料理研究家・ツレヅレハナコさんがつくる、「魚焼きグリルが汚れない鉄のグリル皿」を使ったレシピ

突然ですが皆さん、魚焼きグリルをどのくらい活用していますか?

「使いかたがイマイチわからない」「後片付けが面倒」など、何となく避けていた方も多いかもしれません。じつは、私もその一人。賃貸マンションのコンロについてはいるものの、気にかけたことすらありませんでした。

そんな“魚焼きグリル未活用勢”に「もったいない!」と手を差し伸べてくださったのが、料理研究家のツレヅレハナコさん。日々の食事づくりに取り入れると、食卓の楽しさも調理のストレスも段違いに変わるというのです。

そうしたハナコさんの思いを受けて、このたび中川政七商店がハナコさんとともに開発したのが「魚焼きグリルが汚れない鉄のグリル皿」です。

「魚焼きグリル活用だけでもハードルが高いのに、素材は鉄?」

‥‥なんて、不安な声も聞こえてきそうですが、ご安心ください。何度も試作と調整を繰り返し、鉄を敬遠される方にも心強い使い勝手に仕上がりました。

今回は調理の幅を広げる台所の新たな救世主・鉄のグリル皿について、使いかたのポイントと試してほしいレシピをご紹介します。

日常料理にこそ、魚焼きグリルの活用を

サイド光の入る広い調理スペースに、ぎっしりと乾物や調味料の並ぶパントリー、世界各国の鍋が集まる飾り台と、食への探求心と愛が詰まったハナコさんの台所。

一歩足を踏み入れると、料理好きでなくとも思わず心が躍る壮観な景色が広がります。

秘密基地のようなその場所からハナコさんが提案するのは、時には凝った料理もありながら、多くはふつうのスーパーで手に入る材料を使った簡単な工程のもの。疲れた日でもどうにか作れるそのレシピの数々に、多くの台所が助けられてきました。

そんなハナコさんと今回作ったのが「魚焼きグリルが汚れない鉄のグリル皿」です。そもそもどうして、魚焼きグリルに注目したのでしょう?

「魚焼きグリルが家にあるのに、全然使いきれていない方が多いなって印象がまずあって。『落ちた油や網の隙間の掃除をしなきゃいけない』みたいな、“面倒なもの”ってイメージがとにかく強くて、それがもったいないと思ったんですよ。

もちろん、そのまま魚を焼くからこそ脂が落ちて味よく仕上がるよさもあるんですけど、掃除が面倒なときは網に食材を置かずに、調理道具をかませればいい。でも、そういう使い方に気づいてない方が多いのかなと」

当のハナコさんは普段より魚焼きグリルをよく使う、ヘビーユーザー。ご自宅を建てる際も「魚焼きグリルがついているから」と、今のメーカーのガスコンロを選ばれたほどの愛用者です。

「コンロが鍋やフライパンで埋まってるときに、もうひとつ火口ができるし、上火で焼くよさもある。火が直接食材に届くからコンロよりも高温で焼けて、パリッと仕上がる魅力もあります。あとは、焦げ目をつけたい場面でも活用できますね。

よりおいしくなるし、魚焼きグリルでしかできない調理もあることを知っていただけたらと思って、アイデアをご提案したんです」

食パンのトーストも魚焼きグリルが便利。こんがり、サクッと仕上がる

そうして魚焼きグリルを活かせる調理道具づくりがスタート。

素材には「鉄」を採用しました。

「鉄ってすごく熱伝導がいいのでカリッとおいしく焼けるし、丈夫だから一生使えます。ガンガン使ってガンガン経年変化するような、そんなところも愛せる道具になればいいなと。

じつは最初は鋳物で作りはじめたんですけど、サンプルが出来上がって持ってみると重かったんですよね。重い道具って年々手にとらなくなるし、毎日使ってほしいから極力軽くしたくて、鋳物はやめました。

『普段の相棒になるような気軽な存在として片手で軽くとれる重さにしたい』というのは、開発時に譲れなかった点です」

側面は0.1mmまで薄くして、軽量化を目指した

面倒なイメージを持つ鉄だからこそ、お手入れも簡単に。

塗装をしていないため使い終わったあとは気負わず洗えて、特殊な加工により使いはじめの油ならしは不要と、鉄初心者の方も安心です。

そしてこの鉄グリル皿、じつは魚焼きグリルだけではなく、“鉄のフライパン”のようなイメージでコンロでも使えます。

ポイントは底につけた凹凸の波目。これにより絶妙な焼き目がつけられ、まるでレストランのような仕上がりが楽しめるように工夫しました。

「食べ物に焼き目がつく楽しさを届けたくて、デザイナーさんと微調整を繰り返しました。特にコンロで使っていただくと際立つと思います。

そんな風に、コンロで焼き目をつけたい料理にも、魚焼きグリルで仕上げたい料理にも使える、2wayな道具ができたらいいなって」

大きさは、魚焼きグリルの庫内を最大限に使えるサイズ感に。グラタンなども受け止められるようにと、少し深さを出したのもこだわりです。

また、魚焼きグリルへ入れる際に緩衝しないよう、取っ手はサイドに配置しました。

ツレヅレハナコさんが提案する、鉄グリル皿レシピ

推しの点を挙げれば止まらない鉄のグリル皿。ぜひ毎日の食卓でたくさん使っていただけたらと、ハナコさんにおすすめのレシピも3つ教えていただきました。

※それぞれ、鉄グリル皿1枚で作りやすい分量にてご紹介しています
※魚焼きグリルでの調理時間・工程は、両面焼き仕様のグリルを使用した場合の内容です

海老ときのこのみそクリームグラタン

<材料(2~3人分)>

・むき海老…150g
・マカロニ…80g
・玉ねぎ…1/4個(約50g)
・しめじ…1/2パック
・ピザ用チーズ…100g
・牛乳…2カップ
・バター…30g
・塩…少々
・みそ…大さじ1
・片栗粉…大さじ1
・小麦粉…大さじ3

<作りかた>

1. 海老は背わたをとり、塩、片栗粉をまぶして軽くもんだら水で洗い流す。マカロニは袋の表示通りゆでる。玉ねぎは薄切りにし、しめじは石づきを切ってほぐす。鉄グリル皿の内側にバター(分量外)を塗る。

2. 別のフライパンにバターを溶かし、玉ねぎ、海老、しめじの順に加えて炒める。小麦粉を入れてまぶすように炒め、牛乳を3回に分けてなじませながら煮る。

3. 沸いたらみそ、マカロニを加えて温め、鉄グリル皿に入れてチーズをのせる。魚焼きグリルに入れ、表面に焼き色がつくまで強火で10分ほど焼く。

「ひとつめにご提案するのはグラタン。魚焼きグリルの上火は、表面に焼き色をつけたい料理にぴったりです。オーブンと違って予熱不要ですぐに焼きはじめられるのも、魚焼きグリルのよさのひとつですね。

直火ならではのぐつぐつした出来上がりはそれだけで魅力的。普段の食卓にもおもてなしの料理にもおすすめです」

ポークソテー 和風プチトマトソース

<材料(1人分)>

・豚ロース肉(厚切り)…1枚
・ミニトマト…6~8個(約150g)
・新じゃがいも…2個
・大葉…2枚
・しょうがのすりおろし…1/2かけ分
・塩、こしょう…各少々
・薄口しょうゆ…小さじ1
・オリーブオイル…大さじ1

<作りかた>

1. 豚肉は筋を切り、塩、こしょうをふる。ミニトマトはヘタをとり半分に切る。新じゃがはよく洗って皮ごと電子レンジ(600W)で3分ほど加熱し、半分に切る。大葉はせん切りにする。

2. 鉄グリル皿を中火で熱し、オリーブオイルをしく。十分に温まったら豚肉と新じゃがを断面を下にして入れ、動かさずに2~3分焼く。豚肉を裏返して弱火にし、空いたところにミニトマトを入れて少し煮崩れるまで焼く。

3. トマトにしょうがとしょうゆを加え、うつわに盛って大葉をのせる。

「ふたつめのメニューには、焼き目を楽しむ料理としてコンロで作るポークソテーをご提案しました。こんがりついた焼き目が食卓にごちそう感を増してくれますし、底の凹凸があるので適度に脂が落ちて、食材がおいしく仕上がります。

彩りもきれいでメイン料理になるし、トマトソースまで鉄グリル皿で作るから洗い物は少なくて済む、普段の食事にぴったりのメニューです。

ポイントとして、コンロで使用する際は予熱してから使うようにしてください。こうすることで食材がくっつきにくくなり、料理のストレスも減るしおいしく仕上がります。

豚肉は薄すぎると反り返りやすいのでご注意を。筋切りをすれば反り返りにくいですが、もし膨らんできたら真ん中を押さえてあげるときれいに焼けます」

タンドリーチキン

<材料(2人分)>

・鶏もも肉…1枚(約350g)
・れんこん、パプリカ(赤)…各適宜
・オリーブオイル…大さじ1

[A]
・ヨーグルト(無糖)…100g
・にんにくのすりおろし、しょうがのすりおろし…各1かけ分 
・ケチャップ…大さじ1
・カレー粉…小さじ1
・塩…小さじ1

<作りかた>

1. ポリ袋に鶏肉、[A]の材料を入れ、袋の外側から全体をもむ。冷蔵庫で30分~一晩おく。れんこんは8mm厚さ、パプリカは縦1.5cm幅に切り、オリーブオイル小さじ1/2(分量外)をまぶす。

2. 鉄グリル皿にオリーブオイルをしき、鶏肉をのせて庫内へ入れたら強火で5分ほど焼く。

3. 一度グリルの扉を開け、空いている場所にれんこんと、パプリカをのせてさらに5分ほど焼く。焦げそうになったら、アルミホイルをのせる。

「パリッと焼けた皮目がシズるタンドリーチキン。表面を焼きつつ中まで火を通してくれる、魚焼きグリルならではのよさを感じられるメニューです。

うつわにのせて焼くのでたれが落ちすぎないのも、この道具を使うからこそできること。調味料につけこめばあとは焼くだけで、簡単に一品が完成します。

ポイントは、火が強いので添える野菜がカリカリになりすぎないよう、あらかじめ油をまぶして水分をキープすること。油分が少ない食材はここに注意すればおいしく仕上がります」

最後にハナコさん、完成した鉄グリル皿を前にひとこと頂けますか?

「魚焼きグリルも鉄も、多くの方には少し距離がある存在。だからこそ、ハードルを下げて日常に寄り添えるような道具を目指しました。つい毎日手にとっちゃうような、いい道具になればいいなと思います。

気軽に使える“マイファースト鉄”として仲良くなってもらいつつ、皆さんの食卓に幅が生まれると嬉しいです」

魚焼きグリルを、そして焼き料理を、もっと身近に、おいしくしてくれる鉄のグリル皿。たくさんの台所の、よき相棒となりますように。

ツレヅレハナコさん

食と酒と旅を愛する文筆家、料理研究家。著書に『まいにち酒ごはん日記』、『ツレヅレハナコのおいしい名店旅行記』、『ツレヅレハナコのからだ整え弁当』など。食や日常を綴るSNSも人気。
●Instagram
https://www.instagram.com/turehana1
●note
https://note.com/rosy_carp2435

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はじめての鉄

文:谷尻純子
写真:衛藤キヨコ

料理家・minokamo長尾明子さんの“蓋をあける”食卓【おめかし重編】

いつもの料理も、うつわをひとつ変えるだけで心が躍る。

そんな、食卓に楽しみを添えるうつわの提案を目指して、この春、中川政七商店が新しくつくるのは「蓋もの」です。

昔ながらの和食器にはよく見られる蓋つきのうつわですが、自宅の食器棚に目をやれば蓋があるものはほとんどなし。そもそも、日々の暮らしで蓋ものに出会う機会も今は少ないように思います。

けれど、いざ手にしてみれば、蓋があることで楽しみも使い勝手も想像以上。蓋をあける瞬間が、日常の食事をごちそうにしてくれるのです。

今回お届けするのは「おめかし重」。

ぜひこの“蓋をあける”幸せを皆さまにも届けたいと、屋号・minokamoの名称で活動する料理家の長尾明子さんを訪ね、ひと足先に使っていただきました。長尾さんが合わせる料理とともに、初めての蓋ものにも心強い合わせ方のヒントも伺ってきたので、ぜひご参考ください。

長尾さんと蓋もののお付き合い

郷土料理や日常料理を背景として、にこやかな食卓を届ける長尾さん。決まったかたちに収まらない、ひと皿の姿や盛り付け方には長尾さんらしさが溢れます。

提案する料理は等身大の安心感がありながら、一つひとつが愛おしさの魔法にかかったよう。工芸ならではの“揺らぎ”に感じる、ぬくもりに似たものを覚えました。

そのセンスが光るのは調理だけではありません。うつわ選びにもおおらかさがあり、長尾家に並ぶうつわたちはどれをとっても個性豊かな顔つきをしています。

「うつわは縁のある作家さんのものを迎えることもありますし、旅先で購入することもあります。なかには友人や知人から譲り受けることもあるのですが、受け身で迎えたうつわにも新しい発見があって面白いですね。

今は東京と故郷の岐阜の二拠点生活をしていて、岐阜のほうには祖母が昔から使っていたうつわもたくさん揃えています」

そんな長尾さん、じつは蓋もの使いもお手のもの。ハレの日に限らず普段使いもすることで、“ケのなかのハレ”のような印象を食卓に演出されています。

「今回蓋もののお話を頂いて、自分が使っているうつわを改めて考えてみたんですよ。一番使うのはお重。あとは漆器や、陶磁器のお椀なども少しありますね。

例えば漆や陶のうつわは、冷ましたくないものを盛り付けるのに活躍します。この使い勝手のよさが蓋ものを選ぶときの一番の理由かな。汁ものに限らず、ごはんものでもよく出番がきてますね。

あとは、蓋を開けたときの高揚する気持ちをつくりたいもの。だからおもてなしの席ではちょっとした惣菜やお菓子もお重に入れたり、お楽しみの汁ものなんかも蓋の付いたお椀によそいます。

お重に関してはお客様を迎える際にも重宝してます。ちょっとバタバタしている場合も、あらかじめお重に詰めておけばさっと出せて便利ですよね。

開けた後の蓋はそのまま取り皿にも使えて、蓋だけでもそのあとの行き先がある。これも蓋ものの魅力だと思います」

普段より蓋ものに親しんでいる長尾さん。早速、今回のおめかし重も使っていただきましょう。

まずは定番の組み合わせ「稲荷ずし」

最初は「お重といえば」の組み合わせから。お重と聞くとややハードルが高く感じる方も多いかもしれませんが、お弁当箱のようなもの、と捉えればたちまちイメージもわいてきます。

「定番セットはやはりご提案できたらなと思って、稲荷ずしをメインに玉子焼きと青菜のおひたしを添えました。少し大きめのお弁当箱のような使い方にしています。

今日は出先に持ち運ぶイメージでぎゅっと詰めていますが、家で食べるなら余白をつけて盛り付けるのもおすすめです」

表面にウレタン塗装を施しているため、汚れが付きにくいのもポイント

<使用した商品>
おめかし重 一段 柿渋染

華やかなサラダガーデンが食卓に「緑のサラダ」

続いてご提案してくださったのは、お重いっぱいにサラダを詰める新鮮な使い方。見慣れないお重の姿に心がくすぐられます。

「ちょっと意外な組み合わせもあると使い方のイメージが広がるかなと思い、お重いっぱいにサラダを詰めてみました。

円形のうつわに盛り付けることが多いサラダですが、今回は四角に詰めることで、すっきりときれいに見せています。卓上の畑のような、遊び心がある見せ方です」

<使用した商品>
おめかし重 一段 柿渋染

晩酌を凛と飾る「バケット、チーズ、ハム、オリーブ」

お酒の時間に、少しずつ色々なおつまみをいただきたいとき、お重を使ってみるのはいかがでしょうか。凛とした佇まいが上質な時間を飾ってくれます。

「ひとりで、もしくは友人と、ゆっくりお酒をいただくときにもお重は活躍します。冷蔵庫にあるちょっとしたアテを余白を持たせて盛り付けるだけで、特別な時間が演出できるんです。

蓋をしたまま食卓に出して開ける時間を楽しんだ後は、蓋を取り皿に。今回はワインを添えるイメージでご提案してみました」

<使用した商品>
おめかし重 一段 柿渋染

行楽気分を彩る「おにぎり、から揚げ」

おめかし重は一段仕様の他、二段仕様もご用意しています。複数人と食卓を囲む際や、近場にお出かけする際などは、ぜひ二段重で。普段着の料理もお重に詰めれば、“おめかし”の装いです。

「お花見や遠足のような行楽イベントはもちろんですが、自宅で友人とお酒を飲むときにもこんな風にちょっとずつつまめるメニューがお重に入っていれば嬉しいかなって。

おにぎりをたくさん作って詰めておけば、それぞれが好きな量を食べられるし、話し込んでいるときに『おかわりください』って話をさえぎってしまう心配もありません(笑)。

あとは蓋つきなので、帰宅時間がバラバラな家族用に詰めて置いておくのにもいいですね。蓋があるだけで残りものっぽく見えないし、美しいかたちのまま保てます」

<使用した商品>
おめかし重 二段 柿渋染

甘い時間のおめかし「お菓子重」

最後に、二段使いのご提案をもうひとつ。こちらでは箱内のスペースを贅沢に使い、お菓子を並べてくださいました。

「じつはこのお菓子たち、中にはスーパーで売っていたものもあるんです。気軽に買えるお菓子もお重に盛り付けたとたんに特別感が出ますよね。

友人や家族とのお茶の時間にこのお菓子重を出して銘々につまみつつ、少し余ってしまったらそのまま蓋をして置いておけます。そんな気軽さがお重のいいところだなと思うんです」

<使用した商品>
おめかし重 一段 柿渋染
おめかし重 二段 柿渋染 

開発ほやほやのおめかし重を使ってくださった長尾さん。試してみて、いかがでしたか?

「お重って『ピクニックに活躍する』とも言うけれど、実際にはピクニックに行くことはあまりないですよね(笑)。なので、いかに日常で使うかが大事だと思うんです。

今回の料理はもちろん普通のお皿に盛り付けてもいいんだけれど、やっぱり蓋があることでちょっとしたものでも上質に見せてくれるというか、華やかさが出ますよね。

詰め方のコツとしてお伝えしたいのは、まずは『ひとマスに一種類』からはじめること。色々詰めなきゃと思うとハードルが高いのですが、まずはおにぎりだけ、から揚げだけでも大丈夫。それが二段、三段と重なるときっといい風景になると思います。慣れてきたら葉野菜などで仕切って、二種類に増やしていってみてください。

あとはぎゅっと詰めてもいいのですが、少し慣れてきたらぜひ余白使いを愉しんでもらえたら。うつわのなかに抜け感が出て、より特別なひと皿に見せてくれます。

その点、このお重はちょうどよい大きさとかたちで、余白を活かしても盛り付けやすいサイズ感ですね」

四角いかたちと蓋が日常にハレ感を醸してくれる、お重という選択。「難しそう」とどことなく避けていましたが、長尾さんに倣えばその不安も払拭できそうです。

蓋を開ける1秒が、おいしいスイッチ。蓋つきならではの食卓の魅力を、ぜひ存分に味わってみてください。

プロフィール:

minokamo・長尾明子(ながお・あきこ)

料理家、写真家。
岐阜県美濃加茂市出身。東京の自宅兼アトリエと、祖母が暮らした岐阜の古民家の2拠点で活動中。岐阜新聞での連載のほか、近著に『みそ味じゃないみそレシピ』(池田書店)『つつむ料理~焼売/餃子/肉まん/おやき』『粉100水50でつくる すいとん』(技術評論社)などがある。
https://www.instagram.com/minokamo

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文:谷尻純子
写真:濱津和貴

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いつもの料理も、うつわをひとつ変えるだけで心が躍る。

そんな、食卓に楽しみを添えるうつわの提案を目指して、この春、中川政七商店が新しくつくるのは「蓋もの」です。

昔ながらの和食器にはよく見られる蓋ものですが、自宅の食器棚に目をやれば蓋がついているものはほとんどなし。そもそも、日々の暮らしで蓋付きのうつわに出会う機会も今は少ないように思います。

けれど、いざ手にしてみれば、蓋があることで楽しみも使い勝手も想像以上。蓋をあける瞬間が、日常の食事をごちそうにしてくれるのです。

今回お届けするのは「玉手どんぶり」。

ぜひこの“蓋をあける”幸せを皆さまにも届けたいと、屋号・minokamoの名称で活動する料理家の長尾明子さんを訪ね、ひと足先に使っていただきました。長尾さんが合わせる料理とともに、初めての蓋ものにも心強い合わせ方のヒントも伺ってきたので、ぜひご参考ください。

料理家・長尾明子さんの普段の食卓

東京と岐阜の二つの拠点に暮らし、日常料理や郷土料理の提案を通じてやわらかな時間を届ける長尾さん。気取らず、遊び心にあふれる食卓は、毎日の暮らしの温度をそっと上げてくれます。

「故郷の岐阜から上京したとき、自分が家族と食べていた料理がまわりにないことに気づいて。祖母の家でみんなと食べていたあの料理や、それを囲む時間が、すごくよかったなって改めて思ったんですよね。

それで、その時間を皆さんにもおすそ分けしたいと思い活動をはじめて、今があります」

「料理をご提案するときに大切にしているのは、日常の料理も特別な一食も、いかに身近にある食材で作るか。郷土料理もその地で採れるものを中心に使いますし、採れない時期には困らないように、保存食をつくる文化があります。

特別な食材ももちろんいいんだけれど、『日常で手が届く食材がごちそうになったら、幸せじゃない?』って思うんですよね。

そういう目線でご提案しているから、自然と、旬のものとか手に入りやすいものを中心にしたメニューになるのかなと思います。

あとは見せ方も大事にしていますね。うつわをひとつ変えるだけで、日常食からハレの日の一品のような印象になる。そういうこともお伝えできたら嬉しいなって」

何気ないひと皿も愛らしく感じる長尾さんの料理。早速、今回の新作うつわも使っていただきました。

湯気に心を奪われる「親子丼」

はじめに提案してくださったのは「親子丼」。卵と鶏肉のシンプルな具材の組み合わせは、うつわ次第でカジュアルにも上品にも印象を変えてくれます。

もちろん蓋のないどんぶりに盛り付けてもよいのですが、立ち上る湯気や香りを味わう喜びは蓋があるとひとしお。蓋がラップ代わりになるので、時間をおいて食べる食事にも活躍してくれます。

「まずは超定番のメニューをと思い、冷めづらいという蓋もののよさを活かせる親子丼を合わせてみました。

熱々を盛り付ければ蓋をあけたときの湯気を楽しめますし、電子レンジでも使えるので、食べるタイミングが異なる家族用に盛り付けて置いておくのにもいいですね。

蓋は取り皿としても使えますし、今回は小皿に見立ててお漬物をのせました」

<使用した商品>
玉手どんぶり 呉須鹿

和食器×洋風メニューも相性バツグン「ハンバーグ丼」

続いては様子を変えて、洋風メニューを盛り付けていただきました。玉手どんぶりを開発する際にこだわった点のひとつ、和食器ながらシャープでどこかモダンな印象も受ける、切立形(きったてがた)に近い形状を存分に活かしていただいた組み合わせです。

「ひとつ前に親子丼を合わせたので、次は少し変化球をと思い洋風メニューを合わせました。

ハンバーグってカフェなどでワンプレートになっているメニューはよく見ますが、どんぶりに合わせることは意外とないですよね。でもこのうつわなら縦のシルエットがすっきりしていて和っぽすぎない印象なので、和のメニューに限らず使えるなと思って。思った通り、相性がよくかわいい顔つきになりました。

今回は洋風メニューですけど、例えばフォーとかルーローハンのようなエスニック料理を合わせてもよく映えると思います」

<使用した商品>
玉手どんぶり 麻の葉

気軽な料理にこそ合わせたい「ハーフラーメン」

深さのある玉手どんぶりは、汁ものにも使いたい頼もしさ。時間がない日のインスタント麺や冷凍うどんも、うつわで装えばきちんと感のある景色がうまれます。

「コンパクトなサイズ感ながら深さがしっかりあるので、具材のボリュームを控えれば一人前のラーメンもしっかり入ります。

今回は麺を半分ずつ分けて、具材をたっぷり盛り付けるハーフラーメンにも使えそうと、3つ目のメニューに決めました。気軽な一品ですが、蓋があればごちそう感が出てわくわくしますよね。

ひとりで食べるのもいいし、誰かと一緒の食卓で蓋を一斉にあけて、ワッと盛り上がれるのも蓋があるうつわならではのいいところです」

<使用した商品>
玉手どんぶり 銹布目(さびぬのめ)

開発ほやほやの玉手どんぶりを使ってくださった長尾さん。試してみて、いかがでしたか?

「蓋があることで冷めないし、おもてなし感が出るのが魅力的ですね。ほどよくカジュアルな絵柄は、ケもハレもいろんなシーンで活躍しそうです。何より思ったのは、空想が広がるうつわだなって。

今回は蓋ものが初めての方も挑戦しやすいようにシンプルな使い方をしましたが、例えばどんぶりを数個並べていろんな料理を盛りつけて、それぞれが好きな料理をちょっとずつ取って食べる“丼パーティー”のような使い方も楽しそう。

ハンバーグ丼の時にお話ししたみたいにカラフルなエスニック料理ともよく合うと思いますし、『こんなふうに使うのもいいかも』って、どんどんアイデアがわいてきます(笑)。

蓋ものだからってかしこまらないで、よいところは活かしつつ、自由に使っていただくといいんじゃないかな」

玉手箱のように、パカーン!と開ける時間が幸せを届けてくれる玉手どんぶり。少しハードルが高く感じる蓋ものも、構えず普段の料理を盛り付けるだけで意外に合うものです。

蓋を開ける1秒が、おいしいスイッチ。蓋つきならではの食卓の魅力を、ぜひ存分に味わってみてください。

プロフィール:

minokamo・長尾明子(ながお・あきこ)

料理家、写真家。
岐阜県美濃加茂市出身。東京の自宅兼アトリエと、祖母が暮らした岐阜の古民家の2拠点で活動中。岐阜新聞での連載のほか、近著に『みそ味じゃないみそレシピ』(池田書店)『つつむ料理~焼売/餃子/肉まん/おやき』『粉100水50でつくる すいとん』(技術評論社)などがある。
https://www.instagram.com/minokamo

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写真:濱津和貴

【旬のひと皿】ロールキャベツ

みずみずしい旬を、食卓へ。

この連載「旬のひと皿」では、奈良で季節の料理と玄挽きの蕎麦の店「だんだん」を営む店主の新田奈々さんに、季節を味わうエッセイとひと皿をお届けしてもらいます。



届いたばかりの段ボールを開けると、手書きのお便りと共にじゃがいもやにんじん、カリフローレや紅芯大根といったお野菜に加え、きれいなキャベツが入っていました。農家さんから送っていただく、採れたてのお野菜便です。

冬の時期のお野菜は寒さを味方にして、甘みが増すのがひとつの魅力。旬ならではの味を想い、台所へきてくれたこのキャベツをどうしようかとホクホクしながら悩んだ末、まずはシンプルに蒸し焼きにしてみました。

材料は少しのオイルと先ほどのキャベツ、一緒に入れてくださったじゃがいも、そしてクミン。とても甘くはっとするおいしさで、ひとつのお皿としてまとまりつつも、それぞれの食材が際立ちます。気がつくと黙々と食べていました。

今回のテーマはキャベツにしよう!と決め、コトコト湯気の上がる風景が浮かんだのでレシピはロールキャベツに決定。旬を堪能できるよう、できるだけシンプルな材料と工程にしました。

道具に用いたのは土鍋です。ある程度深い鍋なら別の素材のものでも作れますが、ここはぜひ、冬の甘さを存分に引き出す土鍋で作っていただければなと思います。

私が使ったのは、大きなリムに一目惚れして購入した中川政七商店さんの平土鍋。購入時には構想から数年間、思考錯誤しながら時間をかけて開発されたお話しもお聞きしました。そんなエピソードも思い浮かべながらの料理は、またひとつ味の深みが増すような気持ちになります。

レシピの試作をしていた寒波の日、ドアの外に小学生くらいの女の子が立っていました。あれ?と思い外へ出てみると、赤ちゃんの頃から知っている顔。開口一番「受かったよー!!」と、中学受験の結果の報告に来てくれたのです。

ハイタッチをして嬉しい喜びをお裾分けしてもらった後、そうだそうだちょっと待ってねと、店内に生けていた満開のサクラを渡すと喜んでくれました。寒い寒いと毎日のように言っていますが、気づけばもう春の足音が聞こえていますね。

農家さんから届いた手書きのお便りには、「甘い野菜の次は、菜の花などの苦味がやってきます。待ち遠しいですね!」と締めくくられていました。

もうすぐ来る春を楽しみにしながら、まずはいま、一瞬しか味わえない冬の味を堪能したいと思います。お兄ちゃんと通う中学校での話も、また聞かせてもらえたら嬉しいなぁ。

<ロールキャベツ>

材料(2~3人分)

・豚ひき肉…300g
・キャベツの葉…大6枚(小なら12枚)
・冷凍きのこ(今回はしめじとしいたけ)…ひとつかみ 
・玉ねぎ…1/2個
・レモン…適量
・塩麹…小さじ3(小さじ1と小さじ2に分けて使用)
・塩…3g
・水…500ml

きのこは食べやすい大きさに切り、冷凍しておいたものを使用しました。冷凍することで、スープの味わいが深くなります。

また、鍋は土鍋を使用。どんな鍋でも作れますが、保温力のある土鍋はじんわり火が入るので、ふっくらと仕上がります。

作りかた

ボウルにひき肉と塩麹(小さじ1)、塩を入れて軽く混ぜたら、おおまかに6等分しておく。

鍋に湯を沸かして塩(分量外)を入れ、キャベツを茹でる。芯の内側がすんなり曲がれば茹で上がりのサイン。水にとり、ザルにあげる。

キャベツの芯を削いで千切りにする。玉ねぎも同じく千切りにする。

キャベツをまな板に広げ、肉だねを中央において包みあげる。葉が小さい場合は二枚を左右に広げ、真ん中を重ねて一枚として使用する。下→左右の順に肉だねの方向に折りたたんだら、上に向かってぎゅっと巻いていく。

鍋を火にかけて、玉ねぎとキャベツの芯、きのこを入れて塩(分量外)をし、蒸し焼きにする。

しんなりしてきたらロールキャベツを並べて水を入れ、コンロの火をつける。沸騰したら火を弱め、塩麹(小さじ2)を入れる。

灰汁がある場合は取り除き、蓋をして20分ほど火にかける。煮込む工程ではオーブンを使用しても。

最後にスープの味を確認し、薄く感じるようなら塩や醤油を入れて調整する。うつわに盛り、レモンの皮を削って完成。

うつわ紹介

【WEB限定】明山窯 secca scoop_M BLACK

二重軍手の鍋つかみ 紺
信楽焼の平土鍋 中 飴


写真:奥山晴日

料理・執筆

だんだん店主・新田奈々

島根県生まれ。 調理師学校卒業後都内のレストランで働く。 両親が母の故郷である奈良へ移住することを決め、3人で出雲そばの店を開業する。  
野に咲く花を生けられるようになりたいと大和未生流のお稽古に通い、師範のお免状を頂く。 父の他界後、季節の花や食材を楽しみながら母と二人三脚でお店を守っている。
https://dandannara.com/

【四季折々の麻】2月:長い季節で着られる肉厚の生地「厚手麻」

「四季折々の麻」をコンセプトに、暮らしに寄り添う麻の衣を毎月展開している中川政七商店。

麻といえば、夏のイメージ?いえいえ、実は冬のコートに春のワンピースにと、通年楽しめる素材なんです。

麻好きの人にもビギナーの人にもおすすめしたい、進化を遂げる麻の魅力とは。毎月、四季折々のアイテムとともにご紹介します。

※この記事は2025年2月3日公開の記事を再編集して掲載しました。

長い季節で着られる肉厚の生地「厚手麻」

2月は「如月」。和風月名であるこの言葉は、寒さに備えて重ね着をする意を込めた「衣更着(きさらぎ)」が由来のひとつとされています。まだ寒さが残る季節、麻の衣を更に重ね、芽吹きの時期に備える服をご提案できたらと思い仕立てたシリーズです。

麻生地は夏のイメージが強い素材ですが、今回ご用意した「厚手麻」は肉厚の生地にすることで、夏以外の季節でも着られるようにしたもの。中川政七商店で毎年人気のシリーズに、今年は新色として春を想わせる黄色が登場します。

ラインアップは「ボタンワンピース」と「羽織コート」、「ワイドパンツ」の3種類。重ね着することで長い季節でお楽しみいただけるようにと、ゆったりめのシルエットにしています。

【2月】厚手麻シリーズ:

厚手麻のボタンワンピース
厚手麻の羽織コート
厚手麻のワイドパンツ

今月の「麻」生地

まだ寒さが残る季節に着たい、肉厚の生地である「厚手麻」。防寒と春気分の両方をかなえられるよう、重ね着することで冬から春まで活躍する素材感に仕上げました。一年を通して心地よく着られるため、シリーズが登場してから数年が経った今でもたくさんのご愛用の声を頂いています。

使用しているのは太番手のリネン糸。こちらを贅沢に使って織った厚手の生地に、テンションをできるだけ加えないよう、ゆっくりとやさしくもみ込むような乾燥を施します。さらには染め加工のすべての工程においてできるだけ高熱を加えず加工し、麻素材独特のシボ感のある自然な風合いを生み出しました。

生地にストレスをかけず、時間をかけてゆっくり加工することで、生地がリラックスしてやさしい表情と風合いに。無理をさせずに、自然の姿、魅力を引き出した生地をぜひお楽しみください。

なお、織り・染めの加工はともに遠州・浜松でお願いしました。大きな川があり水が豊富なこの地域は、織物加工が得意な産地。太番手ならではのしっかりしたハリ感・コシがありつつも、肌あたりはとてもやさしいので着心地がよく、頼れる生地感に仕上げていただきました。

お手入れのポイント

ご自宅でお洗濯可能ですが、洗う際は手洗いか、裏返して洗濯ネットに入れたうえで洗濯機をご利用ください。

シボ感が特徴的な生地なので、ピシッとアイロンで伸ばすというよりは、自然なシワ感を楽しんでもらえたら嬉しく思います。

たたみシワなどが気になる際は、生地を湿らせた状態であて布を使用し、アイロンがけしてください。麻は乾燥した状態で高温を加えると傷んでしまうので、アイロンを使用する際は必ず湿らせた状態にするようご注意くださいね。

重ね着しやすい3アイテム

麻は、寒い日は暖かく着られて蒸れにくく、暖かい日はさらりと心地よく着られる素材。
寒さをしのぐため重ね着をする「衣更着」に由来を持つ時期に、ぴったりのアイテムを揃えました。

重ね着したり一枚で着たりと着回しのきく3つのアイテムは、いずれもリラックスウェアにならないよう細かなサイズ感にはこだわりつつも、ゆったりと着られて重ね着しやすいシルエットに。

色は昨年から人気の墨と紅梅に加え、蝋梅やミモザ、菜花のような「黄」も新しくご用意しました。やわらかで明るい色が、まだ寒く彩度の低い空の下でも春の訪れを感じさせてくれます。

また、あえて真っ白にさらした生地ではなく、麻本来の生成色の生地から染め上げることで、天然の麻の色あいを活かしました。のっぺりとせず、麻の繊維の色合いがうっすら感じられるような奥行きのある表情に仕上げています。

ワンピースはほどよく詰まったVネックとずらりと並んだ前ボタンで、きちんと感のある印象に。寒い時期にはタートルネックを重ねたり、暖かくなればもちろん一枚で着たりと様々な印象でご着用いただけます。

万能な羽織コートは襟が少し立つのがポイント。カーディガンのように気軽に羽織れます。ワンピースの上に重ねたり、タートルネックやブラウスに重ねたりと、あらゆるシーンで着まわしていただける一着です。

ワイドパンツはゆったりと履けながらも、麻のハリ感による立体的なシルエットで、お出かけ着感もきちんとあるデザインに。寒い時期は下に一枚着こんでいただいても、違和感なく履いていただけます。年間を通して履ける息の長いアイテムです。

素材自体が呼吸をしているような、気持ちの良さがある麻のお洋服。たくさん着ると風合いが育っていくので、ぜひ着まわしながら愛用いただけると嬉しいです。

「中川政七商店の麻」シリーズ:

江戸時代に麻の商いからはじまり、300余年、麻とともに歩んできた中川政七商店。私たちだからこそ伝えられる麻の魅力を届けたいと、麻の魅力を活かして作るアパレルシリーズ「中川政七商店の麻」を展開しています。本記事ではその中でも、「四季折々の麻」をコンセプトに、毎月、その時季にぴったりな素材を選んで展開している洋服をご紹介します。

ご紹介した人:

中川政七商店 デザイナー 杉浦葉子

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【四季折々の麻】1月:軽やかであたたかく、マットな質感「ヘンプ麻と綿」

「四季折々の麻」をコンセプトに、暮らしに寄り添う麻の衣を毎月展開している中川政七商店。

麻といえば、夏のイメージ?いえいえ、実は冬のコートに春のワンピースにと、通年楽しめる素材なんです。

麻好きの人にもビギナーの人にもおすすめしたい、進化を遂げる麻の魅力とは。毎月、四季折々のアイテムとともにご紹介します。

※この記事は2025年1月6日公開の記事を再編集して掲載しました。

軽やかであたたかく、マットな質感「ヘンプ麻と綿」

1月は「初春」。心新たに年を迎える月に清々しく着たい麻の服を、昨年に引き続き今年もご用意しました。

気持ちとしては春を迎えたい時期ですが、朝晩は空気がくっきりと冷え、まだまだ冬のさなか。生地感は春を意識しながらも、冬の寒さからあたたかく守り、次の季節まで着られる衣服をご提案できたらと思い仕立てたシリーズです。

麻生地といえば艶のあるシャリ感のあるものを想像される方が多いと思うのですが、今回はヘンプと綿を組み合わせることでマット感のある生地に。ひんやりせず、冬らしい質感が特徴です。

ラインアップは「中綿ベスト」と「ギャザースカート」の2種類。特にベストは、コートの下にインナーダウンのようにしても着られる、気温の変化に対応しやすいアイテムです。厚手で重い衣服の多くなるこの時期、着心地も見た目も軽やかなアイテムを楽しんでいただけたらと思います。

【1月】ヘンプ麻と綿シリーズ:

ヘンプ麻と綿 中綿ベスト
ヘンプ麻と綿 ギャザースカート

今月の「麻」生地

今回用いたのは、麻の一つであるヘンプと、綿を紡績した糸を経緯(たてよこ)に使い、密度を詰めて織り上げたヘンプコットン生地。

ヘンプの繊維はリネンなどに比べより多孔構造のため、繊維に空気の層ができることで冬にあたたかく着られます。また保温性だけでなく調湿性や調温性もあり、生地が呼吸をしながら快適さを保っているような素材です。

マットな質感と上品なネップ感(※麻繊維の太さのゆらぎによる、ぽこぽことした生地感)のある、ヘンプならではの表情を持つ生地に仕上がりました。

しめ縄にも使われる硬い繊維で、もともとはがっしりとした生地が作られることが多かったヘンプですが、最近では紡績技術の進歩でより細く糸を紡げるようになってきました。

ただ、ヘンプは繊維が短いため、織り上げるなかで切れやすいという難しさがあり、特にやわらかな服地を織るのはかなりの工夫や技術が必要。今回の生地も丁寧にゆっくりと織り上げられた貴重な織物です。

ご協力をいただいたのは兵庫県の播州織の産元さん。「難易度の高い織物にチャレンジしてやろう!」という、気概のある作り手さんたちに携わっていただきました。

少し細かいお話になるのですが、例えば経(たて)糸を織る際に、糸をピンと張れるよう糸に糊をつける「糊付け」の工程も、こだわったひとつです。

通常の織物では糸巻きに糸を巻いたままの状態で糊にドボンとつけるのですが、より丁寧にむらなく均等に糊付けをするため、一本ずつ糊のなかをくぐらせていく「一本糊」という糊付けをされています。

さらには糸が切れないよう、織りの際は糸に含ませる油分を微妙に調整し、機械といえど目を離さずにゆっくりとしたスピードで織り上げてくださいました。

糸づくりから糊付け、織りまで、それぞれの職人さんが工夫を凝らして協力しあい、作られた生地です。

お手入れのポイント

ご家庭でお洗濯が可能ですが、ベストは手洗いで優しく押し洗いしていただければと思います。スカートはネットに入れて、洗濯機でお洗濯していただけます。

形を整えて干す際は、ベストはやさしくシワを伸ばして。スカートはシワを伸ばして干すか、お好みで少し縦に絞り、引っ張ってシワをつけることで、麻ならではのシワ感を楽しんでいただくのもおすすめです。

長く着られる2アイテム

今年も、昨年と同じく春先まで活躍するベストと、オールシーズンの着用が可能なスカートの2アイテムをご用意しました。色展開は中綿ベストが「グレー」と「チャコール」の2色。スカートは「オフ白」「グレー」「チャコール」の3色展開で、いずれも長く着られる定番色とマットな質感がポイントです。

中綿ベストは、キルティングのようにステッチを表に出さず、中に板状の綿を入れたもの。スポーティな印象ではなく、ふんわりナチュラルに着られる綿入りのベストになっています。

前にはクルミスナップが一つ付いており、軽く羽織る感じで着られます。タートルネックニットの上や、シャツブラウスに重ね着してお楽しみください。もこもことした生地感ではないため、例えばお花見の時期ような、春先の肌寒い日も着ていただけたらと思い仕立てました。

ギャザースカートはたっぷり生地を使ったロング丈。冬の重めのニットやコートと合わせても、春の到来を感じられるような軽さに仕上げています。

裏地が付いているので透けの心配もなく、ふんわりとしたシルエットのため、寒い日は下にタイツやスパッツを着こむこともできます。年中着ていただける、着回しの定番となるアイテムです。

なお、今回のシリーズではスカートのみ「オフ白」を展開。生地を白色にするための晒す工程ではあえて白度を控えめにし、ややクリームがかった色にしています。あたたかみのある白は冬の麻衣服にぴったりで、晒しきっていないためよく見ると麻の繊維感があるのもお楽しみいただきたい点のひとつです。

素材自体が呼吸をしているような、気持ちのよさがある麻のお洋服。たくさん着ると風合いが育っていくので、ぜひ着まわしながら愛用いただけると嬉しいです。

「中川政七商店の麻」シリーズ:

江戸時代に麻の商いからはじまり、300余年、麻とともに歩んできた中川政七商店。私たちだからこそ伝えられる麻の魅力を届けたいと、麻の魅力を活かして作るアパレルシリーズ「中川政七商店の麻」を展開しています。本記事ではその中でも、「四季折々の麻」をコンセプトに、毎月、その時季にぴったりな素材を選んで展開している洋服をご紹介します。

ご紹介した人:

中川政七商店 デザイナー 杉浦葉子

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