皆さんは暮らしを飾るインテリアを、どんなふうに選んでいますか?
いわゆる賃貸のマンションに住んでいると、間取りや壁紙などの躯体はそんなに代わり映えがしません。かく言う我が家も賃貸マンション住まいです。
暮らしを飾る物を上手に取り入れることで、もっと自分らしい心地好い空間をつくっていきたい。個人的にもそう思っていた折に発売したのが、インテリアコレクション「くらしの工藝布」。使い手次第でさまざまな取り入れ方が膨らむ表情豊かな布たちは、暮らしを飾るのにぴったりのアイテムです。
この人ならどんな風に取り入れるんだろう?と気になった方にお声がけして、実際に使ってみていただきました。
今回訪ねたのは、日本草木研究所の古谷知華さん。日本の里山に眠る可食植物を蒐集し、新たな価値を見出す活動をされています。中川政七商店でも一緒に商品開発をしたご縁で、第2弾のコレクションとなる「アイヌ刺繡」について、デビュー前にひと足早く飾ってみていただきました。
中古マンションをフルリノベーションして、自分好みの住まいを作ったという古谷さんのご自宅。「土気ととろみ」を大切に作ったと話す空間は、天然素材をそのまま生かしたような素色(しろいろ)で統一されており、自然の素材に囲まれているような安心感があります。
現代的な洗練された空間でありながら、ご自身の活動とも通じる、風土へのまなざしを感じるようなご自宅でした。
「ここ2年ぐらいは、藁や竹、麻など、日本の自然の素材を使っているものに愛着を感じて、よく買ってしまうんですよね。やっぱり、生活空間に置いた時に馴染みやすいですし、親しみがある。スタイリッシュかっていうと、そういうわけではないと思うんですけど、なんかこう景観の愛くるしさがよくて取り入れています」
「今回、くらしの工藝布を取り入れてみて、自分が家に置いているものと通じる部分がすごくあるなと感じました。私は家に置くものを選ぶときの視点として、エゴがないことをわりと大事にしていて。ふと見た時に、あまり気張ってなくて、ゆったりした空気感をもつようなのものが好きなんです。
くらしの工藝布は、おしゃれで整った感じもありながら、ちょっと気の抜けた感じがある。いい意味で空間にゆとりを作ってくれるなぁと思いました。彩りは与えてくれるけど、プレッシャーがないんですよね。
暮らしになじんでくれるので、家に飾ってみて『くらしの』と入っている意味がよく分かりました」
布の重なりが奥行きを生む「タペストリー アイヌ刺繍 カパラミㇷ゚」
「カパラミㇷ゚は、最初に窓辺に飾ってみたんです。少し透け感のある布なので、そこだけ光がやわらかく差し込んで、 教会のステンドグラスのように神聖な感じになりました。
布を何枚か重ねて縫っていると思うんですけど、薄い文様のところから光が差し込んで、柄がふわっと浮かぶんですよ。それがすごく神聖な感じで、窓枠ピッタリのサイズだったらより素敵だろうなと思いました」
「壁に飾ってもすごく素敵でした。パッと見の印象は白一色なんですけど、じつはけっこう複雑ですよね。布の厚みや色が違う生地が重なっているので、光が差し込む場所に飾るとより発揮されるけど、壁に飾っても作品性がしっかり感じられました」
景色としてなじむ「捨て耳のタペストリー」
「これはアイヌ刺繍じゃなくて裂織のコレクションですが、部屋の色の統一感を大事にしているので、知らず知らずのうちに白を選んでいました。でも、白と言いつついろんな白が入っているんですよね。テクスチャーも全部違います。オンラインショップの写真だけだと分からなかったんですけど、すごく手がこんでいて見ごたえがあるなと思いました」
「でも景色として見ると白いので、なんかあるなくらいのなじみ方で、この子の部屋にならないのがいいんです。主張が強いものは、その子の部屋になってしまうので」
部屋の完成度を高めてくれる「掛け布 アイヌ文様」
「こちらも白いから部屋になじむんですけど、今回選んだ中で1番主張があるのはこれかなぁと思いました。大判で文様が全体にあるので、文様のパワーをすごく感じますよね。撮影中に一瞬ソファからなくなったのを見て、これがあるのとないのとで、部屋の完成度が変わるなっていうのを実感しました。
アイヌ文様の中でも、渦を巻いたものってポピュラーだと思うんですけど、やっぱり見ただけで魔除けになってくれるのがなんとなく伝わってくるなあって思って。部屋になじみながらも文様のパワフルさが伝わってくるところも面白いです」
「大判の布なので、最初は広げてソファに掛けてたんですけど、アイヌ文様は人の下には置けないと聞いて。それも今回初めて知ることだったので興味深かったんですけど、そうなると大きいからどう使おうか迷って…ベッドに掛けるのもいいかもしれないですね。
あと広い壁があるお家は、壁に飾るのもかっこいいと思います。うちでもじつは1回カーテンレールに吊ってみたんですよ。重さが心配で外したんですけど、大きいので間仕切りにもなるなと思いました。
使い方がこれと決まっていないので悩みどころではあるんですけど、送られてきた時にいろんな飾り方を試してみたいなって思わせてくれる布でした」
生活空間には、エゴがなくて親しみやすさのあるインテリアを
「私にとって、インテリアはやっぱりエゴがないことが大事。愛らしいけど、一つひとつ見ると丁寧に作られていて、こだわりがあって、デザインもよくて。でもなぜかこう、エゴよりもユーモアだったり、親しみやすさがあるようなものが身近にあると、心地好いんです。
そういう意味でも、くらしの工藝布は生活空間になじんでくれるなというのを、今回飾ってみて感じました」
<掲載商品>
・タペストリーアイヌ刺繍 カパラミㇷ゚(9/4発売)
・捨耳のタペストリー
・掛け布 アイヌ文様(9/4発売)
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文:上田恵理子
写真:奥山晴日