焼き物だけじゃない、1泊2日の益子旅

こんにちは。さんち編集部です。

11月の「さんち〜工芸と探訪〜」は栃木県の益子特集。あちこちへお邪魔しながら、たくさんの魅力を発見できました。

益子といえば “焼き物の町” として有名ですが、それだけではない、あらゆる工芸の魅力が詰まった地域なんです。編集部おすすめの1泊2日のプランをご紹介します!


今回はこんなプランを考えてみました

1日目:自然豊かな茂木町と益子町を堪能

・ドライブイン茂木:気持ちのいい開放感を味わえるさんち必訪の店
・公益財団法人 濱田庄司記念益子参考館:人間国宝が愛した工芸品と建築物を楽しむ
・益子焼窯元 つかもと:「峠の釜めし」の釜をつくる窯元が運営。益子焼のテーマパーク
・フォレストイン益子:森と共生する公共の宿

2日目:自然豊かな景色を眺めながらドライブも楽しむ

・赤羽まんぢう本舗:濱田庄司も愛した「おまんぢう」
・西明寺:閻魔大王が笑う、益子の古刹
・木のふるさと伝統工芸館:伝統的な彫刻屋台、鹿沼組子などが一同に揃います
・みよしや:餃子だけじゃない宇都宮の名物かぶと揚げ
・丹波屋栃木銘店:ガチャガチャでしか手に入らない、特別な益子焼

では、早速行ってみましょう!


1日目:都会の喧騒をはなれ、町の小景がある「ドライブイン茂木」へ

1泊2日の益子旅は「ドライブイン茂木」からスタート。東京からは車で2時間、益子駅からは車で30分ほどの場所にあります。

【昼】気持ちのいい開放感を味わえるさんち必訪の店
ドライブイン茂木

ドライブイン茂木

2016年7月にできたドライブイン茂木。この地域に生きる人やこの土地の風景、生み出される作物の「美しさ」を伝えるために始まりました。

天井が高く、広々とした造り

もともとは瓶詰め工場だけでしたが次々と人が集まり、現在居を構えているのは瓶詰め工場、カフェ、パン屋、古本屋、お菓子屋の5店舗です。その他にも茂木で生まれるものと、できることで土地の魅力を伝えてくれています。

>>>>>関連記事 :山の中の、みんなの場所。気持ちのいい開放感を味わう「ドライブイン茂木」

【午後】人間国宝が愛した工芸品と建築物を楽しむ
公益財団法人 濱田庄司記念益子参考館

益子焼を一躍有名にした人間国宝の陶芸家、濱田庄司。濱田庄司記念益子参考館は、その収集品を工芸家や一般の人々にも「参考」にしてほしいとの思いのもと、設立された美術館です。

益子の中心地から少し離れた場所にある「濱田庄司記念益子参考館」。お屋敷のような門構え
益子の中心地から少し離れた場所にある「濱田庄司記念益子参考館」。お屋敷のような門構え
フクロウの人形(アメリカ・インディアン)
フクロウの人形(アメリカ・インディアン)
鳥をモチーフにした、色鮮やかなパナマの織物
鳥をモチーフにした、色鮮やかなパナマの織物

ジャンルは焼き物に限らず、織物・石工品・家具など様々で、世界各地、あらゆる年代の工芸品が展示されています。

>>>>>関連記事 :世界の民芸品が2000点!人間国宝・濱田庄司のコレクションが見られる資料館

【午後】「峠の釜めし」の釜をつくる窯元が運営。益子焼のテーマパーク
益子焼窯元 つかもと

つかもとトップ

駅弁「峠の釜めし」の釜を作る、益子焼最大の窯元「つかもと」。創業150年以上続く老舗の窯元は、益子の中心街から車で10分ほどの場所にあります。

益子焼とつかもとの歴史を学ぶこともできる
益子焼とつかもとの歴史を学ぶこともできる
売店では、つかもとをはじめ、様々な益子焼の窯元の焼き物を購入できる
売店では、つかもとをはじめ、様々な益子焼の窯元の焼き物を購入できる

自然に囲まれた広大な敷地内にはいくつもの建物が建ち並び、益子焼の工房見学に陶芸体験、買い物、美術記念館、益子焼の器を使った食事など、益子焼の魅力を存分に味わうことができます。

>>>>>関連記事 :「峠の釜めし」が益子焼を救った!?人気駅弁の誕生秘話。

【宿】森と共生する公共の宿
フォレストイン益子

自然の豊かな益子は、宿に至るまで。益子県立自然公園「益子の森」入り口にある公共施設「フォレスト益子」に宿泊します。建物は、海の博物館や牧野富太郎記念館などを手掛けた建築家の内藤廣 (ないとう・ひろし) による設計で、その一角が「フォレストイン益子」として宿泊できるスペースになっています。

フォレストイン益子 レギュラーツイン
シングルベッド2台のレギュラーツインは、隣室とコネクティング可能

木材をふんだんに使い、森の中に溶け込むかのようにたたずむ宿で過ごしていると、自分自身もその一部になったかのよう。周囲は静かながらも、鳥のさえずりや風が木々を揺らす音など、森の息づかいを感じられますよ。

2日目:中世建築から伝統工芸まで、豊かな森の恩恵があちらこちらに

益子は、街なかに室町時代の建築物が数多く残っており、そのうち7つが国指定重要文化財なんだそうです。2日目は、宿から車で10分ほど。珍しい閻魔大王さまに会いに出かけてみようと思います!おっとその前に、益子では外してはいけないおやつのご紹介です。

【午前】濱田庄司も愛した「おまんぢう」
赤羽まんぢう本舗

赤羽まんぢう本舗

赤羽まんぢう本舗は、1924年 (大正13年) 創業の和菓子屋さん。創業時から全ての和菓子を一つひとつ手づくりしています。看板商品の「茶まんぢう」は、益子を代表する陶芸家・濱田庄司のお気に入りの一つだったそう。

赤羽まんぢう
左から、ゆずまんぢう、茶まんぢう、きんとんまんぢう。いずれも1個95円(税込)

【午前】閻魔大王が笑う、益子の古刹
西明寺

西明寺・楼門
西明寺・楼門

益子町を見下ろす高館山、その中腹に位置する西明寺は、737年に行基によってひらかれた古刹です。境内には国の重要文化財に指定された室町時代の建築物が3つあり、中世建築の重厚さを間近で見ることができます。

また、世にも珍しい「笑い閻魔」も見もの!天然記念物のコウヤマキやシイの巨木も生育するなど、豊かな緑に囲まれた西明寺。ハイキングがてら、歴史と風情を感じたいものです。

西明寺の笑い閻魔
西明寺の笑い閻魔

>>>>>関連記事 :益子は「たてもの」も面白い。閻魔大王が笑う西明寺へ
>>>>>関連記事 :益子の見どころは「屋根」にもあり。中世建築でめぐる4つの文化財

【午後】伝統的な彫刻屋台、鹿沼組子などが一同に揃います
木のふるさと伝統工芸館

午後からは鹿沼市方面へ。西明寺からは車で1時間のドライブです。木工技術の粋を「木のふるさと伝統工芸館」で見ることができます。

石橋町の彫刻屋台
江戸時代、石橋町は花街だったことから、色彩鮮やかな花鳥の彫刻が艶やかな屋台です
花形組子障子
今の組子とは違うが、菱形のデザインは同じ
桐の模様が美しい書院障子。鹿沼組子書院障子は、栃木県の伝統工芸品に指定されています

日光東照宮を造営の折、全国から集められた腕利きの大工職人たちが仕事のない冬場や帰郷の際に滞在し、その技術を伝えたのが現在まで400年続く鹿沼の木工技術のはじまりとも言われています。

>>>>>関連記事 :動く文化遺産。日光東照宮の美を受け継ぐ、鹿沼の彫刻屋台
>>>>>関連記事 :生み出す模様は200種以上。400年の技を受け継ぐ鹿沼組子

【夕方】餃子だけじゃない宇都宮の名物かぶと揚げ
みよしや

旅も後半に近づいてきました。宇都宮市の繁華街まで車で30分ほど。何やら香ばしい香りが漂います。

二つ並んだかぶと揚げ

鶏の半身を丸ごと揚げた、宇都宮名物「かぶと揚げ」。2つ並べると「兜」のような形になることからその名がついたそう。1963年、焼き鳥屋として創業した「みよしや」のご主人が、食べ応えのあるものを食べさせたいと考案。大きな唐揚げは評判となり、創業当初から現在まで変わらぬ味で地元、宮っこのお腹と心を満たしてきた一品です。

かぶと揚げを揚げているところ
箸で肉を広げながら中まで火を通していく。満足いくように揚げられるまで半年はかかるという

【夕方】ガチャガチャでしか手に入らない、特別な益子焼
丹波屋栃木銘店

最後に、忘れてはいけない益子ならではのお土産を。JR宇都宮駅の宇都宮駅ビルパセオにある丹波屋栃木銘店。1690年 (元禄3年) 創業の卸問屋、丹波屋が手掛けるお店です。ここにはなんと益子焼史上初となる同店限定の益子焼のカプセルトイ、いわゆるガチャガチャがあります。

益子焼ガチャガチャ
たくさん集めて、こんな風にボックスに飾っても素敵です
益子焼ガチャガチャ
こちらはカップ3兄弟。ガチャガチャのラインナップはお皿が多めなので、もし当たったらラッキー

益子をめぐる1泊2日の旅、お楽しみいただけたでしょうか?歴史ある工芸と、豊かな自然あふれる益子。ぜひ訪れてみてください。

さんち 益子ページはこちら

撮影:岩本恵美、尾島可奈子、坂田未希子、竹島千遥、西木戸弓佳

山の中の、みんなの場所。気持ちのいい開放感を味わう「ドライブイン茂木」

その土地の色を感じられるお店を紹介する連載、「さんち必訪の店」。

本日訪れたのは、栃木県芳賀郡茂木町の「ドライブイン茂木」です。

都会の喧騒をはなれ、町の小景がある「ドライブイン茂木」へ

東京から車でおよそ2時間。常磐道から見える景色は、徐々に自然が多くなっていきます。窓を開けると、心地よい茂木の風が吹き抜けてきました。

車一台がやっと通れる道。まだ誰も踏んでいない落ち葉の上を進んでいくと、ついに平屋建ての「ドライブイン茂木」と出会えました。

ドライブイン茂木・看板写真
ドライブイン茂木
ドライブ人茂木
扉のない入り口からするりと中へ

2016年7月にできたドライブイン茂木。この地域に生きる人やこの土地の風景、生み出される作物の「美しさ」を伝えるために始まりました。もともとは瓶詰め工場だけでしたが次々と人が集まり、現在居を構えているのは瓶詰め工場、カフェ、パン屋、古本屋、お菓子屋の5店舗です。その他にも茂木で生まれるものと、できることで土地の魅力を伝えてくれています。

ドライブイン茂木・風
ドライブイン茂木・干しぶどう
ドライブイン茂木・花
ドライブイン茂木・キッチン
ドライブイン茂木・光
ドライブイン茂木
ドライブイン茂木

広さのある、倉庫のような建物。やわらかい光が差し込み、風がゆっくりと通り抜けていきます。「きれい」とか「気持ちいい」とかいう感覚が、素直に開放されていくような、心地よい空間です。

「みんなから頂いた大葉のジェノベーゼソース」「大越さんの那須のオリーブオイル漬け」「富田さんのルバーブのジャム」

雰囲気を味わいながら周囲を歩いていると、農家の方が今日採れた野菜を手にやって来ました。

茂木では、さまざまな作物が育てられています。大切な人においしく食べてもらうため、自然と正直に向き合いながら丁寧に育てる。そうしてできた作物を、自慢しあい、喜びあっているそうです。

ご近所で野菜を育てている大内さんご夫妻
ドライブイン茂木
ドライブイン茂木・毎朝地元の野菜が届く
毎朝、この地で採れた野菜が並ぶ。自ら畑に採りに行くことも多いのだそう。

地元野菜のお料理は、カフェ「雨余花(うよか)」で。眼前に畑が広がるテラス席があり、ゆったりと過ごせます。飲みものはコーヒーからビール、そして「稲葉さんのゆず」「矢野さんのいちごミルク」などが揃っています。

ドライブイン茂木・メニュー
雨余花の風間さん、綱川さんがセルフビルドしたキッチン
ドライブイン茂木・ご飯
地元野菜を使った、「雨余花カレー」と「地元野菜とお肉のごはん」

お腹がいっぱいになり、心地よい秋の陽だまりの下でうとうとしていると、12時から開く落合さんのパン工房「Serendip」に、町の方がふらっと訪れてきました。

オープン前の来客に雨余花の店員さんが「よかったらお茶でもどうぞ」と声を掛けていて、この場所、この地域の温かさを感じます。

「Serendip」に併設されている陶器店「成井窯アンテナショップ」
ドライブイン茂木・Serendip
「Serendip」はパンの他、陶器も取り扱っている
ドライブイン茂木

そして素敵な小屋が目を惹き、つい足を踏み入れてしまったのが古本屋の「ハトブックストア」。建築や文筆、映像をお仕事にされている町田さんがつくったものです。

「Serendip」の設計をした方で、それが終わった後もここの魅力に心惹かれお店を始めたといいます。

入らずにはいられないつくり「ハトブックストア」
ドライブイン茂木・町田さんの古本屋さん

季節の色を大切にしたお菓子屋さん「色実茶寮(いろのみさりょう)」には、店主の磯部さんが茂木のお野菜で作ったマフィンやクッキーが並んでいます。

ドライブイン茂木・色実茶寮
色実茶寮
ドライブイン茂木・ドライブイン茂木・色実茶寮
ドライブイン茂木・ドライブイン茂木・色実茶寮
茂木の食材を生かしたクッキーはお土産に

都会ではありえない魅力を放つドライブイン茂木。上澤さんと町田さんは「地域が元々もっている魅力だと思う」と言います。

ドライブイン茂木

「この地域はちょうど、日本の南北が交わる場所。お茶が採れる最北端だったり、逆に、寒い地方だけで生える木が育つ最南端だったりします。自然がとても豊かだし、人も北から、南からと多様な人が集まっているような気がします。

僕たちが届けたいのは、地域の『風景』です。この美しい風景や、暮らす人たちの自然体の生き方を伝えていきたい。この土地でどうにかして営業をしていきたいというより、ただここで生きていきたいだけなんです。

美しい茂木のゆるぎない土を根底に、自然や人と一緒に暮らしていったり、地域と地域が出会う場所になっていけたらなと思います」

ドライブイン茂木
ドライブイン茂木
ドライブイン茂木

「その上でやれることが、瓶詰めや料理、パンやお菓子を作ること。また、麦や野菜も育てています。他にも、地元で採れたお茶を自分たちで揉んで淹れたら美味しいはずだから囲炉裏を作ったり、この土地で採れる粘土で陶器を作ってみたり。ここの大きな壁で映画を観たら気持ち良いだろうなぁと思って、上映会を開いたりもしています。

今、ここには、可能性しかないんです。未来しかない。

だからこそ、この場所でできることを自分たちなりに最大限に楽しみながら生きています」

囲炉裏を置く小屋。これらは全て古い納屋の古材を利用して建てている

「僕らはここで生きていきたいだけ」という言葉で、ここの居心地の良さのわけが分かったような気がしました。

こうあらなければならないとか、こうすべきとかではなく、自然と肩肘張らずに生きている人たちが作る空間。そこはいるだけで、そのままで良いと認められているようです。等身大でいられる場に、じんわりと気持ちが満たされていきました。

ドライブイン茂木・雨余花
栃木県芳賀郡茂木町町田21
0285-81-5006
info@uyoka.com
営業日:火・水・金・土
※各店舗の営業日がことなることがあります
営業時間:
雨余花・町田古本店:10時-16時
Serendip(パン):12時-16時

文:田中佑実
写真:今井駿介

100年後を想い、ともに歳を重ねていきたい漆器

こんにちは。ライターの坂田未希子です。

木々が色づき、秋も深まってきた栃木県の茂木町(もてぎまち)に出かけてきました。

焼きものの町・益子の隣にある茂木。ここに、木漆工芸家の松﨑融(まつざき とおる)さん、修(おさむ)さん親子の工房があります。

木地づくりの作業場
松﨑さん親子の作業場。もとは納屋と馬小屋だったものを作業場にして木地づくりを行っている
松崎修ぐい呑ダミー
ぐい呑(作:修)
漆分角皿
漆分角皿(作:修)
朱漆花形皿
朱漆花形皿(作:修)

この器は「なにを入れよう?」と楽しくなってくる器

漆器というと、扱い方が気になって、お正月やお祝いなどの特別な日以外はしまいがちです。

でも、それではもったいない!そう思わせるのが松﨑親子の漆器です。

煮物やおにぎりを盛ったり、どら焼き、みかん、草花を活けたり。

なにに使おうかと考えるのが楽しくなる器です。

ぽってりとした厚み、温もりのある朱色、素朴な風合い・・・どこか陶器を思わせる、親しみやすい雰囲気があるからでしょうか。

木をくりぬいて作る継ぎ目のない額縁

融さんは1944年(昭和19年)東京の出身。祖父が漢文学者、父親が日本画家だったこともあり、幼少期から芸術に触れる機会が多かったそうです。子どもの頃からものづくりは好きだったものの、木漆をはじめたのは30歳の時。父親の知人である人間国宝の陶芸家・島岡達三のアドバイスを受けながら、作品を手がけはじめます。

木をくりぬき、継ぎ目のない額縁を作ったところ、染色工芸家の芹沢銈介(せりざわ けいすけ)の目にとまりました。それが転機となって、本格的に木漆の道へ進みます。

ぐい呑(作:融)
ぐい呑(融作)

1998年(昭和63年)、仕事場が手狭になったことから、茂木町に転居。益子で暮らしていた師匠の島岡達三さんの勧めもあったといいます。

息子の修さんは、子どもの頃から父の仕事を手伝っていたそう。神奈川の大学に在学中も、木材の荷下ろしや粗彫りをするため、度々、帰省していました。

就職活動中、それまで意識していなかった父の仕事を意識するようになり、同じ道を進むことを決めたそうです。

「仕事のサイクルは、自分が生きてきたサイクルと同じなので、日常の延長でした。父に弟子入りする人は、一日中、粗彫りをさせられて『こんなはずじゃなかった』って辞めていく人も多いのですが、僕はそういうものだと思っていましたから」

粗彫り
粗彫り。重労働のため、腕や胸に筋肉がつき、修さんは3年で体型が変わってしまったそう

100年後の美しさを想像して作る

「なにものにも囚われず、自分の作りたいものを作ってきた」という融さんの出発点は、大正期に提唱された民芸運動だったそうです。

「濱田庄司さんや河井寛次郎さんが新しい世界を見せてくれました。きらびやかな芸術品ではなく、日常生活で使われてきたものこそ美しい。島岡さんからも技術的なことではなく、ものの考え方を学びました。だから、100年前の使い込まれてきた漆器に惹かれます。使うほどに美しさが増す。僕らは100年後の美しさを想像して作っているので、毎日使ってほしいですね」

漆作業場
漆は古来のものようにたっぷりと塗り重ねる

ふだん使いの漆器。

それは、民芸運動の根付いた益子の陶器にも通じるものです。

「ここは益子の隣町ですし、陶器からの影響は意識していませんが、あるんでしょうね。焼き物屋の中で育っているようなものですから」

漆の作業場
漆が並ぶ作業場

陶芸に触れると同時に、漆器ながら「焼き物に負けたくない」という思いも強くあると言います。

自分の思いが形になるおもしろさ

漆器づくりは分業にすることが多いですが、ふたりは木取りから漆塗りまで全て一人でおこなっています。

粗彫り
粗彫りの後は、半年以上、材料を寝かせる。その間に木の形が変化するという
倉庫にはケヤキ、トチ、クリノキなどの一枚板が並ぶ
倉庫にはケヤキ、トチ、クリノキなどの一枚板であふれている
作業場
右が修さん、左が融さんの作業場。互いに集中するため、なるべく顔を合わせないよう作業場を変えている

「粗彫りは自分の思いとか悪さが出てしまう」という融さん。

「自分の気持ちがもろに出ます。仕上げたいように彫っているはずなのに、お金が欲しい時は”お金が欲しそうなものができちゃう”とか、”認められたい”とか」

だからこそ、粗彫りはおもしろい。分業ではなく、全ての工程を自分で行うのは、そのおもしろさがあるからなのでしょう。

漆器のある暮らし

お昼になり、母・道子(みちこ)さんの手料理をご馳走になりました。

出てきたのは融さんのお重に入ったおにぎりや煮物。

漆の食卓
漆のお重に入れるだけで華やかな食卓に

松﨑家では、ふだんからふたりの作品を使っているそうですが、最上級のおもてなしを感じ、とてもうれしくなりました。

「僕らのものは、相手が考える要素がたくさんあるほど面白い。使い方をいろいろ考えてくれるようなものを作れるといいね」

毎日の生活の中で漆器を使うことが、次の作品を生むヒントになっているのかもしれません。

松﨑親子
作家とよばれるのが苦手だという融さんと寡黙な修さん

使い込むほどに、色が擦れ、傷ができ、なお美しくなる漆器。

人もまた歳をとるごとに、しわが増え、髪が白くなり、腰が曲がっていきますが、
そこには積み重ねた人生の美しさがあるように思います。

松崎修、漆長皿
上/漆分長皿(作:修)、下/漆長皿(作:修)

ふたりが想像する100年後の美しさとはどんなものなのか。

毎日の暮らしの中で使いながら、ともに歳を重ねていきたい漆器です。

<取材協力>
松﨑融、松﨑修


文:坂田未希子
写真:坂田未希子、西木戸弓佳、松﨑修

益子の見どころは「屋根」にもあり。中世建築でめぐる4つの文化財

こんにちは。ライターの竹島千遥です。

焼き物の里として知られる、栃木県の益子町。実は、中世建築 (鎌倉時代~室町時代の建築物) がたくさん残る街でもあります。

国指定重要文化財の中世建築の数は、なんと東日本で益子町がトップ!

前半の記事ではその7つの中世建築のうち、3つが現存する西明寺を訪れました。

前半の記事:「益子は『たてもの』も面白い。閻魔大王が笑う、西明寺へ」

西明寺には、国指定重要文化財の中世建築が3つ。その中のひとつ、楼門
西明寺には、国指定重要文化財の中世建築が3つ。その中のひとつ、楼門

後半では、西明寺を後にし、残り4つの中世建築を一気に巡ります!

均整のとれた姿が美しい、円通寺 表門

住宅地の中に突如現れたのは、円通寺の表門。

均整のとれた姿形と年月の重みとが相まって、重厚感を感じます
均整のとれた姿形と年月の重みとが相まって、重厚感を感じます

前半の記事で、中世建築には3つの代表的な様式があると書きました。「和様 (わよう) 」「大仏様 (だいぶつよう) 」そして「禅宗様」です。

ここ円通寺の表門は、室町時代の1402年建立と伝えられる、禅宗様の建築物です。

厚みのある銅板葺きの屋根。以前は茅葺だったそう。大きく反り返った屋根は禅宗様の特徴です
厚みのある銅板葺きの屋根。以前は茅葺だったそう。大きく反り返った屋根は禅宗様の特徴です
軒下の木の装飾が印象的
軒下の木の装飾が印象的

曲線美の茅葺屋根。綱神社 本殿、摂社大倉神社本殿

続いて、綱神社 (つなじんじゃ) へ。

聞こえるのは、時々どんぐりが落ちる「ぽとり」という音だけ。とても静かな場所です。

綱神社の鳥居。ここからは少し山道を歩きます
綱神社の鳥居。ここから先は少し山道を歩きます

鳥居をくぐって山道を歩いていくと、木々に囲まれた空間に2つの建築物が並んで建っていました。いずれも室町時代のものと推定されています。

大きい方の建物が、綱神社本殿です。

綱神社本殿。周囲は少し霧がかかり、神聖な空気に満ちています
綱神社本殿。周囲は少し霧がかかり、神聖な空気に満ちています
美しい曲線を描く、茅葺の屋根
美しい曲線を描く、茅葺の屋根

綱神社本殿の隣には、摂社の大倉神社本殿が建っています。

綱神社摂社の大倉神社本殿。小ぶりですが堂々とした風格を感じます
綱神社摂社の大倉神社本殿。小ぶりですが堂々とした風格を感じます

3様式の折衷が見られる、地蔵院 本堂

そして、綱神社のすぐ近くには、地蔵院本堂があります。

こちらも綱神社とほぼ同年代に建てられたと推定され、室町時代の建築の特徴をよく表した建物。和様を中心として、禅宗様・大仏様を取り入れた折衷様となっています。

もともとは阿弥陀堂として建造されたものが、現在は本堂として残っているそうです
もともとは阿弥陀堂として建造されたものが、現在は本堂として残っているそうです
大きな建物ですが、細かい装飾もなされています
大きな建物ですが、細かい装飾もなされています。屋根の裏側の垂木 (たるき) は平行で、和様の特徴を表しています

今回は、益子にある7つの国指定重要文化財の建築物を巡りました。

同じ栃木県内にある日光の社寺のような派手さはないものの、中世建築の特徴である、大きくカーブした屋根や建築物を支える木の部材には、思わず息を飲んでしまう美しさがありました。

ご紹介した寺社は、それぞれが離れた場所にあります。全てを巡るには車が必須ですが、一見の価値ありです!

益子に訪れる際には、ぜひ建築物にも注目してみてくださいね。

<取材協力>
円通寺
栃木県芳賀郡益子町大沢1770
0285-72-2724

地蔵院
栃木県芳賀郡益子町上大羽945-1
0285-72-0813

綱神社
栃木県芳賀郡益子町上大羽2350

文・写真:竹島千遥

益子は「たてもの」も面白い。閻魔大王が笑う西明寺へ

こんにちは。ライターの竹島千遥です。

焼き物の里として知られる、栃木県の益子町。実は、中世建築 (鎌倉時代~室町時代の建築物) がたくさん残る街でもあります。

街なかには室町時代の建築物が数多く残っており、そのうち7つが国指定重要文化財です。国指定重要文化財の中世建築の数は、なんと東日本で益子町がトップ!

今回は中世建築をめあてに、焼き物だけでない益子町の魅力を見てみましょう。

前半と後半に分け、2日続けてお届けします。

重文指定の建築物が3つ。益子の中世建築を語るならまず、西明寺へ

まずは、益子の中世建築を語るには欠かせない、西明寺 (さいみょうじ) へ向かいます。

その理由は、境内の3つの建築物が国の重要文化財に指定されているため。7つのうちの3つが、このお寺で見られてしまうわけです。

西明寺の正式名称は「獨鈷山普門院西明寺 (とっこさんふもんいんさいみょうじ) 」。獨鈷山とは高館山 (たかだてやま) の別名で、栃木百名山にも選ばれた益子のシンボルともいえる山です。

西明寺は、この高館山の中腹に位置しています。ぐねぐねした山道を車で上っていくと、色づいた紅葉が出迎えてくれました。

右側の建物が、受付と御食事処がある「獨鈷處 (どっこいしょ) 」。昼時には美味しい手打蕎麦をいただけます
右側の建物が、受付と御食事処がある「獨鈷處 (どっこいしょ) 」。昼時には美味しい手打蕎麦をいただけます

行基がひらき、弘法大師が再興させた古刹

受付の方の案内で、境内へ続く参道を上っていきます。

石段の参道脇には椎の巨木などが茂り、栃木県の天然記念物に指定されています
石段の参道脇には椎の巨木などが茂り、栃木県の天然記念物に指定されています
茎が円形ではなく四角形をしている、四方竹 (しほうちく) の林。西明寺のある高館山周辺は暖かい気候で、県内の他の地域では見られない植物が数多く生育しています
茎が円形ではなく四角形をしている、四方竹 (しほうちく) の林。西明寺のある高館山周辺は暖かい気候で、県内の他の地域では見られない植物が数多く生育しています
山の中だけあって、急な石段が続きます。上り切った先に、立派な建物が
山の中だけあって、急な石段が続きます。上り切った先に、立派な建物が

石段を登りながら、西明寺の起源を教えてもらいました。

西明寺は、奈良時代の737年に行基によってひらかれたお寺。行基の作った十一面観音立像が秘仏の本尊として安置されています。

782年には弘法大師が再興して隆盛を極めましたが、その後は戦乱などによって荒廃と再興を繰り返しました。

室町時代の1394年、益子の地を治めていた益子氏によって復興され、そのころ建立された3つの建築物が、国の重要文化財に指定されているそうです。

「西明寺は何度も戦火を受けましたが、そのたびに仏像など大切なものは他の場所に移動させ、守り続けてきたんですよ」

中世建築の魅力を味わえる、おすすめの見どころを3つ教えて頂きました。

見どころ其の一:中世建築らしさが色濃く出た「禅宗様」の楼門

階段を上りきると早速、国指定重要文化財の楼門と三重塔が現れました。

「楼門は室町時代後期の1492年建立で、中世らしい禅宗様 (ぜんしゅうよう) という建築様式を用いています。両脇には阿吽 (あうん) の2体の仁王様が立っています」

楼門は石段を上ってすぐのところに建っています。下から見上げる形となり、すごい迫力です
楼門は石段を上ってすぐのところに建っています。下から見上げる形となり、すごい迫力です
近づいてみると、、木の部材がたくさん見えます
近づいてみると、木の部材がたくさん見えます

「禅宗様 (ぜんしゅうよう) 」とは、日本の中世建築様式のひとつ。

他に「和様 (わよう) 」「大仏様 (だいぶつよう) 」と合わせた3種類が、中世建築の代表的な様式です。

和様とは、平安時代から日本国内で独自に進化してきた伝統的な建築様式のこと。他方、大仏様と禅宗様は、鎌倉時代に中国から新しく伝来した建築様式のことです。

この3つの建築様式は、屋根の裏側にある垂木 (たるき) という部材の配置の違いによって見分けられます。

和様は全て平行に配置されており (平行垂木) 、禅宗様は全て放射状に配置されています (扇垂木・おうぎたるき) 。大仏様では屋根の中心は並行に、四隅だけが放射状に配置されています (隅扇垂木) 。

また、大きく反り返った屋根も、禅宗様の大きな特徴としてあげられ、力強く男性的な印象を与えます。

屋根の裏側に放射状に広がる、扇垂木 (おうぎたるき) 。禅宗様の特徴をよくあらわしています
屋根の裏側に放射状に広がる、扇垂木 (おうぎたるき) 。禅宗様の特徴をよくあらわしています

見どころ其の二:日本で唯一の、「銅板葺」屋根が美しい三重塔

「三重塔は楼門よりも半世紀ほど新しい1538年の建立です。層によって建築様式が異なっているんですよ。

初層 (一番下の部分) は和様、三層は禅宗様で、間の二層はその両方を取り入れた折衷様 (せっちゅうよう) で作られています」

下から見上げると、木の部材の細かさに目がくらみそう。初層は平行垂木、二層と三層は扇垂木です
下から見上げると、木の部材の細かさに目がくらみそう。初層は平行垂木、二層と三層は扇垂木です

一般的に、塔の屋根は茅葺や瓦葺などが多いのですが、西明寺のものは銅板葺。しかも1枚の面ではなく、何段かに分けて葺いた板屋根の塔は、日本で唯一この三重塔だけだそう。

急勾配の屋根は、初層と二層は2段、三層は3段に分かれています。
急勾配の屋根は、初層と二層は2段、三層は3段に分かれています

ところで、三重塔は3階建の建物なのだとばかり思っていたのですが、そうではないようです。

「塔の中には真ん中に心柱 (しんばしら) が立っているだけで、階段もありません。内部は下から上まで、がらんとしています」

見どころ其の三:秘仏が安置される、本堂内の厨子

楼門、三重塔をじっくりと拝観したら、秘仏が安置されている本堂へ。

西明寺本堂。手前の紐で囲われた部分は、 両手・両膝・額を地面につけて礼拝する「五体投地 (ごたいとうち) 」をおこなった場所
西明寺本堂。手前の紐で囲われた部分は、 両手・両膝・額を地面につけて礼拝する「五体投地 (ごたいとうち) 」をおこなった場所

「本堂の中にある建物が、3つめの国指定重要文化財である、厨子 (ずし) です。西明寺に残る建築物の中で最も古く、室町時代前期1394年のもの。こちらも楼門と同じく禅宗様の建築物です」

秘仏である本尊の十一面観音立像はこの厨子の中に安置されており、その姿を見ることは出来ません。厨子の周りには鎌倉時代に作られたという、たくさんの仏像が並んでいます。

建物の中に建物が。黒漆塗の厨子の周りを仏像が取り囲み、まるで厨子とその中の本尊を守っているかのよう
建物の中に建物が。黒漆塗の厨子の周りを仏像が取り囲み、まるで厨子とその中の本尊を守っているかのよう
小さな作りながら、中世の建築様式が見られ、堂々とした佇まい
小さな作りながら、中世の建築様式が見られ、堂々とした佇まい

「本尊の十一面観音立像は、1200年以上の西明寺の歴史の中で、火災や廃仏運動の難を逃れるために持ち出されたり隠されたりしたため、数十年前の修復を終えるまでは両手がない状態だったんですよ」

十一面観音立像は、12年に一度「午の年」に御開帳され、一般の人も見ることができるそう。次は2026年です。

地獄の大王、こわーい閻魔様が笑っている?

中世建築を堪能した後、もうひとつの見どころを教えてもらいました。

「西明寺には、世にも珍しい『笑い閻魔』がいらっしゃいますよ」

案内されたのは閻魔堂。普段は外から覗くことしかできないそうですが、特別に中に入らせてもらいました。

閻魔堂の中には、大きく口を開けて笑う閻魔大王の姿が
閻魔堂の中には、大きく口を開けて笑う閻魔大王の姿が

本当だ、笑ってる…!

「閻魔大王は、本来は地蔵菩薩、つまり、お地蔵様の化身なんです。お地蔵様はいつも笑っており、真言は『ハハハ』という笑い声。だから、この閻魔様も、真言を唱えて笑っているんです。

ちなみに正面から見て左側にいるのが悪童子 (あくどうし) 、右側にいるのが善童子 (ぜんどうし) です。閻魔大王に、死んだ人の生前の行いを報告しています」

閻魔大王には死んだ人が天国・地獄どちらに行くのかを審判する役割があります。悪童子はその人が生前犯した悪行を報告し、善童子は生前の善行を報告するそう
閻魔大王には死んだ人が天国・地獄どちらに行くのかを審判する役割があります。悪童子はその人が生前犯した悪行を報告し、善童子は生前の善行を報告するそう

地元の人からも、「西明寺といえば笑い閻魔」と親しまれているのだとか。

西明寺だけでなく、益子には他にもたくさんの中世建築が残されています。

残りの4つの国指定重要文化財の建築物も巡ってきましたので、後半ではその様子をお伝えします。

<取材協力>
西明寺
栃木県芳賀郡益子町益子4469
0285-72-2957
http://fumon.jp/
※本堂内は拝観料300円

文・写真:竹島千遥

わたしの一皿 血湧き肉躍る

物申したいことがたくさんある。政治や環境、経済‥‥、いろいろありますけれどもね、今日はもっと小さなテーブルの上の話。みんげい おくむらの奥村です。

肉より魚派の私ですが、たまにはガツンと肉を食べたくなる。そんな時は簡単で、ズドンと肉を食べられるステーキを焼く。

 

物申したいのは、このステーキなのです。先に言っておこう。肉には罪はない。A5の和牛だろうと、赤身だろうと、オージー、US‥‥なんだろうと、どうぞお好みで。今日は宮城県の牛肉の「ザブトン」。

牛肉のザブトン

ちょっと奮発した。赤身と脂身がずいぶん美しいじゃないですか。赤身が好きなので脂はこれだけあればもう充分。

さてステーキの何に物申したいのかと言えば、それはもう圧倒的に「付け合わせ」。こんなことにムキになるのと言われそうだが、そりゃムキにもなる。どこへ行っても、何も考えずにんじん、じゃがいも、それにクレソン (もしくはインゲンか謎のパセリ) 、だ。

そこに季節はあるのかい。それが本当においしいのかい。じゃがいもやにんじんは今やスーパーに行けば365日買えない日はない。飲食店もそりゃ楽だろう。クレソンも最近じゃスーパーにも置いているが、これがなかなかお高いし、正直なところ味もさほど。

家でステーキを食べるなら、この妙な呪縛から解放されるべきでしょう。付け合わせなんて、季節の野菜で十分だ。ということで今日はシェフ奥村 (自称) が、3種の野菜を用意しました。

山形の温海かぶは甘酢漬けに。野菜の甘酢漬けは常備菜。何らかいつもあると便利。このかぶは色がきれいですね。よい口直し。今日は脂もしっかりした肉なので、大根おろしもほしいところ。冬に向かって大根がどんどんおいしくなる。これは地元千葉の大根です。

もう一種、の前に肉を焼く。主役の肉は常温に戻して、しっかり熱したフライパンで外をガリっと。

ホイルで包んで休ませて、好みの厚みに切るだけ。この見た目、もはやタタキ。実にニクニクしい。

牛肉を切っているところ

最後に、高知の甘長とうがらしは肉を焼いたあとの脂で炒めて、醤油でしっかりと味付け。肉は薄めの塩胡椒のみなので、一緒に食べれば醤油の香りが効いてきます。

付け合わせ、かぶと甘長とうがらしは実は見切り品だったのですよ。肉で贅沢。ここで節約。ふふふふふ。

肉も付け合わせもバチっと決まったらうつわ選び。意外とこれが悩ましい。洋食器はだいたいフラットなんですが、うちで取り扱う皿のほとんどはフラットではなく、深さがある。

これは登り窯で焼かれるうつわが多いからで、多くの産地のうつわが、平らだと土の質として、焼成の時にへたってしまって変形してしまう。なのでフチが上がった、少し深さのある皿が多い。せっかくステーキなので、今日は熊本のまゆみ窯にお願いしている平らなお皿を使いました。

牛肉と3種の野菜の付け合わせ

洋風な食材が増えたり、「ワンプレートで」なんてご飯のあり方から、こういったお皿の要望は多い。この皿は、パンの時にもよく使うし、おにぎりとおかず、なんて時にもかなり使い勝手がいい。

日本のうつわの風合いを持ちながら、現代的な生活に合うこんなうつわ。よいもんです。まゆみ窯は、窯元の真弓さんご夫妻が、熊本伝統の小代焼 (しょうだいやき) の窯元ふもと窯に学び、独立した。

民窯に習った確かな技術と、今の暮らしに添った形取りのバランスがよく、うつわ選びのスタートに実はとてもおすすめしたい窯元。

肉よりもうつわよりも付け合わせに熱くなった今回の話。せっかく熊本のうつわだから、熊本の牛肉があれば。と思ったけどうちの近くの肉屋で熊本の「あか牛」売ってるのは見たことがない。

熊本で以前いただいて、ほっぺた落としてきた肉なので、熊本に行かれる用事のある方はぜひ「あか牛」もお試しください。

奥村 忍 おくむら しのぶ
世界中の民藝や手仕事の器やガラス、生活道具などのwebショップ
「みんげい おくむら」店主。月の2/3は産地へ出向き、作り手と向き合い、
選んだものを取り扱う。どこにでも行き、なんでも食べる。
お酒と音楽と本が大好物。

みんげい おくむら
http://www.mingei-okumura.com

文:奥村 忍
写真:山根 衣理