【四季折々の麻】6月:梅雨の景色に揺れる涼やかな皺生地「麻の皺」

「四季折々の麻」をコンセプトに、暮らしに寄り添う麻の衣を毎月展開している中川政七商店。

麻といえば、夏のイメージ?いえいえ、実は冬のコートに春のワンピースにと、通年楽しめる素材なんです。

麻好きの人にもビギナーの人にもおすすめしたい、進化を遂げる麻の魅力とは。毎月、四季折々のアイテムとともにご紹介します。

たっぷりと入った皺が涼やかに揺れる「麻の皺」

6月は「水無月」。自然にとっても人にとっても大切な雨を願う、水の月です。

じめじめと蒸し暑く、外に出かけるのが少し億劫になる時季ではありますが、日本の雨の季節を心地よく過ごし、夏を愉しんでいただけたらと雨の景色を思わせる麻の服をつくりました。

ラインアップは「ワンピース」と「羽織ブラウス」、「ロングスカート」。ランダムに入ったシワ感を存分に味わっていただけるよう、生地の表情を楽しめる3つのアイテムでお届けします。

3年前に登場し夏の定番となった本シリーズ。今年は紫陽花のように華やかな、紫色を新色として加えました。

【6月】麻の皺シリーズ

麻の皺 ワンピース
麻の皺 羽織ブラウス
麻の皺 ロングスカート

今月の麻生地

本シリーズに用いたのは、雨の風景を思わせる縦のラインが印象的なリネン100%の生地。高密度に織り上げた生地はやわらかさとハリ感をあわせ持ち、長い季節で着ていただけます。

リネンのさらりとした生地感に加え、表面にシワがあることで肌へあたる面積が少なく、清涼感のある風合いに。湿気の多い梅雨の季節でも心地よく着られます。

特徴的なシワ加工は麻の加工が得意な滋賀・湖東の生地加工屋さんによるもので、きちんとつけられたプリーツ加工ではなく、ランダムに入ったシワのため、纏うと自然な印象に。薬品や樹脂を使わず、環境にやさしい加工法を採用しており、染めから加工まで多様に手がける作り手さんならではの技が光ります。

麻独特の艶が、シンプルながらも上品な印象を添えてくれるほか、もともとシワがあるため着用中にシワができても気になりにくく、お手入れもアイロンなしで着られるのもよいところ。クシュクシュとねじると小さくまとまるので、持ち運びの際にも便利な生地感です。

お手入れのポイント

ご家庭で手洗いしていただけます。干すときは軽く縦方向に引っ張りながら、シワの形状を整えて吊り干してください。

アイロンでぎゅっとプレスするとシワが伸びるてしまうため「アイロンNG」としていますが、畳みジワが気になるときは少し霧吹きして縦に伸ばして撫でていただくか、スチームタイプのアイロンを生地から浮かせてお使いください。

なお洗濯と着用を繰り返すことで、少しづつシワの加工は弱くなっていきますが、干すときに整えていただいたり、ねじってシワを入れることで、麻素材の特徴により長くシワ感をお楽しみいただけます。

また先にもお伝えしましたが、クシュクシュと小さくまとめてコンパクトに持ち歩けるのもこのアイテムのポイント。ざっくりと生地をたぐり寄せてねじった後にゆるめると、真ん中あたりで自然と輪ができ、そこからさらにねじると一つにまとまっていきます。

羽織をクシュっとまとめれば外出時のバッグに忍ばせやすく、旅行のパッキングにも便利です。

※長期保管の場合はまとめておくと嫌なシワが入る可能性があるため、広げて保管ください。

長い夏で気軽に着られる

ご用意したのは「ワンピース」と「羽織ブラウス」、「ロングスカート」の3アイテム。たっぷりとしたシワ生地と相性がよく、気軽にさっと手にとれて、長い夏で着られるラインアップを企画しました。独特の生地感のため、コーディネートの主役になる一枚としてご着用いただけると思います。

なお、もちろんいろいろなコーディネートでお楽しみいただけるのですが、デザイナーとしてイチオシなのは、生地の表情が引き立つ素材との組み合わせ。生地の凸凹が少ないさらりとした素材と合わせると、素材の対比がありシワ感が生きるのでおすすめです。

中川政七商店の「強撚綿」シリーズのトップスや、「麻の夏布」シリーズのパンツと合わせると相性よし(写真のハイネックプルオーバーは7月下旬頃の入荷予定)

色展開は昨年から継続となる「生成」と「墨」に加え、今年は梅雨空にも映える色鮮やかな「紫」もつくっています。シンプルで着まわしやすい色みと、一枚で主役になる色み。お好みに合わせてお選びください。

ワンピースは丸みのあるシルエットで、裾がすこしすぼんだコクーン型。Vネックの開きが開けすぎず狭すぎず、きれいに見える形となるよう調整しています。

羽織ブラウスは、Tシャツやタンクトップの上にさっと気軽に羽織っていただけるようにと作ったもの。冷房の肌寒さから守ってくれるのはもちろん、襟元を覆うので日除けにもちょうどよい形です。

ロングスカートはシワ感がいちばん生きる代表的なアイテムとして作っています。ウエストのギャザーからランダムに降りたシワがきれいに見えるよう、ボリューム感にこだわって調整しました。

素材自体が呼吸をしているような、気持ちのよさがある麻のお洋服。たくさん着ると風合いが育っていくので、ぜひ着まわしながら愛用いただけると嬉しいです。

「中川政七商店の麻」シリーズ:

江戸時代に麻の商いからはじまり、300余年、麻とともに歩んできた中川政七商店。私たちだからこそ伝えられる麻の魅力を届けたいと、麻の魅力を活かして作るアパレルシリーズ「中川政七商店の麻」を展開しています。本記事ではその中でも、「四季折々の麻」をコンセプトに、毎月、その時季にぴったりな素材を選んで展開している洋服をご紹介します。

特集サイト:中川政七商店の麻

ご紹介した人:

中川政七商店 デザイナー 杉浦葉子

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【わたしの産地旅】日本最古の柑橘「大和橘」の産地へ

中川政七商店の制度に2024年度より加わった「産地視察支援金制度」。こちらは日本各地の産地を深く知り、工芸の奥深さを体感できる機会の支援をすることが、ひいてはビジョンの「日本の工芸を元気にする!」につながると考え、はじまったものです。

日本のものづくりへの興味から、日頃からプライベートでも産地へ足を運ぶスタッフが多い当社。この制度を利用しながら産地を訪れたスタッフの声をお届けします。


こんにちは! 

中川政七商店 奈良本店1階にて、奈良の風土を紹介する「奈良風土案内所」を運営している大山と木村です。

突然ですが、みなさんは「大和橘(やまとたちばな)」をご存知でしょうか?

古くから日本に自生していた固有種の柑橘類で、万葉集や古事記にも登場するほど長い歴史を持ち、“日本最古の柑橘”とも言われています。2000年前、不老長寿の妙薬として常世の国から持ち帰られた、なんていう伝説もあるんです。日本のお菓子のルーツとも言われているそう。

雛人形の飾りにある「左近の桜、右近の橘」や、500円玉硬貨にも描かれていたりと、実は意外と身近な存在。でも、実物を見たことがある方は少ないかもしれません。

それもそのはずで、大和橘は現在、準絶滅危惧種に指定されている、とても希少なものなんです。昔は九州から静岡あたりまで、暖かい海流のそばにたくさん生えていたようですが、炭焼きの材料として伐採されたり、食用部分が少ないからと育てる人がいなくなったりと、様々な理由で数が減ってしまったんだとか。

そんな歴史ある大和橘を復活させようと、約14年前に奈良県大和郡山市で立ち上がったのが「なら橘プロジェクト」さん。植樹、育成、収穫を通して、大和橘を守り広める活動をされています。

今回、「なら橘プロジェクト」さんが運営している大和橘の果樹園を訪ねてきました。

果樹園を訪れた5月中旬ごろは、ちょうど大和橘の花が満開の時期。

「柑橘系の花には蜂がたくさん来るから、庭に植えたら大変だよ〜」と母から聞いていたので、ミツバチがたくさん飛んでいるのかな?くらいの気持ちで行ってみたら……なんと! ものすごい数のクマバチが!! 写真だと全然写らないのが残念なのですが、現地ではブーーーーンという羽音が四方八方から聞こえてきて、立っているだけでクマバチとぶつかりそうになるほど。

「なら橘プロジェクト」代表の城さん曰く「原種だからか、とても花の香りが強くて、どこからか虫たちが集まってくるんです」とのこと。クマバチだけでなく、アゲハ蝶やミツバチなど、いろんな虫たちが一生懸命に花粉を集めていました。

クマバチたちにドキドキしながら木に近づくと、爽やかで華やかな香りがふわ〜っと香ってきました(虫さん大量飛来も納得の香り)。

まだ果実は実っていませんが、葉っぱと花弁も食べられるとのことなので、ありがたく試食させていただきました。

葉を噛んでみると、とっても清々しい香り!見た目よりも柔らかく、苦味よりも爽やかさが際立つ感じ。最後にほんのり、ピリッと山椒のような風味がしました。お魚料理と合わせても美味しそうだし、食後にそのまま噛んでリフレッシュするのもいいかも!と思うほど爽やかでした。

大和橘の花弁

花は葉っぱとは違って、口いっぱいに広がる甘いフローラルな香り。少量でも香りが強くて、ジャスミンに似た優しい風味。上品で華やかで、城さん曰く「香水を含んだかのよう」と表現されることが多いんだとか。

これから実になる部分

これから実になる部分もいただきました。小さいのに、噛み締めると香りと味がぎゅっと濃縮されたような、インパクトのある味。苦味が強いのですが、嫌味のない爽やかさと、ほかの柑橘にはないスパイシーさを感じました。

8月ごろに青い実がなり、11月ごろに色づき始め、12月に収穫を迎えます。農薬を使わずに栽培されているため、これからの時期は草刈りが大変なんだとか。

また、カミキリムシの幼虫に幹や根を食われて、木が丸ごと枯れてしまうこともあるそうで…。

収穫量は1本の木からおよそ10キロ前後ですが、年によっては約7キロまで落ち込む時も。同じ柑橘類のミカンの平均が60~70キロ前後と言われており、いかに希少なものかが分かります。

そんな貴重な大和橘を贅沢に使用した大和橘めん、大和橘こしょう、大和橘醤油を、中川政七商店 奈良本店1階の奈良風土案内所にて、6月3日から期間限定で販売いたします。

大和橘醤油
大和橘こしょう
大和橘麺

特におすすめなのは、大和橘麺。袋を開けた瞬間から香りがふわっと漂ってきて、爽やか。茹でてみると麺の黄色がどんどん鮮やかに変化します。

麺のもちもち、つるっとした食感とソースが良く絡み、最後にはふわっと香りを残していく。最初から最後まで香りで楽しませてくれるこちらの麺、ぜひ皆さんにも召し上がっていただきたい1品です。

ジェノベーゼにして食べてみました

このほかにも、奈良エリア限定で、大和橘の葉と果皮を使った「大和橘番茶」も発売中です!ほのかにスパイシーな風味があるのが大和橘ならでは。水だしにするととても美味しいです。

6月からの奈良風土案内所は、大和橘を使った商品のほかにも「涼を感じるうまいもの」をテーマに、奈良の素麺やくずゼリー、シロップなど、夏に食べたくなる奈良の美味しいものをたくさんご用意してお待ちしております。ぜひ奈良にお立ち寄りの際は、中川政七商店 奈良本店へお越しくださいませ。

奈良風土案内所の詳細についてはコチラの記事をご覧ください。
【中川政七商店 奈良本店】中川政七商店による初の観光案内所「奈良風土案内所」がオープン

文:中川政七商店 奈良本店 大山/木村