春にあると楽しい5つの「食べる」ための道具

環境が変わる人も多いこの季節。お弁当を持って外でお昼を取ったり、食べるシーンも変化がありますよね。
今回は、新しい暮らしや春のピクニックにもあると楽しい「食」の道具を選んでみました。

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中川政七商店とたつみやが作ったお弁当箱

中川政七商店が作った「究極のお弁当箱」が、毎日ストレスなく使える理由

これまでの短所を解決する、新しいお弁当箱ができました!山中漆器の産地、石川県加賀市にあるお弁当箱メーカー「たつみや」さんと中川政七商店がつくった「ごはん粒のつきにくい弁当箱」です。

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産地:加賀

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中川政七商店の箸

いただきますの道具 政七「箸」考

作ったサンプルは200本以上。大量のお箸と向き合いながら、お箸について考え抜いたデザイナーが、お箸の選び方について教えてくれました。

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産地:福井

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お弁当や贈りものを包んだり、大活躍の「ハンカチ」

“肩ひじはらないハンカチ”がテーマのハンカチブランド「motta」は、麻や綿などの天然素材で、アイロンがけなしでも気軽に使えるのが魅力。色柄も多く、包みやすいので、お気に入りの一枚でお弁当を包んでみては。

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産地:奈良・大和郡山・生駒

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映画「めがね」にも登場した松屋漆器店の重箱(お重)

使いやすさ最高峰。ふだんも使えるおせちのお重を見つけました

松屋漆器店のナチュラルな木の重箱(ハシュケ別注)

漆器の産地である福井県鯖江市の「松屋漆器店」さん。100年以上の歴史を持つ、越前漆器の老舗メーカーがつくる「お重」が、ふだん使いもできる良い工芸でした。

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産地:鯖江

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7色の花ふきんを重ねた様子

何枚あっても困らない、ふきん

食器を拭いたり、台拭きにしたりと、いわゆる普通の「ふきん」として使っていただけるほかにも、出汁漉しや野菜の水気取りといった料理の下ごしらえやお弁当を包む風呂敷代わりにも活躍します。

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産地:奈良・大和郡山・生駒

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気になった記事はありましたか?読み返してみると、また新しい発見があるかもしれません。

それでは、次回もお楽しみに。

【季節のしつらい便】楽しみながらも伝統文化に触れる 端午の節句

5月5日はこどもの日ですね。
こどもの日といえば、鯉のぼりを飾ったり、柏餅を食べたり、菖蒲の湯に入ったり。
でも、何故鯉のぼりを飾り、かしわ餅を食べるのか・・実は詳しく知らずに風習として行っていることではないでしょうか。

実際、私自身も親になって初めて気づくことがとても多いです。
今年5歳になった息子に、日本の伝統文化について話したいけれど、子どもでもわかりやすく伝える・・となると自分の知識のなさに気づかされます。

季節のしつらい便 端午の節句の内容物

楽しみながらも伝統文化に触れるきっかけとして何かないかと考えていたところ、「親子でつくる端午の節句 季節のしつらい便」が登場。
そこで、早速子どもとやってみました。

「鯉のぼり一緒につくってみる?」と聞いたところ、

「やってみたい!」と即答。

「なんで鯉のぼりを飾るかわかる?」「柏餅食べたの覚えてる?」など、始める前に少し質問してみました。

まだ先の行事ではありますが、分かりやすく書かれている冊子を先読みして子どもに分かりやすいような言い回しで伝え、興味を持ったところで作業スタート!

3種類の鱗の形のプレートが入っている

最初はドキドキしながら、慎重に鱗の模様をスタンプしていきます。
鱗の形のプレートが3種類入っているので、子どもでも自分でプレートを押さえながら簡単にスタンプを押すことができました。

慣れてきたら自分でスタンプ台紙の形を選んで、得意げにポンポンと言いながらリズムを打つように進めていきます。

「こういう風にするともっとお魚のうろこみたい!」
「今度は反対向きでやってみる!」

スタンプを押すごとに段々と出来上がってくるのが楽しくなったようで、あっという間にスタンプが押された鯉のぼりが完成しました。

目を入れる作業は、自分で完成させたい子どもの気持ちを優先して、少しはらはらしながらも見守ります。
自分なりのこだわりをもって最後まで描ききってくれました。
最後に、ひれをのり付けし、紐を通すのは私と一緒に‥

「やったー完成!」

自分でつくった鯉のぼりは特別のようで、中を覗いてみたり高く掲げてみたりして喜んでいました。

出来上がった鯉のぼりを前に、付属の冊子をもう一度読み聞かせ。

「こどもの日は鯉のぼりを飾って神様に僕の場所を知らせないと!」
と、子どもなりに鯉のぼりを飾る意味や行事を行う大切さを理解してくれているように感じました。

伝統文化を伝える!と固く考えすぎずに、子どもの成長を感じながら一緒に楽しむことで、自分自身改めて日本の伝統文化の意味を深められるとてもいい時間になりました。

今年はお家で過ごす時間も増えていることと思います。
子どもと行事を楽しみながら、家にいる貴重な時間が有意義なものとなりますように。

木箱に納まる小さな雛人形。女性職人がつくる奈良一刀彫の「段飾雛」

もうすぐ、ひな祭り。

私が生まれた時、段飾りのひな人形を祖父母が贈ってくれました。毎年2月のお天気の良い日には、母が押入れからおひな様の入った大きな箱を出してきて、1年しまっていたお人形に「おひさしぶりですね」と挨拶をしていたものです。

段の骨組みを組み立て、赤い毛氈をかける。おひな様に扇子を持たせたり、五人囃子に笛や太鼓を持たせたり。たくさんのお人形とお道具を眺め、小さな私にとっては楽しいひな祭りでしたが、母にとってはおそらく大変な作業だっただろうな、と今になって思います。

さて、ひな人形にも全国に色々なものがありますが、私が住む奈良には一刀彫でつくられた小さな段飾雛(だんかざりびな)があります。しかも、若い女性の作家さんがご活躍されているとのこと。お話を伺いに、早速お訪ねしました。

奈良一刀彫の小さな「段飾雛」

奈良県奈良市、唐招提寺と薬師寺のほど近くに店舗と工房を構える「株式会社 誠美堂」。ちょうど桃の節句を迎える時期ということもあり、一刀彫の段飾雛がメインに並んでいました。

さまざまなサイズの段飾り雛。小さな人形ながら色鮮やかで存在感は抜群です
さまざまなサイズの段飾り雛。小さな人形ながら色鮮やかで存在感は抜群です。

お話を聞いたのは、「誠美堂」代表の水川丈彦(みずかわ・たけひこ)さんと、この段飾雛をつくっている職人・神泉(しんせん)さん。一刀彫は各地にあれど奈良一刀彫は奈良人形ともいわれ、その起源は約870年も前のこと。平安時代の終わりごろ春日大社の祭礼で飾られたものだといわれています。

奈良の一刀彫は、金箔や岩絵の具で彩色が施されているのが特徴だそう。

一刀彫の「能人形」にも、色鮮やかな彩色が。昔は贈答用によく用いられたものだそうですが、最近は雛飾りや五月人形などの節句人形の製作が大半を占めているといいます。

今にも動き出しそうな「能人形」
今にも動き出しそうな「能人形」。美しい色合いに目を奪われますが、よく見ると一刀彫の無数の面でつくられていることがわかります

結納などの需要があった「高砂」
結納などの需要があった「高砂」も、最近ではなかなか多くは出ないそう。

そしてこちらが神泉さんのつくった段飾雛。手のひらにのせても十分あまるほど、高さわずか数センチの小さな人形に、美しい彩色が施されています。

神泉さんの段飾り雛
神泉さんの段飾り雛(中)。5段目に飾られた桃や橘の花まで、木で彫られたもの

段飾り雛のおひな様
段飾り雛(大)のおひな様。手元の扇にも細やかな彩色が。

小さいながらも5段飾りの段飾雛は、ひな祭りの世界観がここに詰まっているといえばいいのでしょうか。華やかで雅、しかもこれが一つひとつ手で彫られ、また彩色されているということにも驚きます。しかも、下の段に人形やお飾りをすべてしまうことができるのだそうで、収納に便利で実用的です。

段飾り雛
飾り棚かと思いきや、ここにお人形など全てが収まるのだそう

「一般的な大きな段飾雛は、ひな人形を飾るのに何時間もかかりますよね。しまう時もひと苦労。家族の形や暮らし方の変化で、和室がなかったりマンション住まいだったりと、なかなか大きなお雛さまを飾れないところもあるので、最近は小さいサイズのものが人気です」と水川さん。この一刀彫の段飾雛自体は、「誠美堂」創業の頃からのものだそうです。

そしてこの作品をつくっている神泉さん、とてもお若い女性の職人さんです。神泉という名は、先々代、先代から受け継いだもので、現在3代目。「誠美堂」のブランドでもあります。

3代目神泉さん
3代目神泉さん

———一刀彫をはじめてどれくらいになるのでしょうか?

先代のところに弟子入りしていた4年半を合わせると、11年になりました。先代神泉は、奈良の長谷寺のあたりの自宅工房で製作されていたので、毎日そこまで電車と徒歩で通っていました。駅から歩いて30分、私が歩いているのを見て村の人が車に乗せてくれたこともありました(笑)

———昔からこういうものがお好きだったんですか?

お寺など古いものを見るのが昔から好きだったんです。工芸がたくさんある奈良や京都で、見るだけでも楽しかったんですが、自分の手でつくってみたいという気持ちが湧いてきて。そんなに簡単なことではないと思ったけれど、どうせやるなら!と思い、大学を出てから欄間(らんま)などの仏具彫刻などを学ぶ学校に行きました。

一刀彫は最初は自分の仕事として意識はしていなかったんですが、地元奈良でそういう仕事があると知って、彩色されていることにも興味があったのでやりたいなと思ったんです。

———先々代から先代、そして現在と、ずっと同じ形や色のものをつくり続けてらっしゃるんですか?

基本的なデザインや大まかな形は引き継いでいるけれど、全く同じというわけではなくて、少し彫りを変えたり、彩色を変えたりということはしています。弟子時代、やはり思うように自分が上達できなかったときは、はがゆくて。自分が向いているのかいないのかということで悩んだりもしました。

弟子が私ひとりだった分、先代にとても手をかけてもらっていて、それがありがたくもあり、プレッシャーを感じた時期もありました。神泉の名をもらい受けてからは、いいものをつくるために日々自分に必要なことを考えて、力を蓄えています。

好きなものを仕事にするというのは、簡単なことではないと思いますが、好きだからこそ頑張れるというのもまた真だな、と感じながら「誠美堂」の工房を見せていただきました。

若い職人さんがたくさん、一刀彫の工房を拝見

工房の戸をあけると、早速職人さんたちが作業をされていました。しかも皆さんお若い!

「上の方の年齢が高くなっているけれど、その下の職人さんがいなくて。若い世代に繋いでいかないといけないなと思っています」と、神泉さん。

作家・祐誠(ゆうせい)さん
ちょうど五月人形を彫ってらっしゃった作家・祐誠(ゆうせい)さん。祐誠さんの段飾り雛もまた人気です

彩色の職人さん
こちらは彩色の職人さん。彫りと彩色は分業されているのだそう。神泉さんの段飾り雛の彩色も行います

小さな人形が並ぶ姿
効率を考え、同じ人形をまとめて彩色するのだそう。小さな人形が並ぶ姿、なんとも可愛らしいです

彩色に使う岩絵の具
こちらは彩色に使う岩絵の具

神泉さんは、普段はご自宅の工房で製作されているそうですが、最近は新しい職人さんを教えるためにこちらに来てらっしゃるのだといいます。新しいデザインを考える時も、彩色の方と直接話してイメージを伝え、一緒に作りあげるのだそう

「まだまだ勉強することがいっぱいです」と、1年目の職人さん
「まだまだ勉強することがいっぱいです」と、1年目の職人さん。とても小さな「立ち雛」を彫ってらっしゃいました

神泉さん。机に固定されたあて木を使って、彫ります
神泉さん。机に固定されたあて木を使って、彫ります

2体の頭同士をつなげた状態で彫る
こちらはお雛様ですが、小さいのではじめは2体の頭同士をつなげた状態で彫るのだそう

木はヒバを使うことが多い
木はヒバを使うことが多いのだとか。色が白く彩色も映えるといいます

お内裏様とおひな様
お内裏様とおひな様。丸い頭の部分をよく見ると、手数の多さを感じます

彫刻刀はたくさんのサイズを使い分けます
彫刻刀はたくさんのサイズを使い分けます。幅の違うたくさんの平刀。三角刀も角度がいろいろ。能面を彫る時に使う、柄の長い鑿(のみ)を使うことも

特小サイズの段飾り雛
こんなに小さな特小サイズの段飾り雛も。お家の棚の上にちょこんと飾ることができそうです

名を継ぎ、ブランドを守るという想い。

百貨店などで、実演をされることもあるという神泉さん。お客さんの反応を直に感じられるのは嬉しい機会だといいます。以前、先代の作った神泉の作品を修理のために持参された方がいらっしゃり、神泉という名が長く続いてきたという実感がわいたのだそうです。

「神泉は、私だけで作っているものではなく、彩色する方や、箱をつくる方、販売してくださる方まで、みんなで作っているものだと思っています。そして、先代や先々代も含めると、神泉という名、ブランドに関わる方はほんとうにたくさん。誰が欠けても続かないものなんです」

名を継ぎ、ブランドを守るということ。これからは、伝統を守りながらも新しいものが作れたら、とおっしゃる神泉さん。「現代の感覚も取り入れて、それが受け継がれていくものになれば。100年後の人たちに私たちの作ったものが見てもらえるかもしれないんです」

大切な想いをもってつくられている、奈良一刀彫の段飾雛。100年後にも神泉さんの作品がのこり、あらたな神泉さんがまた、この伝統をつないでいることを願ってやみません。

<取材協力>
株式会社 誠美堂
奈良市六条1丁目14-17
0742-43-4183
http://www.hina-ningyou.com

文・写真:杉浦葉子

※こちらは、2017年3月3日の記事を再編集して公開しました。

なぜ、中川政七商店が奈良のまちづくりを?ー工芸再生とまちづくりの関係とはー

中川政七商店創業の地、奈良。1716年に奈良晒の問屋業を始めて以来300有余年、私たちはこの場所で商いを続けています。

中川政七商店ではこれまで、全国各地のつくり手と工芸をベースにしたものづくりに取り組む傍ら、工芸メーカーの再生支援や合同展示会を開催するなど、あらゆる方面から工芸に携わってきました。

1985年ならまちにオープンした「遊 中川 本店」の様子

そんな中川政七商店はいま、「N.PARK PROJECT(エヌパークプロジェクト)」と名付けた奈良のまちづくりに取り組んでいます。

これは、2021年4月に開業の複合商業施設「鹿猿狐ビルヂング」を拠点とし、経営講座や事業支援、コワーキングスペースの運営などを通じて、改めて奈良に向き合い、まちをよりよいものにするためのプロジェクト。

なぜ、いちメーカーがまちづくりを?
なぜ、誰の頼みでもないのに?

そこには、工芸衰退への大きな危機感がありました。

1社だけの経営再建では、産地の衰退がとめられない

中川政七商店ではこれまで「日本の工芸を元気にする!」というビジョンのもと、全国各地のつくり手とともに、さまざまな暮らしの道具をつくってきました。

また、産地の盛り上がりを牽引する「産地の一番星」をつくるために、波佐見の「マルヒロ」や燕三条の「庖丁工房タダフサ」をはじめとして、工芸メーカーの再生支援にも何十社と携わっています。

初の経営再生・マルヒロによる「HASAMI」

しかし1社の経営再建はうまくいっても、工芸全体で見ると、つくり手の減少や経営難による事業縮小は、予想以上に早いスピードで進んでいます。産地全体としての出荷額は、今もなお下降の一途をたどっているのが現実です。

産地の衰退には、工芸が分業で成り立っていることにも原因があります。

例えば焼き物の場合、生地をつくる「生地屋」、成形に必要な型をつくる「型屋」、陶磁器を焼く「窯元」は、それぞれにわかれています。

そのため、たとえ窯元だけを経営再建しても、生地屋や型屋が廃業となると、その工芸品自体がつくれなくなり、産地全体が打撃を受けてしまうのです。

キーワードは「産業革命」と「産業観光」

そんな中、私たちは「すべての工程が1か所で完結すれば、その産地の衰退を防げるのでは」と考えるようになりました。

先ほど例に挙げた焼き物であれば、産地の一番星である窯元が、自分たちで生地屋や型屋までやってしまおう、ということです。製造工程を統合する新しい産業が実現できれば、工芸の世界に「産業革命」が生まれるはず。

ただし分業をやめ、ものづくりの工程を集約するためには、膨大な投資額も必要。産地の衰退を防ぐためとはいえ、なかなか儲からない工芸の世界では、投資をしても見合わない現実があるのもまた事実です。

では成立させるためにどうするか。
そこで行きついたコンセプトが「産業観光」でした。

これまでは産地に小さな企業が点在していたため、観光に訪れたお客さまがものづくりの現場を一貫して見ることは、なかなか叶いませんでした。

その散り散りになっているものづくりの現場を1か所に集めて、お客さまがいつでも来られるように場を整えておけば、その地のものづくりに触れやすくなり、産業観光が成り立ちます。

つまり製造工程を1つの場に集めることは、その一部の工程が欠けてしまうのを防げるだけでなく、お客さまも招きやすくなります。

2017年に中川政七商店も共同開催した産業観光イベント(福井県鯖江市「RENEW」の様子)

百聞は一見に如かず。
普段知ることのないものづくりの様子を覗くことで、さらに愛着が沸いたり、使うたびにその土地の空気や景色を思い返したりと、ものづくりへの興味が一層増していくはず。こうした産業観光がもたらしてくれる、ものづくりへの共感は、私たちにとっても、産地のつくり手にとっても、これ以上なく嬉しいことです。

中川政七商店流「奈良のまちづくり」とは

一方で、ものづくりの場所を1か所にまとめるだけでは、人はわざわざその地に足を運びません。まちを訪れたいと思ってもらうためには、おいしい飲食店や心地よい宿など複数の魅力あるコンテンツがあること、つまりはまちづくりが必要です。

では、それをどのように増やしていくのか。

中川政七商店は、かつて自分たちの経験を活かして各企業の経営再生をしたように、まちづくりにおいても、まずは本拠地である奈良で自分たちがそのモデルケースをつくろうと決意しました。

その拠点として、中川政七商店にとって初となる複合商業施設を2021年4月に開業します。

2021年4月に奈良に開業の複合商業施設「鹿猿狐ビルヂング

奈良には千年以上続く伝統工芸「一刀彫」や「奈良筆」をはじめ、中川政七商店でもロングセラーを誇る「かや織」のふきんなど、数多くのものづくりがあります。

そうした工芸とともに個性あふれるお店が集い、その地に行かないと体験できない魅力がたっぷりと詰まったまちをつくりたい。
古の歴史の深さと、おおらかな新しさ。奈良に住まう人も訪れる人も、足を踏みいれた先々で、そこにしかない出会いを楽しめるようなまちになればと思います。

スモールビジネスで奈良を元気にする!

目指すのは、「スモールビジネスで奈良を元気にする!」こと。

スモールビジネスとは、お店や事業を無理に拡大することなく、店主とお客さまが顔を合わせて会話を楽しめるような、昔ながらの小商いのイメージです。

たとえば、2020年に奈良にオープンしたスパイスカレー店「菩薩咖喱」では、奈良でカレー店を営みたい若い店主を、中川政七商店がサポート。経営にまつわる計画書や会計の仕組み、ブランディングに関するアドバイスや広報サポートを提供しました。

オープン後は3年で目指した売上目標を2か月で達成し、順調な滑り出しとなりました。

2020年に奈良の川東履物商店からデビューしたヘップサンダルブランド「HEP」。こちらは、熱い志をもつ跡継ぎが、中川政七商店の主催する経営講座を受講したことがきっかけで誕生しました。講座を通じて経営のノウハウやブランドの組み立て方などへの理解を深め、発売後は全国のセレクトショップを中心に人気を博しています。

このような奈良のまちづくりの拠点として、中川政七商店では、初のコワーキングスペース「JIRIN」をならまちにオープン。菩薩咖喱やHEPのように「お店を開きたい」「ブランドを立ち上げたい」と考えている方々に、これまで私たちが積み重ねてきた事業のノウハウを提供し、こうしたスモールビジネスがたくさん生まれる環境づくりを目指しています。

奈良には工芸のみならず、人々から愛される奈良公園の鹿や、千年以上昔からこの地を見守ってきた大仏さまなど、長い歴史の中で紡がれてきた魅力がたくさんあります。

そこへさらに、いいお店やいいものが増えていったら、奈良はもっと魅力ある場所に変わるはず。私たちがこれまで取り組んできた経験が、きっと活かせると思うのです。

一見すると全く関係がないように思える、工芸と奈良のまちづくり。
しかしそこには、あらゆる方面から工芸を元気にしたいという、私たちの想いがこもっています。

これまでにない方法で、奈良を魅力ある都市にしていきたい。
中川政七商店は、新たな一歩を踏み出しました。

<施設情報>
鹿猿狐ビルヂング
〒630-8221 奈良県奈良市元林院町22番
0742-25-2188

産地から学んだ日本の食を、食卓で。「産地のごはん」シリーズのすすめ

日本各地に工芸と並んで受け継がれているもの。

それが、土地の風土が育んだ、食文化や郷土料理です。

そこから学んだおいしさを家でかんたんに味わえる「産地のごはん」シリーズをつくりました。

産地のカレーに始まり、今回新たに「産地のおかず」と「産地のおかずソース」がデビュー。中川政七商店が考える日本の「おいしい」魅力をご紹介します。

まだ知らない日本の食を、食卓で味わう。「産地のカレー」

産地のごはんとして真っ先につくろうと決まったのが、日本の国民食ともいえるカレー。各地の郷土食をヒントに、自宅で気軽に楽しめるレトルトカレーをつくりました。

現在のラインアップは佐賀・有田から「根菜の煮ごみカレー」、栃木から「益子のビルマ汁」、岐阜・白川郷の「牛すじすったてカレー」に、滋賀「近江黒鶏の黒カレー」、大分の「ねり胡麻と鯖のカレー」、愛知から「手羽先の八丁味噌カレー」と全6種類。
今後も続々新作が登場する予定です。

後引くおいしさ、「益子のビルマ汁」 

関東屈指の焼き物産地として知られる栃木県益子。そのご当地名物である「益子のビルマ汁」は、かつてビルマ (現ミャンマー) に出征した兵士が、現地で食べたスープを戦後に手に入るもので再現したのが始まりです。

豚バラ肉と夏野菜を煮込み、トマトとカレー粉、唐辛子で風味を加えた、後引くおいしさのスープ。ごはんだけでなく、うどんやパンとの相性も抜群です。

甘さとスパイシーさを兼ね備えた「根菜の煮ごみカレー」

佐賀の郷土料理「煮ごみ」をもとに、鶏肉と根菜を煮込み、トマトの酸味とスパイスをきかせたカレーをつくりました。根菜のほっこりした食感、煮物のほっとする甘さの後にくるスパイシーさが特長です。

「産地のおかず」で、いつもの食卓にご当地の彩りを。

各地の郷土料理や食文化からヒントを得てつくった「産地のおかず」シリーズ。ちょっと材料を足すだけで簡単におかずが一品完成します。アイデア次第でアレンジレシピも自由自在。岐阜の「赤味噌の鶏ちゃん」、愛知の「牛すじと蒟蒻八丁味噌のどて煮」、福井県鯖江の「根菜と厚揚げのぼっかけ」など、いつもの食卓にご当地の彩りを添えます。

赤味噌の鶏ちゃん

岐阜のご当地グルメ「鶏ちゃん(ケイチャン)」は、鶏肉と野菜の味噌炒めのこと。鉄板などで自分で焼くスタイルが基本で、炒められた味噌の香りが食欲をそそります。パウチの中には濃いめの赤味噌で味付けされた鶏肉が入っているので、キャベツやもやしなどを加えて加熱すれば、あっという間に鶏ちゃん風炒めの出来上がり。しっかりとした味のおかげでたくさんの野菜と共に食べられます。ごはんがすすむ一品です。

牛すじと蒟蒻八丁味噌のどて煮

愛知の郷土料理「どて煮」風に八丁味噌と三温糖で牛スジとこんにゃくをじっくりと煮込みました。仕上げには刻んだネギをたっぷりのせてどうぞ。豆腐やゆで卵と一緒に煮込んでもおいしい一品に仕上がります。

これひとつで味が決まる「産地のおかずソース」

山椒にかぼす、味噌など、各地の郷土料理にはその土地ならではの食材や調味料がアクセントとして使われています。そんな地域の食文化をベースにお肉、お魚、野菜、麺など様々な料理に使える「産地のおかずソース」をつくりました。

他の調味料を加えなくても、ひと手間かけたような味わいに。使いやすいスパウトパウチで、スプーンいらずで料理の味付けにさっと使えます。

【愛知】八丁味噌と無花果のソース

愛知の特産品である無花果と八丁味噌にアイデアを得て、洋食に合うフルーツのソースをつくりました。こってりとしたコクと甘さのある果実の味わいは、お肉や根菜を使った料理におすすめです。

ご当地の味を、ご当地のうつわで。産地のうつわシリーズ

実はこうした「産地のごはん」シリーズは、日本各地のうつわを揃えた「産地のうつわ きほんの一式」をヒントに誕生しました。

益子に有田、岐阜の美濃焼など。産地ごとに特徴の違ううつわを暮らしの中で気負わず使えるよう、マグカップや飯碗、プレートなど、一式あれば三度の食事をまかなえる、最小限で最大限活躍するうつわを揃えています。

こちらは益子焼の「きほんの一式」。他に有田焼、美濃焼、信楽焼、瀬戸焼、小鹿田焼の全6産地を揃える
こんな各地の豆皿シリーズも。写真は有田焼

例えば益子のビルマ汁を益子焼のうつわに盛り付けてみる。有田焼の豆皿に産地のおかずを添える。そんなちょっとした取り合わせで、日本各地を旅するような気持ちが家の中で味わえるかもしれません。

食も工芸も、風土と人がつくるもの。

おうち時間に、まだ知らない日本の食を食卓でお楽しみください。

特集「産地のごはん」はこちら

工芸を中心としたものづくりメーカーが集う展示会「大日本市」出展者募集のご案内

全国のものづくりメーカーの皆さまへ展示会の出展のご案内です。

中川政七商店が主催する、工芸を中心としたものづくりメーカー(工芸・食品・化粧品等)が集う合同展示会「大日本市」の出展者を募集いたします。

前回2020年3月の開催時には出展者54ブランド、バイヤーの来場3,000名を突破しました。次回は更に規模を拡大して出展者80社を募集し、2021年6月23日~25日5月19日~21日(新型コロナウイルスの影響により延期)、WHAT CAFE/E Hall(東京・天王洲アイル駅)での開催を予定しています。

そこで、今日は全国のものづくりメーカーの皆さまに向けて、合同展示会「大日本市」の特徴をお届けしたいと思います。

中川政七商店が全力でサポート。合同展示会「大日本市」の特徴とは

合同展示会「大日本市」は、“つくり手と伝え手をつなぐ”をミッションに、全国の工芸メーカーと小売店バイヤーが集う場として、約3,000名のバイヤーが訪れる展示会です。
主催の中川政七商店が、メーカー目線で商談性の高い展示会を目指し、出展者を全力でサポートします。

特徴①高い商談性
出展者は地域のものづくりメーカーに限定しています。
日本のものづくりが好き、仕入れたい、という共感度が高いバイヤーが多く来場されます。

特徴②出展サポートの充実
什器の貸出と造作工事の代行を行っている為、出展コストが抑えられます。
また、出展者への説明会や接客勉強会を開催するなど、出展サポートも充実しています。

特徴③複動的なプロモーション
展示会のPRはもちろん、メディアや一般消費者向けの情報発信も充実しています。
・SNS、noteへの掲載
・メディア向けの発信と来場促進
・一般消費者向けのEC販売


2011年の初開催以来、出展者・来場者ともに「学び・教育」をキーワードに、接客勉強会やトークイベント等を開催し、「大日本市」を通じてメーカー・バイヤーがともに成長できる環境をつくってきました。
展示会の場だけではなく、工芸メーカーが集うプラットフォームの仲間としてともに成長し、工芸産地の未来を切り開いていくことを目指します。

これまでの実績についてはこちらをご覧ください。

リアルの場を活かす。2021年6月の「大日本市」目玉企画

前回2020年2月に開催以降、新型コロナウイルスによる影響で1年以上リアルの場での展示会開催は見合わせることになりました。オンラインでの展示会は開催しましたが、リアルの場で得られる体験は替えがたいものであることを実感しました。
そこで、次回の展示会は「ものづくりに触れる体験」「人と人のつながり」に重きをおいた企画を進めています。

目玉企画①試して、納得して、選ぶ。まるごと試せる展示会

工芸は、見た目の美しさや言葉だけでは、その魅力のすべてを伝えきることが難しいものです。百聞は一体験に如かず。実際に試してみることで、思わぬ使い心地のよさや、機能性に気づいてほしい。そんな思いで、体験コーナーを設置し、バイヤーが調理器具や食器などを試せるようにします。

目玉企画②第三者の声をお届けする「語り部大日本市」

実際に商品を使っている人の言葉には説得力があります。
ものづくりが好きで、つくり手に共感のある「語り部」を増やすことも私たちのミッションだと考えます。
「我こそはこの商品の語り部だ」という情熱を持った方を集め、語ってもらうことで、バイヤーにその熱意が伝わるようなイベントを目指します。
一般生活者に使ってもらい記事にしたり、バイヤーやプロの料理家の皆さまにレビューいただく予定です。

開催概要

日時:2021年6月23日~25日5月19~21日 
※新型コロナウィルスの影響により延期となりました。

場所:東京都品川区東品川2丁目1番地 WHAT CAFE/E Hall
(東京モノレール/りんかい線 天王洲アイル駅 徒歩5~6分程度)

出展社数:80社程度

出展対象者:日本各地のものづくりメーカー(工芸・食品・化粧品等)

※新型コロナウイルスによる社会情勢により、開催中止、もしくは開催形態を変更する可能性がございます。決定後速やかにご連絡させていただきます。ご了承ください。



中川政七商店が合同展示会を主催する理由

最後に、いちメーカーである中川政七商店が合同展示会を主催する理由を少しだけお話します。
それは、私たちが掲げる「日本の工芸を元気にする!」というビジョンにつながっていることに他なりません。

つくり手が元気になるためには、「欲しい」と思う人にしっかり届く、流通の出口が大切です。
かつて中川政七商店が販路を開拓しようと考えたとき、出展したいと思える展示会になかなか出会えませんでした。ないなら、自らつくる。本当の意味で全国の工芸メーカーが自立し、事業を継続していくために、つくり手それぞれが意思をもって売り手や使い手と向き合う場をつくりたい。
そんな思いから大日本市構想ははじまりました。

大日本市に集うつくり手は、自らの意思と価値観を大切に、日々ものづくりに精進しているメーカーを選んでいます。出展メーカー同士がお互いに高めあい、一緒に成長することを目指します。