秋を迎える準備。十五夜の楽しみかたをお届けします

気が付けば、朝夕には涼しい風が吹き込むようになりました。
厳しい暑さの峠を越す処暑を迎えると、いよいよ秋の気配が近づいているように思います。
次の季節への気配って、どうしてこんなにときめくのでしょうか。いそいそと、季節を迎え入れる準備をはじめたくなります。

9月といえば、季節を楽しむのにぴったりな行事「十五夜」が待っています。
そこで今日は、十五夜の楽しみかたをお届けします。

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月を愛でる時間を楽しむ「十五夜」

十五夜って素敵な風習だなと思いつつ、なんとなく通り過ぎてしまう、という方も多いのではないでしょうか。
私自身、中川政七商店に入社するまでは、あんまり意識したことがない行事でした。いつ?なにをしたらいいの?を、ぼんやりとしか理解していなかったように思います。

そこでまずは、簡単に十五夜のおさらいを。

<十五夜とは?>
十五夜は中秋の名月ともいわれ、毎年旧暦8月15日(現在の9月7日~10月8日の満月の日)に行われる月見の行事です。
1年の中でも空気が澄み月がきれいに見えることから、月を愛でる行事として定着しました。

季節のしつらい便 お月見」の歳時記のしおりより。月の名前。

つまり、季節ごとに桜や紅葉を楽しむように、一番美しく見えるとされる旬の月を楽しむ行事なんですよね。
2021年の十五夜は9月21日になりますが、美しい満月を見たいからこの日、であって、絶対にこの日じゃないと、と堅苦しく考える必要はないように思います。

我が家は毎年近い週末に、というように、ゆとりを持って毎年少しずつ形の違う月を楽しむのも乙な楽しみ方なのかもしれません。
春には周囲を見渡して桜を楽しむように、仲秋の頃の夜には空を見上げて月を愛でる時間を楽しんでみてください。

十五夜の飾りつけ

十五夜の基本的なお供えについて、紹介します。

飾りつけの風習は、収穫の季節への感謝を表しています。
丸いお団子を月に見立てて飾る月見団子の他、十五夜の季節に収穫できる里芋やさつまいもをお供えする風習があります。
すすきを立てるのは、稲穂に見立てているのだそうです。

三宝にお団子をお供えする場合、十五夜に由来して、15個飾るのが定番とされています。
最下段は3列3個ずつ、中段は、2列2個ずつ、最上段は1列2個なのだそうです。
私は最初にお供えした時、1番上を1個にしてしまって、あれ?14個しか乗ってない、と慌てたものでした。

十五夜のお団子を味わうレシピ

お団子をつくったあとには、おいしく頂きたいですよね。
簡単につくれるレシピを教えていただいたので、よければご覧ください。
私は中でも、月の色から見立てて、みたらし団子にして味わうのがお気に入りです。

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十五夜を楽しむ「季節のしつらい」

小さなお月見飾り

十五夜のお団子は15個が定番とされていますが、簡易化して5個を飾る場合もあるようです

十五夜は楽しみたいけど、自分でお団子をつくるのは時間がなくて大変!という方におすすめなのが、この「小さなお月見飾り」。飾ると秋の訪れを感じることができ、サイズ感もちょうどいいお飾りです。
食べ物じゃないのでしばらく飾っておけて、家の中にそっと季節を取り入れてくれます。

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季節のしつらい便 お月見

お月見を楽しむ道具がまとめてセットになった、体験キット「季節のしつらい便 お月見」。
うさぎの飾り、水引のすすき、お団子の粉、三宝、懐紙、竹串、歳時記のしおりがセットになっていて、これ一つで十五夜を満喫することができます。子どもから大人まで楽しめるお月見飾りセットです。

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十五夜の楽しみかたについて、お届けしました。
私は今年、平安時代のように、盃に映る月を楽しんでみようと思います(平安時代の頃は、空を見上げるのではなく、水面や盃に映った月を愛でていたそうです)。

料理道具を知り尽くした飯田屋の店主に聞く、「幸せな食事を増やすための道具とは?」

一流シェフが愛用する調理道具や、長年お店で道具と向き合ってきた店主が「これは」と手に取るもの。

道具を使うことに長けている各分野のプロフェッショナルが選ぶものには、どんな秘密があるのでしょうか。

私たちが扱う暮らしの道具を実際に使っていただいて、ものの良さだけでなく至らなさも含めて感想を教えてもらいました。

本日紹介するのは、浅草・合羽橋にある料理道具専門店「飯田屋」の6代目店主、飯田結太さん。

聞けばさまざまな道具を使いつくし、その良さを日々お客さんに語り尽くしている飯田さんに、さまざまなキッチンツールを使ってみての感想を記事にまとめていただきました。


飯田 結太/飯田屋6代目店主

“超”料理道具専門店飯田屋6代目店主。料理道具ヲタクとして世界中の料理道具を研究。「マツコの知らない世界」「タモリ倶楽部」など様々な番組で料理道具の奥深い世界を面白おかしく発信。自身が仕入れを行う道具は必ず前もって使ってみるという絶対的なポリシーを持ち、日々世界中の料理人を喜ばせるために活動している。
「人生が変わる料理道具」監修
「かっぱ橋商店街リアル店舗の奇蹟」著者


では早速、飯田さんによる「幸せな食事を増やすための道具」を見ていきましょう。

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日本人に愛される「シャキふわ」を生む、おろし金|かもしか道具店「だいこんのおろし器」


実は事務所には300種類ほどのおろし金があるんです。僕はおろし金をいろいろ調べているなかで、道具によって変わる5つの食感があることに気づいたんです。

一番やわらかい食感で口溶けを感じるのが「ふわふわ」、大根を生かじりするみたいな強い食感が「ジャキジャキ」。その間に「シャキシャキ」「シャキふわ」「ふわシャキ」があります。

かもしか道具店 だいこんのおろし器

今回使用したかもしか道具店さんの「だいこんのおろし器」は「シャキふわ」のおろし器なのかな、と。「シャキシャキ感」が強く、食感が少し残る感じのおろし金です。「シャキふわ」は日本人にはこれまでよく食べてきた、つまり家庭にあったおろし金ってこの味わいだったと思うんですよね。

刃のことを僕たちは「目立て」って言うんですが、これは日本人に愛される目立なんだろうなと思います。

そしてこの「だいこんのおろし器」、調理道具であり器にもなってくれる。

おろす部分を外せばこのまま食卓に出せるんです。おろした後、中でちょっとした和え物もできるでしょうし、高さがあるからこぼれにくい。そういう配慮や計算がされてるんだろうなぁと感じましたね……!

あと、僕はこの裏側が大好きなんですよ!
わざと傷がつけてありますよね。これ、シューズの滑り止めと同じ役割なんです。

大根をおろすには力が必要。力がいるって事はつまり滑りやすいんですよ。

樹脂ならシリコンやナイロンのゴムをつけることができますが、陶器だから付けられない。
それを少しでも軽減させるように、裏に傷をつけてスパイクにしたんだろうなと。これも色々考えたんだろうなぁって思いますね。

ちなみに僕は、これでにんじんをおろしてカレーの隠し味に入れるのが結構好きで。
にんじんは細かくおろすとすべて溶けてしまうんですけど、「だいこんのおろし器」を使うとちゃんと食感が残ってくれる。旨味と少しだけ歯触りを表現してくれるんです。

あと、まだ食べてはないんですが、秋の魚の時期になったらもう絶対合いますね……!これを使った大根おろしで食べる、脂たっぷりのサンマなんて、もうどう考えてもルパンと次元みたいなものですよ!(笑)。きっと素晴らしい相性を見せてくれるんだろうなぁと思います。

誰でもたくさん、かんたん、おいしい燻製| かもしか道具店「くんせい鍋」

今まで燻製鍋はいろいろなもの使ってきました。ちなみに、この「くんせい鍋」は8個目ですね(笑)。大きいものから小さいもの、網が2段や3段式、重さが違うものまで……そういう遍歴がある中で、僕はこれ使い続けると思います。すごいよかったです。

かもしか道具店 くんせい鍋

モール系ECサイトで売っているような、いわゆる「初心者用」と言われる燻製鍋って、すごいちっちゃくて。単純に乗っかる食材の量が少ないんですよね。そして燻製って時間かかりますよね。10分ほど火をくべて、20分くらい馴染ませる。1回分出来上がるまで30分位かかるとして、ちっちゃい鍋だと2~3人で食べる時は全然食べたりなくて……(笑)。

だからこそ、食材ができるだけいっぱい入るような形状がいいんですよね。このかもしかさんの「くんせいの鍋」、ちょうどいいです。

蓋の形も、丸いドーム型なのでちゃんと燻煙が充満してくれる。上からも当たるし、下からも当たるし、ちゃんと滞留してくれると思います。

もちろん燻煙は漏れます。でも漏れていいんですよ!

よく燻製鍋って「少しでも煙漏らしたくない」って言う人がいて、特にマンションなんかだと匂いが気になる!っていう気持ちもすごくわかるんです。ただ、適度に煙が漏れてくれないと、生の食材に当たった煙が中に留まって「臭み」や「苦味」変わってしまう。

その煙が少しずつ出てくれたほうが、美味しくできるんです。かもしか道具店さんの「くんせい鍋」は、煙が出るけどもちゃんとおいしい燻製が誰にもできるアイテムだと思います。

すべての料理が喜ぶ至高のスプーン|THE「THE DINNER SPOON」


今回使用した道具たちのなかでもこの「THE DINNER SPOON」、圧倒的に1番でしたね……!

僕はスプーンが大好きでこれまでもたくさん使ってきたんですけど、その中において「ここまで主張しないスプーンってなかったなぁ」と正直びっくりしました。

THE DINNER SPOON

美しい見た目や使いたくなるデザインであることはもちろん大事ですが、スプーンの素晴らしさはそれだけじゃない。大事なのは「掬った時」と「口に入れた時」と「口から抜いた時」なんですよ。

まず口に入ったときに、スプーンは主張しちゃいけないんです。

脇役です。主張していいのは食材だけ。100%食材を舌に感じさせるような働きをするというのが僕の中でのカトラリーの立ち位置なんです。「THE DINNER SPOON」はそれを忠実にできていた。

ちなみに、スプーンが口に入ったときに当たるのは、側面とくぼみの頂点。この2箇所の口へのあたり具合でスプーンが主張するかどうかが決まってくるんですね。

じゃあ当たらせないようにするには何が1番いいか?というと、単純に平べったくすればいいんですよ。ただ平べったくするだけだと何も掬えなくなってしまう。

そこを「THE DINNER SPOON」はギリギリまで薄くして、そして深みも持たせている。

そして僕が感動したのがここのスプーンの下の頂点。

すごく後ろの部分に頂点があるんですよ。

僕たちはスプーンの凹んだところを「ツボ」と呼びます。頂点は通常ツボの真ん中にあるんですよ。でも「THE DINNER SPOON」は、できるだけ後ろのほうに頂点をずらしているんです。だから口当たりがしない。これは絶対計算ですね。

僕はこういったカトラリーも、料理道具だと思ってます。

料理人がつかう料理道具があって、そしてカトラリーは「一番最後に調理する道具」なんですよ。ここに関しては主張しちゃいけない。何故かって、料理人の意図したものを100%の状態で食べる場所なので何も主張しないことが大切。だから、料理道具以上に使い勝手がすごく問われるアイテムなんです。その使い心地は調理に使う道具よりよっぽど難しいと思っていて。

その点において「THE DINNER SPOON」は圧倒的、本当に素晴らしいアイテムでした。

フォークの柄の決定版|THE「THE DINNER FORK」


一口にカトラリーの柄といっても、平べったいもの、球体、木製などいろんな柄がありますよね。たくさんの柄を持ち比べてきましたが、「THE CUTLERY」シリーズの柄はすばらしいですね……!

とくにこの柄で使い心地が素晴らしいと思ったのが「THE DINNER FORK」。フォークとこの楕円型の柄の相性の良さは、ナイフやスプーンと比べて一線を画しますね。

THE DINNER FORK

なぜかと言うと「刺す」からなんですよ。

刺すときに柄に指を当てると思うんですが、これって平べったい方がいいんです。少し平べったいことで、何か刺した時に、感触がすっと指に返ってくる。食材の柔らかさを指で感じることができるんです。

これってすごく大事で、料理って舌だけじゃなく、鼻も目も指先も、五感すべて使った総合エンターテイメント。「THE DINNER FORK」は刺したときにすばらしい「触感」を与えてくれるんです。

フォークに関してはいろいろな柄の形が出ているけれど、もうこれこそが定番でいいんじゃないですかね……! みんなにもぜひ触ってもらいたいです。どんな風に使っても、きっと全部気持ちいいと思います。

強いて気になるところを言うとするなら……刺すということに対して突出しているので少し口離れが気になっちゃいましたね。

でも、フォークの刃が甲を描くことによって食材が滑らないことや回しやすいという意図はすごくわかって、面白い道具でした。

賛否両論が起こる!? 道具の進化を感じるカトラリー|THE「THE DINNER KNIFE」


「THE DINNER KNIFE」は挑戦的な商品ですよ。ギリギリところを狙った、賛否両論が出るアイテムかなと。

まずテーブルナイフでほとんどないと思うんですけど、これ両刃なんです。言うなれば、切れない包丁なんですよ。

THE DINNER KNIFE

三徳包丁やペティナイフなど、切れなきゃいけない両刃の包丁は「まな板」という柔らかい台が刃をキャッチしてくれます。それに対してテーブルナイフの相手はまな板ではなくて、硬い陶器や器、つまりセラミックなわけです。

実は包丁の切れ味ってまな板の種類によって変わっていくんですよ。

昔、大妻大学が発表した文献によると、木のまな板とプラスチックのまな板を8000回上から叩いていく実験をしたところ、木のまな板の方が刃の先端が鋭角なままだったんです。何が言いたいかと言うと、包丁の切れ味の持続性はまな板の硬さに比例してくるんですよ。固ければ固いほど、持続性は落ちてしまう。

つまり、両刃のナイフがテーブルで使う堅いお皿なにぶつかると、切れ味がどんどん落ちていく。刃欠けの可能性すらあるんです。

なので、きっと「THE DINNER KNIFE」は開発するなかでギリギリ切れないような刃つけをしているのだと思います。

「すばらしいね」「これすごい挑戦だね」って言う方もいれば、「すぐに切れなくなっちゃったじゃないですか」って言う人も出てくる恐れがある……。そういう意味でも、少し玄人向けの商品なのかなと思いました。

ただ、これはいままであまりなかった商品ですね。今回の道具の中で、一番「道具の進化」に携わっているものだと思います。

長く愛して一生の宝物になる、鉄の玉子焼き器|フォームレディ「ambai / 玉子焼」

卵焼きっていま爆発的に売れてるんですよ!

飯田屋でも欠品を起こすレベルで、コロナになってからおうち時間が増えて「プロが使うような本格的な調理器具使っておいしいものを作りたい」というニーズがすごい増えてるんです。

なかでも「鉄製」と「銅製」のものは超売れ筋! 特に銅製のものが人気ですが、これから卵焼きを本格的にはじめようと思っている人には、フォームレディさんの「玉子焼」の方を勧めますね。その理由は「形状」と「内側の加工」にあるんです。

ambai 玉子焼 角小

まずはこの形状。昔ながらの銅製の玉子焼き器と比べると、先端が少しクランクしてるんですよ。角度が斜めになっているので菜箸を入れやすく、玉子の巻やすさがあります。

そして実際に使っていて「これはようやった!」と思ったところなんですけど、この玉子焼き器、四辺がなめらかで丸いんです。これ、洗うときに便利なんですよ〜!(笑)

僕、家では銅製の卵焼き器を使ってるんですけど、四辺が直角だとどうしても汚れが溜まりやすいんです。やっぱり洗うところも含めて料理だと思うんですよね。使う人の気持ちを考えて、そこをカバーしてくれるんだな……って思いました。

そして内側の加工。これよく見てもらうと表面がざらざらしていて、わざと傷をつけてるんです。

これは「ファイバーライン加工」と言って、鉄版の表面に凹凸を施して鉄特有の「こびりつきやすい」という弱点を少なくした加工なんです。「凹の部分」には油が馴染みやすく、「凸の部分」は接地面を少なくしてこびりつきにくい。使い始めようと思った方が少しでも使いやすくなるようにしてくれているんです。

そして鉄のフライパンって、手間をかけた分だけ愛着を感じさせてくれる道具なんですよ。

使えば使うほど油が馴染んでいて、どんどん使いやすくなってくる。鉄とか銅の料理道具はできるだけ若いうちから使ったほうがいいと思います、一生の宝物になって自分の人生変えてくれますから!

熱伝導でふわふわ、冷めても美味しい玉子焼き!|アイザワ「純銅卵焼き 関西型」

銅は元々「ザ・職人」のもので、「俺たちはこれ以外使わないから」と言わしめるほどの材質なんです。そしていま、ご家庭で使いたいという方が本当に増えて、銅の卵焼き機はバカ売れしてるんです……!
でも使いはじめて最初に戸惑うのが、銅の卵焼き器って巻きににくいんですよ! 四辺が垂直になっているんで「菜箸どうやって入れんの?」って(笑)。やっぱり元々プロの道具なんですね。使っていくうちに、腕の力で巻けるようになっていきます。

アイザワ 純銅玉子焼 関西型

「銅の卵焼き器」がいいのは理由があって、それは熱伝導の良さ。

卵焼き器って下だけじゃなくて側面も使いますよね。熱伝導が良ければ、火が当たっていないところも熱くなり、熱が均等に行き渡るんです。つまり銅の卵焼きというのは熱ムラがない。

それが何に繋がるかと言うと、味ブレが起こりにくいんです。卵に対して安定的に、下からも横からも熱を伝えることができるおかげで、冷めてもふっくらとした卵焼きになるんです!

あと「純銅卵焼き」の好きなところが、もうひとつありまして。

僕、ずぼらな男なので「やっちゃった〜」って言って、木柄焦ちゃったりするんですよ……(笑)。でもこれ、柄が外せるんです。木柄のリペアパーツだけで買って、取り替えることができる。それが好きなんですよ。

今、使い捨ての道具って多いんですよね。道具は使い続けるほど、どんどん手に馴染んで、自分の手の延長線上みたいに可愛くなる瞬間が訪れる。でもその時に道具の交換時期になっちゃうこともあるんです。

銅の卵焼き器は、柄の部分が焼けちゃっかりカタカタしてくるかもしれない。でも、この部分だけ交換すればいいんですよ、この卵焼き器の本質は銅板なので!

これはもう長く使わせるための設計だと思いますね。

生まれ変わってももう一度使いたい菜箸|ヤマチク 「盛付箸(無塗装 28cm)」

ヤマチクさんの「盛付箸」、ほんとに素晴らしかったです。

ヤマチク 盛付箸

僕は学生時代に銀座の箸の専門店で働いてたんです。箸ももう、何百本持ったかわかんないレベルで持ってた。だからこそ思うんです、ヤマチクさんの箸は素晴らしすぎると……!

菜箸だけもでも何本も持っていて、ステンレス、樹脂、シリコン、チタン、竹……。長さも23cmや30cm、すごい大きいのだと45cmのもあります。そして今回使用した「盛付箸」、いろんな箸を使った中で、断トツでナンバーワンですね。

まず使ってて軽いんですよ!「軽い」ってやっぱりいいですね。盛り付けやりやすいし、かき混ぜるのもすごくやりやすいです。

そして持ち手の丸形。

箸の持ち手って四角や三角、六角もありますが、僕の中での至高の形は「丸」。丸が一番指先への当たりがいいんです。

料理していると、フライパン持って鍋持って菜箸持って……と、持ち替えることたくさんありますよね。この「盛付箸」はどのタイミングで取ったとしても指先への当たり心地が変わらず、いつもと同じ感覚で調理ができるんです。それが好きなんですよね……。

そして何よりもバランス、つまり長さがちょうど良い。調理器具によって合うものはそれぞれですが、普通のフライパンやお鍋であればこの「盛付箸」で充分です。

あとこれは使っていて楽しい、料理人のテンションを上げる箸なんですよ! 地球上の全員ではないと思いますが、かなり多くの料理人を幸せにしてくれる道具だと思います。

麺に優しい、手にも優しい。|ヤマチク 「パスタ箸(無塗装 33cm)」

「パスタ箸」を使うと、麺や具材が傷つかないですね。

ヤマチク パスタ箸 

鮭のパスタを作ると、どうしても身が崩れてしまうことが多かったんですが、これで混ぜている時は崩れなかったですね。箸先が全部丸いことで、食材へのあたりがすごく柔らかくなる。そこがしっかり考えられているんだなぁと思います。

あと、手なじみが良いですね。
麺って意外と重いんですよ。飯田家ではパスタを一度にたくさんは作らないんで「盛付箸」でも充分でしたが、料理人の方は一気につくるので麺が重かったりするんですね。その時に細い箸だと混ぜる時に指に当たってしまうのですが、この「パスタ箸」は太いのでその圧が逃げるんですよ。

パスタのための箸と聞いて「なるほど、そこまで考えてやるんだ!」とちょっと楽しくなりましたね。箸は調理によってそれぞれ良い形であるはずなので、ヤマチクさんにはこれからもいろんな研究してもらいたいです。

飯田屋が考える「幸せな食事」のつくり方とは

僕たち道具屋がなにを目指すかと言うと、料理人のテンション上げることなんです。料理人が楽しくなると、それがだれかの人生の幸せに繋がると思っています。

僕はこれを「87,600」という表現をしています。1日3食、それが365日、人生80年間だとしたら……3×365×80、合計して「87,600」。この数字を飯田屋では「人生で連続する最高の幸せのチャンス」という言葉で定義してるんです。

でも87,600回すべてを「幸せでおいしい食事」にするのは難しい。ただお腹を満たすだけ、エネルギー補給のための食事なんていくらでもありますよね。

ただ、その87,600回の食事うちたった10回に1度でも「すごい幸せでおいしい!」と言う瞬間に巡り会えたなら。つまり8,760回……いや、人生80年と言わずもっと増えているので、10,000回近いチャンスがあるんですよ。このチャンスは、人生を変えるには充分な数だと思っていて。

そして、その幸せでおいしい食事を増やすためには、絶対に料理人が必要なんですよ。

たとえばの話、料理って「ひとてま」を増やすだけで化けませんか?

今日はいつもよりきれいに食材を切ってみようかな、ちゃんと塩分量測ってみようかな、見栄え良く盛り付けてみようかな。そのたったひと手間で、料理はうんと良くなります。その時に自分が楽しく思える料理道具を使ってみる。そうするとテンション上がって、その「ひとてま」が苦じゃなくなるんですよ。

だからこそ「料理人のテンション上げる道具」の存在というのはすごく大切で、料理人がテンションが上げてつくった料理っていうのは人を幸せにするはずなんです。「幸せでおいしい食事」になるんです。

文:飯田結太


<掲載商品>
かもしか道具店 だいこんのおろし器
かもしか道具店 くんせい鍋
THE DINNER SPOON
THE DINNER FORK
THE DINNER KNIFE
ambai 玉子焼 角小
アイザワ 純銅玉子焼 関西型
ヤマチク 盛付箸
ヤマチク パスタ箸 

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*この記事は、中川政七商店が運営する合同展示会「大日本市」の「カタリベ」企画で書かれた記事を再編集して掲載しました。

【わたしの好きなもの】季節のしつらい便 お月見


家族で歳時記を楽しむキット


 
節分、ひな祭り、端午の節句、七夕など、日本に古くから伝わる年中行事の数々。
 
季節の移ろいを感じたり、伝統文化に触れるきっかけになったり、日々の生活に節目をつけてくれる素敵な風習だなと、最近はしみじみ感じています。
 
伝統的な行事でありつつ、子どもから大人まで、家族みんなで気軽に参加できるのもいいですよね。我が家も上の子がもうすぐ5歳。一緒にやれることもいろいろと増えてきました。
 
そんな中、これからの季節、夏の終わりから秋にかけて何か楽しめる行事はないかなと考えていたところ、親子で手軽に楽しめる「お月見飾りセット」なるものが登場。


お月見といえば、あの白くて丸いお団子が美味しそうだし、なにより最近宇宙にハマっている息子は「月を見る」という行為に興味を持つはず。さっそく、やってみることに。
 


水をいれてこねるだけ。簡単につくれるお月見団子


 
いきなりお月見と言ってもよくわからないと思うので、まずは「一緒にお団子つくってみる?」と問いかけてみると、「うん!」と即答。幸先の良いスタートです。
 
特別な準備は不要で、「飾る」「つくる」「食べる」が揃ったこのキット。お団子づくりはキットに入っているお団子の粉と水を混ぜてこねるだけ。息子も意気揚々とつくりはじめます。


生地をこねるだけ、といっても、その変化が彼には新鮮だったようで「なんかぬるぬる!」「粘土みたいになってきた!」と興奮気味。少しこねては様子を見て、またこねて。


最初は2重にしたビニール袋に入れて、まとまり始めたらボウルに移します。途中、やや疲れて「まだ子どもだから時間かかるよー。大人だったらもうできてるかな?」と弱音も出ましたが、「完成したらアイスかけて食べようね」と励まし、生地がまとまるまでやり切りました。




生地ができたら、飾るサイズにちぎって手のひらで丸めます。こちらも初めてにしてはなかなか上手。不器用な親と違って意外と器用なのかもしれません。


自分でつくるから興味が湧く


 
宇宙にハマってからというもの、丸い形状のものを見ると「木星だ!」とか「大きい!アルデバランだ!(※:おうし座の恒星)」とか、星に見立てて盛り上がる癖がついた息子。今回はそれを自分で、たくさんつくれるとあって非常に楽しそう。「これは地球。こっちが海王星!」と絶好調です。(月なんだけど、ということは一旦置いておいて)
 




丸めて並べたお団子を茹でていく工程は親にバトンタッチ。「危ないから離れてて」と言っても、「(茹でているところを)見てみたい!」と前のめりにぐんぐん来ます。普段、親が料理中にキッチンの様子を気にすることはないのに、自分が手塩にかけた星たちの様子がよほど気になるのでしょうか。

十分に気を付けつつ、お鍋を上から見せてあげると「すごいねー、泡がぶくぶくしてるねー」と感心しきり。これをきっかけに、料理にも挑戦し始めたりしないかなと、密かに期待しています。


添付のしおりでお勉強



茹でたお団子はうちわで乾かして、そのあと冷蔵庫で15~30分ほど冷やします。後で飾りやすいように、キットについている竹串をあらかじめ刺しておいた方が良さそうです。


この時間を利用して、「今日作っているのはお月見団子といって、お月様にお供えするものなんだよ」とお月見情報を軽く伝えてみました。すると少し考えた後、「月はムーン。地球の衛星だよ!」というマイペースな回答が。“お供え“がピンとこなかったのかな‥‥。
 
そこで、キットに入っている「歳時記のしおり」の出番。イラストを見ながら、月の満ち欠けに応じて色々な名前がついていること、お月見のうさぎのこと、お団子は月のすがたを模していることなんかを説明していきます。


宇宙ブーム到来中で、月の形がいろいろ変わることはぼんやり知っていましたが、それぞれに名前があるのには驚いた様子。
 
「この時は?」
「新月(しんげつ)だよ」
「これは?」
「十六夜(いざよい)だって」
「こっちは?この漢字は?」
 
と興味津々。目論み通りです。あっという間に名前を覚えていくので、子どもの集中力って凄いなと思います。かく言う自分も、パッと分かるのは三日月と満月くらい。昔の人はこんなに細かく名前をつけて変化を楽しんでいたんだなと、勉強になりました。
 

お団子の完成。お月見とは?


 
そうこうしている内に30分経過。お団子を取り出して、残すは飾り付け。吉野檜の三宝に懐紙をひいて、お団子を並べます。


と、息子は瀬戸焼で作られたうさぎのお飾りで遊び始めました。陶器の人形は珍しいのか、感触を確かめるように触っています。
 
そのうさぎに、水引のすすき飾りを挿して飾り付けは完成。「すごいねー、きれいだねー」と本人も仕上がりに満足気。まだ満月ではない時期でしたが、なんとなく、窓の外に向けて飾っておきました。


飾りつけていないお団子は、約束通りアイスを載せてデザートに。できたてのお団子はかなりもちもちで、大人であれば何もつけなくても素朴でとても美味しく感じると思います。
 
最後に、「お月見のこと、すこし分かった?」と聞いてみると、「お団子をつくって、お団子の月(三宝に飾ったもの)を見ながら、お団子を食べること!」との答え。うーん、ややこしい!(笑)。やっぱり、お祈り・お供えみたいな概念はまだ難しかったようです。


でも、月の名前を覚えたり、自分でお団子をつくったり、楽しくいろいろな経験ができました。子どもの年齢やタイミングによって、感じること、学べることもそれぞれ変わってくると思います。
 
ちなみに、今年の十五夜は10月1日だそう。親子でつくるお月見、ぜひ皆さんも楽しんでみてください。
 

<掲載商品>
季節のしつらい便 お月見

こちらは、2020年9月1日の記事を再編集して掲載いたしました。

これからの季節に長く寄り添ってくれる。夏から秋への一枚。

立秋も過ぎて、雨の影響か少し肌寒いような日も。
まだまだ暑さが続くとは言え、ひと足早く次の季節への準備も考えていきたいところです。
蒸し暑さの残るいまこの瞬間から、気温が下がる秋になっても着ることのできる、長く活躍する服や小物をご紹介します。

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「さらっと着られる」麻デニムパンツ

中川政七商店 麻デニムパンツ

「麻生地は、吸水、吸湿、速乾性に優れているのが魅力。もし、麻だけのデニムが実現できれば、夏場のように汗をかきやすいシーズンでも、さらりと着られるものができるはず。」
かつてないほどさらっと着られる麻デニムの開発は、デザイナーのそんな思いから始まりました。

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夏にもかぶれる麻素材「麻ブレードのベレー帽」

年々厳しさを増す日差し。ちょっとした外出にも帽子なしでは出かけられなくなってしまいました。
だけど、きれいめな服装にも合いつつ大げさにならない、そんな夏の帽子って意外と難しい。
夏にかぶれる麻素材のベレー帽が、そんなわがままを叶えてくれました。

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毎日、肌が気持ちいい。呼吸する麻のインナー「更麻」

しっとりやらわかな質感の生地は、麻特有のカタさがなく、肌にフィットしてよく伸びる。汗ばむ日も冷え込む日も、麻本来の特性が働いて、汗や熱がこもらず肌がさらりと気持ちいい。
毎日変化する環境にもしなやかに応える最高の着心地のインナーは、「更麻」と名付けられました。

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原点はオードリー・ヘップバーン!“つっかけ”を進化させた「HEP」のサンダル

HEP

ちゃんとしたお出かけにも、ちょっとそこまで、の気軽なシーンにも。
いわゆる「つっかけ」を、現代の生活に合うようにアップデートした「HEP」のサンダルは、どんなシーンにも対応してくれます。

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プロに教わる、服の汚れの落とし方。意外なコツは「ゴシゴシしない」こと

夏場はたくさん汗もかくし服の汚れが気になりませんか。
そこで、最後は、服のお手入れについてご紹介します。
洗剤メーカー「がんこ本舗」の代表・木村正宏さんに、服の汚れの落とし方をお伺いしました。

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二十四節気の節目を意識してみると、日々少しずつ季節が変化していることを感じます。
少し先の季節のこと、暮らしのことを考えるのもまた、一つの楽しみかもしれません。

<関連特集>
夏から秋の一枚

【デザイナーが話したくなる】小さなお月見飾り

小さい中にいくつもの工芸が詰まっています



発売から3年目を迎えた『小さなお月見飾り』。

飾ると秋の訪れを感じられ、サイズ感もほんとにちょうどいい。
毎年、素敵なお飾りだなと、素直に感心してしまう商品です。

3年目を迎えられたということは、毎年皆様に愛されている証拠。

ふと思い返すと、「いろんな技術が詰まっているのに、そのことを、お伝えしきれていないのでは‥‥」
ということに気づき、改めてデザイナーの岩井さんに企画当時のことを聞きました。

まず目につくのが、黄色い手まりです。






「これは、香川県の伝統工芸『讃岐かがり手まり®』です。

小さな手まりですが、すごいこだわって作られているんですよ」と岩井さん。

「『讃岐かがり手まり®』が大切にしているのは、糸をいじめない、ということ。

月に見立てた黄色は、木綿糸を丁寧に草木染めした色です。糸をかがるときも極力しごかないようにして、毛羽立ちが抑えられています。出来上がったものを見ると、木綿にもほのかな光沢があることに気づかされます」


見れば見るほどやさしい色合いが、とても魅力的ですよね。

手まりの中には、香木(白檀・丁子・龍脳など)をチップにした天然香原料が入っていて、ほのかに日本らしい香りが楽しめるのもうれしいところです。







木のお団子について尋ねると、

「イチョウの木を使って、奈良の工房で作っています。四角い木材を、洗濯機のようなドラムで回転させて丸く削っていくんですが、同じ木でも場所によって硬さが違うので、同じ大きさには仕上がりません。研磨の細かさを変えて何回もドラムにかけて木肌をなめらかにして、最後は転がらないように底を平らに削っています」とのこと。








お団子の大きさが少しずつ違うのは、それぞれの木の持つ個性なんですね。

後ろのススキの飾りも、シンプルですが存在感があります。

「これは、水引の産地、長野県飯田市で作ってもらいました。どんな材料でどうやったらススキに見えるのか、結び方はかなり試行錯誤しました。最終的には組紐の稲穂結びをヒントにしています。」






そういわれると、確かに稲穂の形だ!と気がつきます。

「十五夜は、月を眺めるだけでなく、五穀豊穣を祝い、実りに感謝するお祭り。

ススキは、もともとは稲穂に見立てて飾ったものともいわれています。

この水引飾りに、そんな原点とのつながりを発見できた時はうれしかったですね。」

と岩井さんも3年前を思い出してにこにこしていました。







飾り台として用いている三方も、実は飾り物の高さや大きさに合わせて通常のものより少し低く作ってもらっているのだとか。

ちょっとのことかもしれませんが、細部にこだわって職人さんたちと試行錯誤してできあがった結果、出来上がった愛らしい姿なんですね。

小さな中に、いくつもの工芸が詰まったお月見飾り。毎回岩井さんのものづくりの話は、とてもおもしろいし感心することだらけです。






我が家にも飾って3年目。私は毎年、「ほほぉ」とほれぼれしながら、じっくり眺めながら、触りながら飾っています。すでにお持ちの方には、ぜひあらためてよく見ていただけたらうれしいです!


こちらは、2020年9月1日の記事を再編集して掲載いたしました。

実は自由な仏具の選び方

まもなくお盆休みが始まりますね。今年は中々帰省できないという方も多いかもしれませんが、親族でお墓参りに行ったりと、他のお休みとはまた違う特別な時間です。お墓参りなどでよく使うものといえばお念珠 (ねんじゅ) 。お数珠とも呼ばれています。

お墓参りや法事などの場面でいつも手にかけているお念珠ですが、そもそもどんな意味があるのか、またどのような使い方をするのが正しいのか、みなさんご存知でしょうか? 小さいころから当たり前のように使っているため、かえってわからないことがたくさんありそうです。

そこで今回は、モダンなお念珠を取り扱う「ひいらぎ」さんを訪問。お念珠の役割について改めてお話を伺うとともに、お盆のあり方、ご先祖様との付き合い方についてたっぷりお話を伺ってきました。

赤レンガが印象的なひいらぎさんのお店。お念珠やお香といった日本らしい小物を扱っていますが、入り口は洋風で気軽に入りやすい雰囲気があります

自分で組み合わせを選べる
色鮮やかな新しいお念珠

ひいらぎさんのお念珠を見てまず驚くのが、その色鮮やかさです。お念珠といえば全体的に濃い紫色で、大ぶりの珠がじゃらじゃらと連なっていて‥‥と、ちょっと物々しいイメージがありますよね。しかし店内にディスプレイされているお念珠はブレスレットのように洗練された趣があります。

一般的な仏具のイメージとは全く違う、洗練されたアクセサリーショップのような空間
あまりの鮮やかさに思わず引き込まれます

珠と房の組み合わせを自分好みにオーダーすることもでき、バリエーションは女性用だけでも200通り以上になります。オーダーからお渡しまでは約3週間。ひいらぎさんの店舗を始め、全国で受注会も開催しています。

「最初にアクセサリーだと思って近くに来られて、その後『え、これ数珠なの?』と驚かれる方も多いんですよ」とにこやかに語るのは、ひいらぎの代表取締役・市原ゆき (いちはら・ゆき) さんです。

今回お話を伺ったひいらぎ代表取締役の市原さん (写真右) と、店長の千田ひとみ (ちだ・ひとみ) さん

お念珠はもっと自由なもの

ひいらぎさんが作っているのは「片手念珠」や「一輪念珠」と呼ばれる、輪が一重の略式のお念珠です。このお念珠、意外なことに「この色は使ってはいけない」とか、「この珠の素材は駄目」というような縛りがほとんどありません。

しかも (日蓮宗以外の) ほぼ全ての宗派で使用することが可能。私たちが普段お念珠を使用する葬儀や法事などのシーンで、フォーマルに使用することができます。

房の形や輪の長さなど、宗派ごとに細かい決まりがあるのは輪が二重になっている本式念珠のほう。「お念珠って何だか難しそう‥‥」と感じるのは、本式のイメージがあるからだったのですね。

小さく丈夫に作られた子供用のお念珠もあります

そもそもお念珠は、珠を手繰って念仏を何回唱えたか忘れないようにするためのカウンターだったそう。なので当時は珠の数にも煩悩の数である「108」を基本に、厳密な規定がありました。

しかし片手念珠にはカウンターとしての意味合いはほとんどなく、珠の数を気にして作っているお念珠屋さんはあまりいません。ひいらぎさんでも、手のサイズに合う数に調整しています。

形式にこだわりすぎず、
故人と心を通わすお盆休みを

素材にこだわった色とりどりのお念珠を製作することで、お念珠を従来のイメージから解き放った市原さん。お盆やお墓参りといった行事についても、「形式にとらわれすぎないで」と呼びかけます。

「お盆やお墓参りが義務にならないでほしい」と市原さん

「お墓参りに作法や地方ごとの習わしはいろいろありますが、形式を守ることに気持ちが向きすぎると、単なる作業になってしまいますから‥‥。それよりも心の中で『会いにきたよ』、『ありがとう、毎日平穏に暮らせています』と亡くなられた人に声をかける、その気持ちが一番大事なんじゃないでしょうか。

忙しくてお墓参りに行けないときには、写真に向かって手を合わせて祈るだけでもいいんです。罪悪感や後悔を感じる必要はありません。

また、子供のころや不遇が続いているときは『先祖に感謝して祈る』と言われてもよくわからないかもしれません。そういうときは『最近こういう仕事をした』、『目標にしていた登山に行ってきた』というような、近況報告だけでもいいのです。

もう少し余裕が出てくると、その先に『これらが平穏にできたのはご先祖様のおかげかもしれない』と感じられるようになるのだと思います」。

慣習にこだわりすぎず、故人やご先祖様に思いを馳せて静かに語らうこと。お盆を迎えるにあたって、ぜひ大切にしていきたいです。

気持ちを切り替える道具としての
お念珠の新しい役割

市原さんはポーチの中にマイ念珠を1つ忍ばせています。「入れっぱなしで取り出さなくてもいいんですよ。お寺に立ち寄ったときなんかにおもむろに取り出せば、“ツウ”っぽく楽しめます (笑) 」とにっこり。

念仏を数えるという意味合いが薄くなった現代において、自分の気持ちを切り替え、心をリラックスさせるのも新しいお念珠の役割だと言います。

「私たちの日常ってかなり慌ただしいですよね。仕事もすごく忙しいし、子育てもあるしで‥‥。そんな疲れた頭と体で『さあ心を落ち着けましょう』と言われても、なかなかすぐにはできません。

そういうときに日常では使わないお念珠というアイテムを利用することで、すっと頭が切り替えられるんです。お香やキャンドルのようなものですね。

なかでもお念珠は手軽に持ち運びができますし、いつでも身に付けられるので、その役割を果たしやすいと思っています。だからこそもっと好きな配色で、気に入った素材で作っていただければ。自分のお守りとして、お念珠に愛着を持っていただきたいです。

お気に入りのお念珠は、家や外出先でリラックスするのに役立ちます

それに、お念珠はお通夜やお葬式で使う仏具なので何となく忌まわしいイメージを持つ人がいることもわかるんです。でも、そうではないんですよ。

珠と房のあいだに『ボサ』と呼ばれる部分があります。ここには菩薩様が宿るといわれて、魔除けや厄除けのお守りとしても昔から使われてきました。実はとてもありがたい道具なんです」。

房と珠の間にある螺旋状の珠が「ボサ」。菩薩様が宿るといわれています

お念珠は私たちが想像しているよりもずっと身近で、心強い存在だったのですね。

まもなくやってくるお盆。祈りにも道具にも自分らしさをプラスすることで、より実りのあるものにしてみるのはいかがでしょうか。

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<取材協力>
ひいらぎ 千駄木

東京都文京区千駄木2-30-1

03-5809-0013

http://hiiragi-tokyo.com/

文:いつか床子
写真:いつか床子、ひいらぎ

こちらの記事は2017年7月の記事を再編集して掲載いたしました