【あの人が買ったメイドインニッポン】#54 ラジオナビゲーターの板井麻衣子さんが“最近買ったもの”

こんにちは。
中川政七商店ラヂオの時間です。

今回からゲストは、ラジオナビゲーターの板井麻衣子さん。今回は「最近買ったメイドインニッポン」についてのお話です。

それでは早速、聴いてみましょう。

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板井麻衣子さんが最近買ったメイドインニッポン

板井麻衣子さんが“最近買った”メイドインニッポンは、「HIROKO HAYASHIの三つ折り財布」でした。


ゲストプロフィール

板井麻衣子

1984年生まれ。大分県臼杵市出身。上智大学外国語学部ポルトガル語学科卒業。
2010年度「ミス・ユニバース・ジャパン」にてグランプリを受賞。日本代表として同年8月、ラスベガスにて開催された世界大会に出場。
その後、ラジオのナビゲーターとして活躍の場を広げ、現在ではJFN「Salvage Music」 、J-WAVE「DIALOGUE RADIO 〜in the Dark〜」の番組を担当。
2018年には大分県臼杵市より「うすき応援大使」に任命され、モデル、MC、レポーター等多岐にわたって活躍中。


MCプロフィール

高倉泰

中川政七商店 ディレクター。
日本各地のつくり手との商品開発・販売・プロモーションに携わる。産地支援事業 合同展示会 大日本市を担当。
古いモノや世界の民芸品が好きで、奈良町で築150年の古民家を改築し、 妻と二人の子どもと暮らす。
山形県出身。日本酒ナビゲーター認定。風呂好き。ほとけ部主催。
最近買ってよかったものは「沖縄の抱瓶」。


番組へのご感想をお寄せください

番組をご視聴いただきありがとうございました。
番組のご感想やゲストに出演してほしい方、皆さまの暮らしの中のこだわりや想いなど、ご自由にご感想をお寄せください。
皆さまからのお便りをお待ちしております。

次回予告

次回も引き続き、ラジオナビゲーターの板井麻衣子さんにお話を聞いていきます。10/4(金)にお会いしましょう。お楽しみに。

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【旬のひと皿】椎茸と鶏肉の照り焼き

みずみずしい旬を、食卓へ。

この連載「旬のひと皿」では、奈良で創作料理と玄挽きの蕎麦の店「だんだん」を営む店主の新田奈々さんに、季節を味わうエッセイとひと皿をお届けしてもらいます。



専門学校の2年生だった10代最後の年は、学校の制度を利用して海外へ留学していました。貴重な経験をさせてもらっていたのだから、もっと貪欲に、がむしゃらに頑張れればよかったなと今は思うのですが、当時は自分の知らない世界が広がりすぎていて、日常を送ることすらあやふやで。

まず言葉がわからない、そして伝えられない。もどかしい日々でした。

短い期間だったけど、とても長く感じられたあの時間。「良い時間だったな」と思えるようになったのは、ずいぶん時間が経ってからです。

留学直後のしばらくは、私とは別の料理学校の研修制度を利用して来られた、アメリカ人で元ダンサーのお姉さんと一緒に暮らしていました。とびきり明るい性格で、母国にいらっしゃるボーイフレンドとの電話を部屋で聞いた時には、映画の中かと思いました。

全力で感情を伝えている姿に「アイラブユーは日常だったんだと!」と、当時の私はとてつもない衝撃を受けたものです。

2人とも予定のないお休みの日には、近くにあるピッツェリアに行き、家族の話、日本ではどうなの?アメリカではどうなの?と、お互いの日常を聞き合って。貴重な同居生活でした。

しばらくして、彼女が研修期間の終わりを迎え帰国してしまうことに。急に静かになった部屋で生活することになりました。

そこからは寂しさとともに、全然成長のできていない自分に悔しさもつのり、辛い期間が続きました。まだしばらくは、どれだけ帰りたくても帰れない状況で、20歳の誕生日がきて。

そんなときに、スーパーでお醤油を見つけた時の喜びったら!日本を感じられる貴重なお醤油。高価だなと思いましたが、醤油味がどうしても恋しかったので一番小さなボトルを買い、親子丼風の料理を作って一人で誕生日のお祝いをしました。

「これから頑張っていこう」という前向きな気持ちと、目の前の生活に負けそうな気持ちが入り混じり、嬉しいだけではない誕生日の思い出です。

それから帰国し色々な経験を経て、今は奈良で楽しく暮らしています。ずいぶんと時間が経ちましたが、未だに誕生日が近くなると、「あの時、一人で作って食べたなぁ」と思い出しては懐かしい気持ちにかられます。

秋を迎えた今回のレシピ。何にしようかなと考えているときに、ご近所の美味しいすき焼き屋の女将さんが、東京へ異動されるとご挨拶に来てくださいました。

異動される前にと先日お店へ伺ったところ、お店の皆さんのおもてなしに感激。目の前でお話ししながら焼いてくださるすき焼きは、きっとここでしか体験できない素晴らしい時間だなぁと、嬉しく、美味しくいただきました。

近くにいる人がずっと近くにいるわけではない。日々に追われつつも、ちゃんと今を「楽しむ」ことを目標にしたいなと改めて感じた時間でした。

そんな、懐かしの「親子丼」と、女将さんに焼いていただいた「すき焼き」の美味しさを思い出しながら考えたレシピ。秋の食材・きのこに、すき焼き風の甘じょっぱいタレと親子丼に欠かせない卵を合わせたひと皿をご紹介します。

<椎茸と鶏肉の照り焼き>

材料(2人分)

・鶏もも肉…1枚
・卵…2個
・椎茸…4枚
・玉ねぎ…1/2個
・青ねぎ…適量
・天津甘栗(あれば)…適量
・蜂蜜…小さじ1
・万能醤油(作りかたは以下を参照)…大さじ2

◆万能醤油

醤油、酒、みりんを同量ずつ鍋に入れ、軽く煮立たせたら完成。今回は量を使わないので大さじ2と表記していますが、私は各100mlずつを合わせて火にかけ、冷ましたものを冷蔵庫で保管しています。多めに作って保存しておくといろいろな料理に使えるのでおすすめです。このたれに生姜を加えれば、生姜焼きのたれとしても。

作りかた

まずは鶏肉から。余分な脂や骨を取り除いてそうじしたら、肉の1%弱を目安にした重さの塩(分量外)をして、しばらくおく(ここまでを前日にしておくと味が染み込んで美味しい)。

調理の直前に、鶏肉を半分に切る。

続いて、ゆで玉子を作る(お好みの固さでOK)。今回は水から茹で始め、7~8分ほどで鍋からあげたものを使いました。

椎茸は軸をとる。玉ねぎは繊維に対して直角になるよう、大きめの輪切りにする。青ねぎをざっくりとななめ切りにする。

華やかになるよう、椎茸は飾り切りしても

フライパンを熱して鶏肉を皮面から焼き始める。余分な脂が出てくるので、キッチンペーパーに吸わせながらじっくり焼いていく(皮を下にしたまま)。

きれいなキツネ色に皮面の焼き色がついてきたら、野菜を入れて一緒に焼く。野菜に塩(分量外)をして、途中、鶏肉を野菜の上にのせて休ませながら焼いていく。

「全部に火が通ってきたな」というタイミングでフライパンの端を空け、蜂蜜を入れてブクブク沸くまで焦がす。甘さを加えるというより香ばしさをつけたい。

はちみつに泡が出てきたら、大さじ1〜2ぐらいの水を入れて、万能醤油を全体に回しかけ、味を見る。足りなければ足す。鶏肉や野菜には下味をつけているので、かけすぎに注意。

ねぎも入れて全体を軽く炒める。

火を止め、鶏肉を食べやすい大きさに切って野菜と共に盛り付ける。ゆで玉子も半分に割り、一緒に添える。甘栗もお好みで。

フライパンに余ったたれを全体に回しかけ、茶色い秋のお皿が完成!

うつわ紹介

美濃焼の平皿 土灰


写真:奥山晴日

料理・執筆

だんだん店主・新田奈々

島根県生まれ。 調理師学校卒業後都内のレストランで働く。 両親が母の故郷である奈良へ移住することを決め、3人で出雲そばの店を開業する。  
野に咲く花を生けられるようになりたいと大和末生流のお稽古に通い、師範のお免状を頂く。 父の他界後、季節の花や食材を楽しみながら母と二人三脚でお店を守っている。
https://dandannara.com/

【デザイナーに聞きました】人と人をつなげる、お茶の時間を彩る道具

お茶を愉しむ。

そこに必要なものはなんなのだろう。そもそも、お茶を愉しむってどんな状態なのだろう。

そんなところから改めて考えた末に誕生した、お茶の時間を彩る道具たち。

個性豊かな9種の湯呑に、自然素材の持ち手が目を引く土瓶。それぞれどんな思考や苦労、工夫を経て生まれたのか、担当デザイナーに話を聞きました。

商品開発の話し合い。その場をつないだのも“お茶”

「世の中にお茶の道具はたくさんあるわけで、そこに新しいアイテムを出す意味はなんなのか。私たちは何を伝えたいのか。どんな景色を作りたいのか。

そういった本質的な部分について、プロジェクトのメンバー間で話し合いを重ねてきました」

今回、湯呑を担当した奈部さんは、そう振り返ります。

湯呑を担当した奈部さん

工芸でお茶を愉しむ。そのこと以外は本当になにも決まっていない状態から、皆で考えを巡らせ続けた日々。

その話し合いの場をつないでくれたのも、お茶でした。

「打ち合わせで集まる度に必ずお茶を淹れて、皆で注ぎ合っていました。

たっぷりと淹れた番茶をウォーマーで温めながら、少なくなった人にはまた注いで。

時には自分たちで茶葉を煎ってみたり。

そんな風に過ごすうちに、作りたいのはまさにこの『お茶が人と人とをつないでくれている状態かもしれない』という所に行きついたんです」

時に2時間、3時間を超える長丁場の打ち合わせでも、お茶がその場にあることで、いつもよりおおらかな気持ちで、安心して過ごせている。その感覚に気付き、メンバーとも共感し合えたと言います。

打ち合わせの場には、中川政七商店の番茶を作ってくれている健一自然農園の伊川健一さんも参加。直接お茶の作り手の想いを聞けたこと、また実際の茶畑の風景や香りを体感したことも、今回の商品作りの大きなヒントになったのだそう。

健一自然農園の伊川健一さん

「健一さんの茶畑で実際にお茶作りを体験して、会話を交わして、お茶について一緒に考えました。

茶畑の風景、茶葉の香り、お茶作りの工程。そんな、お茶が私たちの暮らしに届く手前のさまざまな段階を体感して。作り手の想いに触れて。

お茶は『自然と人』、そして『人と人』が関わり合うことで生まれていることを知り、より一層、お茶を介して人と人が安らげる時間を作りたいという気持ちが強くなったんです」(奈部さん)

自然素材の持ち手が目を引く「萬古焼の直火土瓶」

お茶を愉しむといった時に、道具をスタイリッシュに洗練させていく方向性もあれば、お茶を美味しく味わうことに特化する方向性もあります。

今回はそのどちらでもなく、お茶を皆で飲みながら過ごす安らかな時間、それを助けてくれる道具を作ろう、ということが決まりました。

萬古焼の直火土瓶(藤蔓青織部)

「実際に心地よく過ごせた経験から、お茶の時間をできるだけ長く愉しみたいという想いがあって、土瓶はたっぷり大容量のものをデザインしました。

おおよそ1リットルほど入りますが、薄く成形していることもあって、見た目はさほど大きく感じません。

直火で使える耐熱仕様と、工芸的なゆらぎや表情を出す部分を両立させるため、試行錯誤を繰り返しました」

と、「萬古焼の直火土瓶」を担当したデザイナーの大久保さんは話します。

土瓶を担当した大久保さん

「耐熱性を持たせるためにペタライトという鉱石を原料に混ぜている関係で、そのままだと表情が少しマットで均一なものになってしまいます。ペタライトと釉薬の割合などを何度も調整して、光沢感や貫入の具合などが出るように仕上げました」

この土瓶で特に目を引くのが、自然素材を用いた持ち手の部分。白釉のものは籐(とう)、青織部は藤蔓(ふじつる)という植物でそれぞれ持ち手が作られています。

持ちやすさ、注ぎやすさ、本体とのバランスなどを考えて、持ち手の形状は決まっている

「今、こうした自然素材の持ち手を作れる方が国内にはほとんどいらっしゃらなくて、危機的な状態です。

籐(とう)の持ち手に関しては、技術が途絶えることを危惧して自ら学ばれて習得した出雲の作家さんがいらっしゃって、その方にご相談しました。

藤蔓についても、編める方がどんどん少なくなっています。今回は湯呑をお願いしている窯元の代表の方が『編めるよ』ということで、奇跡的にお願いすることができました。本当に偶然というか、湯呑など幅広く商品開発をしていたからこそ出会えたのかなと。

作り手の不足で諦めそうにもなりましたが、持ち手にこだわったおかげで、工芸の豊かさがうまく表現できたのかなと思っています」

白い釉薬の土瓶には、籐(とう)の持ち手がつけられた
同時に発売される「南部鉄器の土瓶ウォーマー」を使えば、あたためたお茶を適温で長く楽しめる。どの角度からもキャンドルの火が眺められる設計

9つの窯で焼かれた個性豊かな湯呑

奈部さんがデザインした湯呑は、9種類すべて質感も形状もサイズも異なる個性豊かなラインアップとなっています。

「おおらかな気持ちでお茶を愉しむ時間。その空気感を実現するために何が必要かと考えて、こうなりました。

通常、家でお茶を飲むセットみたいなものって、人数分の湯呑がお揃いになっていると思うんですが、それだと少しかしこまってしまうというか。

それよりも、形も色もばらばらな中から、それぞれ好きなものを選んでいただきたい。色んな素材感の、手で作られたものがたくさんある。そんな食卓も楽しいですよね」(奈部さん)

何度もサイズや形状を調整しつつ、9種類の湯呑をデザインしていった

今回、9つの湯呑はすべて別々の窯元で焼かれています。それぞれの個性が際立つ様々な技法を用いて作られました。

「それぞれの窯元さんに、大まかなサイズと形状をお伝えして、なるべくイメージが被らないように9種類の詳細を詰めていきました。

中でも『ころ湯呑』という少し小ぶりなものを多く揃えています。それは、お茶をてのひらで包み込むように味わってもらいたかったのと、一杯目二杯目と繰り返し注ぎながら味わう時間も楽しんでもらいたいからです。逆に、『ふくら湯呑』という大きめサイズのものはたっぷり入ります。

敢えてでこぼこした形状にしてみたり、釉薬の掛け方を工夫して変わった質感にしてみたり、遊び心のあるラインアップになっているので、お気に入りのものを選んでいただければ嬉しいです」

小ぶりなサイズの「ころ湯呑(瀬戸焼)」。手で包み込むように持った時、敢えてでこぼこした形状が面白い

お茶を注ぎ合う行為は信頼の証

実際に長い時間を過ごす中でたどり着いた、お茶がつないでくれる時間の愉しみ。そのおおらかで楽しい時間を味わうために、今回の商品たちは生まれました。

「飲み物を注ぎ合うって、心から安心していないとできないことなのかなと思っています。

なので、信頼を作る場所にお茶はぴったり。

家族や友人と集まった時、土瓶と湯呑でお茶会を開くと、きっと楽しいし、癖になる。ぜひ多くの方に試してみてもらいたいです」(奈部さん)

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文:白石雄太

「うつわのような」信楽焼の平土鍋【スタッフが使ってみました】

10月に発売する「信楽焼の平土鍋」。
「うつわのような土鍋」というコンセプトが示す通り、鍋ものだけでなく、茹でる、煮る、蒸す、炒める…など幅広い料理に使えて、うつわのように食卓にも馴染む形です。
デザイナーから話を聞いて、実際に使ってみたい気持ちがむくむく。ひと足先に、サンプルを使用してみました。

土鍋は鍋ものとごはん炊きにしか使わない私と、普段からほとんどの料理を土鍋で作るというスタッフが、それぞれ使ってみた感想をお届けします。

料理道具としての使い心地のよさに驚き!土鍋調理初心者・上田の感想

持ち帰った当初、そうは言っても土鍋だし、おかず作るかな?と半信半疑に思っていました。ですが、実際に使ってみると料理道具としての使い心地が想像以上によかったのです。

使い心地がいいと感じたのは主に2点で、「①食材がかきまぜやすい」「②平たく適度に浅い形状で、食材がよく見える」というポイントでした。
土鍋に限らず大体の鍋は垂直に立ちあがっていると思うのですが、信楽焼の平土鍋は、口に向かって徐々に広がっているので、へらでかき混ぜやすいんです。しかも、鍋底が広く浅めの形状なので、食材が重ならずによく見える。それが料理していて、思った以上に快適でした。

何より、よくある煮物を出しても、いつもより素敵な料理に見える。煮物を作る時には毎回使いたくなるな、という使い心地のよさでした。

専用鍋の代替えとしても使える万能さ

次に、すき焼き肉をいただいたので、すき焼きをしてみました。わが家には、すき焼きの専用鍋がないので、このタイミングで信楽焼の平土鍋があって助かりました。

炒めることができるので、肉の焼き付けもできて、この鍋ひとつで、滞りなく美味しいすき焼きができあがります。
ふつうの鍋でも作れるとは思いますが、すき焼きはやっぱり豪華な料理というイメージも大切にいただきたいもの。信楽焼の平土鍋があれば、専用鍋がなくとも、見た目を損なわずにおいしいすき焼きが食べられます。

次に、ちらし寿司を作ってみました。
わが家には、寿司桶もないのです。専用の道具を使う豊かさに憧れはあるため、いつかはほしいと思いつつ、今はないのが実情。実家ではちょこちょこ出てきたちらし寿司をふと食べたくなるタイミングにも、この土鍋は活躍します。
専用の道具へのあこがれはあるものの、保存場所を考えると購入をためらってしまう。そういう専用の道具の代替えとしても、信楽焼の平土鍋は優秀だと感じました。

お鍋をする際、食材が把握しやすく、取りやすい形状

オーソドックスに鍋料理に使う際にも、食卓での使い心地が抜群によかったです。
形状もさることながら、黄瀬戸は色もあいまって、中身がよく見えます。写真のものはどこを取っても同じ食材ですが、寄せ鍋などは自分が取りたい食材がどこにあるかが把握しやすく、箸をうろうろさせる必要もありません。

大皿としても活用できるので、季節を問わず使える

使っていたのが夏場だったのですが、そうめんを乗せて出すざるがジャストフィットして、いい受け皿にもなりました。形状的に、ただの大皿としても使えるので、人を招く際に、大皿料理を盛るお皿としても活用できると思います。土鍋というと秋冬の調理道具というイメージですが、春夏にもなんだかんだ使えそう。とくに黄瀬戸は色がさわやかで年中使いやすいと感じました。

このサンプル返さないといけないんだ、辛いな…と感じるほど、わが家の台所と食卓になじんだ、信楽焼の平土鍋。鍋はもちろんこれで食べたいし、おかずにも色々と使ってみたい。人を招く時にもぜったいに助けてくれる。料理の腕に自信がないからこそ、この土鍋はとても頼りになりました。私もいち使い手として、発売が待ち遠しい商品です。

普段からほとんどの料理を土鍋で作る、スタッフ・前田の感想

土鍋の専門店で6年ほど働いたことのあるスタッフにも使ってみてもらいました。自宅に12個の土鍋を持ち、普段からほとんどの料理を土鍋で作るというスタッフの前田。どんなところが他の土鍋と違うのか、聞いてみました。

かき混ぜやすく、噴きこぼれない使い心地のよさ

まずは、ムール貝のトマトリゾットを作ってみました。

生米を炒めるところから完成までこの鍋一つで調理できます。密閉性が高くないのでお米の調理には蓋にふきんを巻くなどのコツが必要と聞いていましたが、リゾットを作る分にはそういった注意は不要で、水と共にやわらかくなってくれました。

平らな形状なので、炒める時にヘラを回しやすく、調理の様子が見えやすかったです。一般的な土鍋は内側にすぼまっているので、それは全然違いますよね。

あとは、意外と噴きこぼれがないことにも驚きました。開いた形状の土鍋は噴きこぼれやすいものが多いと思いますが、この土鍋は装飾のスジを目安に調理すると全然噴きこぼれなかったですね。

煮込み料理におすすめ。芯まで熱が入る土鍋ならではの機能性

次に、豚肉とかぶのはちみつ醤油煮を作ってみました。
豚肉などの煮込みは、やっぱり土鍋が得意で、ふっくらと仕上がります。土鍋は一般的に、遠赤外線効果によって、芯まで熱が入ってふっくら仕上がると言われていますが、この土鍋もそのよさがきちんと生かされています。圧力鍋よりは少し時間をかけた方がいいと思いますが、短時間で美味しくできあがります。

最後に、えびしんじょうと冬瓜の味噌鍋を作りました。
身体も心も温まる、胃に優しい献立で、煮込み料理が得意な土鍋の良いところを最大限に引き出した、ここ数年私が一番はまっているお鍋料理です。

土鍋は蓄熱率が高いので、体を温めてくれます。他のおかずを作らなくても、これ一つで満足できる。土鍋は見た目の温かみもあいまって、心も満足します。肉に限らず煮込み料理は土鍋で作るのが1番だと思います。

この土鍋は、食卓に出した時に豪華に見えやすいし、場を演出できるので、友人を招く際にもとてもいいと感じました。形状的に、蒸しパンとかフルーツのコンポートとか、スイーツ系の調理にもよさそうですね。
皆さんも、色々と使って楽しんでみてください。

<掲載商品>
信楽焼の平土鍋※10/9発売

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<掲載商品>
信楽焼の平土鍋 中
信楽焼の平土鍋 大

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文:上田恵理子

【つながる、お茶の時間】「お茶、淹れよっか」が、家族団らんの時間を過ごすきっかけに(中川政七商店 渡瀬聡志さん、諭美さん夫妻)

「お茶にしましょう」。私たちがそうかける声は、何を意味するのでしょうか。

喉を潤すだけでなく、誰かと時間を共にしたり、自分自身の素直な声に耳を傾けたり。せわしない日々に一区切りつけて言葉を交わし合う、つながる時間がそこにあります。

皆さんがどんなお茶の時間を過ごされているのか。3組の方々の、それぞれのお茶の時間を覗いてきました。

この記事では、中川政七商店のプロダクトデザイナー・渡瀬聡志さんと、妻・諭美さんのお茶の時間を紹介します。

プロフィール:

渡瀬聡志・諭美
夫は中川政七商店のプロダクトデザイナー、妻は元中川政七商店で店長や茶道ブランドの企画運営などを担当。夫婦で奈良に暮らしながら、産地やギャラリーをまわって暮らしの道具を迎えたり、旬の食材を使った料理をしたりと、自分たちにとっての心地好い暮らしを愉しんでいる。



聡志さん:

普段は主に、プロダクトの企画、デザインを担当しています。転職前は文具のデザイナーでしたが、シンプルで生活とともにある、暮らしの道具の仕事がしたくて中川政七商店に入ったんです。

工芸の良さは、ものの根っこがある信頼感や面白さ。古い物を見ると「昔はどんな人が使っていたんだろう」とロマンを感じるし、紐解いていくと昔と今の違いに気付けたり、日本人が昔から大切にしてきた美意識や価値観が垣間見えたりするのも魅力ですね。

商品開発をするときは、そうやって人が過去から繋いできたものへのリスペクトを持ちながら、自分が使いたいと思えることも大切に、企画・デザインしています。

もともと家の設えや暮らしの道具が好きで、家具やうつわをよく集めていましたが、入社してからは拍車がかかって。特に、がちがちに決めてデザインされたものよりも、理屈がないものに惹かれることが多いですね。旅先で産地やものづくりの現場を見たり、作り手さんと話したりすると、ついつい買ってしまいます。

とはいえ、デザイン性のあるプロダクトも好きです。普段は手工芸のものを扱っているので、何となく自分の気持ちにバランスをとっているところがあるのかもしれません。

今はもう暮らしに必要なものは揃っているから、必要に駆られて買うことはほぼなくて。それよりも用途や機能に縛られず、迎えること・使うことによって新しい暮らしのイメージが開けるものに挑戦したくなるんです。

諭美さん:

私も、もともとは中川政七商店で働いていて、今は和菓子屋さんに勤務しています。

茶器やうつわでよく手にとるのは、やさしい印象で長く持てるもの。パッと見たときに心が穏やかになり、20年、30年と飽きがこず大事にしてあげたいと思えるものを選んでいます。ものに背景のある、作家ものや古物も好きですね。

父が美術工芸好きで、家族旅行では窯元見学をするような家で育ちました。幼いころから日常に手仕事のものが当たり前にあって、その影響なのか、特別に意識して工芸品を迎えているわけではありませんが、一つずつ表情が違う、人の手が入ったものの魅力に無意識に惹かれているのかもしれません。

茶器の蒐集は主に諭美さん。磁器・陶器・ガラスなどさまざまな素材のものが並ぶ

聡志さん:

お茶を飲むのは、食後やおやつの時間。夫婦で一緒に飲むことが多いですね。僕が静岡出身なので親が送ってくれた新茶を飲んだり、いい和菓子が手に入ったときは、せっかくだからと、妻が抹茶を点ててくれたりすることもあります。

茶道ブランドで働いていた経験を持つ諭美さん。気分をしゃんとしたいときには、抹茶を点てて飲むことも

諭美さん:

特におやつの時間が好きで。美味しいお菓子を手に入れては、何を合わせて飲もうか考えるのが楽しいんです(笑)。

抹茶や中国茶、日本茶など、その日のお茶選びはお菓子や料理に合わせて。夏はすっきり飲める水出し番茶、冬はほっこり飲めるほうじ茶など、季節でもよく登場するお茶は違いますね。

夫婦それぞれが本を読んだり洗濯物を畳んだりしていても、「お茶、淹れよっか」の言葉で一つの場所に集まって家族の時間が過ごせる。お茶の時間には、家族団らんに繋がる良さがあるように思います。


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【つながる、お茶の時間】一緒に時間を過ごす。お茶の時間が持つその営みに意味がある(つちや織物所 土屋美恵子さん)

「お茶にしましょう」。私たちがそうかける声は、何を意味するのでしょうか。

喉を潤すだけでなく、誰かと時間を共にしたり、自分自身の素直な声に耳を傾けたり。せわしない日々に一区切りつけて言葉を交わし合う、つながる時間がそこにあります。

皆さんがどんなお茶の時間を過ごされているのか。3組の方々の、それぞれのお茶の時間を覗いてきました。

この記事では、木綿を主な素材として手紡ぎ手織りの布づくりを行う「つちや織物所」代表、土屋美恵子さんのお茶の時間を紹介します。

プロフィール:

つちや織物所 土屋美恵子
奈良市内の平城宮跡近くに工房を構え、緑豊かな場所で手紡ぎ手織りの布づくりを行う。主宰する「木綿手紡ぎの会」では、工房近くの畑で綿花栽培から取り組み、糸を紡ぎ布を織る過程を参加者と共有する。
http://www.tsuchiya-orimono.com/



土屋さん:

母がいつも着物を着ていたので、呉服屋さんについて行くなど、幼いころから布が身近にありました。そのうちにいつの間にか布が好きになっていて、20代になり自分の生きかたを考えたとき、布を題材にものづくりがしたいと今の道に進んだのがはじまりです。

最初は絹を中心に、糸を購入して自分で染め、他の天然素材と合わせてストールなどを織っていました。ただ時代の変化で、心を惹かれる糸を作る方が少なくなってきて。自分が作るものには糸が一番大切なのに、その糸を外に頼っていてはいけないと思ったんです。自分で紡いだ糸で布を作るようになったきっかけですね。

その後、奈良に移り住んだことを機に、この地で昔から多く栽培されてきた木綿を素材の中心におきました。

それともう一つ、当時から社会への違和感を覚えていたんですよ。世の中は豊かになっていくけれど、大切なものが失われている気がして。何でも古いものがいいというわけではないですが、昔の日本人の美しい暮らしかたから、どんどん離れていくようで残念でした。 でも不満を言っても仕方がないので自分で手を動かしてものを作る人を増やしたり、そこに共鳴していただいたりすることが、世の中に向けて私ができることかなって。

昔ながらのものづくりである手紡ぎの糸は、大量生産・大量販売はできません。経済的に考えると遠ざかるのはわかるのですが、でも、なくなっていくのは残念。自分の身近な、限られた材料でものを作るからこそ出る力や魅力もあるし、シンプルにとても気持ちのいい作業だから、きっとやりたい人がいるだろうとも思いました。

そんな背景から、つちや織物所として手紡ぎ手織りの布で暮らしの道具を作るとともに、12年ほど前からは「木綿手紡ぎの会」も主宰しています。そして、私自身が織物の歴史や社会的な背景、奈良における木綿の歩みなどをもっと学んで、皆さんにお伝えしようと努めています。

手紡ぎの糸を作るのに欠かせない、奈良の職人による糸車
つちや織物所が手がける暮らしの道具

「木綿手紡ぎの会」は糸紡ぎを学ぶ人、織りを学ぶ人、合わせて30人ほどの方に参加いただいていて、皆さんには綿花の栽培から経験いただくんですよ。工房から徒歩7分ほどの場所に畑を持っており、そこで種を蒔いて草を刈り、自然農法で綿花を育てています。

自分の手で紡いだ糸で布を織ることに大きな喜びを感じる方もいらっしゃり、その様子にふれることで私自身がはっとさせられることもあります。

時間をかけてしか作れない手紡ぎ手織りの布は、現代では値段がつきにくいものかもしれないけれど、私は、いのちが感じられる布を自分で作って使って、また納得したものを作っていきたい。商品としては難しくても、だったら自分で作ってみませんか?って。そうやって届けることも織物の仕事の一つで、そんな風に布を作って人とつながっていけたらと思うんですよね。

綿花畑の草刈りも自分たちで
畑仕事の合間に皆さんとお茶。心がほどける時間

紡ぎの会の休憩時間には、皆さんとお話ししながらお茶を飲みます。お茶は淹れる行為自体も楽しかったりリラックスできたりするでしょう。だから淹れることからお任せしています。

休憩時間の話題はさまざまで、私は耳を傾けていることが多いですね。お茶って、飲むことそのものが目的になるばかりではなくて、誰かと時間を過ごすときの仲立ちとしての役割というか。

工房のスタッフと時々、仕事終わりにお茶するときもそう。少しリラックスした気持ちで、自分が思案していることをそれとなく問いかけてみたり、何でもない会話からお互いの気持ちの共有につながることもあります。特別なテーマがなくても、一緒に時間を過ごせることそのものが、お茶の時間の意味だと思うんです。


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文:谷尻純子
写真:奥山晴日