【はたらくをはなそう】中川政七商店 店長 島袋悠真

島袋悠真
中川政七商店 アミュプラザ長崎新館店 店長

2022年 中川政七商店 マークイズみなとみらい店 店舗スタッフとしてアルバイト入社
2024年 社員登用 エキスパートスタッフ
2024年 中川政七商店 二子玉川ライズ店
2025年 中川政七商店 金沢百番街Rinto店 店長
2026年 中川政七商店 アミュプラザ長崎新館店 店長


小さい頃から、合気道、書道、空手道など「道」のつくものに親しんできました。どれもすぐに結果が出るものではなく、肝心なのは日々の積み重ねと、それにどう向き合い続けるかという姿勢そのもの。そうした経験を通して、目の前のことに丁寧に向き合い、続けていくことの大切さを自然と学んできたように思います。

はじめて中川政七商店の店舗を訪れたときの接客は、今でも強く心に残っています。

商品そのものだけでなく、産地や職人さんの想い、ものづくりの背景まで丁寧に伝えてもらい、「こんなふうに想いを届けられる販売スタッフになりたい」と感じました。

もともと日本の文化やものづくりに携わりたいという気持ちがあり、その想いと重なった瞬間でした。

現在は店長として、接客をはじめ、スタッフの育成や売り場づくりなど、日々の店舗運営全般を担っています。正直に言うと、店長としてはまだまだ駆け出しです。社員登用の際に「1年以内に店長を目指します」と宣言し、そのちょうど1年後に店長の話をいただいたときは、不安とワクワクが入り混じった気持ちでした。

初めての店長。初めての土地。

それでも、先輩店長や上司に相談でき、きちんと話を聞いてもらえる環境に支えられ、良いスタートを切ることができたと感じています。

仕事をする上で大切にしているのは、こころばです。特に「ベストを尽くすこと」と「楽しくやること」をいつも大切にしています。

どんなときも自分なりに考え、できる限りのベストを尽くす。その上で、楽しみながら取り組む。そうした姿勢こそが、良い店づくりの土台になると考えています。

中川政七商店には、「やってみたい」と声に出せば耳を傾けてもらえる環境があります。これからも新しいことにも挑戦し、視座を高めていきたいです。

そして、「道」で学んできた姿勢を大切にしながら、目の前のお客様やスタッフと誠実に向き合い、日々の接客や売場づくりを積み重ねていきたいと思います。まだまだ道の途中ですが、店長として、お客さまと作り手の想いが届くお店を目指していきたいです。

「日本の工芸を元気にする!」というビジョンに向かって、これからも一歩ずつ進んでいきたいと思います。

<愛用している商品>

野菜がたくさん食べられるひとり土鍋

おすすめ理由:一人暮らしを始めたときに、はじめて購入した土鍋です。野菜をこんもり盛ることができ、そのまま蓋をうつわ代わりにして食べれば洗い物も少なく済みます。土鍋ならではの熱々の状態のまま、最後まで冷めずに食べられるのも嬉しいポイント!冷凍うどんがすっぽり入るサイズ感も使いやすく、気づくとつい手に取ってしまう、お気に入りの土鍋です。

すっきり爽やか 青柳番茶

おすすめ理由:さんち修学旅行で茶畑を訪れたことをきっかけに、飲み続けている番茶です。
実際にものづくりの現場を訪れ、職人さんの話を聞く中で、毎日のお茶時間を大切にしたいと思うようになりました。ティーパックで手軽に淹れられ、仕事の日は水筒に入れて持ち歩いたり、日常の中で気軽においしいお茶が楽しめます。毎日の中で、ほっと落ち着く時間をつくってくれる番茶です。

荒れ性用花梨の化粧水

おすすめ理由:お店のスタッフさんが愛用していると聞き、使い始めた化粧水です。
ベタつきが少ないのに、肌にすっとなじんでしっとりとした使い心地で、毎日のお風呂上がりにも無理なく使えます。



中川政七商店では、一緒に働く仲間を募集しています。
詳しくは、採用サイトをご覧ください。

食卓のうつわはどこから来るのか、どこへ還るのか。ものづくりを未来につなぐ「土」のはなし

私たちが暮らしの中で愛用している、工芸の品々。

なかでも、毎日の食卓を彩るうつわたちは、特に身近な存在のひとつ。

そんなうつわの原料について、深く考えたことはあるでしょうか?

職人の手によって作られていることはわかっていても、その手前の原料となる「土」は一体どこからやって来るのか。逆に、役目を終えたうつわはどこへ還るのか。

美濃焼の産地、岐阜県多治見で「土」をめぐる課題に向き合い、さまざまな取り組みを進めている株式会社井澤コーポレーションの代表 井澤秀哉さんに話を聞きました。

中川政七商店が新たに始動した「“工芸のしまいかた”を考える循環プログラム『C KOGEI(シー コウゲイ)』」を担当する羽端が聞き手を務めます。


枯渇しつつある、世界で唯一無二の奇跡の「粘土」

羽端:昨年、井澤さんたちが主催されている「土談(つちだん)」*というイベントに参加させていただいて、「土」が置かれている危機的な状況を知りました。「土」に対する課題はいつ頃から意識されていたのでしょうか?

※土談:地域の「土」に着目し、その価値や課題を共有しながら、次のものづくりの可能性を探るための新しいコミュニティ。土を知り、土を語り合い、土から学ぶことで、これからのものづくりや地域産業のあり方を考えることを目指す。

井澤:実は私も、2017年に鉱山会社の社長さんから「このままいくと陶磁器に使う『土』、特に『粘土』が枯渇する」という事実を教えてもらうまではまったく意識していませんでした。産地の中でもほとんどの人がそうだったと思います。

土が枯渇するとは誰も知らずに、どんどん掘っていた。そこで、まずはこの事実を産地の中でシェアしないといけないよねと。

今このあたりで掘られている「土」は、琵琶湖の6倍の大きさだったともいわれる「東海湖(とうかいこ)」が存在した時代のもの。その「東海湖」をひとつの産地として捉えると、萬古焼も瀬戸焼も常滑焼も美濃焼も、同じ「土」を使う仲間じゃん!となって、有志が集まりました。

それが「東海湖産地構想」。そして窯業に携わるすべての人に「土」の現状や課題、ポテンシャルを自覚してもらおうと始めたイベントが、羽端さんも参加してくれた「土談」なんです。

株式会社井澤コーポレーション 代表取締役 井澤秀哉さん。
うつわの製造販売からスタートした同社の四代目。雑貨マーケットへの参入や、陶磁器デザイン会社の設立など新たな試みを積極的に展開。「東海湖産地構想」や「セラミックバレー構想」など、「土」をコンセプトにした地域ブランディングの活動にも力を注ぐ。陶磁器という枠を超え、街の課題解決のために複合施設「THE GROUND MINO」を開発し、運営している。
「土」をコンセプトにした複合施設「THE GROUND MINO」 
街・窯業・料理人の3つの課題を解決するための、ショップやギャラリー、陶芸工房、シェアキッチンなどが入る。

羽端:実際に鉱山にも案内していただいて、最初はその規模感に圧倒されて。これだけたくさんの「土」があるのに枯渇するの?という感覚をもったくらいです。でも詳しく伺ってみると、そんなに単純な話ではないということが分かってきました。

中川政七商店 羽端

井澤:ひとつの鉱山から採れる土は、陶磁器用のものだけじゃないんですよね。どんな土でも焼けばそれなりに固まりはしますが、うつわ作りには適していない。陶磁器に最適な「土」となると、形状をキープする可塑性や耐火性が必要になる。

なかでも蛙目(がいろめ)、木節(きぶし)と呼ばれる「粘土」は、世界中探してもこの東海地区でしか採れない貴重なものなんです。陶磁器の「土」は、粘土・長石・珪石の3つの要素からできているんですが、ここに蛙目を少し混ぜるだけでも成形性が良くなる、いわば魔法の「粘土」なんですね。

マグマが冷えて風化した花崗岩が流れていった先に「東海湖」があったおかげでそこに堆積して。奇跡的なプロセスをふみながら何百万年もかけて醸成され、「粘土」へと変化していった。でも、それがこのままだと枯渇するという話なんです。

実際に案内していただいた、多治見の鉱山
かつて「東海湖」の一部だった鉱山にて
500万年前から600万年前とされる貴重な粘土層。蛙目や木節と呼ばれる「粘土」が採れる

陶磁器は、二度と「土」には還らない

羽端:「土」が枯渇してしまうということもそうですが、陶磁器は「土」に還らないというお話も聞いて、さらに驚きました。自然素材なので、それこそ庭に置いておけばいずれ「土」に戻るものだと、なんとなく思っていたので。

井澤:役目を終えた陶磁器の処理も、大きな課題のひとつです。多くの方が「土」に還るイメージを持たれていますが、高温で焼きしめた陶磁器が自然に「土」に還ることはありません。遺跡などで、一万年前の土器が出土しているのはそういうわけなんです。

自治体が回収してリサイクルする仕組みもありますが、現状は廃棄物として埋め立てられているもののほうが多くなっていて。埋立地のスペースを圧迫するだけでなく、微生物などの生物多様性を奪っていくことにもつながると、専門家も警鐘をならしています。

「土」は地球から窯業界に託された素材です。何百万年経っても「土」には還れないことを理解したうえで、「土」を扱い「土」を焼くという責任を、作り手は持たないといけない。ここに向き合わない限り、次の世代につないでいくことはできないと思っています。

「土」のことを語っていくと、自然と環境のことに繋がっていくと語る井澤さん

リサイクル(再利用)からサーキュラー(循環)へ

羽端:「THE GROUND MINO」の入り口に回収ワゴンがありましたが、美濃では、不要食器の持ち込み、回収が日常的におこなわれているんでしょうか。

電化製品やペットボトル、最近ではアパレルなども、回収が当たり前という感覚になっています。それと比べると工芸の世界はまだまだと感じるので、全国的にそうした機運が高まれば良いなと。

「THE GROUND MINO」入り口にある回収ワゴン。地域の人が不要なうつわを持ち込み、使用不可能なうつわは細かく粉砕してリサイクル陶器「セルベン」に。

井澤:美濃では、30年近く前から不要食器の回収・リサイクルの活動があり、不要食器を粉砕したリサイクル陶土(以下、「セルベン」)や、それを20%ブレンドしたリサイクル陶磁器の開発も行われてきました。

ただ、ものづくりを取り巻く状況が変化していく中で、リサイクルという言葉だけに捉われず、資源も含めた循環を意識した「サーキュラーエコノミー」へのアップデートが必要ではないかと話し合っているところです。

サステナブルやリサイクルという機能ばかりに価値を求めすぎるのもいけないというか。たとえば、「セルベン」を調合する割合が20%に満たなくて「リサイクル陶磁器」の定義から外れるとしても、3%でも5%でも、技術的なことも含め無理なく作りやすい調合で「サーキュラー」させていくほうが大事だと思っています。

羽端:なるほど。それぞれの状況に応じた循環をまず実践していくというか。そこにきちんと魅力や価値が生まれていくとなおよいですよね。

井澤:「東海湖産地構想」の仲間とともに、新たな商品の開発なども進めているところです。

また、この「GROUND MINO」を拠点にして、美濃の魅力につながるものを展示したり、地元の若手作家のうつわを販売したり。併設のキッチンスタジオで料理人の方々とコラボしつつ、うつわと料理の関係をみんなで学んだり。エンドユーザーさんに陶芸体験を通して土の価値をお伝えしたり。さまざまなことに取り組んでいければ。

「土」の問題を抜きにしても、全国の窯業の衰退は1990年後半から起きていて、今もその流れは止められていません。もし僕たちの構想がうまく機能した時には、ほかの産地にもその成功体験をシェアする活動ができたらいいなと思っています。

レストランなどのマーケット向けのうつわの展示(THE GROUND MINO)
土の特徴や魅力が伝わる展示もあり、ミュージアム的な側面も(THE GROUND MINO)
陶芸体験ができるスペース(THE GROUND MINO)
「東海湖産地構想」に参画している美濃焼の窯元「晋山窯ヤマツ」が開発した花器「Crunch vase(クランチベース)」。あえて粗く粉砕した「セルベン」を混ぜた独特の表情が人気(2023年グッドデザイン賞 受賞)
晋山窯ヤマツ株式会社 代表取締役 土本正芳さん。作り手として、ものづくりを循環させることと、消費者にとっての価値になることを両立させるために日々思考錯誤を繰り返している。

消費者も、「資源提供者」として工芸の担い手に

羽端:ちょうど、中川政七商店らしいサステナビリティについて議論していた時期でもあり、美濃の話は本当に興味深く、社内でも刺激になりました。

これまで、「日本の工芸を元気にする!」をビジョンに掲げて産地や作り手さんたちを支援してきましたが、工芸の始まりである「原料」を意識することは少なかったのが正直なところです。

陶磁器以外の商品もたくさん扱っている中で、まずうつわから「C KOGEI」をスタートさせたのは、井澤さんたち産地の方々が自ら課題解決のために発信されていたのが大きかった。昨年の夏から、実際に相談にも乗っていただいていました。

井澤:私たちもプロジェクトを進める中で、情報を産地内でシェアするだけでは、なかなか行動につながりにくいこともあります。中川政七商店さんが「C KOGEI」のような取り組みを始めて、やらなくてはいけないことだと言ってもらえると、まだ行動できていなかった産地の関係者が動き始めるきっかけにもつながっていくんです。ありがたいことだと思っています。

羽端:こうした取り組みをお客さまへどう伝えていくかなど、アドバイスがあればぜひお聞かせいただきたいです。

井澤:そうですね。私たちは最初に「消費者参加型のものづくり」だと伝えています。中川政七商店さんに、割れたり不要になったりした食器を持っていった時点で、そのお客さまはもう「資源提供者」なんです。

そうして受け取った資源を産地に返してものづくりをスタートさせる。お客さまが参加してくださってはじめて「サーキュラー」なものづくりが始まるんです。

羽端:なるほど、そして作り手を経て、再びうつわとなってお客さまの元に還ってくる。難しいことは考えずとも、工芸の担い手になっていけるんですね。

井澤:まだ使えるうつわに関しては、金継ぎなどをして再販もできますよね。

そこにも次の価値が生まれる余地があるなと思っていて。たとえば、古い産地の食器に現代のアーティストが絵を描くと、今までにない面白さが生まれる。一万年以上持つ素材ですから、世代を超えてリメイクしていく面白みが残っていくと思うんです。

羽端:何百万年前の奇跡の「土」で作ったうつわを、現在の私たちが使っているという時点でロマンを感じています。それに手を加えて100年後に誰かの手に渡り、さらに手を加えてずっと継ぎ足されていく。ものづくりの循環に、すごくポジティブに向き合えそうな気がします。

100年単位で遊ぶつもりで「サーキュラー」していく、そんな当たり前の未来を、皆で作っていきたいと思います。本日はありがとうございました。

廃棄される陶器を美濃で粉砕したリサイクル陶土「セルベン」で作った庭

<関連する特集>
「“工芸のしまいかた”を考える、 循環プログラムC KOGEI」

<取材協力>
井澤コーポレーション
晋山窯ヤマツ

文:石田多美
写真:阿部高之

和食器を面白く!愛と情熱の「うつわ研究所」座談会

「大切な人に美味しく食べてもらいたい。ともに楽しい時間を過ごしたい」

昔ながらの和食器には、人を思いやる気持ちが込められています。

そんな和食器を今の暮らしに合わせて再解釈し、あらためてその魅力や楽しみ方を伝えていきたい。そう考えて、うつわを愛してやまない工芸デザイナーが集い、始まったのが「うつわ研究所(うつわ研)」の活動です。

メンバーは、Oji&Design代表の大治さん、中川政七商店の榎本、岩井、大久保。この4名が定期的に集まって議論を交わし、時には産地の現場を訪れながら和食器について考えた結果、第一弾の商品として作ったのは「蓋もの」でした。

今回、今の時代の新たな「蓋もの」として「玉手どんぶり」「おめかし重」という2アイテムが発売されるタイミングで、「うつわ研」のメンバーによる座談会を開催。普段の活動やうつわに対する想い、商品開発の苦労などについて話を聞きました。

「工芸は楽しい!」が伝わるうつわを

—うつわ研がスタートした経緯を教えてください

榎本:社内で今後の「うつわ」作りについて検討していた中で、産地に根ざした手工業デザイナーとして、多くの生活道具を生み出してきた大治さんとご縁があって。なにかご相談できないかなと思ったのが最初ですね。そこからこのメンバーが集まって2025年4月にスタートして。毎月のように集まったり産地を見に行ったりしてきました。

中川政七商店 榎本雄

大治:うつわ研をスタートするにあたって僕から皆に伝えたのは「もっと”中川政七商店らしさ”のあるうつわを作ってもいいんじゃないか」ということでした。

店舗に並んでいる商品を見ていて、産地を応援したいことは伝わってくるし、佇まいも良い。だけど、どこかで遠慮も感じたんですよ。

産地に寄り添いすぎると「この産地はどんぶりを作ってるから、今回も作りましょう」と、手段が目的化してしまう。そうじゃなくて「この時代に和食器を使う意味を考えると、普段のどんぶりじゃなくてこれかも」みたいな提案をしていくというか。そんなことをやりたいなっていう話をしました。

大治 将典(手工業デザイナー/Oji & Design 代表)

日本の様々な手工業品のデザインをし、それら製品群のブランディングや付随するグラフィック等も統合的に手がける。手工業品の生い立ちを踏まえ、行く末を見据えながらデザインしている。

大久保:確かに「この産地はこういう物が得意だから、それを作る」という思考で固まってしまっていたなと思って。

産地の良さを活かすことは大切なんですが、一歩引いて俯瞰で見ることで、本当に必要としていることが分かって、逆に作り手との距離が近くなることもあるんだなと。「うつわ研」の活動を通じて、そんな気づきがありました。

中川政七商店 大久保優希

—第一弾として「蓋もの」を作った理由は?

大治:中川政七商店らしさとはなにかと考えた時に、「工芸を元気にする」ことだという話になって。じゃあ「工芸を元気にする」ために、「工芸は楽しい!」が伝わるうつわを作るのがいいんじゃないかと。

単に「使いやすい」ではなくて、「使いこなしてみたい」もの。手にしたお客さんが能動的に変わっていけるようなものがいいよねって。

「蓋もの」は、電子レンジや冷蔵庫も無かった時代には、食事を保温するために必要だったし、保存容器としても重宝されていたんです。

時代が変わって、そういう和食器ならではの形が必要とされなくなった。でも、たとえば蓋を持ち上げた時、料理の湯気が上がる瞬間には感動がある。そうやって視点を変えれば、うつわの持つ佇まいが喜びや楽しさに変わるようなことはまだまだたくさんあるはずで、それを探していこうよと。

榎本:自分たちで考えていた時は、蓋があるうつわを提案していこうとはまだ思えていなくて。大治さんとご一緒して、その部分が楽しさとか価値になるということに気づけたのは収穫でしたね。

日本人の暮らしと和食との間に距離ができている中で、うつわから入って食事の楽しさに気づくこともあるはずなので、そういったものを作りたいと思いました。

岩井:洗い物もふたつになるし、ものづくりとしても複雑になるし、どちらかと言えばネガティブに捉えてしまいがちなところを、敢えてポジティブに楽しもうという視点にはっとしたというか。すごく腑に落ちました。

中川政七商店 岩井美奈

使い勝手よりも、エモーショナルが少しだけ勝る「和食器」づくり

―「玉手どんぶり」について、どんな風に考えて開発を進めたのでしょうか

大治:「蓋もの」のどんぶりが今の生活にフィットして使えるか考えてみた時に、遅く帰ってくる家族のために、ご飯を盛って蓋をして冷蔵庫に入れておけば「このままチンできますよ」とか。ラップをかけなくても大丈夫とか、そういう便利な方向にも割と使えそうだなと。

被せの蓋なので、小ぶりに見えて意外と容量があることとかも、使い勝手がよい。その辺りは榎本さんがすごく細かい部分のデザインやサイズを突き詰めたからこそ出来上がっていると思っています。

その上で、湯気がブワーッと出る楽しみっていう情緒的な面白いところもあるし。使い勝手も結びつきつつ、最後のところではエモーショナルが勝つような、そこのバランスはとても大事に考えました。

試作検討を重ねて、徐々に出来上がっていった新しい「蓋もの」のかたち

榎本:僕の方ではサイズ感をどこに絞るのかっていうのは結構悩みました。どうしたら手軽に感じてもらえるか。いかに親近感を持ってもらえるか。

形状も切立(きったて)に近くして容量も稼ぎつつ、ご飯の盛りやすさにもつなげたりとか。

大治:普通に見えるけど、ぜんぜん普通じゃないんだよね。

榎本:そうなんです(笑)。この蓋の形自体も気に入っています。ありそうで無い形。やっぱり、蓋が美しいということは、パカっと開けた時の喜びに繋がると思うので。博物館へ行って「奈良茶碗」をリサーチしてみたり、本当に‟研究”しながら作っていきましたね。

実際に料理を入れて使ってみましたが、湯気が出るときは本当に美しくて。ああいう体験を皆さんにしてもらいたいなと思いました。

絵付けも、あえて釉薬がちょっと滲むようなものを意図的に狙っていて。一つひとつが違って見えてくるっていうところをメーカーさんと一緒にできたのは良かったですね。手の跡が感じられるものはやっぱり面白いです。

伝統的なうつわの形状やデザインをあらためて研究

――おめかし重についてはどうでしょうか

大治:苦労しましたね。最初は普段の使い勝手を意識していたけど、最終的に‟ハレ”の方向にギュッと寄せた。

岩井:ハレとケのバランスを取ろうとして、ずいぶんぐるぐる行ったり来たりしました(笑)。

お重というものの性質をあらためて考えてみると、お花見や運動会、おせち料理など、誰かと一緒に楽しむ際に使われてきたうつわなんですよね。

そこに気づき始めた時に、やっぱり‟ハレ”かもって。お正月だけじゃなくて、日常の中の小さな特別の時に使いたくなる‟ハレ”感を出せればと腑に落ちて。

あとは自分でも毎日のように使ってみながら、「これだと小さいかも」「あと5mmあればもうふたつお皿が入るのに」とか、使いこなす楽しみみたいなものを体感しながら開発できました。皆さんにもそういった楽しみを、使いながら見つけてもらえれば嬉しいなと思います。

大治:諦めずに形になって本当に良かった。料理が美しく見えるように蓋の小口を斜めに切って、その角度も蓋がずれない最適な傾斜を追及して。細かいところも工夫が行き届いている。

守破離で言うところの「守」だったお客さんが、「破」にジャンプするためのジャンプ台というか。そんな商品になっているんじゃないかと思います。

誰かを想う気持ちが込められたうつわで、暮らしを楽しくする

―今回、和食器に向き合って気づいたことは?

榎本:和食器の意匠とか形状って、大切な人に食事をどう届けるか、どう一緒に楽しむかということがすごく考えられてきたんだなと思いました。

冷めないように美味しく食べてもらいたいから蓋があって、開けた時の湯気もそうだし、蓋の裏にちょっとした絵が描いてあったりする驚きもあって。誰かを想う気持ちを形にしてきた。そこを深堀りしていくと、新しい価値が生まれるんじゃないかなと。

大治:装飾イコール悪じゃなくて、思いやりみたいなことになったらとてもいいと思うんですよ。こんな感情になってもらいたい、自分もこうなりたい、みたいなことがあるから、その線やデザインが決まっていくわけで。

柔らかい線だったら柔らかい気持ちに多分なるだろうし。

岩井:「おめかし重」も、開発中に家で出してみると、いつもと違うものが出てきた時の「うわぁー!」という反応があって。

大治:喜んでくれるよね。

岩井:喜びがあって、場の空気が変わる。すごい力を持ってるなというのは純粋にありました。でも、なんていうか、それが普段のほかのうつわとなじんでいる状況が豊かだなぁと思ったんです。

ひとつあるだけで空気は変わるけど、違和感が強すぎても無理があるというか。なので少しずつ、ちゃんと愛されて続いていくものを「うつわ研」としてひとつふたつと増やしていけると、健やかに混ざっていくんじゃないかっていうのを感じながらやっていました。

大久保:僕は今回、このチームで色々な現場に行ったり、打ち合わせを重ねたりする中で、デザインに関する考え方が少し変わりました。

デザインを考えるとき「こういう形がきれいだな」という理想をもって進めるんですが、素材の特徴や作り手の個性の影響を受けるので、100%デザイン通りには仕上がりません。その時に、「デザインと違うからこう修正して」ではなく、「こっちの方が(自分のデザインよりも)良いな」と思えたというか。なぜ完成品の方が良いのかを判断できるようになった感覚があります。

大治:よい変化だと思います。デザインしたものをその通りに作ってくださいというのはものづくりではないんですよ。デザインしながら色々な影響を受けて変わって、その結果が良ければ別にそれでいい。受け入れる気持ちがちゃんとあれば、作り手や素材と混ざって、一緒に作るようになっていく。コントロールしながらコントロールしたくないというか。それがいい物を作る時に大事なことだと思っています。

大久保:あとは、誰が使っても馴染むようなものでなくてもいいのかなっていうか。作る人の個性とかが、もっとものに現れてもいいんじゃないかなということを、あらためて感じました。

大治:僕は普段は一人でやっているので、「やっと工芸デザイナー仲間ができた!」みたいな気持ちで。作家や職人、産地のことなんかを話しても「ふーん」で終わってしまうところが、この3人だと「そうそう!」って共感してもらえる。

商品に関しても「ここがちょっと違和感あるかも」と伝えたらちゃんとディテールが修正されて返ってくるし、打てば響くというか。本当に楽しかったなぁ。

榎本:我々も、大治さんがどんな風に産地でコミュニケーションして、ものを作っているのか見ることができてとても勉強になりました。暮らしが楽しくなる手応えは得られた気がしているので、和食器を面白くする取り組みを今後も続けていきたいですね。

<関連する特集>
ごちそうは、ふたにあり

<関連商品>
玉手どんぶり
おめかし重

文:白石雄太
写真:阿部高之

料理家・minokamo長尾明子さんの“蓋をあける”食卓【おめかし重編】

いつもの料理も、うつわをひとつ変えるだけで心が躍る。

そんな、食卓に楽しみを添えるうつわの提案を目指して、この春、中川政七商店が新しくつくるのは「蓋もの」です。

昔ながらの和食器にはよく見られる蓋つきのうつわですが、自宅の食器棚に目をやれば蓋があるものはほとんどなし。そもそも、日々の暮らしで蓋ものに出会う機会も今は少ないように思います。

けれど、いざ手にしてみれば、蓋があることで楽しみも使い勝手も想像以上。蓋をあける瞬間が、日常の食事をごちそうにしてくれるのです。

今回お届けするのは「おめかし重」。

ぜひこの“蓋をあける”幸せを皆さまにも届けたいと、屋号・minokamoの名称で活動する料理家の長尾明子さんを訪ね、ひと足先に使っていただきました。長尾さんが合わせる料理とともに、初めての蓋ものにも心強い合わせ方のヒントも伺ってきたので、ぜひご参考ください。

長尾さんと蓋もののお付き合い

郷土料理や日常料理を背景として、にこやかな食卓を届ける長尾さん。決まったかたちに収まらない、ひと皿の姿や盛り付け方には長尾さんらしさが溢れます。

提案する料理は等身大の安心感がありながら、一つひとつが愛おしさの魔法にかかったよう。工芸ならではの“揺らぎ”に感じる、ぬくもりに似たものを覚えました。

そのセンスが光るのは調理だけではありません。うつわ選びにもおおらかさがあり、長尾家に並ぶうつわたちはどれをとっても個性豊かな顔つきをしています。

「うつわは縁のある作家さんのものを迎えることもありますし、旅先で購入することもあります。なかには友人や知人から譲り受けることもあるのですが、受け身で迎えたうつわにも新しい発見があって面白いですね。

今は東京と故郷の岐阜の二拠点生活をしていて、岐阜のほうには祖母が昔から使っていたうつわもたくさん揃えています」

そんな長尾さん、じつは蓋もの使いもお手のもの。ハレの日に限らず普段使いもすることで、“ケのなかのハレ”のような印象を食卓に演出されています。

「今回蓋もののお話を頂いて、自分が使っているうつわを改めて考えてみたんですよ。一番使うのはお重。あとは漆器や、陶磁器のお椀なども少しありますね。

例えば漆や陶のうつわは、冷ましたくないものを盛り付けるのに活躍します。この使い勝手のよさが蓋ものを選ぶときの一番の理由かな。汁ものに限らず、ごはんものでもよく出番がきてますね。

あとは、蓋を開けたときの高揚する気持ちをつくりたいもの。だからおもてなしの席ではちょっとした惣菜やお菓子もお重に入れたり、お楽しみの汁ものなんかも蓋の付いたお椀によそいます。

お重に関してはお客様を迎える際にも重宝してます。ちょっとバタバタしている場合も、あらかじめお重に詰めておけばさっと出せて便利ですよね。

開けた後の蓋はそのまま取り皿にも使えて、蓋だけでもそのあとの行き先がある。これも蓋ものの魅力だと思います」

普段より蓋ものに親しんでいる長尾さん。早速、今回のおめかし重も使っていただきましょう。

まずは定番の組み合わせ「稲荷ずし」

最初は「お重といえば」の組み合わせから。お重と聞くとややハードルが高く感じる方も多いかもしれませんが、お弁当箱のようなもの、と捉えればたちまちイメージもわいてきます。

「定番セットはやはりご提案できたらなと思って、稲荷ずしをメインに玉子焼きと青菜のおひたしを添えました。少し大きめのお弁当箱のような使い方にしています。

今日は出先に持ち運ぶイメージでぎゅっと詰めていますが、家で食べるなら余白をつけて盛り付けるのもおすすめです」

表面にウレタン塗装を施しているため、汚れが付きにくいのもポイント

<使用した商品>
おめかし重 一段 柿渋染

華やかなサラダガーデンが食卓に「緑のサラダ」

続いてご提案してくださったのは、お重いっぱいにサラダを詰める新鮮な使い方。見慣れないお重の姿に心がくすぐられます。

「ちょっと意外な組み合わせもあると使い方のイメージが広がるかなと思い、お重いっぱいにサラダを詰めてみました。

円形のうつわに盛り付けることが多いサラダですが、今回は四角に詰めることで、すっきりときれいに見せています。卓上の畑のような、遊び心がある見せ方です」

<使用した商品>
おめかし重 一段 柿渋染

晩酌を凛と飾る「バケット、チーズ、ハム、オリーブ」

お酒の時間に、少しずつ色々なおつまみをいただきたいとき、お重を使ってみるのはいかがでしょうか。凛とした佇まいが上質な時間を飾ってくれます。

「ひとりで、もしくは友人と、ゆっくりお酒をいただくときにもお重は活躍します。冷蔵庫にあるちょっとしたアテを余白を持たせて盛り付けるだけで、特別な時間が演出できるんです。

蓋をしたまま食卓に出して開ける時間を楽しんだ後は、蓋を取り皿に。今回はワインを添えるイメージでご提案してみました」

<使用した商品>
おめかし重 一段 柿渋染

行楽気分を彩る「おにぎり、から揚げ」

おめかし重は一段仕様の他、二段仕様もご用意しています。複数人と食卓を囲む際や、近場にお出かけする際などは、ぜひ二段重で。普段着の料理もお重に詰めれば、“おめかし”の装いです。

「お花見や遠足のような行楽イベントはもちろんですが、自宅で友人とお酒を飲むときにもこんな風にちょっとずつつまめるメニューがお重に入っていれば嬉しいかなって。

おにぎりをたくさん作って詰めておけば、それぞれが好きな量を食べられるし、話し込んでいるときに『おかわりください』って話をさえぎってしまう心配もありません(笑)。

あとは蓋つきなので、帰宅時間がバラバラな家族用に詰めて置いておくのにもいいですね。蓋があるだけで残りものっぽく見えないし、美しいかたちのまま保てます」

<使用した商品>
おめかし重 二段 柿渋染

甘い時間のおめかし「お菓子重」

最後に、二段使いのご提案をもうひとつ。こちらでは箱内のスペースを贅沢に使い、お菓子を並べてくださいました。

「じつはこのお菓子たち、中にはスーパーで売っていたものもあるんです。気軽に買えるお菓子もお重に盛り付けたとたんに特別感が出ますよね。

友人や家族とのお茶の時間にこのお菓子重を出して銘々につまみつつ、少し余ってしまったらそのまま蓋をして置いておけます。そんな気軽さがお重のいいところだなと思うんです」

<使用した商品>
おめかし重 一段 柿渋染
おめかし重 二段 柿渋染 

開発ほやほやのおめかし重を使ってくださった長尾さん。試してみて、いかがでしたか?

「お重って『ピクニックに活躍する』とも言うけれど、実際にはピクニックに行くことはあまりないですよね(笑)。なので、いかに日常で使うかが大事だと思うんです。

今回の料理はもちろん普通のお皿に盛り付けてもいいんだけれど、やっぱり蓋があることでちょっとしたものでも上質に見せてくれるというか、華やかさが出ますよね。

詰め方のコツとしてお伝えしたいのは、まずは『ひとマスに一種類』からはじめること。色々詰めなきゃと思うとハードルが高いのですが、まずはおにぎりだけ、から揚げだけでも大丈夫。それが二段、三段と重なるときっといい風景になると思います。慣れてきたら葉野菜などで仕切って、二種類に増やしていってみてください。

あとはぎゅっと詰めてもいいのですが、少し慣れてきたらぜひ余白使いを愉しんでもらえたら。うつわのなかに抜け感が出て、より特別なひと皿に見せてくれます。

その点、このお重はちょうどよい大きさとかたちで、余白を活かしても盛り付けやすいサイズ感ですね」

四角いかたちと蓋が日常にハレ感を醸してくれる、お重という選択。「難しそう」とどことなく避けていましたが、長尾さんに倣えばその不安も払拭できそうです。

蓋を開ける1秒が、おいしいスイッチ。蓋つきならではの食卓の魅力を、ぜひ存分に味わってみてください。

プロフィール:

minokamo・長尾明子(ながお・あきこ)

料理家、写真家。
岐阜県美濃加茂市出身。東京の自宅兼アトリエと、祖母が暮らした岐阜の古民家の2拠点で活動中。岐阜新聞での連載のほか、近著に『みそ味じゃないみそレシピ』(池田書店)『つつむ料理~焼売/餃子/肉まん/おやき』『粉100水50でつくる すいとん』(技術評論社)などがある。
https://www.instagram.com/minokamo

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料理家・minokamo長尾明子さんの“蓋をあける”食卓【玉手どんぶり編】

文:谷尻純子
写真:濱津和貴

料理家・minokamo長尾明子さんの“蓋をあける”食卓【玉手どんぶり編】

いつもの料理も、うつわをひとつ変えるだけで心が躍る。

そんな、食卓に楽しみを添えるうつわの提案を目指して、この春、中川政七商店が新しくつくるのは「蓋もの」です。

昔ながらの和食器にはよく見られる蓋ものですが、自宅の食器棚に目をやれば蓋がついているものはほとんどなし。そもそも、日々の暮らしで蓋付きのうつわに出会う機会も今は少ないように思います。

けれど、いざ手にしてみれば、蓋があることで楽しみも使い勝手も想像以上。蓋をあける瞬間が、日常の食事をごちそうにしてくれるのです。

今回お届けするのは「玉手どんぶり」。

ぜひこの“蓋をあける”幸せを皆さまにも届けたいと、屋号・minokamoの名称で活動する料理家の長尾明子さんを訪ね、ひと足先に使っていただきました。長尾さんが合わせる料理とともに、初めての蓋ものにも心強い合わせ方のヒントも伺ってきたので、ぜひご参考ください。

料理家・長尾明子さんの普段の食卓

東京と岐阜の二つの拠点に暮らし、日常料理や郷土料理の提案を通じてやわらかな時間を届ける長尾さん。気取らず、遊び心にあふれる食卓は、毎日の暮らしの温度をそっと上げてくれます。

「故郷の岐阜から上京したとき、自分が家族と食べていた料理がまわりにないことに気づいて。祖母の家でみんなと食べていたあの料理や、それを囲む時間が、すごくよかったなって改めて思ったんですよね。

それで、その時間を皆さんにもおすそ分けしたいと思い活動をはじめて、今があります」

「料理をご提案するときに大切にしているのは、日常の料理も特別な一食も、いかに身近にある食材で作るか。郷土料理もその地で採れるものを中心に使いますし、採れない時期には困らないように、保存食をつくる文化があります。

特別な食材ももちろんいいんだけれど、『日常で手が届く食材がごちそうになったら、幸せじゃない?』って思うんですよね。

そういう目線でご提案しているから、自然と、旬のものとか手に入りやすいものを中心にしたメニューになるのかなと思います。

あとは見せ方も大事にしていますね。うつわをひとつ変えるだけで、日常食からハレの日の一品のような印象になる。そういうこともお伝えできたら嬉しいなって」

何気ないひと皿も愛らしく感じる長尾さんの料理。早速、今回の新作うつわも使っていただきました。

湯気に心を奪われる「親子丼」

はじめに提案してくださったのは「親子丼」。卵と鶏肉のシンプルな具材の組み合わせは、うつわ次第でカジュアルにも上品にも印象を変えてくれます。

もちろん蓋のないどんぶりに盛り付けてもよいのですが、立ち上る湯気や香りを味わう喜びは蓋があるとひとしお。蓋がラップ代わりになるので、時間をおいて食べる食事にも活躍してくれます。

「まずは超定番のメニューをと思い、冷めづらいという蓋もののよさを活かせる親子丼を合わせてみました。

熱々を盛り付ければ蓋をあけたときの湯気を楽しめますし、電子レンジでも使えるので、食べるタイミングが異なる家族用に盛り付けて置いておくのにもいいですね。

蓋は取り皿としても使えますし、今回は小皿に見立ててお漬物をのせました」

<使用した商品>
玉手どんぶり 呉須鹿

和食器×洋風メニューも相性バツグン「ハンバーグ丼」

続いては様子を変えて、洋風メニューを盛り付けていただきました。玉手どんぶりを開発する際にこだわった点のひとつ、和食器ながらシャープでどこかモダンな印象も受ける、切立形(きったてがた)に近い形状を存分に活かしていただいた組み合わせです。

「ひとつ前に親子丼を合わせたので、次は少し変化球をと思い洋風メニューを合わせました。

ハンバーグってカフェなどでワンプレートになっているメニューはよく見ますが、どんぶりに合わせることは意外とないですよね。でもこのうつわなら縦のシルエットがすっきりしていて和っぽすぎない印象なので、和のメニューに限らず使えるなと思って。思った通り、相性がよくかわいい顔つきになりました。

今回は洋風メニューですけど、例えばフォーとかルーローハンのようなエスニック料理を合わせてもよく映えると思います」

<使用した商品>
玉手どんぶり 麻の葉

気軽な料理にこそ合わせたい「ハーフラーメン」

深さのある玉手どんぶりは、汁ものにも使いたい頼もしさ。時間がない日のインスタント麺や冷凍うどんも、うつわで装えばきちんと感のある景色がうまれます。

「コンパクトなサイズ感ながら深さがしっかりあるので、具材のボリュームを控えれば一人前のラーメンもしっかり入ります。

今回は麺を半分ずつ分けて、具材をたっぷり盛り付けるハーフラーメンにも使えそうと、3つ目のメニューに決めました。気軽な一品ですが、蓋があればごちそう感が出てわくわくしますよね。

ひとりで食べるのもいいし、誰かと一緒の食卓で蓋を一斉にあけて、ワッと盛り上がれるのも蓋があるうつわならではのいいところです」

<使用した商品>
玉手どんぶり 銹布目(さびぬのめ)

開発ほやほやの玉手どんぶりを使ってくださった長尾さん。試してみて、いかがでしたか?

「蓋があることで冷めないし、おもてなし感が出るのが魅力的ですね。ほどよくカジュアルな絵柄は、ケもハレもいろんなシーンで活躍しそうです。何より思ったのは、空想が広がるうつわだなって。

今回は蓋ものが初めての方も挑戦しやすいようにシンプルな使い方をしましたが、例えばどんぶりを数個並べていろんな料理を盛りつけて、それぞれが好きな料理をちょっとずつ取って食べる“丼パーティー”のような使い方も楽しそう。

ハンバーグ丼の時にお話ししたみたいにカラフルなエスニック料理ともよく合うと思いますし、『こんなふうに使うのもいいかも』って、どんどんアイデアがわいてきます(笑)。

蓋ものだからってかしこまらないで、よいところは活かしつつ、自由に使っていただくといいんじゃないかな」

玉手箱のように、パカーン!と開ける時間が幸せを届けてくれる玉手どんぶり。少しハードルが高く感じる蓋ものも、構えず普段の料理を盛り付けるだけで意外に合うものです。

蓋を開ける1秒が、おいしいスイッチ。蓋つきならではの食卓の魅力を、ぜひ存分に味わってみてください。

プロフィール:

minokamo・長尾明子(ながお・あきこ)

料理家、写真家。
岐阜県美濃加茂市出身。東京の自宅兼アトリエと、祖母が暮らした岐阜の古民家の2拠点で活動中。岐阜新聞での連載のほか、近著に『みそ味じゃないみそレシピ』(池田書店)『つつむ料理~焼売/餃子/肉まん/おやき』『粉100水50でつくる すいとん』(技術評論社)などがある。
https://www.instagram.com/minokamo

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文:谷尻純子
写真:濱津和貴