【あの人が買ったメイドインニッポン】#41 クリエイティブユニットTENTの治田将之さんが“自分で作るもの”

こんにちは。
中川政七商店ラヂオの時間です。

今回からゲストは、クリエイティブユニットTENTの治田将之さんと青木亮作さん。初回は治田将之さんが「自分で作るメイドインニッポン」についてのお話です。

それでは早速、聴いてみましょう。

[治田将之さんの愛着トーク]
・自分で作るおすすめは「ウエノスケシタノスケ」
・水を飲むための道具をもう1回考えてみようから始まった
・落としても割れないトライタン樹脂なので子どもも気軽に使える
・底が厚いので、ガラスのような光の反射の深みがあり、重心が下にいく
・素材に良し悪しはなく、それをどう使うかで良し悪しがある
・試作品は自分で何度も使って調整を重ねていく
・生活の中で「ふつうに使える」ものを作ること

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治田将之さんが自分で作るメイドインニッポン

治田将之さんが“自分で作るおすすめ”メイドインニッポンは、「ウエノスケシタノスケ」でした。


ゲストプロフィール

治田将之

クリエイティブユニットTENTのプロダクトデザイナー
デザイン事務所、生活雑貨メーカー勤務を経て、フリーランスとして家電機器、インテリア用品を中心にプロダクト、パッケージ、カタログまで多岐にわたるデザインを手がける。


青木 亮作

クリエイティブユニットTENTのプロダクトデザイナー
オリンパスイメージング株式会社、ソニー株式会社にて録音機器やカメラ、PCおよび周辺機器のプロダクトデザインをはじめ商品戦略や企画を行う。


MCプロフィール

高倉泰

中川政七商店 ディレクター。
日本各地のつくり手との商品開発・販売・プロモーションに携わる。産地支援事業 合同展示会 大日本市を担当。
古いモノや世界の民芸品が好きで、奈良町で築150年の古民家を改築し、 妻と二人の子どもと暮らす。
山形県出身。日本酒ナビゲーター認定。風呂好き。ほとけ部主催。
最近買ってよかったものは「沖縄の抱瓶」。


番組へのご感想をお寄せください

番組をご視聴いただきありがとうございました。
番組のご感想やゲストに出演してほしい方、皆さまの暮らしの中のこだわりや想いなど、ご自由にご感想をお寄せください。
皆さまからのお便りをお待ちしております。

次回予告

次回のゲストは、クリエイティブユニットTENTのプロダクトデザイナー、治田将之さんと青木亮作さんです。7/5(金)にお会いしましょう。お楽しみに。

中川政七商店ラヂオのエピソード一覧はこちら

草木を守り、繋ぐ人。森林環境管理を担う人材を育てる「奈良県フォレスターアカデミー」、大和橘復活に取り組む「なら橘プロジェクト」【奈良の草木研究】

工芸は風土と人が作るもの。中川政七商店では工芸を、そう定義しています。

風土とはつまり、産地の豊かな自然そのもの。例えば土や木、水、空気。工芸はその土地の風土を生かしてうまれてきました。

手仕事の技と豊かな資源を守ることが、工芸を未来に残し伝えることに繋がる。やわらかな質感や産地の景色を思わせる佇まい、心が旅するようなその土地ならではの色や香りが、100年先にもありますように。そんな願いを持って、私たちは日々、日本各地の作り手さんとものを作り、届けています。

このたび中川政七商店では新たなパートナーとして、全国の里山に眠る多様な可食植物を蒐集し、「食」を手がかりに日本の森や林業に新たな価値を創出する、日本草木研究所さんとともにとある商品を作ることになりました。

日本の森にまなざしを向ける日本草木研究所と、工芸にまなざしを向ける中川政七商店。日本草木研究所さんの取り組みは、工芸を未来へ繋ぐことでもあります。

両者が新商品の素材として注目したのは、中川政七商店創業の地である奈良の草木。この「奈良の草木研究」連載では、日本草木研究所さんと奈良の草木を探究し、商品開発を進める様子を、発売まで月に1回程度ご紹介できればと思います。

4本目となる今回のテーマは「草木を守り、繋ぐ人」です。発売予定の商品で素材とするのは、吉野杉や吉野桧、大和橘、モミ、クロモジ、アカマツなど、奈良の森に育つ草木。多雨で温暖な気候を持つ奈良の山には昔から、多様な樹種がいきいきとその枝を伸ばし、葉を茂らせてきました。

しかし昨今では、そんな草木たちの置かれる環境にも変化があり、健やかな森林環境を育てる人材の不足や特定植物の絶滅危機など、森が抱える問題は多岐にわたります。

「中川政七商店の取り組みが、森を未来へ繋ぐことに少しでも貢献できたなら」。そんな想いから今回は、奈良の森の課題に向き合う二つの事業者に、素材となる草木の提供に協力いただくこととなりました。



森林環境管理を担う人材の学校「奈良県フォレスターアカデミー」

吉野杉や吉野桧をはじめとする、奈良の森に育つ香木の採集に協力いただくのは奈良県フォレスターアカデミーさん。林業が盛んな吉野の地域で令和3年4月に設立された、森林管理者を意味する“フォレスター”の学校を運営する、県直営の教育機関です。その設立の背景には、対症療法的な森の手当てへの危機感がありました。

「平成の二桁頃から林業は斜陽化しており、木材の価格も徐々に下がってきています。それに伴って林業従事者も減り、管理放棄された森林が増えてきた。そこで奈良県では平成18年に『森林環境税』を導入し、その使い道として県が山の手入れを代行するような仕組みを作りました。でも、これがなかなかいたちごっこで。いっこうに改善されない状況が起きていたんですね。

その後に紀伊半島の大水害があり、森林が持つ災害防止機能などの弱まりを痛感する事態となりました。これを受けて県も、対症療法的な森林の手当てではなく、国土保全的な仕組みとして抜本的に森林管理の仕組みからつくり直すことへ意識を変えたんです。

そこで出会ったのが、スイスのフォレスター制度。フォレスターとは森林環境管理のプロフェッショナルを指していて、スイスでは人づくりから取り組むことで健やかな森林環境を育てています。私たちもこれに学び、教育・人づくりから始めましょうという考えになり、アカデミーという養成機関を起ち上げる運びになりました」

取材に対応してくださったのは、同校の校長を務める藤平拓志さん。大学で林学を学んだ後、県職員として森林や林業に関連する仕事に長く就いてこられた方で、現在も県職員として奈良県フォレスターアカデミーの運営を担っておられます。

同校には主に現場技能を身につける一年制のプログラムと、林業経営や森林管理についての学びをより深める二年制のプログラムの、2つのコースが設けられています。特徴的なのは前述のとおり、スイスのフォレスター制度を参考に組まれた独自のカリキュラム。ここでは森林に大きく期待される「木材生産」の学びだけでなく、「生物多様性」「防災」「レクリエーション」など森林を全体的に俯瞰し、管理するための知識を育てられる授業も多数行われます。

そんな内容への期待からか、行政を母体とする林業大学校は他地域にもあるなかで、県外からの志望者も後を絶ちません。

「スイスの森林に関する考え方の特徴は、生産機能だけに特化するのではなく、森林が持つ機能を総合的に把握して管理していくところ。それを実現するためには森ごとの個性を見極められる力が必要で、要は人とセットなんですよ。その人を『フォレスター』と呼んで、育てていくというのがこの学校の考え方です」

毎年20名の定員は、下は18歳から上は年齢制限なく、様々な年代の方が入学するそう。林業関係に勤めていた方だけでなく、全くの畑違いから志す方も多いといいます。

授業は年間1200時間強ほどで、座学は3~4割。残りは実習が占めるといい、この日は森の植生を学ぶ授業にも立ち会わせていただきました。

「ひと口に森林といっても、地域によってその特性は様々です。育つ樹種も違えば、山主(=山の持ち主のこと)の関わり方も異なります。同じ山でも、場所によって育つ木も違う。当校ではそんな森林ごとの生態系や災害リスク判断など、目の前の山をとらえて課題を見つけ、解決できるようになることを目指しているんです。『作業員としての技能を身につけるだけでなく、総合的に森を捉えられる内容を中心にしている』というのは、そういうことですね」

授業の様子。この日は森の植生について実地で学ぶ内容

卒業生は林業事業体や森林組合に勤める他、森に関係する事業で起業する方も。開校から数年ではありますが、学び舎でできた縦や横のつながりは徐々に広がり、奈良の森の心強い担い手となりはじめています。

「まだ設立から4年ですので大きな成果はお示しできないのですが、行政につく者、民間につく者など、卒業生が出れば出るほど県内各地に散らばっていき、この学校でできた縁を活かして情報交換をしたり、仕事で連携したりという事例が見えてきています。

そうしてその輪が広がって、地域に合った森づくりをしっかり考え実践できることが、この学校の最終目標かなと。林業はあくまで一つの手段で、大切なのはその地域の人が幸せな暮らしをおくれることです。そのために、健やかな環境が未来に続いていくような森林マネジメントをできる人になってもらえたらと思います」

日本最古の柑橘とされる、大和橘の復活を目指す「なら橘プロジェクト」

続いて訪れたのは大和橘(やまとたちばな)の育成を進める、なら橘プロジェクトさん。今回の商品には風味のアクセントとなるように、こちらの素材も使用しています。

大和橘とは橘の別称で、日本固有種であり柑橘の原種。日本最古の柑橘とされ、その名は万葉集や古事記にも登場するほどです。菓子の租である田道間守(たじまもり)が常世の国から不老長寿の妙薬として持ち帰ったという伝説もあり、大和橘自体がお菓子のルーツだともいわれます。その実の香りは清々しく、上品で高貴。葉は目が覚めるほどの鮮烈な青々しさをたたえます。

雛人形を飾る際に「左近の桜、右近の橘」と各樹木を模したものを添えたり、500円玉硬貨に描かれたりと、実は私たちの身近なところにも登場する果実なのですが、一方、「橘の本物を見たことがない」という方も多いことでしょう。その理由は、準絶滅危惧種になっているため。かつては南は九州から北は静岡まで暖流のそばに多く群生していた橘ですが、今ではほとんど見かけられず、当然、市場にも出回りません。

「じゃあなぜ無くなったのかというと、一つの原因は戦前に行われていた炭焼きなんじゃないかなと。炭を作るための材料として伐採されたと現地に行った時に聞きました。あとは橘の実が小さいので、産業として選ばれなかったのも理由としてありますね。果実は苦くて食べにくいし、とれる実も少ない。育てても使えなかったから、育てる人が全然いなかったんやと思います」

なら橘プロジェクトの代表を務める城健治さんは、絶滅危機に至った理由をこう分析します。

城さんの大和橘との出会いは、今から14年ほど前。奈良県内の金融機関に勤めていた城さんは、当時関わっていた大和郡山市の町おこしの一環で、産官学金連携のお土産品開発に取り組むことになりました。そのなかで大和橘の存在を知ったと話します。

「そのときのメンバーに饅頭屋の代表がおって、その方が『奈良には大和橘というものがあって、お菓子の始まりなんやで』って教えてくれたんですよ。

大和橘は自生していた植物なので産地というのはないんやけど、奈良って大和朝廷発祥の地と言われてますやろ?それで、当時は神社や官庁を建てる時に、『穢れが落とされるような香り』ということで土地を清めるために植えていたらしいんです。今でも一部の神社にはご神木として植わっていたり、注連縄のような飾りに使われたりしています。

あとそれとは別に、平城京の時代には漢方薬としても認定されてます。鳥羽から税金として陳皮を納めていたという記録が当時の木管に残ってるんです」

奈良に縁がある果実として興味を抱いた城さんと他メンバーでしたが、当時、大和橘は既に準絶滅危惧種認定をされていました。奈良県内にある広瀬神社にまだ大和橘が残っていると知り、株分けの依頼をしたところから、このなら橘プロジェクトはスタートしていきます。

飲食物への使用を考え、城さん達は農薬を使わずに栽培。最初の頃はアゲハ蝶に新芽をすべて食べられ木が枯れるなど育て方に苦戦していましたが、少しずつ育てた木が実をつけ、4年目を迎えた頃に飲食店への提案を開始します。ところが初めに提案した近隣の10店舗には「みんな断られてん」と苦笑い。小さく、酸っぱく、苦い大和橘への反応は、「他にもっといいみかんがある」というものでした。

その道を切り開いたのは、奈良県内にありながら県外からも多数の客を集める、星を持つレストラン。海外や日本の名店で修行をしたシェフたちは口をそろえて「上品な香り」「上品な酸っぱみ」「上品な苦み」と、大和橘を高く評価したそうです。

「城さん、これはすごいですよ。こんなん育ててくれてありがとうって言われたんですよ。ある大将が言うにはね、『大和橘に出会えたから奈良県でお店開いてよかった』って。そんなん言われたら嬉しいですやん。日本の歴史の原点と縁が深いストーリー性もあるし、日本らしい奥ゆかしい風味や香りということで、気に入ってもらえて。

そうやって少しずつ広まっていって、今は営業をしなくても問い合わせてもらえるようになりました。県外のお店からも畑を見に来てもらえるようになって、あの有名な高級リゾートホテルの統括シェフは『城さん、日本のトリュフは橘の葉っぱですよ』って言ってくれはるねん」

現在、奈良県内では7か所に分かれた畑で育てられている大和橘。例えばかつて平城京と藤原京を結んだ道に街路樹として橘が植わっていたことから、「橘街道」と呼ばれる場所もそのうちの一つです。

「今年で14年目。僕、実家が農業なんで農業の悲惨さも実体験として知ってて、だからこそ何かで貢献したいなとはずっと思ってたんです。そのなかで見つけたこの大和橘で地域起こしをしたいというのが、いま一番の目標。それが僕の第二の人生です」

取材後に城さんから頂いた大和橘の若い葉をかじると、鮮烈な香りが鼻に抜け、舌に感じるのはピリッとやわらかな刺激。青く爽やかで、清々しく、清楚でいながらキレがあります。

「どこか日本らしさを感じる香りと風味を、森の香木とともに味わう」。草木を守り、繋ぐ方々から頂いたそれぞれの素材には、豊かな個性と大切にしたい物語が詰まっていました。この素材たちからどんな商品が生まれるのか、ぜひ楽しみにお待ちください。


<次回記事のお知らせ>

中川政七商店と日本草木研究所のコラボレーション商品は、2024年の夏頃発売予定。「奈良の草木研究」連載では、発売までの様子をお届けします。
次回のテーマは「開発者対談」。いよいよ、今回の商品の内容や、開発でこだわったポイントをお届けします。

<短期連載「奈良の草木研究」>

文:谷尻純子
写真:奥山晴日

【暮らすように、本を読む】#12「八百屋の野菜採集記」

自分を前に進めたいとき。ちょっと一息つきたいとき。冒険の世界へ出たいとき。新しいアイデアを閃きたいとき。暮らしのなかで出会うさまざまな気持ちを助ける存在として、本があります。

ふと手にした本が、自分の大きなきっかけになることもあれば、毎日のお守りになることもある。

長野県上田市に拠点を置き、オンラインでの本の買い取り・販売を中心に事業を展開する、「VALUE BOOKS(バリューブックス)」の北村有沙さんに、心地好い暮らしのお供になるような、本との出会いをお届けしてもらいます。

<お知らせ: 「本だった栞」をプレゼント>

ご紹介した書籍をVALUE BOOKSさんでご購入いただくと、同社がつくる「本だった栞」が同封されます。買い取れず、古紙になるはずだった本を再生してつくられた栞を、本と一緒にお楽しみください。詳細は、VALUE BOOKSさんのサイトをご覧ください。



食卓にワクワクを。「なんでもない日」を彩る、旬の野菜

決して料理が得意といえない私ですが、レシピ本を眺めるのが好きです。簡単なレシピを真似て再現したり、異国の知らない料理の味を想像したり、美しい料理の写真は見ているだけでも心が踊ります。今回紹介するのは、純粋なレシピ集や、まじめな図鑑ともまたちがう、発見と喜びに満ちた「野菜採集記」です。

著者は東京・世田谷にある八百屋「イエローページセタガヤ」店主の尾辻󠄀あやのさん。旬の知識やそのレシピ、お客さんとの会話を通して語る野菜の魅力と、アートのように切り取られた写真からは、あらゆる視点から、野菜を面白がる著書の頭の中をのぞいているような気分になります。

いわく、野菜を食べるのは、300円で叶う小さな冒険だそう。見た目のかわいさ、形の面白さ、面白そうな農家さんなど、様々な理由から心向くままに集めた野菜を、いろんな方法で食べてみる。各地を飛び回り、ポケモンをコレクションするみたいに、食べた野菜を記録しているのだとか。

珍しい野菜だけでなく、慣れ親しんだ野菜が持つ新たな一面にも出会えます。例えば、ヤングコーンは皮付きのまま焼いて、絶品のヒゲごと堪能すること。オクラはフライや生で調理すれば、ネバネバ以外の新たなバリエーションを楽しめること。しょっぱく食べるスイカのレシピも興味深い。

野菜の記録の合間にあるコラムのなかで著者は、“「ちゃんと作らなきゃ」の呪いから解放してくれたのが「旬」という概念だった”、と話します。旬の野菜は味が濃く、体力がある。上手に作ろうとせずとも、焼いたり、揚げたり、茹でたり、シンプルな調理に「味を添える」くらいでいいのだという。夏のズッキーニをただ焼いて食べるのが最高だったりするように。

“旬に合わせて、なんでもない日のなんでもなく作るもの、それがまあまあ美味しい。こんな日が多いのが一番幸せなのじゃないかと私は思うのだ”(本文より)

キッチンに立つのが億劫な時も、旬の野菜があれば、なんだか楽しくやれそう。この夏はきっと、“推しの野菜”を見つけたい。

ご紹介した本

尾辻󠄀あやの (著)『八百屋の野菜採集記』

本が気になった方は、ぜひこちらで:
VALUE BOOKSサイト『八百屋の野菜採集記』

ご紹介した書籍をVALUE BOOKSさんでご購入いただくと、同社がつくる「本だった栞」が同封されます。買い取れず、古紙になるはずだった本を再生してつくられた栞を、本と一緒にお楽しみください。詳細は、VALUE BOOKSさんのサイトをご覧ください。

VALUE BOOKS

長野県上田市に拠点を構え、本の買取・販売を手がける書店。古紙になるはずだった本を活かした「本だったノート」の制作や、本の買取を通じて寄付を行える「チャリボン」など、本屋を軸としながらさまざまな活動を行っている。
https://www.valuebooks.jp

文:北村有沙

1992年、石川県生まれ。
ライフスタイル誌『nice things.』の編集者を経て、長野県上田市の本屋バリューブックスで働きながらライターとしても活動する。
暮らしや食、本に関する記事を執筆。趣味はお酒とラジオ。保護猫2匹と暮らしている。

【旬のひと皿】もずくのかぼすそうめん

みずみずしい旬を、食卓へ。

この連載「旬のひと皿」では、奈良で創作料理と玄挽きの蕎麦の店「だんだん」を営む店主の新田奈々さんに、季節を味わうエッセイとひと皿をお届けしてもらいます。



毎週水曜日、お花屋さんから届くお花を店内に生けてから一週間の仕事が始まります。
「今週はどんな花材かな」と、包んである新聞紙を覗き込む瞬間が楽しみです。

華道の経験も知識もない私に、ご近所にお住まいの先生がお声がけくださったことが、生け花を習い始めたきっかけです。その時は奈良に越してきたばかりだったので、お花の知識はもちろん、365日、毎日行事の行われる奈良のことなど、先生のお話を伺うたびに「自分の知らなかった広い世界があるのだな」と、パッと煌めきを感じていました。

お稽古を始めた頃は、一杯の花を生けるのにお稽古で2時間、帰ってから同じように生けるのに同じくらいの時間をかけていました。花や、枝物のバランス次第で、同じ花材でも間延びしたような雰囲気になってしまいます。何だか納得いかない出来のものも先生に手直ししていただくと、そこに自然に、花が野に咲く景色が生まれるのです。

お稽古をとても楽しみにしていましたが、当店の代替わりと共に店にいる時間が長くなり、ひとまず辞めることに。教室には行けなくなってしまいましたが、今でも花を生けることは続けています。上手ではないですが、お客様に楽しんでいただけたら嬉しいなと思っています。

しばらくお稽古から離れてしまっている間も先生は「このお花、お店で生けてね」とお越しくださったり、お手紙をくださったりと、私を気にかけてくださっていました。いつも、いつでもお会いできると思っていたあの頃。まさか、先生のお別れの会に行くことになるとは思ってもいませんでした。

聞くところによると、入院されていた病院の中庭に何も植えられていなかったので、先生はご自身も大変ななか、病院の方に「あの場所へお花を植えてはどうでしょう?きっと患者さんの癒しになるでしょう」と動かれたそう。最終的には院長先生にまで話が行き、たくさんの人で花の球根を植えられたと伺いました。

先日、病院へその花を見に行きました。夏に向かう陽ざしのなかで、いきいきと咲く花たち。一緒に過ごさせていただいた時間を思いながら、私もまた花を生けようと思います。年齢も離れた私にたくさんの優しさを与えてくださったことに感謝して。

<もずくのかぼすそうめん>

材料(2人分)

・素麺…2束
・もずく(沖縄の太もずくがおすすめ)…100g
・麺つゆ…200ml
・かぼすの果汁…小さじ4
・薬味(大葉、茗荷、きゅうりなど)…適宜

生のもずくが手に入らない場合は酢もずくを使っても。その場合はかぼすは入れずにお作りください。かぼすがない場合はレモンやすだちなどで代用いただくのもよいのですが、かぼすの風味がとても合うので、ぜひお試しいただけると嬉しいです。

作り方

薬味類を準備しておく。大葉は千切りに。茗荷も同じく千切りにして水にさらす。きゅうりは塩(分量外)で表面をもみ、しばらく置いたら千切りにする。

少し濃いめの麺つゆを用意し、かぼす果汁を加えたら冷蔵庫で冷やす。

素麺を茹でて器に盛り、薬味を乗せたらできあがり。別に添えた麺つゆに浸けながら食べる。

うつわ紹介

・そうめんを入れたうつわ:有田焼の中鉢 微塵唐草
・麵つゆを入れたうつわ:RIN&CO. 越前硬漆 深ボウル S NORTH GRAY 03

写真:奥山晴日


料理・執筆

だんだん店主・新田奈々

島根県生まれ。 調理師学校卒業後都内のレストランで働く。 両親が母の故郷である奈良へ移住することを決め、3人で出雲そばの店を開業する。  
野に咲く花を生けられるようになりたいと大和末生流のお稽古に通い、師範のお免状を頂く。 父の他界後、季節の花や食材を楽しみながら母と二人三脚でお店を守っている。
https://dandannara.com/

【あの人が買ったメイドインニッポン】#40 発酵デザイナー・小倉ヒラクさんが“一生手放したくないもの”

こんにちは。
中川政七商店ラヂオの時間です。

ゲストは引き続き、発酵デザイナーの小倉ヒラクさん。今回は「一生手放したくないメイドインニッポン」についてのお話です。

それでは早速、聴いてみましょう。

[小倉ヒラクさんの愛着トーク]
・一生手放したくないのは、「シチズンエコドライブ」
・寝るときも24時間着けている
・愛着の湧く道具とは、ライフスタイルに合致していること
・自分にとってのライフスタイルは、旅と食の体験
・旅をする自分にとって、この時計は最適な機能性
・機能性だけでなく、デザインがニュートラルなのもいい
・発酵は、暮らしの中で作り育てる能動的な心地好さを提供できる

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小倉ヒラクさんが一生手放したくないメイドインニッポン

小倉ヒラクさんが“一生手放したくない”メイドインニッポンは、「シチズンエコドライブ」でした。

8月下旬に大阪・阪神百貨店で「発酵マーケット」を開催予定。関西の方はぜひ遊びに行ってみてください。


ゲストプロフィール

小倉ヒラク

東京農業大学で研究生として発酵学を学んだ後、山梨県甲州市に発酵ラボをつくる。「見えない発酵菌たちのはたらきを、デザインを通して見えるようにする」ことを目指し、全国の醸造家たちと商品開発や絵本・アニメの制作、ワークショップを開催。「手前みそのうた」でグッドデザイン賞2014を受賞。著書に『発酵文化人類学』(角川文庫)、『アジア発酵紀行』(文藝春秋)等。


MCプロフィール

高倉泰

中川政七商店 ディレクター。
日本各地のつくり手との商品開発・販売・プロモーションに携わる。産地支援事業 合同展示会 大日本市を担当。
古いモノや世界の民芸品が好きで、奈良町で築150年の古民家を改築し、 妻と二人の子どもと暮らす。
山形県出身。日本酒ナビゲーター認定。風呂好き。ほとけ部主催。
最近買ってよかったものは「沖縄の抱瓶」。


番組へのご感想をお寄せください

番組をご視聴いただきありがとうございました。
番組のご感想やゲストに出演してほしい方、皆さまの暮らしの中のこだわりや想いなど、ご自由にご感想をお寄せください。
皆さまからのお便りをお待ちしております。

次回予告

次回のゲストは、クリエイティブユニットTENTのプロダクトデザイナー、治田将之さんと青木亮作さんです。6/28(金)にお会いしましょう。お楽しみに。

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【はたらくをはなそう】中川政七商店 店長 辻尚子

辻 尚子
中川政七商店 ルミネ大宮店

2018年 中川政七商店 ラクエ四条烏丸店 直営店スタッフとして入社
2019年 中川政七商店 ルクアイーレ店
2020年 中川政七商店 LACHIC店
2020年 中川政七商店 タカシマヤゲートタワーモール店 店長
2021年 中川政七商店 ルミネ北千住店 店長
2022年 中川政七商店 ルミネ大宮店 店長



父が歌舞伎や日本舞踊など、伝統芸能の衣装屋を営んでいました。
実家には当たり前のように着物をはじめ鼓や三味線などが置かれており、幼い頃から日本のものづくりが身近にあったように思います。

中川政七商店で働きたいと思ったきっかけは、2014年に放送された「カンブリア宮殿」。
前職の勤務地が店舗に近く、それまでも何度となく足を運んでいたのですが、何の会社で何を志しているのかなどは知りませんでした。

中川政七商店を特集したこの放送をきっかけに、両親から聞いていた業界の後継者問題や、幼い頃から知っている方の廃業などが工芸界全体の問題であると知り、「日本のものづくりのために働きたい」と考え始めました。

入社から数年が経ち、現在は店長として職人さんから受け取ったバトンをお客さまへ繋ぐ仕事をしています。
ただ商品を販売するのではなく、職人さんの思いや産地の思いをお客さまへお伝えするにはどうすれば良いのか、試行錯誤の日々です。

意識しているのは「当たり前のレベルを上げる」こと。
中川政七商店に勤めていると年に何度か聞くこの言葉。
仕事をする上で大切にしている考えの一つです。

自分だけではなく、一緒に働くスタッフさん一人ひとり、また店舗全体として、できなかったことができるようになったり、得意をさらに伸ばしたり。
日々積み重ねることでそれらがいつしか当たり前になっていく。
現状に満足することなく、少しずつでも着実に成長していくお店でありたいと思っています。
そしてそれが「日本の工芸を元気にする!」ことに繋がると信じています。

いま目指しているお店の姿は、

何となく惹かれて手に取ったうつわや織物から、手しごとならではのゆらぎの美しさを知り、お客さまがいつの間にか工芸のとりこになっている
ここに来れば日本の四季の豊かさや日本のものづくりの今を知ることができる
入り口は低く、出口は高く

そんなお店。

幸いお店には志を同じくするとても心強いスタッフの皆さんがいてくださいます。
日々助けられてばかりですが、一人では難しいこともみんなでなら可能だと思わせてくださる皆さんと、100年後の「工芸大国日本」のためにこれからも一つひとつ積み上げていきたいと思います。

<愛用している商品>

麻布Tシャツ
おすすめ理由:Tシャツとワンピースを合わせて購入枚数が10枚になりました。
さらっと心地よく、汗をかいてもすぐに乾く快適さから手放せず、梅雨から夏の時期にかけての必需品です。

うつわになる信楽焼のレンジ蒸し鉢
おすすめ理由:手軽さはもちろん、綺麗な色のまま野菜が蒸しあがる点もお気に入り。
食卓に彩りが足りないと感じた時の救世主です。

季節の置き飾り
おすすめ理由:季節の手拭いや小物とともに、毎月部屋の一角を模様替えしています。
こぢんまりとしたしつらいコーナーですが、暮らしに季節を取り入れることで日々が少し豊かになるように感じられます。



中川政七商店では、一緒に働く仲間を募集しています。
詳しくは、採用サイトをご覧ください。