究所ページ

三条ものづくり学校(公式アプリ 景品交換所)
新潟県三条市桜木町12-38
0256-34-6700
http://sanjo-school.net

「燕三条 工場の祭典」公式アプリ 景品交換所ページ

文:丸山智子
写真:笠飯幸代

【燕三条のお土産・さしあげます】ツバメコーヒーの「ドリップバッグ」

こんにちは、ライターの丸山智子です。
わたしたちが全国各地で出会った“ちょっといいもの”を読者の皆さんへのお土産にプレゼント、ご紹介する“さんちのお土産”第14回目は、8月の特集エリアである燕三条からのお土産です。

金物加工の産地・新潟県燕市の吉田駅から徒歩約15分ほどのところに現れる、かわいいツバメの看板。

美容室「PARIS RAVISSANT」のサインを目指していくと、かわいいツバメが現れます

ここは、美容室に併設した店舗に大きな焙煎機がどっしりと構え、“生活が少しだけ豊かに感じられる”雑貨も販売する、個性あふれるコーヒー店・ツバメコーヒー。

漂うコーヒーの香りと空間の心地よさに思わずのんびりしたくなります
使いやすいキッチングッズや味わいのある雑貨、オリジナルグッズなどが揃うショップ

こちらでいただけるコーヒーは、マイルドな「ツバメブレンド (中煎り) 」とほろ苦の「イヌワシブレンド (深煎り) 」の二種類。

全国的にも有名なコーヒーロースターである徳島のアアルトコーヒーさんの助言をきっかけに、店主の田中辰幸さんがコーヒー屋さんで修行することなく焙煎機を購入し、2012年11月に開いたお店です。
お店の詳しいストーリーは是非、燕のメディアを目指すツバメコーヒーをご一読ください。

店主の田中さん。哲学的な本からお料理の本まで、タイトルを眺めるだけでも楽しい本棚を背景に
ドリンクにはクッキーがつく嬉しいサービスも

田中さんがコーヒーに見いだす価値、それが「コーヒーが“ある時間”を提供する」ということ。
「コーヒーは人が集う場で会話を引き立てたり、人をもてなしたりしてくれる存在です。特にドリップバッグは持ち運びができて手軽に飲めるので、登山した時の山頂や旅行先など『ここでコーヒーを飲みたい』という出掛けた先のシーンで、利用してもらえるといいのではないでしょうか?」

ドリップバッグ。青いほうがツバメブレンド、茶色がイヌワシブレンド

ツバメコーヒーのドリップバッグをかばんに忍ばせて、お出かけしてみませんか?
そしてコーヒーを淹れながら、たくさんの工場が集う燕三条にちょっと思いを巡らせてもらえたら、嬉しいです。

ここで買いました。
ツバメコーヒー
新潟県燕市吉田2760-1
0256-77-8781
http://tsubamecoffee.com

さんちのお土産をお届けします

この記事をSNSでシェアしていただいた方の中から抽選で1名さまにさんちのお土産 ツバメコーヒーの“ドリップバッグ” をプレゼント。応募期間は、2017年8月20日〜9月3日までの2週間です。

※当選者の発表は、編集部からシェアいただいたアカウントへのご連絡をもってかえさせていただきます。いただきました個人情報は、お土産の発送以外には使用いたしません。ご応募、当選に関するお問い合わせにはお答えできかねますので予めご了承ください。
たくさんのご応募をお待ちしております。

文・写真:丸山智子