【四季折々の麻】6月:梅雨の景色に揺れる涼やかな皺生地「麻の皺」

「四季折々の麻」をコンセプトに、暮らしに寄り添う麻の衣を毎月展開している中川政七商店。

麻といえば、夏のイメージ?いえいえ、実は冬のコートに春のワンピースにと、通年楽しめる素材なんです。

麻好きの人にもビギナーの人にもおすすめしたい、進化を遂げる麻の魅力とは。毎月、四季折々のアイテムとともにご紹介します。

たっぷりと入った皺が涼やかに揺れる「麻の皺」

6月は「水無月」。自然にとっても人にとっても大切な雨を願う、水の月です。

じめじめと蒸し暑く、外に出かけるのが少し億劫になる時季ではありますが、日本の雨の季節を心地よく過ごし、夏を愉しんでいただけたらと雨の景色を思わせる麻の服をつくりました。

ラインアップは「ワンピース」と「羽織ブラウス」、「ロングスカート」。ランダムに入ったシワ感を存分に味わっていただけるよう、生地の表情を楽しめる3つのアイテムでお届けします。

3年前に登場し夏の定番となった本シリーズ。今年は紫陽花のように華やかな、紫色を新色として加えました。

【6月】麻の皺シリーズ

麻の皺 ワンピース
麻の皺 羽織ブラウス
麻の皺 ロングスカート

今月の麻生地

本シリーズに用いたのは、雨の風景を思わせる縦のラインが印象的なリネン100%の生地。高密度に織り上げた生地はやわらかさとハリ感をあわせ持ち、長い季節で着ていただけます。

リネンのさらりとした生地感に加え、表面にシワがあることで肌へあたる面積が少なく、清涼感のある風合いに。湿気の多い梅雨の季節でも心地よく着られます。

特徴的なシワ加工は麻の加工が得意な滋賀・湖東の生地加工屋さんによるもので、きちんとつけられたプリーツ加工ではなく、ランダムに入ったシワのため、纏うと自然な印象に。薬品や樹脂を使わず、環境にやさしい加工法を採用しており、染めから加工まで多様に手がける作り手さんならではの技が光ります。

麻独特の艶が、シンプルながらも上品な印象を添えてくれるほか、もともとシワがあるため着用中にシワができても気になりにくく、お手入れもアイロンなしで着られるのもよいところ。クシュクシュとねじると小さくまとまるので、持ち運びの際にも便利な生地感です。

お手入れのポイント

ご家庭で手洗いしていただけます。干すときは軽く縦方向に引っ張りながら、シワの形状を整えて吊り干してください。

アイロンでぎゅっとプレスするとシワが伸びるてしまうため「アイロンNG」としていますが、畳みジワが気になるときは少し霧吹きして縦に伸ばして撫でていただくか、スチームタイプのアイロンを生地から浮かせてお使いください。

なお洗濯と着用を繰り返すことで、少しづつシワの加工は弱くなっていきますが、干すときに整えていただいたり、ねじってシワを入れることで、麻素材の特徴により長くシワ感をお楽しみいただけます。

また先にもお伝えしましたが、クシュクシュと小さくまとめてコンパクトに持ち歩けるのもこのアイテムのポイント。ざっくりと生地をたぐり寄せてねじった後にゆるめると、真ん中あたりで自然と輪ができ、そこからさらにねじると一つにまとまっていきます。

羽織をクシュっとまとめれば外出時のバッグに忍ばせやすく、旅行のパッキングにも便利です。

※長期保管の場合はまとめておくと嫌なシワが入る可能性があるため、広げて保管ください。

長い夏で気軽に着られる

ご用意したのは「ワンピース」と「羽織ブラウス」、「ロングスカート」の3アイテム。たっぷりとしたシワ生地と相性がよく、気軽にさっと手にとれて、長い夏で着られるラインアップを企画しました。独特の生地感のため、コーディネートの主役になる一枚としてご着用いただけると思います。

なお、もちろんいろいろなコーディネートでお楽しみいただけるのですが、デザイナーとしてイチオシなのは、生地の表情が引き立つ素材との組み合わせ。生地の凸凹が少ないさらりとした素材と合わせると、素材の対比がありシワ感が生きるのでおすすめです。

中川政七商店の「強撚綿」シリーズのトップスや、「麻の夏布」シリーズのパンツと合わせると相性よし(写真のハイネックプルオーバーは7月下旬頃の入荷予定)

色展開は昨年から継続となる「生成」と「墨」に加え、今年は梅雨空にも映える色鮮やかな「紫」もつくっています。シンプルで着まわしやすい色みと、一枚で主役になる色み。お好みに合わせてお選びください。

ワンピースは丸みのあるシルエットで、裾がすこしすぼんだコクーン型。Vネックの開きが開けすぎず狭すぎず、きれいに見える形となるよう調整しています。

羽織ブラウスは、Tシャツやタンクトップの上にさっと気軽に羽織っていただけるようにと作ったもの。冷房の肌寒さから守ってくれるのはもちろん、襟元を覆うので日除けにもちょうどよい形です。

ロングスカートはシワ感がいちばん生きる代表的なアイテムとして作っています。ウエストのギャザーからランダムに降りたシワがきれいに見えるよう、ボリューム感にこだわって調整しました。

素材自体が呼吸をしているような、気持ちのよさがある麻のお洋服。たくさん着ると風合いが育っていくので、ぜひ着まわしながら愛用いただけると嬉しいです。

「中川政七商店の麻」シリーズ:

江戸時代に麻の商いからはじまり、300余年、麻とともに歩んできた中川政七商店。私たちだからこそ伝えられる麻の魅力を届けたいと、麻の魅力を活かして作るアパレルシリーズ「中川政七商店の麻」を展開しています。本記事ではその中でも、「四季折々の麻」をコンセプトに、毎月、その時季にぴったりな素材を選んで展開している洋服をご紹介します。

特集サイト:中川政七商店の麻

ご紹介した人:

中川政七商店 デザイナー 杉浦葉子

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【あの人の贈りかた】贈りものから、楽しい会話が生まれることを願って(スタッフ羽田)

贈りもの。どんな風に、何を選んでいますか?

誕生日や何かの記念に、またふとした時に気持ちを込めて。何かを贈りたいけれど、どんな視点で何を選ぶかは意外と迷うものです。

そんな悩みの助けになればと、中川政七商店ではたらくスタッフたちに、おすすめの贈りものを聞いてみました。

今回は商品企画・デザイナーの羽田がお届けします。

毎日の家事を親子で楽しむひとときにしてくれる「絵本ふきん」

幼い頃からまだ誰も持っていないものや、ややマニアックなものを見つけてくるのが大好きな私。いつしかそれは贈りもの選びの基準にもなってきて、贈る相手に合わせて「ちょっと珍しくて面白がってもらえそうなもの」を探すようになりました。

この絵本ふきんもまさに「あの絵本がふきんに!?」と、笑顔になってもらえる定番の一品。

自分に子どもが生まれてからは、同じくらいの年の子がいる友人や、子どもの関係でお世話になった方に贈りものをする機会が増えました。絵本ふきんの絵柄はやはりなじみがあるようで、「今ちょうど子どもがこの絵本にはまってるよ!」とか、「昔この絵本好きだったわ~」とか、ふきんをきっかけにお話に花が咲くことも。

我が家でも自家用に使っていますが、台所で『きんぎょがにげた』のふきんを干していると、ことばを覚え始めたばかりの2歳の息子が、きんぎょがにげたの絵本とふきんを交互に指さし「おんなじ!おんなじ!」と嬉しそうに教えてくれます。

毎日忙しくて少し面倒な家事の時間も、親子で楽しく過ごすひとときにしてくれるふきんです。

<贈りもの>
・中川政七商店「絵本ふきん」

老若男女問わず盛り上がる「おみくじ」

陶製のお人形の中にお告げが入っている中川政七商店のおみくじ。

おみくじや占いって、常日頃からものすごく信じているわけじゃなくても、お告げの内容を読むと気になっちゃってその場でみんなで見せあったり、ちょっと盛り上がったりして楽しいですよね。

そんなわけでおみくじを贈ることが多いのはみんなで集まるタイミング。老若男女問わず喜ばれることから、自分の結婚式のプチギフトに、お正月の親戚の集まりの手土産にと、ちょっとした贈りものとして、いろんなモチーフのおみくじにこれまで何度もお世話になっています。

お告げを楽しんだ後のお人形は「守り神としておうちに飾ってるよ」と声をかけてもらうことも(実際、私の親族の家には歴代のおみくじたちがずらりと並んでいます)。贈った直後も、贈った後も楽しんでもらえる一品です。

またこれは余談ですが、地域限定で販売している一部のおみくじはその地域の方言でお告げが書かれています。開発時に社内でその地域出身のスタッフを探し、こちらが考えたお告げの文言を方言に翻訳(?)してもらうことがあるのですが、「◯◯弁だとそんな言い方になるんだ!」と、毎回開発時にひと盛り上がりするシーンです。

もし旅先で見つけたら、ぜひともお土産に連れて帰ってくださいね。贈った方と楽しい会話が生まれること、請け合いです。

<贈りもの>
・中川政七商店「おみくじ」

生まれて初めての一点もの「栗川商店 命名渋うちわ」

このうちわとの出会いは遡ること10年ほど前。九州のものづくりメーカーさんを巡る出張で、栗川商店さんへ見学に訪れた時でした。

栗川さんによると、柿渋を塗っていることから防虫効果があり、100年持つといわれるため、特に女の子の出産祝いに喜ばれているのだとか。その心は「(柿渋の防虫効果にちなみ)悪い虫がつかない」とのこと。

「ほぉ〜!なるほど!!」と、そのいわれがとても面白く、当時まだ私は子どもがいなかったのですが「もし将来自分に女の子が生まれたら絶対にこのうちわを注文しよう!」と心に決めて帰りました。

その後、私は結婚し男の子を出産。あの時は「女の子の出産祝いに‥‥」とお聞きしましたが、いやいや、やはりかわいい我が子。いざ子どもを持つと悪い虫がついてほしくないのは男の子も同じでした。長男も次男もどちらも出産後には記念にこのうちわを注文し、ずっと大切にしています。

栗川商店さんの達筆な名入れも、我が子のために生まれて初めて作ってもらった一点もの!という感じがしてうれしいんですよね。見た目だけでなく100年持つといわれるだけあり、つくりも丈夫。持ちやすくあおぎやすく、涼しい風がたっぷりと吹いてくる実用的なところもとても気に入っています。

うちわの特性といわれが見事にマッチしたこの逸品。感動のおすそわけとしてぜひともたくさんの人に、そして後世に伝えていきたく、私の出産祝いの贈りものの定番となりました。

渋うちわのものづくりも100年後に残っているよう願いを込めて、これからも贈りものとして広めていきたいと思います!

<贈りもの>
・栗川商店「命名渋うちわ」

※中川政七商店での販売はありません

贈りかたを紹介した人:

中川政七商店 商品企画・デザイナー 羽田えりな

【旬のひと皿】豆ごはん

みずみずしい旬を、食卓へ。

この連載「旬のひと皿」では、奈良で創作料理と玄挽きの蕎麦の店「だんだん」を営む店主の新田奈々さんに、季節を味わうエッセイとひと皿をお届けしてもらいます。



毎日の自分のごはんにこまっている。

朝から蕎麦を打ち、諸々の仕込みをして、時計を見ながら慌てていてもあっという間に営業時間になってしまう。お客さんや誰かのためになら勝手に手が動くものの、自分のためだけにつくるごはんには、なかなかスイッチが入らないのです。

数か月間でしたが、お世話になっているワイン屋さんが開くワイン講座に月に一度だけ参加させてもらっていました。講座では毎月ワインを1本持ち帰り、自宅でじっくり味わいを感じて、次の会の時に感想を言い合うといった時間もありました。どんなお料理と合わせたとか、そのワインから受けた印象などなど。

同じワインでもそれぞれ受け取り方が違うし、もちろん好みも違う。ワインの感想を聞くことはもちろんですが、参加されている方のごはんの風景を聞くことも楽しく、豊かな時間を想像できてとても楽しかったのを覚えています。

仕事として料理や蕎麦を日々つくっていますが、やはり「美味しい」「楽しい」の原点はみんなで集まって食べ、時間を共有することだなと思います。お店でもそんな時間を過ごしていただければ嬉しいし、自分の普段の食事でもそんな時間をつくれたらいいなと思っています。

さて、今回は新緑のきれいな季節にぴったりの、豆ごはんのご紹介です。

野菜のさやや皮からもいい味が出るので、今回はさやをお米と一緒に炊きました。こうすることで、豆が入っていない部分を食べても「豆ごはん」を感じられます。お米は少しかために炊いて、チーズと黒胡椒、オリーブオイルをかければワインにも合いそう。

豆ごはんを頬張り「春もそろそろ終わりだね」なんて話をしながら、ほっと一息ついていただけたら。私も、おうちのごはんも大切にしたいものです。

<豆ごはん>

材料(作りやすい分量※4人分程度)

・米…2合
・えんどう豆…200g
・昆布…5cm角
・塩…小さじ1

作りかた

お米をといでザルにあけ、10分ほどおく。
えんどう豆をさやごとよく洗い、豆とさやにわける。さやはお米と一緒に炊くのでとっておく。

炊飯器または土鍋にお米を入れ、通常の水加減で水を入れたら30分ほど浸水させる。

塩を入れて軽く混ぜ、昆布を中央にのせる。その上にえんどう豆のさやをのせ、通常通りの時間で炊飯する。

豆の色をきれいに出すため、豆は炊飯時に混ぜず別に茹でておく。ごはんが炊ける時間に合わせて鍋に湯を沸かしたら、塩(分量外)を適量入れて豆を茹でる。好みのやわらかさでザルにあげる。

炊きたてのごはんからさやを取り出す。豆を混ぜ、少し蒸らして完成!

うつわ紹介

好日茶碗 太白野菊
陶器の箸置き 海鼠

写真:奥山晴日

料理・執筆

だんだん店主・新田奈々

島根県生まれ。 調理師学校卒業後都内のレストランで働く。 両親が母の故郷である奈良へ移住することを決め、3人で出雲そばの店を開業する。  
野に咲く花を生けられるようになりたいと大和未生流のお稽古に通い、師範のお免状を頂く。 父の他界後、季節の花や食材を楽しみながら母と二人三脚でお店を守っている。
https://dandannara.com/

フードコーディネーター・夏井景子さんが合わせる、初夏の料理と工芸カトラリー

突然ですが皆さん、カトラリーにどんなこだわりをお持ちですか?

私はというと、うつわは昔から大好きで、作家さんの展示会や産地の窯元へ赴いては少しずつ収集し‥‥と繰り返してきたものの、実はカトラリーについてそこまで意識を向けたことがありませんでした。

その魅力に気付いたのは当社に入社してから。いろいろなカトラリーがあることで食卓スタイリングの幅が広がったり、何より素材や形で料理がもっとおいしくなったりと、名脇役的存在の大事さを改めて認識し、最近少しずつ集めはじめたところです。

最低限の種類だけでも食事自体はなんとかなるけれど、お気に入りがあるだけで食卓の楽しみもちょっとだけ増える、カトラリー。とはいえ私自身がまだまだ初心者で、どんな風に選んだり、合わせたりするのがいいのか手探りだったりもするのです。

そういったわけで今回は選び方や合わせ方のヒントを頂けたらと、料理研究家・フードコーディネーターの夏井景子さん宅を訪れました。中川政七商店から新しく登場した工芸の技や素材で作る「工芸カトラリー」から3種類を選び、料理やうつわと一緒にご提案いただきます。

フードコーディネーター・夏井景子さんのカトラリー選び

東京・二子玉川にあるマンションで暮らす夏井さん。普段は料理教室を主軸にしながら、メディアでのレシピ提案やドラマのフードスタイリングも担当するなど、忙しく働かれています。

中川政七商店にもファンの多い夏井さんの料理やスタイリング。そのアイデアは、窓から光の入るおおらかな台所で生み出されていました。

食器棚には仕事道具と趣味を兼ねたうつわがぎっしり並び、カトラリーも豊富にストックされています。

「カトラリーはちょっと形の変わったものが好きで、遊び心を添えるような役割を持たせることが多いです。うつわって楕円とか長方形とか、そんなに変わった形のものってないと思うんですけど、カトラリーは探してみるとオーソドックスな形から結構変わった形までいろいろあって。ちょっとくらい個性的でも食卓のエッセンスになってちょうどいいんですよね」

言われてみれば確かにうつわだと面積が大きい分、食卓の雰囲気を左右しますが、カトラリーだと小さいので、食卓に少しだけアクセントを添えるのにちょうどいいかもしれません。

「あとは、うつわとの相性も大事ですが何よりも料理ありきで選びますね。形や素材によって盛りやすさ、食べやすさも変わるから、そのあたりも吟味します。特に、お箸やスプーンなどの直接口に運ぶものは、口あたりや持ちやすさ、口に運んだ時に料理をおいしいと感じるかも大事なポイントです」

「なめらかな琺瑯のスプーン・フォーク」×「サラダとスープ」

中川政七商店の新作カトラリーから、夏井さんがはじめに選んでくださったのは「なめらかな琺瑯のスプーン・フォーク」。

カトラリーとしては少し珍しい琺瑯素材を採用したこちらの品は、口あたりがやわらかく汚れも付きにくい琺瑯の利点を活かし、“新しいスタンダードカトラリー”を目指して作りました。その名の通りなめらかな口あたりと、するんと料理を運べるなめらかなラインが特徴です。

「同じシリーズでスプーンとフォークがあるので、せっかくだし両方使えるメニューがいいなと思って。琺瑯の舌触りを一番感じられるのはスープかなと思ったので、今回はかぼちゃを使ったポタージュスープに合わせています。柄が長く持ちやすいフォークは初夏を意識した彩りの野菜サラダに使って、ゆっくりできる日のブランチのイメージです」

「生成・焦茶・青磁と3色あるので何色を合わせるか迷ったのですが、ここは野菜の色を引き立てるシンプルな生成にしました。お手頃価格なので全色ストックしておいて、料理や器のトーンが落ち着いているときは青磁を合わせるなど、気分によって使い分けるのもいいですね」

<使用した商品>

なめらかな琺瑯のスプーンフォーク 生成 大
【WEB限定】明山窯 TEIBAN WARE 長皿 淡青磁
信楽焼の小皿 黄はだ
食洗機で洗える漆のスープボウル 大 濃茶

※そのほかは夏井さんの私物

「陶器のソース鳥さじ・鳥鉢」×「初夏の野菜フライ」

「キャッチーな見た目で食卓を明るい雰囲気にするものを作りたい」と中川政七商店のデザイナーが生み出した「鳥さじ」「鳥鉢」。お気づきの通り、「鳥」と「取り」のダブルミーニングな品です。

それぞれ別の販売となりますが、断然セット使いがおすすめ。羽が描かれた鉢に鳥の形をした匙を入れると、鳥がくるんと体を丸めて止まっているようです。薬味やソースを入れてお使いください。

「鳥の羽のふわっとした感じを出したくて、ふわふわした見た目のタルタルソースを入れたいなと思いつきました。一緒に作った初夏の野菜フライには、玉ねぎやズッキーニ、パプリカなどを使っています。

料理が仕事の我が家では、野菜が半端に余ってしまうことが時々あって、そんな時はパン粉をつけて今日みたいにフライにするんです。簡単にできて満足感もあるおすすめメニューです」

「2色ある鳥鉢はシンプルな白もよかったのですが、今回は初夏っぽさに合わせて青色を選んでます。この色が入るだけで食卓の雰囲気がパッと華やかになりますね。お料理のトーンが少し寂しい時にも活躍しそうです。コンパクトなサイズ感ですが、2~3人分くらいのタルタルソースが十分入りました」

<使用した商品>

陶器のソース鳥さじ 白土
陶器のソース鳥鉢 青磁
美濃焼の平皿 土灰
信楽焼の小皿 黄はだ、並白

※そのほかは夏井さんの私物

「ステンレスの取り分けスプーン」×「ゴーヤチャンプルー」

誰かと食卓を囲むときに便利なのがサーバースプーン。どん!と出てきたボリュームのある料理をそれぞれが好きなだけ取り分ける際に、少し大きめのスプーンがあれば活躍します。

中川政七商店の新作では、ステンレスに熱を加えて色付けをするテンパー加工を施し、真鍮のような味わいのある表情を出しました。マットな輝きで、焼き物にもガラスの器にもなじむ佇まいに仕上げています。

「個人的にもサーバースプーンが大好きでいろいろ集めてるんです。サーバースプーンといえばやっぱり大皿料理。今回はボリュームたっぷりのゴーヤチャンプルーに添えました。ゴーヤの緑が鮮やかなので、少し落ち着いた真鍮のような色がよく合いますね。うつわは料理を引き立てられるように、黒っぽい陶器のものを合わせました」

「少しコンパクトなサイズかな?と思ったのですが、持ってみると女性の手にもちょうどよい大きさでした。すくう部分が広くてスムーズに料理が取れますし、角のシャープなラインがうつわのなかで食材を軽く切り離したいときにも便利ですね」

<使用した商品>

ステンレスの取り分けスプーン

※そのほかは夏井さんの私物

手になじむかたちや素材のぬくもり、ゆらぎある風合いが、口に運ぶたびに「おいしさ」をやさしく引き立ててくれる、工芸で作られたカトラリー。

料理やうつわに合わせて「今日はどれにしよう」と悩みながら、暮らしを彩るたのしみのひとつとしてご愛用いただけたら嬉しく思います。

プロフィール:

夏井景子(なつい・けいこ)

料理研究家、フードコーディネーター。
新潟生まれ。 板前の父と料理好きの母の影響で、食べることも、作ることも、人に食べでもらうことも好きになる。製薬学校を卒業後、パン屋やカフェ店長などを経て独立。雑誌や広告などで活動するほか、二子玉川で料理教室を主宰。BS-TBS『天狗の台所』『天狗の台所 Season2』をはじめ、テレビドラマの料理監修も手がける。著書『メモみたいなレシピで作る家庭料理のレシピ』(主婦と生活社)
http://natsuikeiko.com/

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文:谷尻純子
写真:奥山晴日

【四季折々の麻】5月:涼しく軽い夏の定番「麻の夏布」

「四季折々の麻」をコンセプトに、暮らしに寄り添う麻の衣を毎月展開している中川政七商店。

麻といえば、夏のイメージ?いえいえ、実は冬のコートに春のワンピースにと、通年楽しめる素材なんです。

麻好きの人にもビギナーの人にもおすすめしたい、進化を遂げる麻の魅力とは。毎月、四季折々のアイテムとともにご紹介します。

涼しく軽い夏の定番「麻の夏布」

5月は「立夏」。きらめく日差しに目を細め、若葉の隙間からいよいよ夏の訪れを感じる月となりました。

今月お届けするのはこれからの長い夏にも心強い、涼やかで軽やかなリネン100%の服。かさばらず持ち歩きもしやすいので、旅の際にもおすすめです。

ラインアップは「チュニック」と「パンツ」。上下ともゆったりしたシルエットですがリネンならではの上品なツヤ感があり、きれいめに着こなしてもいただけます。

数年前からこの季節にお届けしている本シリーズでは、着まわしやすいシンプルな色とともに、毎年、夏の日差しに映える鮮やかな新色も登場。今年は「若竹」色がラインアップに加わりました。

【5月】麻の夏布シリーズ

麻のサマーチュニック
麻のサマーパンツ

今月の麻生地

細く繊細なリネンの糸を贅沢に使い、こまやかに生地目を詰めて丁寧に織り上げた生地。麻ならではの上品で控えめな光沢が美しく、カジュアルになりすぎないのもポイントです。

シャリ感がありつつもしなやかな肌あたりは、まさに麻特有の魅力のひとつ。さらりとした質感で、高い気温のもとでも快適に着ていただけます。薄手で涼しく、乾きも早くかさばらないので、夏旅のお供にもおすすめです。

また、広い生地幅を無駄なく使うデザインと、シンプルな縫製を採用したことで、麻の服のなかでは比較的お手頃な価格に抑えるようにしているのも、実はこだわっている点です。

お手入れのポイント

洗濯ネットを使用すれば、ご自宅の洗濯機で洗っていただけます。アイロンをかける際は少し生地を湿らせ、あて布を使用してくださいね。

麻のよさをそのまま感じられる、シンプルですっきりしたシルエット

ご用意したのは「チュニック」と「パンツ」の2アイテム。どちらもゆったりしたシルエットでシンプルなつくりですが、それゆえに素材のよさが引き立ちます。

色展開はベーシックで根強い人気の「紺」、透明感のある「灰白」、鮮やかな新色「若竹」の3色展開。ぱきっとした色合いは、リゾート感も演出してくれます。それぞれ別々にも着ていただけますが、ぜひ上下で合わせていただき、快適に夏を楽しんでいただけたらと思い企画しました。

同じ色で合わせてセットアップ風に着ていただいたり、上下違う色で夏ならではの色あわせを取り入れたり。気軽に着られる一着なので、色違いで揃えて夏の定番にしていただけると嬉しく思います。

チュニックはかぶって着られる形で襟ぐりはすっきりと広め。ストールなども合わせやすい首元のつくりとなっています。

裾のサイドにスリットがあり、「額縁仕上げ」という縫製方法(※ハンカチの角のように、きちんと角を折りたたんで仕上げる縫い方)で仕上げているため、四角いシルエットがすっきりときれいにおさまります。

麻は縫製の際にゆがみやすく、実は縫製技術が必要な素材。チュニックの裾がはねず、四角くきれいに落ちるようにこちらの方法で仕上げました。

パンツはとにかくシンプルで履きやすくノンストレス。そのまま一枚で着用するのはもちろんですが、軽やかな生地のため、お手持ちのワンピースの下にペチコートのようにも履ける万能なアイテムです。

灰白のみやや透けやすいため、おしりが隠れるくらいの長めのトップスと合わせるなどしてお楽しみくださいね。

素材自体が呼吸をしているような、気持ちのよさがある麻のお洋服。たくさん着ると風合いが育っていくので、ぜひ着まわしながら愛用いただけると嬉しいです。

「中川政七商店の麻」シリーズ:

江戸時代に麻の商いからはじまり、300余年、麻とともに歩んできた中川政七商店。私たちだからこそ伝えられる麻の魅力を届けたいと、麻の魅力を活かして作るアパレルシリーズ「中川政七商店の麻」を展開しています。本記事ではその中でも、「四季折々の麻」をコンセプトに、毎月、その時季にぴったりな素材を選んで展開している洋服をご紹介します。
特集サイト:中川政七商店の麻

ご紹介した人:

中川政七商店 デザイナー 杉浦葉子

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鋳造の技巧が生み出す、銀白色の輝き「錫のミャクミャク」【大阪・関西万博 特別企画】

日本全国、そして世界各国から多くの人々が集う、2025年大阪・関西万博。

日本のものづくりの魅力を楽しく感じてもらいたいという思いを込めて、2025大阪・関西万博公式ライセンス商品として、工芸の技で豪華に表現したミャクミャクのオブジェ5種を制作しました。

今回はその中から、「錫のミャクミャク」に焦点を当て、その魅力を支えるものづくりの現場をご紹介します。

高岡銅器の老舗メーカー・能作が手がける、錫の工芸

手にとるとずしりと重く、やわらかな凹凸の肌が放つのは清潔でやさしい輝き。金属であるのにどことなく温かみを感じる「錫」は、その表情の他、錆びない・朽ちない・使えば使うほど味わいが出ると、古来から使われてきた素材のひとつです。

金・銀に次ぐ高価な金属でありながら、今では暮らしの道具にも用いられている錫。この素材を使って今回、富山県の能作(のうさく)に「大阪・関西万博」の公式キャラクターであるミャクミャクをつくっていただきました。

富山県高岡市に本拠地を置き今年で創業から109年を迎える能作は、高岡銅器の製造を手がける鋳物メーカー。高岡銅器とは富山県高岡市でつくられる金工品の総称で、江戸時代に加賀藩が土地に産業をうむため、鋳物師を大阪から呼び寄せたのがはじまりといわれています。

株式会社能作 5代目 能作千春さん

能作での鋳物づくりは、まず「原型」と呼ばれるおおもとの型を原型師が仕上げ、そこから金属を流し込むための鋳型をつくるところから始まります。

鋳型は生型(なまがた)と呼ばれる、砂に水や粘土を混ぜたものを押し固めてつくる型が一般的ですが、近年では技術研究によりシリコーンを用いる独自の鋳造法もあるそう。表現に合わせながら、使用する型が選ばれます。

砂でつくられる鋳型の例(写真提供:能作)

鋳造に用いられる金属は真鍮や錫、青銅など。

なかでも錫は、他の金属と比べて融点が低く、厚さによっては人の手でも曲げられるほどやわらかな素材といわれます。

その分、加工は粘土を削るような感覚で、目詰まりを起こしてしまうため、代表の能作千春さんいわく「一般的な硬い金属の研磨加工とは天と地ほど違う」そう。

「錫ってやわらかい他にも、いろんな素材特性があるんですよ。抗菌作用がある金属なので、花器にすると花が長持ちするといわれていたり、入れ歯ポットをつくると水が衛生的に保たれるような効果があったり。最近は医療部品の製造も行っています。ただ、これを合金にすると抗菌活性値も変わってきてしまいます。

あとは熱伝導率が高い素材なのも特徴のひとつ。夏場に冷蔵庫で1~2分冷やした錫のカップを使えば、冷たいビールをおいしく飲んでいただけると思います。

他にも、銀と違って黒ずみや錆びも出にくくて、経年劣化しづらいのも特徴ですね。それは今回のミャクミャクのように、置きものや愛でるものにとっては嬉しいポイントですよね」(能作さん)

溶かす前の状態の錫

錫で作る、工芸のミャクミャク

話を聞くにつれ、ますます気になる錫のミャクミャク。商品開発チームの吉田和広さんに、今回のものづくりについても教えてもらいました。

「一番難しかったのは原型をつくるところ。中川政七商店さんからデザイン案を頂いた後、肘の部分のしずくが落ちるような表現をどうやって可能にするのかや、専門的になるのですが、固まった鋳物を引き上げるために型をどううまく外せる仕様にするのかなど、関係者と頭を悩ませました。」(吉田さん)

元となる素材を溶かすところからはじまる、錫のミャクミャクのものづくり。溶解温度が1000度ほどの真鍮は炉を使って溶かされますが、一方で、錫には小さな鍋を用います。

これは錫の溶解温度が231.9度と真鍮に比べて非常に低い分、1、2度の温度変化によってすぐに固まるため。溶かした後、手早く型に流し込むために、小回りのきく鍋を使って溶かすのです。

錫を溶かす様子(撮影:浅見杳太郎)

鋳造の難しさにも職人たちが培ってきた技が光ります。

先ほどもお伝えした通り錫は融点が低いため、型に流しこむ速度によっては途中で固まってしまい、最後までいきわたらないこともあり得るそう。また、逆に温度が高すぎると表面が焼けてしまう事態にもなるといいます。

「流し方ひとつで、湯ジワ(※金属の流れた跡)が出てしまうこともあるんです。表面の美しさや、最後まで均一に錫がいきわたるかは、やっぱり職人の技術で。温度を測りながら作業はするのですがそれだけではだめで、鋳型の状態や湿度などの環境も加味して、毎回、温度や入れ方、スピードを職人が調整しています」(吉田さん)

職人の手で一つひとつ型に流し込む、ものづくりの“ワザ”。企業秘密により写真でお見せできないのが残念ではありますが、何気ない動作のようにも感じるその工程は、積み重ねた経験が叶えるものでした。

2~3分ほどして固まった後は、型から外して研磨の段階へ。湯(※溶かした金属)の流れた道や、全体の凹凸をなだらかにし、表面の鋳肌を均一に整えていく作業です。

こうして出来上がった錫のミャクミャクがたたえるのは、きらびやかではない、やわらかな表情。使っていくほどに味わいが出るのに、錆びない・朽ちないよさもある、長く暮らしに寄り添うオブジェが完成しました。

ちなみにお手入れも簡単。そもそも経年変化が少ない素材ではありますが、ふきんや眼鏡拭きなどで表面をやさしく磨くことで、より美しい状態を保っていただけます。

「職人が思いを込めてつくる一つひとつの製品の背景には、420年近くの高岡銅器の歴史があって。今回のミャクミャクでも、その歴史だったり技術だったり、それを繋いできた職人の心だったりを感じながら、長く愛でていただけたら嬉しいなと思っています」(能作さん)

銀白色のやさしい光沢感と吸いつくような持ち心地。錫のミャクミャクがある暮らしの景色を想像すると、心が和み、不思議と気持ちが落ち着く感覚があります。

ぜひ暮らしのお守りとして、長くご愛用ください。

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文:谷尻純子
写真:阿部高之

2025大阪・関西万博公式ライセンス商品
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