【あの人の贈りかた】天然の優しい香りが、暮らしに寄り添う

贈りもの。どんな風に、何を選んでいますか?

誕生日や何かの記念に、またふとした時に気持ちを込めて。何かを贈りたいけれど、どんな視点で何を選ぶかは意外と迷うものです。

そんな悩みの助けになればと、中川政七商店ではたらくスタッフたちに、おすすめの贈りものを聞いてみました。

今回はEC課の岩井がお届けします。

香りに癒され、自分をいたわる時間に「植物由来の全身用オイル」

相手の暮らしにそっと、寄り添うようなものを贈りたい。
毎日がちょっと明るくなったり、ほんのり心があたたかくなるような。
贈りものは、いつもそんな気持ちで選んでいます。

20代後半にさしかかり、友人と集まった際には「肌質が変わってきた」という会話が増えました。私も含め、乾燥に悩んでいるという声が本当に多いのです。

そんな人へ贈りものをする機会があれば、迷わず選ぶのが「植物由来の全身用オイル」。
私自身も1年以上愛用しているスキンケアです。

植物の天然成分からできたこのオイル。肌に塗ると、べたつかないのにしっかりと保湿をしてくれるので、季節や肌の状態を問わず使いやすいなと感じています。

なにより人に贈りたくなる一番の理由は、「香りがいい」ということ。優しく漂うユズの香りに包まれて、使うたびにとても癒されるんです。

社会人になりたての頃の目まぐるしさは少し落ち着いたけれど、次のステップを考え出したり、家庭を持つ人が増えたりと、それぞれに忙しい日々を送っている友人たち。

一日のどこかで自分をいたわる時間として、優しい香りと使い心地に癒されてくれたらいいな、そんな気持ちとともに贈っています。

また「全身用オイル」という名の通り、顔や体、髪まで、全身どこにでも使えるので、コスメを贈る時に感じがちな「肌に合わなかったらどうしよう」という不安も少なく済みます。

年齢や肌質が大きく異なる私の母や夫も、乾燥が気になる箇所に使っているので、人を選びにくい低刺激な素材でできていることを実感しています。

気に入って使ってくれていると知らせを受けた際には、同シリーズの化粧水とクリームをおすすめしたり、お試しセットを次の贈りものにしても喜んでもらえます。

<贈りもの>
・中川政七商店「植物由来の全身用オイル」

親子ともに楽しめる天然木のおもちゃ「おふろでちゃぷちゃぷ」

中川政七商店へ入社する前から「素敵だな、いつか人に贈りたいな」と思っていた、山のくじら舎の「おふろでちゃぷちゃぷ」。

高知県産のヒノキでつくられたおもちゃで、その名の通りお風呂に浮かべて遊んだり、積み木としてお風呂以外でも使ってもらえます。

友人に2人目の子が生まれた時、「下の子には少し早いけど、もう少し大きくなったらお兄ちゃんと一緒に遊んでね」とプレゼントしました。

いきものに興味津々なお年頃のお兄ちゃんも、まだお風呂で遊ぶことはできない弟くんも、にっこり笑顔の海の仲間たちを気に入ってくれたよう。友人には、「2人でちゃぷちゃぷデビューするのが待ち遠しい!」と、とても喜んでもらえました。

さらに、思いがけず嬉しかったのが「お風呂に入れたらヒノキの香りがとっても良くて!毎日入浴剤代わりにして癒されてるよ〜」と言ってもらえたこと。

なんと。あの愛らしい生きものたちは、大人の癒しにもなってくれているのか、と感動したことを覚えています。

以来、お子さんが喜んでくれるのはもちろん、育児を頑張るお母さんとお父さんにとっても、お風呂時間がちょっとした息抜きになればいいな、という想いを込めて贈るようになりました。

おもちゃなど、直接赤ちゃんの肌や口に触れるものを贈る際には慎重になることも多いですが、こちらは天然木を一つひとつ人の手で磨き上げているので、すべすべの手ざわり。自信を持って贈れますし、安心して遊んでもらえます。

また、ナチュラルな見た目で相手の好みやインテリアの雰囲気を選ばないところも、贈る側としてはありがたいポイントです。

<贈りもの>
・山のくじら舎「山のくじら舎 おふろでちゃぷちゃぷ」

奈良の醤油蔵がつくる、ちょっと珍しい調味料「三つ揃え(火入れセット)」

相手の好みに迷ったり、気軽になにか渡したい時には、お菓子や調味料などの食べものが定番です。

よくお世話になっているのが、奈良県・田原本町の醸造所、マルト醤油さんの「もろみパウダー」。

醤油を絞った後に残った「もろみ」を乾燥させてパウダー状にしたもので、お料理のアクセントとして活躍します。醤油の風味がぎゅっと凝縮されていて、お醤油や粉チーズ代わりに使ったり、お菓子をつくるときに生地に混ぜたり、なんならそのまま舐めても美味しいんです!

基本の「もろみパウダー」と、そこに塩を混ぜた調味料「もろみ塩」、そして風味にこだわった「火入れ醤油」の3種入りのギフトセットが、常温で管理できることもあり、贈りものとして重宝しています。(お醤油もとても美味しいんですよ!)

調味料なら好き嫌いの心配も少なく、毎日の食事で使いやすい。
特にパウダーは貰ったことのないギフトとして、楽しく使ってもらえることが多いです。

製造元のマルト醤油さんは、奈良市内から車で40分ほどの場所に蔵を構える作り手さん。醤油蔵を改装してレストランやホテルも営業されています。手渡す際に伝えると、遊びにいこうかなと興味を持ってもらえることが多く、話に花が咲くことも。

私の住まいは奈良市から少し離れているので、多くの人が「奈良」と聞いて思い描くイメージの場所とは少し異なるかもしれません。

けれど、豊かな自然がすぐ近くにあったり、醤油蔵や酒蔵など地域のものづくりが盛んだったりと、市外ならではの魅力もたくさんあります。

こんな素敵な文化が根付く街で暮らしているんですよ、という、密やかな想いを込めた贈りものも、楽しいものです。

<贈りもの>
・マルト醤油 「三つ揃え(火入れセット)」

贈りかたを紹介した人:

中川政七商店 EC課 岩井皐月

【わたしの好きなもの】スタッフおすすめ「年末年始のご挨拶」編

ついこの間、年が明けたばかりの気持ちでいたのに、あっという間に2024年も残り1か月となりました。私はというと、友人から年末の都合について確認のメールが来たことを機に、あわてて年末年始の予定を立て始めたところです。

地元に帰省して親戚や友人と集まったり、改まった場でご挨拶をしたりと、何かと人と会う機会の多い年末年始。気を遣わせない程度の手土産が何かあれば心強いな‥‥と思い、社内のスタッフたちに、「いつも利用しているもの」「今年利用予定のもの」を聞いてみました。

普段から贈りもの上手の、中川政七商店のスタッフたち。私も聞きながら「真似してみよう!」と思う贈りかたがたくさんありました。ぜひ、年末年始のご挨拶の参考にしていただけると嬉しいです。

※「お正月を愉しむ」ページ:「干支づくし編」「お飾り編」「お年賀特集」

「干支ふきん 巳」

毎年お正月シーズンに大人気の「ふきん」。色やサイズ、厚さなどたくさん種類があるなかで、こちらは干支の刺繍が入った正方形の小さなふきんです。
ヘビをモチーフにした郷土玩具の絵柄は、手にとるたびに和むやさしい表情。うつわや台ふき、おてふきなどにもおすすめです。

詳細はこちら:「干支ふきん 巳」

スタッフのコメント

「定番中の定番。特に年末年始にはせっかくなので干支の柄を。毎年どんな柄が登場するかが楽しみのひとつです」

「白色を選び、めでたもなか(後ほど紹介)と合わせて紅白に。干支のモチーフは縁起がよくてお年賀にぴったりです」

「かや織ふきん 巳」

干支ふきんと同じく、奈良の工芸「かや織」の生地を用いたふきん。干支ふきんより少し厚手で、サイズも大きめ。中川政七商店の定番ふきんのひとつです。

かや織ふきんは一年を通じてさまざまな柄をご提案していますが、このシーズンになると登場するのが干支の柄。こちらには、全国各地の郷土玩具に着想を得た干支のモチーフと、縁起物である松竹梅を散りばめた絵柄を描いています。

詳細はこちら:「かや織ふきん 巳」

スタッフのコメント

「毎年、夫の実家でおせちを振る舞っていただくので、お礼にとお渡ししています。いつもかわいいと喜ばれます」

「一緒に働くスタッフさんへ、毎年かや織ふきんをプレゼントしています。感謝の気持ちと、新しいふきんで気持ちも新たに、心地好く新年を迎えていただきたい気持ちを添えてお渡ししています」

「招福干支みくじ 巳」

新年の運試しにと、会話に花が咲く「干支みくじ」。こちらも中川政七商店で毎年人気のシリーズです。にっこりと、前を向き進んでいくヘビの姿をイメージし、躍動感を表現した陶製の干支のなかに、小さく折りたたんだおみくじが入っています。

詳細はこちら:「招福干支みくじ 巳」

スタッフのコメント

「お正月のしつらいに無頓着な母ですが、ささやかなお正月感の出る干支みくじは気に入って飾ってくれます。入社してから毎年贈っていたら、渡すことが年末の恒例行事になりました」

「干支の勝わら細工」

干支のお飾りをお渡しするというスタッフも。こちらは「勝藁(かちわら)」と呼ばれる、嵐が来ても倒れにくい縁起物の藁を用いて、来年の干支・ヘビを表現したお飾りです。

詳細はこちら:「干支の勝わら細工」

スタッフのコメント

「一番の推しポイントは、しめ縄のような雰囲気がありながら、室内で楽しめるところ。狭い空間でも正月花や鏡餅飾りと合わせて、飾りものコーナーを作りやすいコンパクトさが絶妙です。

始末のしやすさも好みで、パーツをあれこれ分別しなくても地域のどんど焼きや燃えるゴミに出せるところが、現代の生活に合っているなぁと思います。お正月飾りや干支飾りは住まいによってはハードルが高いですが、これなら飾りやすいので親しい仲の友人に贈っています」

「めでたもなか」

趣味を問わずに渡しやすい、食べものを選ぶスタッフも多くいました。こちらは自分で餡をはさんで食べる手作りタイプのもなか。おめでたい縁起物の鯛、梅、瓢箪、招き猫をかたどっています。

詳細はこちら:「めでたもなか」

スタッフのコメント

「義実家へご挨拶の際に持っていこうと思っています。まだ結婚して日が浅く、相手の好みが分からないため、間違いなく使ってもらえたり楽しんでもらえたりするものをと、選びました。
お正月に渡したくなるようなおめでたいパッケージと、ご自身のタイミングで楽しんでいただけると思うので渡しやすいです」

「そばチョコぼうろ」

そば猪口にちなんだチョコ味のそばぼうろ。4つのパッケージにはそれぞれ、愛らしい鹿や犬などの動物と一緒に、お花や文様が描かれています。

詳細はこちら:「そばチョコぼうろ」
※オンラインショップでは4柄セットで販売。直営店では1個からご購入いただけます。

スタッフのコメント

「学生時代の友人と久々に会う際は、お菓子を手土産にするのが定番です。今年は新作のそばチョコぼうろを選ぶつもり。集まる友人たちのイメージに合わせてパッケージの柄を選び、その場で柄を見せ合って愉しみたいです」

「奈良産富有柿 黒糖きな粉」

あえて干支やお正月のモチーフから離れ、ほっと休まる時間のお供を選ぶというスタッフも。奈良県産の富有柿を乾燥させ、黒糖ときな粉を合わせたおやつは、お茶請けにぴったりです。

詳細はこちら:「奈良産富有柿 黒糖きな粉」

スタッフのコメント

「お正月は豪華でボリュームのある食事を食べることが多いので、素朴でやさしい味わいのお菓子でほっこりしてもらいたくてプレゼントしています」

「産地のごはん 冷めてもおいしい炊き込みご飯の素」

華やかな食事の時間にもぴったりの「炊き込みご飯の素」。ひとつあれば、忙しい年末年始の助けにもなりそうです。

詳細はこちら:「産地のごはん 冷めてもおいしい炊き込みご飯の素」

スタッフのコメント

「入れて普通に炊くだけで炊き込みご飯ができる優れもの。年末年始は家族も集まるし、ちょっと華やかなごはんを食べたいけど、他の準備もあるし大変‥‥という方に喜ばれます。1つで2合分なので、家族が多い方には2種類×各3個ずつくらいをセットにして贈るとちょうどよいです」



以上、【わたしの好きなもの】の「年末年始のご挨拶」編をお届けしました。
お渡しする相手によりお好みも異なりますが、ぴったりのものを見つける機会になれば幸いです。

今回ご紹介したほかにも現在公開中の「お年賀特集」ページや店頭では、年末のご挨拶やお年賀におすすめの品をたくさんご用意していますので、ぜひご覧ください。

2025年が皆さまにとって、よい年となりますように。

文:谷尻純子

【四季折々の麻】12月:あたたかいのに軽く、やわらかな生地感「麻とウールツイード」

「四季折々の麻」をコンセプトに、暮らしに寄り添う麻の衣を毎月展開している中川政七商店。

麻といえば、夏のイメージ?いえいえ、実は冬のコートに春のワンピースにと、通年楽しめる素材なんです。

麻好きの人にもビギナーの人にもおすすめしたい、進化を遂げる麻の魅力とは。毎月、四季折々のアイテムとともにご紹介します。

※この記事は2024年11月1日公開の記事を再編集して掲載しました。

あたたかいのに軽く、やわらかな生地感「麻とウールツイード」

12月の麻は、11月から継続の「麻とウールツイード」シリーズをお届けします。

寒さが深まり、いよいよ本格的に冬を感じる12月。ふんわりとした風合いの服が恋しい時季に着ていただける服を、麻とウールの糸を合わせて織り上げたツイード生地で仕立てました。両者ともに天然素材で相性も良く、ウールの保温性に麻の吸湿発散性が加わることで、あたたかなのに蒸れにくく、心地好く着られます。重い衣類が多い時期に、ふんわりと軽やかな着心地もおすすめしたいポイントです。

ラインアップは4種類。気温の差が激しい時期に心強い「かぶりベスト」や、ラクに履けつつ形のきれいな「テーパードパンツ」と「ワイドパンツ」、また冬の着こなしで活躍する「ワンピース」を揃えました。

【12月】麻とウールツイードシリーズ:

麻とウールツイード かぶりベスト
麻とウールツイード ワンピース
麻とウールツイード テーパードパンツ
麻とウールツイード ワイドパンツ

今月の「麻」生地

素材に使った麻は、衣類によく採用されるリネン。やわらかな風合いのシェットランドウールとリネンを合わせた混紡糸を用いて、密度を詰めすぎないよう、甘くやわらかに織り上げました。シワにもなりにくく、寒い冬も気持ちよく着られる生地となっています。

シェットランドウールはスコットランドの北にある、寒さや湿度が厳しいシェットランド諸島に生息する羊の毛を用いた糸。海草などを食べて育つため、やわらかい毛質が特徴です。

嵩の高いシェットランドウールから作られるふんわりした糸は、生地を織り上げる際に空気を含み、軽くあたたかな素材感に仕上がります。そこにリネンを混ぜることで、ウールだけで織り上げるよりも耐久性を増して、生地にしなやかさを加えました。

またウールの保温性にリネンの吸湿発散性が加わることで、あたたかなのに蒸れにくい生地となるのも特徴の一つ。屋外ではあたたかく身体を包み、暖房で汗をかいても湿気を逃がしてくれる、この時期に心強い組み合わせの素材です。

素材製造や生地加工は、一つひとつの工程を日本各地の得意な作り手に依頼しました。糸づくりは広島、糸の糊付けは和歌山、織りは岐阜、加工は愛知と、プロの集大成のような生地です。

お手入れのポイント

ウールを多く含むのでドライクリーニングがおすすめ。シワはつきにくいものの、たたみジワなどが気になりアイロンをかける際は、必ずあて布をしてください。

また毎日着たくなる軽やかさではありますが、長く着ていただくために毎日連続しての着用はお避けください。

ざっくりと織られたツイードは糸と糸の隙間にホコリが入り込みやすいため、着用した日は軽くブラッシングをしておき、シーズン終わりにはドライクリーニングに出して保管すると、長くきれいに着ていただけます。

気負わず上品に着られる4アイテム

カジュアルにもきれいにも着られる、冬のお出かけに使いやすい4つのアイテムを揃えました。色展開は生成、グレー、チャコールのナチュラルな3色。ウールの素材感を活かした、自然で上質な印象の色合いに仕上げています。

「かぶりベスト」はその名のとおり、かぶって着られるベスト。後ろの襟元にボタンを一つつけてかぶりやすいよう調整し、パンツにもスカートにも合わせやすい絶妙な丈感に仕上げました。

軽やかな着心地ではありますが、布帛(ふはく:織物のこと)のためニットベストよりもきちんと感を出せるのも嬉しい点。カットソーやタートルネックのセーターなどと合わせて、秋から冬まで長く着ていただけると嬉しいです。

パンツは、足さばきのよい「テーパードパンツ」と、ロングスカートのようにも見える「ワイドパンツ」の2種類。

どちらもウエストはゆったり履けるゴム仕様ですが、麻とウールの上質さがあるため、上品に着られると思います。先にご説明したベストとセットアップで着こなしていただくのもおすすめです。

「ワンピース」は袖なしのゆるやかなAライン。身幅をゆったりととっていますが、広がり過ぎず、かわいらしさはやや抑えた形に仕上げています。こちらもカットソーやタートルネックに合わせて、冬の装いを楽しんでいただければと思います。

素材自体が呼吸をしているような、気持ちの良さがある麻のお洋服。たくさん着ると風合いが育っていくので、ぜひ着まわしながら愛用いただけると嬉しいです。

「中川政七商店の麻」シリーズ:

江戸時代に麻の商いからはじまり、300余年、麻とともに歩んできた中川政七商店。私たちだからこそ伝えられる麻の魅力を届けたいと、麻の魅力を活かして作るアパレルシリーズ「中川政七商店の麻」を展開しています。本記事ではその中でも、「四季折々の麻」をコンセプトに、毎月、その時季にぴったりな素材を選んで展開している洋服をご紹介します。

ご紹介した人:

中川政七商店 デザイナー 杉浦葉子

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【あの人の贈りかた】普段とは違う、新しい“好き”に出会える香りもの

贈りもの。どんな風に、何を選んでいますか?

誕生日や何かの記念に、またふとした時に気持ちを込めて。何かを贈りたいけれど、どんな視点で何を選ぶかは意外と迷うものです。

そんな悩みの助けになればと、中川政七商店ではたらくスタッフたちに、おすすめの贈りものを聞いてみました。

今回は大日本市課の藤田がお届けします。

新しい香りに出会える「薫玉堂 試香」

知人からお香を贈られたことがきっかけで、お香集めにハマり、香りを提案される楽しさを知りました。

自分で選ぶ香りはどうしても好みが偏りがち。新しい香りとの出会いを逃している気もするので、人から頂く、普段とは違う香りにわくわくします。

贈りものを選ぶとき、その経験を思い出して選んでいるのが薫玉堂の試香です。

全11種類の香りのなかから6種類が詰め合わされたお香のセットで、少量ずつ香りを試すことができるので、相手の好みがわからなくても贈りやすいなと思います。

「どの香りがよかった?」と、話ができるのも楽しみの一つですね。

京都の西本願寺前で1594年に創業し、日本最古の御香調進所である薫玉堂さん。歴史の重みを感じつつも現代的で洗練された印象があり、香りはもちろんデザインも大好きです。

「音羽の滝」「宇治の抹茶」など、京都を思わせるネーミングも素敵。私は「北野の紅梅」と「祇園の舞子」の香りが好きなので、2種類が含まれた「朱」を迷いなくセレクトしています。

贈った相手と好みが同じだったら嬉しいな、なんて思いながら贈ります。

<贈りもの>
・薫玉堂「試香」

相手をイメージしたオリジナルのデザインに「motta」

相手のイニシャル入りアイテムも、よく選ぶ贈りものの一つ。

贈りものをいただいた時に嬉しいと感じるのは、ものそのものよりも、相手が自分のために考えて選んでくれた、という気持ちが伝わるから。イニシャル入りのアイテムは、その人のためだけに用意した特別なものとして、自分の心を伝えやすいと思うのです。

mottaのハンカチには、アルファベットやモチーフを組み合わせて刺繍を入れられます。アルファベットはフォントを選べるので、相手のイメージに合わせられますし、モチーフは中川政七商店の各店舗限定のものや、季節限定のものもあって、組み合わせを考えるのも楽しいです。

以前、友人が奈良まで遊びに来てくれた時に、motta037のピンクのハンカチに金字で刺繍を入れたものを贈りました。
その組み合わせがとにかくかわいくて‥‥自分も欲しくなってしまいました(笑)。

<贈りもの>
・中川政七商店「motta」

地元の美味しいを届けるお菓子「多々楽達屋 至福のひととき」

転職を機に奈良に越してきてから、日本全国のさまざまな地域に知見を持つ方々とたくさん出会うようになりました。

職場や社外の方と、出身地や好きな地域について話すことが多く、日本全国のものづくりに焦点を当てている中川政七商店らしいなと思います。

そんな中川政七商店を通じて出会った方々には、私の地元についても知ってもらいたいと思い、地元の岐阜県土岐市でドライフルーツ・ナッツの製造販売をしている「多々楽達屋(たたらちや)」さんのギフトをよく贈っています。

多々楽達屋さんのドライフルーツに使用される果実やナッツは、産地に赴いて現場を確認し、直接買い付けているため、素材の良さに安心感があります。また、余計な砂糖や塩を使わずに加工されていて、素材そのものの味が楽しめるのも魅力です。

私は多々楽達屋さんに出会ってから、ほかのものが食べられなくなりました。
それくらい、一度食べたら虜になる味わいです。

「至福のひととき」は食べきりサイズで個包装になっているので、贈りものにぴったり。
贈り先の人数がわかっているときは、人数分購入してギフトラッピングしてもらうこともできます。

ギフトボックスもあるのでフォーマルなシーンでも使いやすく、全国の百貨店を中心に16店舗を展開しているので、出先でも購入しやすいのも嬉しいポイントです。

<贈りもの>
・多々楽達屋「至福のひととき」 ※中川政七商店での販売はありません

贈りかたを紹介した人:

中川政七商店 大日本市課・藤田愛実

【地産地匠アワード】桐生らしさは“挑戦”。プログラミング技術と人の手から生まれる刺繍雑貨で、産地の北極星を目指す

土地の風土や素材、産地や業界の課題に、真摯に向き合って生まれたプロダクト。
そこには、日本のものづくりの歴史を未来につなぐそれぞれの物語がつまっています。

「地産地匠アワード」は、地域に根ざすメーカーとデザイナーとともに、新たな「暮らしの道具」の可能性を考える試みです。2024年の初開催では、4つのものづくりに賞が贈られました。

今まさに日本各地で芽吹きはじめた、4つの新しいものづくりのかたち。この記事ではそのなかから、桐生でうまれた「刺繍ポシェット」を取り上げます。それぞれの背景にある物語をぜひお楽しみください。

織物の産地・桐生の景色を映した、刺繍のポシェット

2023年11月。山々に囲まれ、桐生川と渡良瀬川の二つの清流に恵まれた関東平野の北部・群馬県桐生市のとある企業に、二日間で500人を超える人が集まりました。

お目当ては「笠盛パークフェスティバル」。桐生の土地で刺繍加工のOEMと糸のアクセサリーブランド「000(トリプルオゥ)」を展開する、株式会社笠盛によるファクトリーイベントです。

かつては「西の西陣、東の桐生」と称されるほど、絹織物の産地として栄えた桐生市。この地では、赤城山の麓で養蚕業が盛んになり、川を水源とした水力発電による工場制手工業が発展したことから、最盛期にはノコギリ屋根が象徴的な繊維関連工場が多く立ち並びました。

渡良瀬川と、その奥にうっすらと見える赤城山
屋根のフォルムが特徴的なノコギリ屋根の工場

けれど、戦時下で工場の業態変更を余儀なくされたこと、またものづくりの場が海外へと移行したことなどを背景に、桐生の織物業は徐々に下火に。そんななか笠盛は、「産地の北極星」となるべくこの地で奮闘してきました。

「桐生のいいところって、応用のうまさなんですよ。もともとは西陣の技術を取り入れて織物産地として発展したんですけど、そこから織物に関連する幅広い事業を担うようになって。

守破離の“守”に落ち着かずに、すぐに“破”にいっちゃう。そうやって、古いものにリスペクトを残しながらも新しいものに挑戦して、変わり続けるのが桐生らしさなのかも」

そう言って笑う、笠盛の野村文子さんと片倉洋一さんが“桐生らしさ”を詰め込んで、新たに提案するのは刺繍のポシェットです。

写真:西岡潔
左が野村さん、右が片倉さん

桐生の地に咲く山野草や野花、赤城山から吹くからっ風、今もわずかに残るノコギリ屋根の織物工場。黒や白の糸で構成された幾何学模様のなかに産地の風景を映し、持ち手以外を刺繍でつくり上げたポシェットは、このたび、地産地匠アワードの優秀賞にみごと輝きました。

プログラミング技術と人の手が生み出す、“布に刺繍しない”刺繍

明治10年、和装帯の織物業として創業した笠盛。現会長の父の代で刺繍業に転身した後は、数々のアパレルメーカーの生地刺繍や、スポーツユニフォームのワッペン刺繍などを手がけてきました。

当初はOEM業がすべてだった笠盛ですが、現会長の代でものづくりの舵をきることに。

それまでは生地の装飾技術であった刺繍を、「布に刺繍しない刺繍」として独立するパーツに仕上げた「カサモリレース」を独自に発明。さらにはそのものづくりを応用した糸のピアスやネックレスのブランド「000」を立ち上げて、業界に大きな驚きを呼びました。

その立役者の二人こそが、今回、地産地匠アワードで新たに刺繍のポシェットを提案した野村さんと片倉さんなのです。

000のデザイナー兼ブランドマネージャーを務める片倉さんは、2005年に笠盛へ入社。大学では工学を専攻した片倉さんでしたが、もともと音楽やファッションに関心があり、また学生時代に目にしたアップル社「マッキントッシュ」のCMのクリエイティブに衝撃を受けたことから、デザインを学びたいと卒業後はイギリスへ留学。

4年間の学生生活後、フリーランスのテキスタイルデザイナーとして活動し、コレクションブランドのショーにスタッフとして参加するなど、現地でテキスタイルデザインへの造詣を深めました。

神奈川県出身の片倉さんが桐生に興味を持ったのは、「テキスタイルデザインの神」と名高い新井淳一氏の活動の場がこの地だったことから。帰国後に同氏を訪ねて師事するうちに、桐生のものづくりに興味を持ったと話します。

000 デザイナー兼ブランドマネージャー 片倉洋一さん

「イベントや美術館での展示のために作品を制作する新井先生について回るなかで、桐生市内のプリーツ屋さんや繊維に特化した研究所など、いろいろな場所へ足を運んだんですよ。そうしているうちに桐生市内のものづくりの“点”がいっぱい見えてきて、『なんか面白そうだぞ、この町は』って。

点と点、つまりそれぞれのスペシャリストがたくさん存在する桐生で、この点と点を今までにない繋ぎ方で繋いでみたら面白そうだなと思って。技術はあるんだけど、なかなかそれがうまく世の中に届いてなくて、桐生の繊維産業が下降気味なところにもどかしさも感じました。

あとは、ヨーロッパの繊維関連企業って産地や企業のなかにインハウスのデザイナーがちゃんといる体制が多かったんですよ。一方で日本の産地ってそうじゃないんだなって初めて知って。ものづくりで大切な『発想』と『技術』の交差点を、自分は産地でつくりたいと思ったんです」(片倉さん)

数ある桐生の繊維関連企業から笠盛を選んだのは、“珍しい刺繍機器を持っていた”から。それはレーザーカットと刺繍ができる、片倉さん曰く「めちゃくちゃマニアックな機械」だったそうです。

「その機械って世界でも数十台くらいしかないんです。それで『この会社、ちょっと尋常じゃないな』っていうか。当時はOEMが100%だったのでデザイン仕事の余地はなかったんですけど、ここだったら何か面白い仕事をつくり出せるんじゃないかって感じたんですよね」(片倉さん)

入社後はミシンオペレーターとして修行を積んだ後、少しずつ自分の仕事をつくっていった片倉さん。デザイナーとして大きく仕事が動いたのは2007年に挑戦した海外展示会でした。出展の背景には、他社のものづくりが海外拠点へと場を移すなか、「これからは日本でものづくりをして、海外へ届ける時代だ」と考えた会長の強い意思があったといいます。

「最先端の機械と職人の技を活かせる、笠盛らしい商品とは」。思案の末に提案したのは「生地に刺繍しない刺繍」でした。

「水に入れると溶ける紙の上に刺繍をして、それを溶かすと刺繍のパーツだけが残るんです。通常はレースとかに使う技術ですね。刺繍ってふつうは生地に施しますけど、海外のブランドさんから案件をお受けする場合、布のやり取りが発生して日数やコストが大きくかかってしまうじゃないですか。だから、ワンウェイでご提案できる刺繍がないか考えて生まれたのがこの『カサモリレース』です」(片倉さん)

有名ブランドにも採用されたこの技術は、たちまち多くの反響を呼ぶこととなりました。しかしそこに満足せず、現会長が新たに目指したのは自社ブランドの立ち上げ。自分たちで価格決定権のあるブランドを持ちたいと、試行錯誤を経て誕生したのが今回のポシェットにつながる「000」です。

ブランド名にある3つのゼロは「素材」「技術」「発想」を指すもの。それぞれの既成概念にとらわれず、「ゼロから新たな価値を創造する」というコンセプトが込められました。

刺繍機器を自由自在に動かす緻密なプログラミング技術と、最後は一つひとつを人の目で確かめて仕上げる手しごとの技。その二つを合わせ、平面ではなく立体的に刺繍を施すことで生まれるアクセサリーブランドを笠盛は立ち上げます。

当初はチャレンジの幅が大きく、社内からも不安の声が上がった000のものづくりでしたが、積み重ねた経験と技で完成品を仕上げ、お客さんのもとへとわたると、少しずつ喜びの声が届くように。

「金属アレルギーでもおしゃれができる」「上品なのに軽くてつけやすい」。そんな声を目にするうちに社内の雰囲気にも変化が起きはじめました。

そうして多くのファンを集める存在へと育った000は、冒頭にご紹介した「二日間で500人以上が集まる」ほどの人気となったのです。

アイテムごとにプログラミングし、一列10台のミシンそれぞれの特徴を見極めながら機械を動かしていく
先ほどのミシンを用いて、水で溶ける生地に刺繍
水に溶かすと立体的なアクセサリーに。この後、人の目と手で一つずつ検品し、仕上げていく

そんなブランドの成長期に新たに参加したのが広報の野村さん。服飾の専門学校を卒業後、都内でアパレルメーカーの販売員を経験し、地元・群馬へのUターンをきっかけに出会ったのが笠盛でした。

笠盛 広報 野村文子さん

「出身は桐生の隣の市なんですけど、実は私、恥ずかしながらそれまでは桐生が織物の産地だって知らなかったんです。入社してから少しずつ知識を深めていったような感じで。でも、もともと服飾を学んでいたこともあって、将来はものづくりの仕事がしたいなと思っていたんですね。それで縁あって笠盛に入社しました」(野村さん)

野村さんも最初はミシンオペレーターとして数年間経験を積み、同社でのものづくりの基本が理解できるようになった後は広報を担当することに。

メディア対応はもちろんイベントへの出展など、カサモリレースや000を多くの人に知ってもらうため日頃から頭をひねってきました。

「カサモリレース」を広めるために

ここまで読むと、地産地匠アワードへの応募は000の責任者である片倉さんが主導したのでは、と思う方も多いかもしれません。ところが、そこが“笠盛らしさ”でもあるところ。実は今回のポシェット、野村さんが広報としてのある想いから試作品をつくったのがはじまりなのです。

「このポシェットはカサモリレースを土台としてつくってるんです。カサモリレースは『笠盛といえば』の技術ですが、基本的にBtoBのお取引になるので、自分たち主導で一般の方に知っていただける機会をなかなか持てないことに課題感があって。

この技術で何か特別なものをつくって笠盛のことをもっと知ってほしいなと思い、試作品をデザインしました」(野村さん)

この想いを胸に、数年前にバッグをテーマとした別コンテストへ応募する予定で試作品をつくった野村さん。ところが諸事情により応募がかなわず、数年間、アイデアは眠ったままでした。そして今回、地産地匠アワードの開催を聞き、改めて挑戦を考えたといいます。

「ものづくりを改めて進めるうえで、今回のアワードは地域のつくり手と地域のデザイナーがタッグを組むことが一つのルールですよね。

じゃあどなたと一緒にできるのがいいのかなと考えた際、密にやり取りができて、何度も修正ができる状況下でやりたいと思って。それで片倉に相談をして、じゃあ一緒にやりましょうって言ってもらえたんです」(野村さん)

「僕としてはすごく嬉しくて。今回は野村がプロデューサーで、どちらかというと僕がその補佐。通常業務と逆なんですよ。僕自身は今、管理職で、事業成長や人材育成の機会として、いろんな可能性やチャンスを与えたいなって思ってる立場なんです。

笠盛には『笠盛人』って言葉があって、それは自ら問題を見つけて、自ら行動して解決する人を理想としているんですね。今回の件は、まさに野村が機会を自分で見つけ出してきて、自分の役割を自分で考えて道を切り開いていく挑戦でした。それを断る理由もないし、ぜひ僕の力で手伝えることは手伝えたらって思いがありましたね」(片倉さん)

キャプション>ミシンが並ぶ工場横に設けられている、二人の席。ふだんから横同士に座る二人はここで何度もアイデアを交わし、ミシンでつくってみて‥‥を繰り返したそう

野村さんによる試作品の時点でおおよその姿は出来上がっていたポシェットですが、片倉さんとともに再度デザインを検討。桐生について調べたり話を聞きに行ったりと、産地への知見と想いをさらに深めながらデザインに落とし込んでいきました。

「僕たちがなぜ桐生でものづくりをするのかとか、桐生らしさってなんだろうみたいなことを突き詰めていったときに、知らないこともいっぱいあって。で、じゃあここにどんな刺繍の柄を詰め込んだらいいんだろうって、たくさん話し合いましたね。

そこから、桐生の町の自然をイメージした模様にしていって。赤城山のようにギザギザになってたり、そこから吹く風の渦が巻いていたり。桐生の景色を大切にしながら抽象化して、000らしく幾何学模様に落とし込んでいきました」(片倉さん)

「片倉が赤城山って言ったギザギザの部分に、私は桐生のノコギリ屋根の風景を感じるんですよ。あと私が個人的にお気に入りなのは、000のアイコン的なスフィア(※小さな球体がつながったネックレス)の球の立体感がこのポシェットにも入っているところ。これを入れただけでもかなりテクスチャーの違いが際立って、改良してよかったなと思いました」(野村さん)

「通常のポシェットだとタグで入るようなロゴも、これは刺繍で入れていて。あとは刺繍の繊細さを届けながら強度も持たせるために、縫い方も部分ごとに変えています。

組織とデザインをマッチングさせながらきちんと形を成立させるというか。そうやっていろいろな工夫を施すことで、刺繍の可能性がこんなあるんだって伝えたかったんです」(片倉さん)

「挑戦の町」桐生を、次世代へ繋ぐ

「不安やプレッシャーがあるなかでしたが、試作を繰り返しながら一歩ずつ前進してるのが見えてワクワクして。そういう時間って、ものづくりの一番楽しいことなんだと思うんです」(片倉さん)

「だんだん形ができてくると、『このテキスタイルを使って、こういうアイテムもできるんじゃないか』なんて話も自然と出てきて。そうやって、新しい発見ができる機会にもなりました」(野村さん)

アワードの応募品を制作するなかで、ふだんの仕事への良い影響もあったと振り返る片倉さんと野村さん。

産地の北極星となるべく挑戦を続け、今や桐生の繊維産業をけん引する存在となった笠盛の二人に、最後に、ものづくりを通じて目指す未来を伺ってみました。

「桐生の織物の歴史ってすごく貴重で誇れるものだと思うんですけど、なかなか次世代に語れる場所がないんです。だから笠盛がその場所になる、ものづくりを伝えるきっかけになることを目指して、会社としても広報としても発信していけたらなと思います。

まずは私たちの刺繍の商品や活動を通じて興味を持っていただいて、その先に桐生のいろいろな技術や地域性も届けることで、若い方にも桐生の魅力をどんどん知ってもらえたら」(野村さん)

「今回の企画で改めて、いろんな人に桐生の強みについて聞いてみたんですよ。そうすると、新しいことに積極的にチャレンジして、創意工夫がうまくいって成長してきた歴史が見えてきたんです。なので『挑戦の町』なんだなと。

だから新しいものにも寛容で、僕もよそ者でしたけど受け入れてもらえた。笠盛や000の挑戦も桐生の持つ風土がつくってくれたように思います。

そうやって変わり続けていくことが桐生の強みだと思うので、進化し続ける町であるために、僕たちも全力で進化し続けたいですね。最近それが、僕たちがこの町と共存していくためのあるべき姿なのかなって、000を通じて考えています。

『桐生でものづくりをしてるんです』って話すと、桐生ってすごいよねって言ってもらえることが多いんですけど、それって先人が築いてきた暖簾みたいなもので。だからそれを次世代へ渡せるようにお恩返ししていけたらなと思います」(片倉さん)

近年は桐生でも、移住した若者がお店を開いたり、繊維関連企業がファクトリーブランドを立ち上げたりといったケースが出てきているそう。そこには笠盛が力強く、けれど軽やかに続けてきた進化が多分に影響しているように感じます。

自分たちの成功におごらず、生かされてきた産地の未来を願って。小さなポシェットに大きな志を背負い、笠盛は刺繍を通じて今日も、誰かの暮らしを鮮やかに彩るのでした。


地産地匠アワードとは:
「地産地匠」= 地元生産 × 地元意匠。地域に根ざすメーカーとデザイナーがつくる、新たなプロダクトを募集するアワードです。

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トリプル・オゥ 刺繍ポシェット

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文:谷尻純子
写真:阿部高之

【四季折々の麻】11月:あたたかいのに軽く、やわらかな生地感「麻とウールツイード」

「四季折々の麻」をコンセプトに、暮らしに寄り添う麻の衣を毎月展開している中川政七商店。

麻といえば、夏のイメージ?いえいえ、実は冬のコートに春のワンピースにと、通年楽しめる素材なんです。

麻好きの人にもビギナーの人にもおすすめしたい、進化を遂げる麻の魅力とは。毎月、四季折々のアイテムとともにご紹介します。

あたたかいのに軽く、やわらかな生地感「麻とウールツイード」

11月は「立冬」。寒さがいよいよ本格的になり、冬支度をはじめる月。色づく木の葉を見上げながらお出かけすると、頬にひんやりと次の季節の気配を感じます。

そんな時期に着ていただける服を、麻とウールの糸を合わせて織り上げたツイード生地で仕立てました。両者ともに天然素材で相性も良く、ウールの保温性に麻の吸湿発散性が加わることで、あたたかなのに蒸れにくく、心地好く着られます。重い衣類が多い時期に、ふんわりと軽やかな着心地もおすすめしたいポイントです。

ラインアップは4種類。気温の差が激しい時期に心強い「かぶりベスト」や、ラクに履けつつ形のきれいな「テーパードパンツ」と「ワイドパンツ」、また冬の着こなしで活躍する「ワンピース」を揃えました。

【11月】麻とウールツイードシリーズ:

麻とウールツイード かぶりベスト
麻とウールツイード ワンピース
麻とウールツイード テーパードパンツ
麻とウールツイード ワイドパンツ

今月の「麻」生地

素材に使った麻は、衣類によく採用されるリネン。やわらかな風合いのシェットランドウールとリネンを合わせた混紡糸を用いて、密度を詰めすぎないよう、甘くやわらかに織り上げました。シワにもなりにくく、寒い冬も気持ちよく着られる生地となっています。

シェットランドウールはスコットランドの北にある、寒さや湿度が厳しいシェットランド諸島に生息する羊の毛を用いた糸。海草などを食べて育つため、やわらかい毛質が特徴です。

嵩の高いシェットランドウールから作られるふんわりした糸は、生地を織り上げる際に空気を含み、軽くあたたかな素材感に仕上がります。そこにリネンを混ぜることで、ウールだけで織り上げるよりも耐久性を増して、生地にしなやかさを加えました。

またウールの保温性にリネンの吸湿発散性が加わることで、あたたかなのに蒸れにくい生地となるのも特徴の一つ。屋外ではあたたかく身体を包み、暖房で汗をかいても湿気を逃がしてくれる、この時期に心強い組み合わせの素材です。

素材製造や生地加工は、一つひとつの工程を日本各地の得意な作り手に依頼しました。糸づくりは広島、糸の糊付けは和歌山、織りは岐阜、加工は愛知と、プロの集大成のような生地です。

お手入れのポイント

ウールを多く含むのでドライクリーニングがおすすめ。シワはつきにくいものの、たたみジワなどが気になりアイロンをかける際は、必ずあて布をしてください。

また毎日着たくなる軽やかさではありますが、長く着ていただくために毎日連続しての着用はお避けください。

ざっくりと織られたツイードは糸と糸の隙間にホコリが入り込みやすいため、着用した日は軽くブラッシングをしておき、シーズン終わりにはドライクリーニングに出して保管すると、長くきれいに着ていただけます。

気負わず上品に着られる4アイテム

カジュアルにもきれいにも着られる、冬のお出かけに使いやすい4つのアイテムを揃えました。色展開は生成、グレー、チャコールのナチュラルな3色。ウールの素材感を活かした、自然で上質な印象の色合いに仕上げています。

「かぶりベスト」はその名のとおり、かぶって着られるベスト。後ろの襟元にボタンを一つつけてかぶりやすいよう調整し、パンツにもスカートにも合わせやすい絶妙な丈感に仕上げました。

軽やかな着心地ではありますが、布帛(ふはく:織物のこと)のためニットベストよりもきちんと感を出せるのも嬉しい点。カットソーやタートルネックのセーターなどと合わせて、秋から冬まで長く着ていただけると嬉しいです。

パンツは、足さばきのよい「テーパードパンツ」と、ロングスカートのようにも見える「ワイドパンツ」の2種類。

どちらもウエストはゆったり履けるゴム仕様ですが、麻とウールの上質さがあるため、上品に着られると思います。先にご説明したベストとセットアップで着こなしていただくのもおすすめです。

「ワンピース」は袖なしのゆるやかなAライン。身幅をゆったりととっていますが、広がり過ぎず、かわいらしさはやや抑えた形に仕上げています。こちらもカットソーやタートルネックに合わせて、冬の装いを楽しんでいただければと思います。

素材自体が呼吸をしているような、気持ちの良さがある麻のお洋服。たくさん着ると風合いが育っていくので、ぜひ着まわしながら愛用いただけると嬉しいです。

「中川政七商店の麻」シリーズ:

江戸時代に麻の商いからはじまり、300余年、麻とともに歩んできた中川政七商店。私たちだからこそ伝えられる麻の魅力を届けたいと、麻の魅力を活かして作るアパレルシリーズ「中川政七商店の麻」を展開しています。本記事ではその中でも、「四季折々の麻」をコンセプトに、毎月、その時季にぴったりな素材を選んで展開している洋服をご紹介します。

ご紹介した人:

中川政七商店 デザイナー 杉浦葉子

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