【旬のひと皿】梅とレモンの甘露煮風シロップ

みずみずしい旬を、食卓へ。

この連載「旬のひと皿」では、奈良で季節の料理と玄挽きの蕎麦の店「だんだん」を営む店主の新田奈々さんに、季節を味わうエッセイとひと皿をお届けしてもらいます。



旬のひと皿 梅とレモンの甘露煮風シロップ

「最近雨が多いねぇ」と、母と話をしてしていたら梅雨入りしていました。少し前までは、もう夏が来たのかなという気温で、うっかりどんぐりの鉢植えの水を切らしてしまい、瑞々しい葉の一部が茶色くなってしまいました。梅雨の間は水やりを気にする事もなく、植木も喜んでくれそうです。

今回は何をテーマにしようかなと思い、梅を使ったつるっと喉を通る爽やかなゼリーを作りたいなと考えました。梅は発酵しやすいのと、水分が上がるまでに少し時間がかかるのが注意点。どんなやり方が失敗せず、おいしいシロップができるかなと、試しに数種類作ってみました。

まずひとつ目は梅が並び始めた最初に、青梅とレモン、河内晩柑を入れて酵素シロップを。青梅に包丁を入れて種と身を分けて作っています。実の部分はカリカリの砂糖漬けのようになっていてまだ完成までは時間がかかりますが、梅自体も既に美味しくて癖になる食感です。

もうひとつ、青梅と氷砂糖を瓶に入れ毎日揺すってシロップを製作中。こちらも1か月ほど後のお楽しみです。

最終的にこれにしよう!と決めたのは、梅もシロップも一度に美味しく仕上がる甘露煮風!

甘露煮とシロップと両方楽しめ、仕事終わりにシロップを炭酸で割って飲んでみたところ、シュワっと爽やか。疲れもシュワっと吹き飛ぶような美味しさになりました。

今回は大きな4Lサイズの青梅が手に入りましたので、青梅でチャレンジしています。梅に剣山で穴を開けて、色止めのためによく洗い、殺菌した十円玉を入れて作りました。これは綺麗に青梅を煮るための工程ですので、省略してくださっても。黄色く色づいた完熟梅で作る場合には不要です。

急いで作るとせっかくの青梅の灰汁が少し残ってしまい気になるので、しっかり浸水させて、梅を茹でる工程を水を変えて3回。砂糖を入れて煮るときに灰汁を十分にとりながら煮ていき、シロップがとろりとしてきたら完成です。

グラスに梅をひとつとシロップをたらり、炭酸で割って初夏を乗り切るアイテムを今のこの時期に仕込んでおくと楽しみができますね。 

<梅とレモンの甘露煮風シロップ>

材料

・梅…1キログラム
・砂糖…500グラム
・レモン…1~2個(青梅は酸味が強いので1個、完熟梅の場合は2個でも) 

◆寒天ゼリー
・市販の寒天粉末…4グラム
・水…1リットル

作りかた

梅はひと晩(時間がない場合は2~3時間)、水にさらしてアクを取っておく。
(※完熟梅の場合、アク抜きは不要)。

へたを取ってから、煮たときに破れにくくするために、剣山や針などで梅の皮に穴をあける。
(※穴あけも、完熟梅の場合は不要)

爪楊枝や金串などでへたを取る
軽くコロコロと。

水で洗い、鍋に入れていく。
梅がひたひたにかぶるくらいに水を入れ、沸騰しないように30分ほどコトコトと煮る。
(※撮影では土鍋を使用していますが、ステンレスやホーロー鍋が扱いやすくておススメです)

色づきを綺麗にしたい場合、消毒しておいた10円玉を一緒に入れてもよい
弱火でコトコト

梅がやわらかくなってきたら火から下ろす。しっかりとアクを抜き、後味のさっぱりとした甘露煮とシロップにするために、しばらく水にさらす。

ここまでの、梅を煮て水にさらす工程を3回ほど繰り返す。2回目以降は煮る時間を短くする。

梅に直接水が当たらないように、巻きすなどを使えるとよい。※土鍋の場合、急冷すると割れる可能性があるため注意する

レモンは皮を取り、輪切りにする。

梅を一度取り出し、鍋に1リットルの水を入れて戻す。再び火にかけて、3回くらいに分けて砂糖を入れる。レモンも入れる。
梅の味をシロップに浸透させるようなイメージで、じっくり煮ていく。
※土鍋の場合、底が濡れたまま火にかけると割れる可能性があるので注意する。

シロップがとろっと濃度がつくまで煮詰める。煮汁を飲んでみて、梅の味とレモンのさっぱりした味が出ていれば完成。

別途、冷やしておいた寒天ゼリーにシロップをかけて、梅を載せて盛り付ける。

寒天ゼリーは、小鍋に水1リットルと粉寒天4グラムを入れてかき混ぜてから火にかける。鍋底から軽く混ぜながら、鍋のふちがふつふつしてくるまで熱し、容器に流しいれて冷やし固める
種を取って載せるのも食べやすくておススメ

うつわ紹介

硝子の涼菓皿


写真:奥山晴日

料理・執筆

だんだん店主・新田奈々

島根県生まれ。 調理師学校卒業後都内のレストランで働く。 両親が母の故郷である奈良へ移住することを決め、3人で出雲そばの店を開業する。  
野に咲く花を生けられるようになりたいと大和未生流のお稽古に通い、師範のお免状を頂く。 父の他界後、季節の花や食材を楽しみながら母と二人三脚でお店を守っている。
https://dandannara.com/

夏の特別な一日を、何度でも。本格「流しそうめん」が家にやってきた

夏が来れば思い出す。

祖父母の家に集まり、親戚みんなで食卓を囲んだこと。その夜にいとこ達と花火をしたこと。夏祭りで買ったりんご飴を落として泣いたこと。川べりでキャンプをしてアブに追いかけられたこと。はじめて飯盒で炊いたご飯が美味しかったこと。

今でも鮮明に覚えている、少し特別な夏の日の記憶です。

自分の子ども達はどうだろう。ふと考えて、今のところどんなことが心に残っているか尋ねてみると、「じぃじとばぁばの家に行ったこと」と、やはり実家への帰省が人気。

その後、少し考えてから「あの、お友達の家でやった流しそうめんも楽しかった」との答え。2年前の夏、地元の友人家族のはからいで経験したはじめての流しそうめんが、とても印象に残っているようでした。

「またやってみたい!」

そう言われても、マンション住まいをしていると、なかなかやる機会がありません。竹を使った本格的なものとなると、なおさらハードルが上がります。どうにか家で手軽に、かつ本格的な流しそうめんが楽しめないものか…。

なんと、そんなわがままな願いに応えてくれる卓上流しそうめんセットが登場したというので、家族でやってみました。

※卓上で楽しむ 白竹の流しそうめん

きれい!天然の竹やヒノキに興奮

届いたセットを見た子ども達の第一声は「きれい!」。そうめんを流す水路部分には白竹、給水用の桶には木曽さわら、桶と水路を支える台には吉野ヒノキが使用されていて、天然の素材の風合いや手触りをさっそく気に入った様子。

思いのほかコンパクトな収納で到着
セットはこんな感じ(右奥の受け用の桶は別売り)
触ってみたり
においをかいでみたり

まずは組み立てから。

特別な道具は不要で、あっという間に完成します。水路は真っ直ぐ一直線にすることもできますが、今回は机のサイズや形状なども考慮して、折り返してセットしました。

完成!(受け用のざるは私物)

いざ、流しそうめん!

具材とつゆを用意して、そうめんを茹でて、給水用の蛇口付き木桶に水を入れれば準備完了。もう待ちきれない様子の二人に急かされながら、流しそうめん開始です。

卓上では初めての流しそうめん。木桶からの水でうまく流れるのかと、少しだけ心配していましたが、その点はまったく問題ありませんでした。

蛇口の開けぐあいで水量を調整しつつ、そうめんの量をいろいろと変えてもスムーズに流せます。

スタート!
勢いよく流れて
流れて、、、
なぜか一投目はスルー

最初は少し戸惑いつつ、二人ともすぐにコツを掴み、「次は俺!」「次は私!」と大興奮。自然と交代制になるなど、卓上ならではの作法も生まれていました。

取れた!
取れた!!
喜びの舞い

上手に取れた時の喜びが食欲を増加させるのか、いつもよりもハイペースでそうめんを食べ続ける二人。「のり追加して!」と薬味のオーダーも忘れません。

待ち構えればいいと気づく
ざるから取ればいいと気づく
美味しい

その様子を見て、流し役に徹していた妻も食べる側に参戦。「早く!次!」と、さらに場のペースが加速していきます。

適宜、木桶に水を追加しつつ、足りなくなってきたそうめんを慌てて茹でつつ、あっという間に時間が過ぎていきました。

大量に取る。水も一緒についてくるので、つゆは濃い目がおすすめ
適宜、給水しつつ

結果、「流しそうめん、久しぶりだけど楽しかった!」と、狙い通りみんな大満足で終了しました。

天然素材ながら、さっと洗って乾かせば何度も使えるのもこのセットの特徴。

ちょうど、実家の父から「お中元にそうめんを送る」と連絡がありました。すぐにまた、流しそうめんの出番がやってきそうです。

特別な夏はまだまだ続きます。

<関連特集>
そうめん、しようよ

<関連商品>
・卓上で楽しむ 白竹の流しそうめん
・さわらの飯台 一尺

文:白石雄太

規格外品の価値を‟見直す”。工芸の入り口としての「みなおし品」

産地に眠ったままの規格外品の価値を見直す

品質や機能は正規品と変わらないけれど、見た目の問題によって市場に流通しない商品。

そんな「規格外品」について、どんなイメージを持っていますか?

たとえば野菜などの場合、「味が良ければ見た目は気にしないのに」という人も多く、昨今ではフードロスの観点からも注目され、規格外品を流通させる取り組みが活発におこなわれています。

一方、工芸の世界ではどうでしょうか。

自然の素材や原料を使用して手仕事で仕上げるという特性上、形や色が‟ゆらぐ”こともまた、工芸の大きな魅力のひとつ。

しかし、そんな中でも作り手たちは非常に厳しい検品基準を設けてものづくりに取り組んできました。その結果、基準から外れたものはB品(規格外品)としてはじかれて、産地に眠ったままになっているというのが現状です。

それは、すべてを‟ゆらぎ”として許容してしまわない、真摯なものづくりがおこなわれていることの証左とも言えます。その反面、工芸品の見た目に関して、使う側の目線とは少し離れた、やや過剰な基準を設けてしまっている場合もあるのかもしれません。

中川政七商店では、産地で眠っている規格外品の価値を見直して、それぞれ一点ものの味わいのある商品「みなおし品」としてお届けする取り組みをおこなってきました。

「みなおし品」が、工芸の魅力を知る入口に

私たちが「みなおし品」の取り組みをスタートしたのは2021年。福井県鯖江市で越前漆器を作り続けている漆琳堂さんと、規格外品について会話したことがきっかけでした。

当時、漆琳堂の代表 内田さんの話を聞いて印象的だったのは、規格外品が発生する主な要因が作り手のミスによるものではないということです。

越前漆器

たとえば、漆器に用いる木材を仕入れたとき、加工前に内部がどんな状態かを判別することはできません。それを一つひとつ丁寧に削りだし、うつわの形にして初めて、木の癖や傷、木目の状態が判明します。

手間暇かけて加工しても、基準から外れているものはその時点で規格外となり、仕入れた材料は返品もできない。こうした自然の素材の状態に由来する、どうすることもできない規格外品が非常に多いと聞き、とても驚きました。

そこで考えたのは、これまで弾いてしまっていた規格外品の価値を見直して、最後まで仕上げて販売できないかということ。

木地を削り出してはじめて浮かび上がってくる、木の癖や傷(青くマークした部分)

その表情を、一点ものの味わいとして楽しんでくれる方もいるのでは。正規品より安い価格を設定することで、はじめて漆製品を手にするきっかけになるかもしれない。また、規格外品である理由を明示することで、正規品の検品基準の高さについても改めて理解していただけるのではないか。

そんな思いで「みなおし品」を販売し、結果、これまでに多くの好意的な反響をいただきました。

仕上げると、こんな具合に

今後も、工芸の魅力である味わい、ゆらぎについて皆さんからのフィードバックもいただきながら、作り手とも確認しあいながら、「みなおし品」の取り組みも続けていく予定です。

※「みなおし品 てなおし品」特集はこちら

「買う」目線での厳しい検品

工芸の現場において、どんな基準で検品がおこなわれているのか。「みなおし品」の取り組みを共にしている中外陶園さんに聞いてみました。

SETOMANEKI

やきものの街 愛知県瀬戸市で縁起置物や季節飾りなどを作り続けてきた中外陶園さんが、新しい招き猫のカタチとして提案しているのが、陶磁器製の「SETOMANEKI」 。シンプルでモダンな曲線美と、豊富なカラーバリエーションが特徴で、どんな部屋にもなじむ愛らしい置物です。

この「SETOMANEKI」も、自然の土や釉薬を用いて仕上げる過程で、若干の個体差が生じます。商品の特徴・味として楽しんでいただける一方で、細かなチェックをおこない、‟ゆらぎ”の範囲を厳密に見定めています。

代表的な検品項目のひとつが「鉄粉」の有無。土に含まれる鉄分が、焼成時に黒い点となって表面にあらわれることで、赤土などにはより多く含まれていて出やすくなるのだそう。

これを防ぐために、土から鉄分を取り除く処理を丁寧におこなっているものの、実際にどうなるか、焼きあがってみるまでは分かりません。中外陶園さんでは普段、猫の顔や手先部分に直径1mm以上の鉄粉が出た場合は規格外という厳しい基準で検品を実施しています。

少し焦げたような跡や、鉄粉が表出した状態

ほかにも、土に含まれる空気が、焼成時に気泡を作り、釉薬の表面に小さな穴をあける「ピンホール」という事象。釉薬を手作業でかけることによる色のムラ。素地の割れやひびなど。各工程でのチェックと、さらに出荷場での検品を経たものだけが正規品として出荷されていきます。

釉薬に指の跡をつけないための工夫
この段階ではまだ、どんな焼き上がりになるか分からない
釉薬の具合が通常より少し強く出ているもの

土の種類や釉薬の色によって、同じような事象が起きた場合にも自然に見えるかどうかが変わってくるため、「自分が買うとしたら」という目線で、とにかくフラットにチェックすることを心掛けているとのことでした。

厳しい検品の結果、一度ははじかれた工芸の品々。それらが本当に規格外なのか、それとも豊かな味わいの一品なのか。「みなおし品」を通じて皆さんの目で確かめていただけると幸いです。

<関連特集>

文:白石雄太

【はたらくをはなそう】管理課 森岡咲菜

森岡咲菜
管理課

2014年新卒で大手コンビニ企業に入社。その後、韓国企業を親会社に持つショッピングモール開発会社に転職し企画業務に従事。2019年中川政七商店に中途入社。


「中川政七商店で働きたい!」と思ったきっかけは、偶然目にした千石さんの社長交代に関するインタビュー記事でした。「中川政七商店」というお店の存在は知っていましたが、会社についてはほとんど知らない状態で記事を読み、千石さんがお話しされている内容に「すごくいい会社だな」と感動にも似た驚きを感じたのを覚えています。そこから淳さんの著書『日本の工芸を元気にする!』を手に取り、読み終えた時には「この会社で働きたい!」という気持ちが湧き上がっていました。

淳さんとは仕事でご一緒する機会はほとんどありませんでした。ただ、著書を読んだり、2024年のエノキアン(1)などいくつかの場面でお会いして感じたのは、周りの人に対して滲みでる温かさがある人だなということでした。そしてその温かさに惹かれて私はこの会社を志望したのだと感じています。それは中川政七商店がこれからもずっと守っていきたい部分ですし、中にいる私たちが大事にしていくべきことだと思っています。

私は現在、管理課で労務を担当しています。毎月の勤怠締めからの給与計算・支給、入社退社手続き、就業規則変更、年末調整業務、健康診断など、従業員に関わる様々な業務を人事連携しながら進めています。またBcorp担当でもありますので、3年後の新基準による再認証に向けての準備や社内におけるBcorpの浸透役も担っています。

今は労務担当ですが、実は業務に関してそこまでこだわりがなく、やらせてもらえるなら「何でもやりたい!」という考えです。なので、ある日突然「明日から経理をやって」と言われても、それはそれで楽しくやれると思います。(笑)

ひとつのことに固執して柔軟性を失うのが嫌で、新しいことや知らないことにどんどんチャレンジしたいタイプです。そうやって色んなことに挑んで、泣いたり、笑ったり、失敗したり、たまに上手くいったりというような時間を過ごし、自分の経験値が上がり成長しているという実感が好きなんです。そんなに大それたことではなく、昨日の自分より今日の自分が1mmでも前に進んでいたら「それで良し」と思います。

今期からチャレンジ目標ができたのも、とてもうれしいことだなと。会社全体がそうやって少し背伸びした目標にチャレンジしていく雰囲気になるの、すごくいいですよね。

仕事は一人ではできず、周りの人と協力しながら前に進めるものだと思っているので、人事労務チームや外注先さんたちとチームワークよく連携が取れているときは、「やっぱり働くことの醍醐味ってこういうことだよな」と思います。その状況をつくりだすために、常に相手の仕事に敬意を払い、相手の状況を鑑みることを忘れてはいけないなと強く感じます。

あとは、やはり労務は会社の職場環境にも関わるので、みんなが健やかに楽しそうに働いているのをみるとうれしいですね。私も過去に体調を崩してしまい、3か月ほどお休みをして戻ってきたのですが、それって誰にでも起こり得ることだと思っていて。キャリアはマラソンなので調子が良い時もあれば、悪い時もある。調子が悪い時はエネルギーをチャージして、また元気になって戻ってきてほしいなと。なのでみなさんが「また戻って働きたい」を思える環境をもっと作っていきたいです。

<愛用している商品>

空紡糸のラグランワイドプルオーバー

おすすめ理由:肌が弱めな私でもノーストレスで着られる一着。これ1枚でも着られるので、春に向けて別の色も買い足そうと考えています。

産地のおやつ 本葛入り寒天もち

おすすめ理由:うちの姉がドはまりしまして。たまに会いに行く際に「お土産何がいい?」と聞くと、決まってこの商品をお願いされるように。噛み心地がよくさわやかな味ですよね。

丈夫でへたりにくいキッチンスポンジ

おすすめ理由:みなさん推してらっしゃるので、もう私が言うまでもないかもしれませんが、毎日使っても本当にへこたれないです。なので本当に変え時がわからない、、、。家族にも配って布教しました。



中川政七商店では、一緒に働く仲間を募集しています。
詳しくは、採用サイトをご覧ください。

  1. 2024年9月に奈良・京都で開催された、エノキアン協会の総会。中川政七商店がホスト役を務めた。 ↩︎

【旬のひと皿】ホタルイカと旬の果実の酢味噌

みずみずしい旬を、食卓へ。

この連載「旬のひと皿」では、奈良で季節の料理と玄挽きの蕎麦の店「だんだん」を営む店主の新田奈々さんに、季節を味わうエッセイとひと皿をお届けしてもらいます。



旬のひと皿 ホタルイカ

‟わたしのお父さんは夜中の1時ごろまで仕事をしてから帰ってきます。”

 小学生の時、父の日に向けた課題で書いた一節だったと思いますが、これを読んだ父は「よく見ているなぁ」と、喜んでいました。(実際には、その時間にはいつも寝ていて、帰ってくるところは見ていなかったのですが) 

父がいなくなり、母と2人で蕎麦屋を営むようになって、今年の春で10年が経ちたちました。当時はあまりに突然の事だったので、気を紛らわす為にも、何とか日常を取り戻すためにも、3週間で店を再開することに。まだ四十九日も過ぎておらず、蕎麦を打つ練習はしていたもののお客さんにご提供をしたことのない状態からのスタート。

営業に必要な分量の蕎麦を打つことは体力的にもとても厳しく、そしてご提供できるレベルの麺に仕上げることもができず、精神的にもきついダブルパンチ。そんな状態でも、通ってくださっていたお客さんが一緒に悲しんでくださり、たくさん励ましてくださいました。毎年、命日になるとお菓子を届けてくださる方もいらっしゃって、10年もの間覚えてくださっていたかと思うと感謝の気持ちでいっぱいです。大変で泣いた日もありましたが、蕎麦を打って、打ち続けたことで得られたご縁の方がはるかに多く、蕎麦という食べ物に救われています。 

先日、おつかれさまの慰労会として、大好きなご夫婦が営まれるレストランへ母と2人で伺いました。季節の花をさりげなく描いているメニューにお食事がスタートする前からワクワクし、ひと皿ひと皿に素材への想いとリスペクトを感じ、目の前で丁寧に仕上げられるお料理を口に入れる度に、「あぁぁぁ」と体中に感動が染みわたりました。

少し大きめの深みのあるお皿に盛りつけられていたのは、イカと八朔のひと品。マスタードと、上質なオリーブオイル、少し酸を効かせたそのソースに衝撃が走りました。「ソース持って帰りたいです!シェフ!」。

そして仔牛のメインのお料理。綺麗なすばらしい火入れにうっとり。デザートには奈良の苺「古都華」をその場でコンポートにして、桜の冷たいアイスクリームに温かな真っ赤な苺のソースがかけられていました。すばらしい、長い時間を料理に捧げてこられたシェフのお料理を目の前で見ながら体験することができ、帰宅した後も幸せな余韻が長く続きました。 

とある日の営業後にふと時計を見ると深夜1時すぎ。あの頃の父と同じ生活を今、私もしているなと思いながら一日が終わります。また10年、蕎麦のようにほそくながくお店を営んでいきたい。 

今回は大好きな古都華と、ホタルイカを酢味噌和えに。大きなホタルイカは内臓をがたくさん詰まっていてソースのよう。さっと気軽に、火を使わずに作れるひと皿です。 

<ホタルイカと旬の果実の酢味噌>

材料(2人分)

・ホタルイカ…10杯
・新玉ネギ…1/2個
・いちご…2~3個(大きさにより、お好みで。少し酸味のある果物がおすすめ) 
・スナップえんどう豆…5個

◆酢味噌
・白味噌…大さじ1
・砂糖…大さじ1/2
・酢…大さじ1/2

作りかた

新玉ネギの芯は取らず、くし切りにする。蒸し器に入れて、塩少々(分量外)をしてから、串がすっと入る程度まで火を通す(蒸しの場合、10分ほど。電子レンジで軽く温めるでも可)。

蒸し器が無い場合は、電子レンジでも

スナップえんどう豆は上下の筋を取り、2分ほど塩ゆで(塩は分量外)してから氷水に落としておく。

次に、ホタルイカの下処理をしておく。

ピンセットなどを用いて、目玉とくちばし、骨を取る。

酢味噌の材料をすべて混ぜ合わせる。目安は、白味噌と砂糖、酢が2:1:1の割合。お好みでからしを加えても。

いちごはへたを取り、縦4等分に切る。

スナップえんどう豆を氷水から出し、食べやすい大きさに切る。

お皿に盛り付けて、完成。

うつわ紹介

明山窯 TEIBAN WARE リムプレートM


写真:奥山晴日

料理・執筆

だんだん店主・新田奈々

島根県生まれ。 調理師学校卒業後都内のレストランで働く。 両親が母の故郷である奈良へ移住することを決め、3人で出雲そばの店を開業する。  
野に咲く花を生けられるようになりたいと大和未生流のお稽古に通い、師範のお免状を頂く。 父の他界後、季節の花や食材を楽しみながら母と二人三脚でお店を守っている。
https://dandannara.com/

【旬のひと皿】ふきのとう味噌とだし巻き玉子

みずみずしい旬を、食卓へ。

この連載「旬のひと皿」では、奈良で季節の料理と玄挽きの蕎麦の店「だんだん」を営む店主の新田奈々さんに、季節を味わうエッセイとひと皿をお届けしてもらいます。



「もうすぐ春ですよー」と小声でこちらにお知らせしてくれるような存在のふきのとう。

小さくてコロンとかわいい姿を野菜売り場で見かけると、ぼんやりしていた頭にスイッチが入り、うれしさのあまりついつい沢山かごに入れてしまいます。「また季節が変わるなぁ」と思いながら、帰宅するとすぐに調理にとりかかります。

春の苦みのあるお野菜は油ととても相性が良いので、油を少し多めに入れてからませてからふきのとう味噌を作ります。味噌は本当にさらっと、ふきのとうの味をサポートする程度に入れるだけ。

気温が上がると急成長して、花が一気に咲いてしまうため、毎年良い状態のふきのとうが売り場に並ぶ期間はまちまち。何度か出会えると「あぁまた会えた!」という気持ちになります。

なかなか出会えないレアキャラのふきのとう。少し多めにふきのとう味噌を作っておくと、いろいろと楽しめるのでおすすめ。ごはんにちょこんと乗せたり、菜の花と一緒にパスタにしても春を満喫できるひと皿になりそうです。お酒のおともに小さな豆皿にすこし盛ってちびちび食べるのもいいなぁ。

ふきのとうの香りや味を消さない程度にお味噌を入れて、苦みが強すぎる場合は少しお砂糖を入れて食べやすくしてみてください。蕎麦屋の定番だし巻き玉子に今回は合わせてみました。ちょっと添えるだけで季節も感じられる、玉子の甘味とたっぷりお出汁のだし巻き玉子。

寒さでちぢこまった身体も心もちょっとだけ和らげてくれる一品になればいいなと思っています。

<ふきのとう味噌とだし巻き玉子>

材料(2~3人分)

◆ふきのとう味噌
・ふきのとう…5個
・味噌…大さじ1/2
・砂糖…適量(お好みで) 

◆だし巻き玉子
・玉子…3個
・出汁…75ml
・そばつゆ…30ml(ご家庭の麺つゆでOK。濃縮タイプは、希釈した状態の分量)

作りかた

まずは、ふきのとう味噌から。ふきのとうを水でさっと洗い、土がついていないか確認する。根元を取り、半分に割る。

根元の黒い部分を取る

鍋にお湯を沸かし、塩少々(分量外)を入れふきのとうをさっと茹でる(大きさにより、30秒から1分ほど)。お湯から上げたら冷水に落として水気をしぼり、ざっくりみじん切りに刻んでおく。

冷水に落とした後、水気をしぼる

フライパンに油(分量外)をひいて、刻んだふきのとうを軽く炒める。油がなじんだら味噌を加えて、苦みが強い場合はお好みでお砂糖を入れて調整する。※油はなんでもよいが、香りの無いものがおすすめ。

ふきのとうの色を綺麗に保ちたい場合は、ボールなどに移し、氷水にあてて冷やす。

油をしっかり絡めて、味噌を加える。苦みが強い場合はお好みで砂糖も。

次にだし巻き玉子。ボールに卵を割り入れて混ぜ、溶きほぐす。その後、出汁とそばつゆを加えて再度かき混ぜる。

玉子焼き器を熱し、油(分量外)をひいてだし巻き玉子を作る。

最後に、だし巻き玉子をカットしてふきのとう味噌とともに器に盛り付けて完成。

うつわ紹介

信楽焼の魚皿 並白


写真:奥山晴日

料理・執筆

だんだん店主・新田奈々

島根県生まれ。 調理師学校卒業後都内のレストランで働く。 両親が母の故郷である奈良へ移住することを決め、3人で出雲そばの店を開業する。  
野に咲く花を生けられるようになりたいと大和未生流のお稽古に通い、師範のお免状を頂く。 父の他界後、季節の花や食材を楽しみながら母と二人三脚でお店を守っている。
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