【はたらくをはなそう】経営企画室 柳田涼子

柳田涼子
経営企画室

2021年6月入社。入社以来、中国事業を担当。
中川政七商店や工芸メーカーのことを、中国を中心とした海外のお客様に伝えるお仕事をしています。



「私は毎日、誰の何のため働いているのだろう」と考えたり、見失ったりすることはありませんか。

まだまだ人生修行半ばの身ですが、今の私にとっての「幸せに働く」とは何か、をお話してみようと思います。

私は、16年間中国の北京で育ち、大学生の時に日本に帰国しました。

そこで、日本に脈々と受け継がれてきた文化や技を目の当たりにし、こんなにも尊く、美しく、面白いものがあるのかと衝撃を受けました。

また同時に、これを続けていくことが難しい状態になっていることを知り、「私たちの世代で途絶えさせてはならない」という使命感にも似た気持ちが芽生えたのを、今も覚えています。

そんな想いがあるにもかかわらず、新卒の就職活動の際には迷走に迷走を重ね、独自の理論で自分を納得させ、想いと直接関わりのない仕事に就くことを決めました。

前職もとても刺激的で学びの多い職場でしたが、やはり、やりたいことに直接つながる仕事がしたいと思い、極端な言い方ですが「明日死ぬかもしれないなら、自分の心に素直に従おう」と、中川政七商店への転職を決めました。

中川政七商店は「日本の工芸を元気にする!」という共通の想いを原動力に、そのために自分は何ができるかをそれぞれが考え、動く人々の集まりです。

(入社当初はそんなことある?!と思っていたのですが、本当です。)

そのなかで私は、中国を中心とした海外のお客様に、日本の文化や工芸の魅力を伝えるという役割を担っています。

「自分のやりたいことと仕事が直結しているって、こんなに清々しいのか。もっと早く勇気を出して飛び込んでいれば良かった」と、大げさではなく幸せをかみしめながら働く毎日を送っています。

こうした経験から、私にとって「幸せに働く」とは、誰のため・何のために働きたいのかを見つけ、それが叶えられている状態であり、そんな人たちに囲まれて働いている状態なのではないか、と気づきました。

今こうして考えると、そりゃそうだ!と思うようなことなのですが、変化を避けるための自分への言い訳をたくさん並べてきたなと反省しています。「これは本当に自分のやりたいことなのか」「今の職場でやり残したことがある」「今は時が満ちていない」‥‥。挙げればきりがありません。

もし、毎日働くなかで、誰の・何のために働いているのだろうと、当時の私のように少しもやもやした気持ちになっている方がいれば、その気持ちを見過ごさず、心の声に丁寧に向き合ってみてください。

私も日々、誰の・何のために働いているのかについての考えを深め、磨きながら、ご機嫌に働き続けたいなと思っています!



<愛用している商品>

すっきり洗えるリネンのボディータオル

こんな硬さのボディタオルを探していた!という、ちょうどいい硬さのタオル。私は敏感肌なのですが、ごしごししても肌が赤くならず、重宝しています。

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同僚にプレゼントで頂いたのが初めての出合いなのですが、すぐに乾くのと大判なところが気に入っています。私のイメージに合う色や柄を選んでくださった気持ちも含めて、嬉しい贈り物です。

ずっと使えるベビースプーン・フォーク

子どもが大人になっても使えるというアイディアがとても素敵だと思い、友人に出産祝いを贈る時には必ず選んでいます。自分自身の経験からも、幼少期に使っていたもののなかで今も残っているものはほとんどないので、おいしい想い出と共に、ずっと大切にしてもらえるといいなと思っています。

きびしい残暑も、心地好く過ごす

暦の上ではもう秋とはいえ、まだまだ残暑が厳しい今日このごろ。
朝晩は少しだけ涼しくなったような気もしますが、日中はあいかわらず蒸し暑く、汗をかいてしまいます。

季節の変わり目に体調を崩しやすいのは、日照時間の変化や安定しない気温のせいで自律神経が乱れてしまうからだそう。
特に残暑のこの時期は、暑さで溜まった疲れが一気に押し寄せてしまうことも…。

私もそういうわけか、真夏ではなく夏の終わりに夏バテの症状が出ることが多く、この季節をもう少し心地よく過ごせたら…と思いながら、毎年いろいろなことを試しています。

今回は、残暑を少しでも快適に楽しく乗り切るために取り入れている方法をご紹介します。

フルーツウォーターで夏疲れをデトックス

熱中症や夏バテ予防には、お水を飲むことが大切。
少し涼しくなってくるとつい油断してしまいますが、夏の炎天下ほどではないにせよ実はおおくの汗をかいているそうです。

そうはいっても、水分を摂らなきゃ!と意識し続けることは意外と大変だし、水だけ飲み続けるのってそんなに楽しくない…。

もっと気楽に水分補給ができないかと考えて、より飲みやすく、見た目も楽しめるフルーツウォーターに挑戦してみました。

ピンクグレープフルーツ、キウイ(グリーン、ゴールデン)、ローズマリーのフルーツウォーター

陶器の茶漉し付の冷茶ボトルを使うと、テーブルに出しておきたくなるような、きれいなフルーツウォーターが簡単にできました。

好きな果物やハーブを水と一緒にボトルに入れて、数時間つけておくだけ。

これなら目についた時に飲みたくなるし、つくる時間も楽しい!
少し手間がかかるイメージでしたが、やってみると簡単でした。

私は水よりも飲みやすいと感じるのと、フルーツによって美肌やむくみ改善の効果も期待できるようなので、ぜひ続けてみたいと思います。

蓋部分が茶こしになっているので、毎回漉したり果物を取り除く必要がありません。

水分補給の際に気をつけたいのが、冷たいドリンクを飲みすぎないこと。
冷えたフルーツウォーターを飲む際は氷を入れないようにするなど、調整をしてみてくださいね。

また、ときどき温かいお茶を飲んで身体を温めることも大切なのだとか。

気がつくとつい冷たいものばかり摂取したり、部屋に冷房をガンガンに効かせてしまっています。

そんな時は、日が沈んでから、ほっとひと息お茶を飲む時間をつくることで、冷えた身体を温めて眠りにつくようにしています。

冷え対策は足元から

体調を崩しやすいこの時期は、冷房冷えにもいっそう気をつけたいもの。
特に足を冷やしてしまうと、下半身と上半身にも温度差が出て、自律神経がその調整のために疲弊してしまうのだとか。

まだ暑い時期ではありますが、上半身は涼しい格好、足元は少しあたためることを意識しています。

私の冷え対策の頼もしい味方、麻シルクのレッグウォーマー。
スパッツと違って、汗をかいても蒸れにくく、室温に合わせてさっと脱ぎ履きができます。

ワンピースやスカート、短めのパンツと合わせるとレギンスのようでおしゃれに見えるところも嬉しいポイントです。

伸ばすとひざ下までしっかりカバーしてくれます。足首でクシュっとさせて短く履くことも。

そして麻とシルクの生地がとても気持ち良い。

肌ざわりが気に入り、もう1着購入してしまったくらいです。
そちらは毎日の就寝時につけています。

寝ている時に冷房で足が冷えてしまうことが多かったのですが、このレッグウォーマーのおかげで快適に寝られるようになりました。
朝の足のむくみも改善したように思います。


もうひとつお気に入りのアイテムがこちら。

夏の冷え取りにも、冬の防寒にも活躍してくれている、冷え取り靴下セットです。
2枚で1組になっていて、5本指ソックスの上にもう1枚を重ねて履きます。

内側を絹、表側を綿で編んだ靴下を2枚重ねることで、なんと4枚履いている効果があるのだとか。

2枚重ねても着ぶくれがなく、すっきり。
内と外それぞれの靴下の長さが調整されていて、2枚履きに見えないので、外でも見た目を気にせず履くことができます。

出かける際は、内側の1枚を履いて、もう1枚をかばんに入れておくことが多いです。
冷房がきつい場所では、さっともう1枚を重ねて履いて、足の冷えを防止しています。

寒さが厳しい季節になったら、常に2枚履きに。
4枚分のパワーで、足元からしっかり温めてくれます。

日々の変化に寄り添ってくれる、麻のインナー

夏の自律神経の乱れの多くは、汗の不快感が原因なのだとか。
外ではまだまだ汗をかくこの季節。
べたべたになった服やインナーを1日着続けるのはかなりのストレスですよね。

そしてもう少し秋になると、日によっても気温がばらばらで、毎日のインナー選びも大変になります。

私が愛用しているのが、麻のインナーシリーズ「更麻(さらさ)」。

「麻」と聞くと、硬そうだったり、ごわごわしているイメージもあるかもしれませんが、「更麻」はしなやかでやわらかく、ふわっと身体を包み込んでくれます。

年中着用していますが、春と秋の気温が不安定な時期には特にありがたみを感じます。

外を歩いてかいた汗が冷房の効いた室内で乾いて、体が冷えてしまうことが多々ありませんか。
更麻を着るようになってからは、そんな汗の不快を感じることが本当に少なくなりました。

薄手の麻のニット生地は、しっとりやらわかな質感

汗をかいたらすぐに吸水してくれてさらっと乾く。
肌寒いときには空気を含んでほんのり温かく感じる。

インナーにしては少し値段が張りますが、その分価値があると毎日実感しています。
毎日の気候や体の変化に寄り添ってくれる、私にとってなくてはならない存在です。




あっという間に季節がめぐり、あと少しで夏も終わります。
気候が不安定なこの時期だからこそ、自分の体の声をきいてあげることが大切かもしれません。

体調の変化に気をつけて、疲れを残さず次の季節に備えましょう。


<関連商品>
「常滑焼でつくった茶漉し付」冷茶ボトル
麻シルクのレッグウォーマー
冷えとり絹綿靴下セット
更麻


<関連特集>

【あの人の贈りかた】その人に合う履き心地の良さに、贈る気持ちをのせる(スタッフ森下)

贈りもの。どんな風に、何を選んでいますか?

誕生日や何かの記念に、またふとした時に気持ちを込めて。何かを贈りたいけれど、どんな視点で何を選ぶかは意外と迷うものです。

そんな悩みの助けになればと、中川政七商店ではたらくスタッフたちに、おすすめの贈りものを聞いてみました。

今回は企画担当の森下がお届けします。

その人に合う、履き心地の良さ「しめつけないくつした」「山を登るくつした」

画像の色柄はイメージです

「靴下こそ、いいものを選んだほうがいい」。お店に立った時に、お客さまがお連れさまにかけられていた言葉です。

靴下売場の前でそんなお話をされていたのがうれしくて記憶に残っているのですが、わたしも自分に合った靴下を履くようになってからは、同じように感じています。それまでは、くいこんだり、脱げたり、比較的早くやぶれたりして、靴下ってまぁこんなものかな、と思っていたんですが、いいものってやっぱり違うんですよね。

なので、ちょっとしたプレゼントに迷ったとき、わたしはお気に入りの靴下をプレゼントしています。「いいんだよ、試してみて」と、気軽に勧めやすくって、気軽に喜ばれやすい。

当店の靴下では、ファクトリーブランド・2&9(ニトキュー)の「しめつけないくつした」と「山を登るくつした」を、相手に合わせて使い分けています。

「しめつけないくつした」は、履き口がやわらかくて、全体でふわっと包み込むように編まれているので、ゴムのしめつけがなく、ずれることもありません。リウマチで脚がむくむと言う叔母に贈ったところ、履いていないように楽ちんだそう。

画像の色柄はイメージです

「山を登るくつした」は、歩きやすくてサポート力があり、一日の終わりの足の疲れが全然違います。わたしにとっては、よく歩く日に履く勝負靴下で、立ち仕事の親や、ライブによく行く友人にも贈ったりしました。

画像の色柄はイメージです

奈良県が靴下の生産量日本一だったり、2&9(ニトキュー)の名前が奈良の県番号29番に由来していたり、ちょっとしたストーリーを添えられるのも贈りものにいいんですよね。

<贈りもの>
・中川政七商店「しめつけないくつした block」 ※色柄や素材は季節ごとに展開が異なります
・中川政七商店「山を登るくつした」

繊細な日本の工芸技術を、身近に愉しむ「関で作った爪切り」「江戸切子の爪磨き」

なかなか買い替えるきっかけがなくて、でも毎回ちょっと不便に感じていた爪切りを、本来逆なのですが、お客さまからのレビューに後押しされて購入しました。

「関で作った爪切り」です。

これまでパチーンという感じで切っていて、断面が二重になったりすることがあったのが、ストッ、ストッと、ものすごく静かに切れて爪に負担がかかりません。ステンレスのカバーが付いて飛び散ることもなく、使い心地は今のところ満点。無垢のヤマザクラの佇まいもお気に入りです。

新居へ引っ越す友人に、趣味を問わず、邪魔にならず、長く使ってもらえそうなものを考えていますが、意外と爪切りもありかも、と検討しているところ。江戸切子の爪磨きと一緒に、繊細な日本の工芸技術を、身近なネイルケアで愉しんでもらいたいなと思っています。

海外と交流がある方なら、今、日本の刃物はとても人気なので、爪切りのような小さな刃物にもその技術が活かされていることに驚いていただけるかもしれません。

<贈りもの>
・中川政七商店「関で作った爪切り」
・中川政七商店「江戸切子の爪磨き」

季節の挨拶と元気でいる印に「季節の果物・野菜」

奈良に住んでいて一番恵まれてると感じるのが、野菜と果物のおいしさ。

直売所がそこここにあり、色つやのいい作物を手にするときに、ここに住んでいる幸せを感じます。週に一度まとめて買い出しをしますが、新鮮だと1週間くらいでは傷まないのも助かっています。

季節の挨拶と元気でいる印に、わたしはそのときの果物と野菜を贈りものに選びます。東京に住んでいたころ、しょっちゅうご飯を囲んでいたママ友は、食材を扱う手が丁寧で、とてもきれいな料理をつくる人。おいしいものを見つけるのも大好きなあの人を想像しながら、食材を選んでいるときが至福です。

8月ごろから出回るのが、露地栽培のいちじく。皮ごと食べられて、デザートにも料理にも使いやすい食材なので、多めに贈っても喜ばれます。他府県からはあまり知られていないようですが、奈良の特産の果物といえば、「いちじく」「柿」「いちご」なんですよ。

奈良へ旅行に来られる際、観光地に近い直売所だと、JR奈良駅前の「まほろばキッチン」があります。夕方になるとものが少なくなってくるので、できれば午前中がおすすめです。

<贈りもの>
まほろばキッチン「季節の果物・野菜」
https://www.ja-naraken.or.jp/agriculture/farmersmarket/mahoroba/naraekimae/
※時期により販売品は異なります。ご了承ください。


贈りかたを紹介した人:

中川政七商店 企画担当 森下純

【旬のひと皿】なすの梅煮

みずみずしい旬を、食卓へ。

この連載「旬のひと皿」では、奈良で創作料理と玄挽きの蕎麦の店「だんだん」を営む店主の新田奈々さんに、季節を味わうエッセイとひと皿をお届けしてもらいます。



8月も終わりに近づくと、季節のなかで一番好きな秋が近づいてきてワクワクします。ただ、奈良は盆地でまだまだ暑い。気持ちを秋にしてしまうと「切り替えが早かった‥‥」と悔やみながら秋風を待ちわびることになるので、片足はまだ夏、片足は秋ぐらいの気持ちで日々過ごしています。近くの園庭から聞こえる運動会の練習の声を聞いたり、夏の暑さに疲れたもみじに水やりしたりしながら、少しづつ日の暮れるのが早くなることを感じる日々です。

小さな飲食店を営むなかで、毎日さまざまな方にお越しいただいて、お話しをする機会があります。お仕事の話や最近あったこと、故郷のことや、趣味のこと。初めての日本に目をキラキラさせて来てくださる方も。自分の人生だけではとても体験できないお話を伺えるので、頭のなかで自分も同じ体験をした気分になり、色んな人生を楽しませてもらっています。年齢も、好みや状況も違う幅広い方々に、「美味しい」と思っていただける料理とはなんだろう?と考えています。

先日、とても忙しくお仕事をされながらも、季節を逃すことなく暮らしも料理も大切にされている素敵な方と、お話しする機会がありました。そのなかで教えていただいたことの一つが、お婆さまがよく作っていらっしゃった、なすの煮物について。出汁を使わず、水に煮干しを入れるだけでいい、いつでも気軽に作れる嬉しいレシピです。お婆さまとのやりとりや情景を思い浮かべただけで、気持ちが温かくなり、分量を細かく伺ったわけではないのですが、すぐに私も自分なりに作ってみました。同じ味の再現は当然できていないものの、派手な食材を使わずとも、こんなに慈味深く優しい一品ができるのだと感激しました。

料理のレシピは、今ではすぐに検索できてとても便利です。一方、便利ではないけれど、記憶をたどって作る、思い出のレシピも増えたら嬉しい。そして食べた人も、懐かしい過去の記憶や、温かい食卓の風景を思い出せる。そんな料理が作れたら、いろんな方に「美味しい」と思ってもらえるのかな。

時代を超えてたくさんの人が美味しいと思える料理を、身近にある食材で、いつか作れるようになりたいなと思います。

さて今回作るひと皿は、そんなエピソードから生まれた、なすの煮物です。合わせたのは梅干し。昆布やごぼうを煮るときにも、梅干しを入れると柔らかくなる、隠れた煮物の名わき役です。私自身も「〇〇の梅煮」が好きで、よく作ります。暑さの残る時期のレシピということもあり、さっぱり食べられるよう、なすの煮物にも梅干しを入れて炊きました。

食べるときは梅干しもほぐして、なすと一緒に食べるといいです。作り置きもできるので、冷蔵庫にこのなすがあれば安心。心強く、温かい気持ちになれるのです。

<なすの梅煮>

材料(2人分):

なす…3本
梅干し…2個
生姜…1かけ
煮干し…数匹
砂糖…大さじ1
みりん…大さじ1
醤油…大さじ1~2(お好みで)
水…200~250ml程度

つくり方:

なすを洗い、ヘタを取って半分に切る。皮へななめに切り込みを入れ、しばらく水につけてあくを抜く。生姜は皮をむき薄くスライスしておく。鍋になすを入れ、全体が浸る程度の水を入れたら火をつける。梅干しと生姜、煮干し、砂糖、みりんを入れて好みの甘さになるよう調整し、醤油を回しかけて煮る。

途中おたまで煮汁をなすにかけて味を染み込ませる。なすが重なる部分は火が通りにくいので、場所を動かしながらコトコト煮詰めていく。煮汁がなくなりそうになったら火を止めて、冷めたら梅干しと一緒に盛り付ける。

アレンジ編:<なすの梅煮ときのこのソテー>

フライパンを熱し、サラダ油を入れて、食べやすい大きさに切ったきのこ(お好みのもの。今回はしいたけとエリンギを使用)を炒める。軽く焼き色がついたら塩をひとつまみ入れて、もう一度サッと炒める。しっかり焼き色がついたらフライパンの火をとめて、なすの梅煮の煮汁を大さじ1杯入れ、きのことからませる。なすの梅煮と一緒にお皿に盛り付け、刻んだねぎを上から振って完成。

【ひとこと】
残った煮汁も使いたいと、食べ応えのあるひと皿にアレンジしました。きのこのソテーは、煮汁を使えば味付けも簡単。ご家庭にあるお好きなきのこで、気軽に作ってみてください。

うつわ紹介

・基本のひと皿:BARBAR いろは 中鉢(丸文)

・アレンジのひと皿:信楽焼の魚皿(飴)

写真:奥山晴日


料理・執筆

だんだん店主・新田奈々

島根県生まれ。 調理師学校卒業後都内のレストランで働く。 両親が母の故郷である奈良へ移住することを決め、3人で出雲そばの店を開業する。  
野に咲く花を生けられるようになりたいと大和末生流のお稽古に通い、師範のお免状を頂く。 父の他界後、季節の花や食材を楽しみながら母と二人三脚でお店を守っている。

【暮らすように、本を読む】#02『おべんとうの時間がきらいだった』

自分を前に進めたいとき。ちょっと一息つきたいとき。冒険の世界へ出たいとき。新しいアイデアを閃きたいとき。暮らしのなかで出合うさまざまな気持ちを助ける存在として、本があります。

ふと手にした本が、自分の大きなきっかけになることもあれば、毎日のお守りになることもある。

長野県上田市に拠点を置き、オンラインでの本の買い取り・販売を中心に事業を展開する、「VALUE BOOKS(バリューブックス)」の飯田光平さんに、心地好い暮らしのお供になるような、本との出合いをお届けしてもらいます。

<お知らせ>
先着50冊限定!ご紹介した書籍をVALUE BOOKSさんでご購入いただくと、中川政七商店の「白桃番茶」が書籍と一緒にお手元に届きます。詳細は、VALUE BOOKSさんのサイトをご覧ください。


「家族」のフタをあけてみれば『おべんとうの時間が嫌いだった』

昨晩の残りのカレーが詰まったお弁当。炊き込みご飯だけのお弁当。きんぴらとごぼうと煮物だけの茶色いお弁当。母親に不平を言っても、呆れて不機嫌になるだけ。お弁当なんて大嫌いだった。

本書の書き手は、ANA の機内紙「翼の王国」にて、全国各地の手作りお弁当を取材するコラム「おべんとうの時間」を担当する阿部直美さん。そんな彼女が、冒頭で語り始めた中学生時代の思い出には、ちょっと面食らってしまいます。

神経質で厳しい父と、それに不平を漏らすだけの母。阿部さんにとって中学生時代のお弁当は、ご飯やおかずの詰まった昼食ではなく、家族との不和を写した鏡のようなものでした。

そんなお弁当への意識を変えるきっかけとなったのが、写真家の夫からの提案。それは、お弁当を食べる人を写すことで、その裏側にいる、作る人まで見えるような作品を撮りたい、というものでした。

お弁当から、その家族を写し撮る。自身の思い出から、その”残酷さ”にためらう阿部さん。しかし、試行錯誤の取材と撮影を続けるうちに、どんな家族にもさまざまな背景や想いがあるのだ、と気付かされていきます。そうか、威張り散らす父にも、不満ばかりだった母にも、誰かを喜ぼせようとする温かい気持ちがあったはずだ、と。

思い出される、かつての記憶。母が父に手渡すお弁当は、野菜が一切なく、焼いたカジキマグロの味噌漬けだけがおかずだった。こんなお弁当は父がかわいそうだ、と娘ながらに感じたけれど、帰宅した父は「うまかった」と満足そうに空のお弁当を返していた。

彩りがなくても、冷凍食品をチンしたものでも、食べる人が笑顔になるのなら、それが一番。だって、人それぞれ、家族それぞれのお弁当があるのだから。

お弁当には愛がある、と言い切ってしまうのは、ちょっと怖い。それでも、一言では言い表せない想いが詰まった小さな箱を、大切に開きたくなる。そんな気持ちにさせてくれた1冊でした。

ご紹介した本

・阿部直美『おべんとうの時間がきらいだった』

本が気になった方は、ぜひこちらで:
VALUE BOOKSサイト『おべんとうの時間がきらいだった』

※先着50冊限定!ご紹介した書籍をVALUE BOOKSさんでご購入いただくと、中川政七商店の「白桃番茶」が書籍と一緒にお手元に届きます。詳細は、VALUE BOOKSさんのサイトをご覧ください。


VALUE BOOKS

長野県上田市に拠点を構え、本の買取・販売を手がける書店。古紙になるはずだった本を活かした「本だったノート」の制作や、本の買取を通じて寄付を行える「チャリボン」など、本屋を軸としながらさまざまな活動を行っている。
https://www.valuebooks.jp/


<同じ連載の記事はこちら>
【暮らすように、本を読む】#01『料理と毎日』

<お弁当に関する特集ページはこちら>
毎日のお弁当

【家しごとのてならい】第1回:季節の果実でシロップ作り

毎日の家しごと。それなりにできるようになり、だいたいは心得たつもりだけれど、意外と基本が疎かだったり、何となく自己流にしていたりするものってありませんか?

そのままで不都合はないものの、年齢を重ねてきたからこそ、改めて基本やコツを学んでみたい。頭の片隅にはうっすら、そんな思いがありました。

この連載では、大人になった今こそ気になる“家しごとのいろは”を、中川政七商店の編集スタッフがその道のつくり手さんたちに、習いに伺います。

とはいえ、難しいことはなかなか覚えられないし、続きません。肩ひじ張らず、構えずに、軽やかに暮らしを楽しむための、ちょっとした術を皆さんにお届けできたらと思います。

第一回目のテーマは「季節の果実でシロップ作り」。奈良・西吉野にて、果樹を専門に栽培に取り組みながら、ドライフルーツなどの加工・販売も行う、堀内果実園の堀内奈穂子さんを講師に迎え、編集チームの谷尻が習いました。


今回の講師:堀内果実園 堀内奈穂子さん

1978年、奈良県生まれ。奈良県吉野の山麓で代々くだもの農園を営んでいる夫との結婚を期に就農。夫婦で堀内果実園のリブランディングを進める。くだものの美味しさや楽しみ方を広く知ってもらいたいと、フルーツアートクリエーターの資格も取得。現在は堀内果実園全般の業務に携わっている。
URL:https://horiuchi-fruit.jp/



シロップ作りの基本

梅しごとに始まり、「自宅で好みのものを作りたい」という声を多く聞くようになった果実のシロップ。梅を使ったレシピはたくさん見かけるものの、どうせなら旬ごとに季節の果実を使ったり、好みの果実でも作ってみたりしたいものです。

そういったわけで、今回はいろいろな果実で応用できるように、すべてに共通する基礎から習いました。

まずは下準備についてご紹介します。

【果実】シロップに向くもの、向かないもの

季節によって、旬を迎える果実はさまざま。果実シロップ作りというと梅しごとが最も定番ですが、もちろん他の果実でもシロップは作れます。

堀内さん:
「果実によってシロップ作りに向く・向かないは特になく、基本的には何でもシロップに使っていただけます。ただ、すももみたいに皮がしっかりしている果実は、シロップを出やすくするために、皮に穴をあけて漬けるのがおすすめです。そんな風に、皮の張り加減などの果実が持つ特徴によって、シロップが完成するまでの時間差はありますね」

実際に使用する際は、いちごのような皮のない果実はそのまま使用します。また、すもものように繊維がやわらかい果実は、切ると繊維を壊してしまいシロップがどろっとするため、切らずに皮へ穴をあけて使いましょう。柑橘などの果肉感がしっかりしている果実は皮を剥き、切って入れても問題ありません。

【果実】そのままと冷凍、どちらを使う?

好みの果実で作るシロップは、旬を過ぎても味わいたいもの。とはいえ、旬の時期はフレッシュなものが手に入りますが、時期を過ぎると果実によっては手に入らないこともあります。その場合、冷凍したものを使ってもよいのでしょうか?

堀内さん:
「冷凍した果実を使うのも、もちろん問題ありません。冷凍すると果実の繊維がやわらかくなり、解凍されるときに果実から出る蜜で砂糖も溶けやすくなります。早くシロップを完成させたい方は、溶けやすくするために冷凍がおすすめです。味はどちらも変わらないので、お好みで使っていただいて大丈夫ですよ」

【砂糖】氷砂糖、きび砂糖などの使い分け方

続いては、砂糖の使い分け方。果実シロップのレシピでよく使われるのは氷砂糖ですが、自宅にない場合や、普段から使っている好みのお砂糖がある方もいらっしゃいますよね。

堀内さん:
「一般的には失敗しにくく、果実の色もきれいに出る氷砂糖がよく使われますが、どのお砂糖を使うかは、漬ける方の好みで選んでいただいて大丈夫です。きび砂糖を使う方もいれば、はちみつだけで漬ける方もおられます。

我が家では氷砂糖か、たまにビート糖を使ったり、はちみつと半々にすることもあります。ただ黒糖のような色の濃いお砂糖を使うと、シロップの色がトーンダウンするので、ご注意くださいね」

【砂糖】分量の考え方

甘さの好みは人それぞれ。基本の分量は押さえつつ、自分好みの甘さを見つけたいところです。ただし、砂糖を少なくすることで失敗する危険もあるので注意しましょう。

堀内さん:
「砂糖と果実の割合は、1対1が基本。例えば、500gの果実を使う場合は500gのお砂糖を使うと、1対1の割合になります。甘みが気になる方は果実1に対してお砂糖を0.8とするなど、お砂糖の分量を少なくしても良いのですが、少なくするとカビやすくなるので注意が必要です」

【漬ける期間】飲みはじめと、保存期間

飲みはじめられるのは、お砂糖が溶けてから。季節や果実にもよりますが、だいたい1週間~10日ほどが目安です。ただし、1週間後ではまだ果実のエキスが出きっていないので、待てる場合は3か月ほど漬けてから飲みましょう。漬ける期間が長くなるほど、シロップの味はどんどんまろやかになるので、お好みのタイミングをぜひ見つけてください。

堀内さん:
「お砂糖がすべて溶けた時点で飲めはするのですが、漬けが浅ければ浅いほど、角が立った味になります。最初の頃はちょこちょこ味見をしてみて、ご自身がお好みの味を確認するのが良いかもしれませんね。1年、2年と漬けておくと、味はどんどんまろやかになります。

お砂糖を使っているため、シロップは基本的に数年間など長く保存が可能です。ただし長期にわたって保存すると、中の果実が黒っぽくなっていくので、気になる場合は3か月から半年ほどで取り出すようにしてください。色が気にならなければ入れておいても問題ありません。

取り出した果実はそのまま食べてもいいのですが、ジャムやスムージーにアレンジするのもおすすめですよ」

なお長期で保存する場合は、果実が砂糖にしっかり浸かっていないとカビなどの原因となります。シロップから浮いている面があればときどき瓶を回し、果実全体にシロップを回しかけるようにしましょう。

【保存場所】直射日光の当たらない、冷暗所で

せっかく作った果実シロップ。失敗せずに完成まで仕上げるためには、保存場所も重要です。直射日光のあたらない冷暗所におき、1週間ほどして砂糖が溶けてきたら、そのまま冷暗所で保存するか、冷蔵庫へ移動させてください。

堀内さん:
「最近は住宅環境が良くなり気密性が上がっているのと、特に夏は気温が年々高くなっているので、冷暗所がご家庭にない場合もあると思います。室内が高温になるのであれば、冷蔵庫保管がおすすめです」

保存の際は、マスキングテープなどに漬けた日を書いて瓶に貼っておくとわかりやすい

【トラブル発生】発酵したとき、カビたときの対処方法

果実を漬けている最中、注意していてもときどき起きてしまうのが、果実の発酵とカビ。

果実が発酵した場合は果実を取り出し、シロップだけを鍋に移し替えて70度ほどに熱し、10分ほど煮詰めます。瓶を洗い水気を拭き取ったら改めて消毒し、シロップの熱が完全に冷めた後、清潔な瓶にもう一度、果実とともに入れて漬けてください。

またカビた場合は、カビた果実は処分します。あとは発酵した場合と同じように、シロップを煮詰め、消毒した瓶にカビのない果実とともに入れて、改めて漬けてください。

<果実シロップづくりの心得:準備と保存>

・果実は好みのものでよし。それぞれの特徴により、下準備を変える
・果実は生でも冷凍でも問題なし。冷凍ものを使うとシロップが早く仕上がる
・砂糖の種類は好みで。果実と砂糖は1対1の割合が基本。減らす場合はカビに注意
・飲み始めは仕込みの1週間後ほどから。3か月ほど待つと果実感が増す
・長く漬けるほど、シロップのまろやかみが増す
・保存の際は直射日光の当たらない冷暗所や、冷蔵庫で
・発酵してしまったら果実を取り出し、シロップを煮詰めて再度果実と共に瓶へ戻す
・カビてしまったら果実を取り出してカビた果実は捨て、シロップを煮詰めて再度果実と共に瓶へ戻す

果実シロップの作り方

準備と保存について心得た後は、いよいよシロップ作りです。とは言っても、準備と保存のところさえしっかり押さえていれば、シロップ作り自体はとても簡単。材料と道具を揃え、いざ始めます。

準備物:

・保存瓶(密閉性のあるもの)
・ふきん
・アルコールスプレー
・竹串(すもも用)
・果実(今回はすもも、柿、ブルーベリー)

透明なガラス瓶の中で果実と砂糖が溶けていく様子を眺めるのも、果実シロップの楽しみの一つです。瓶は好みのデザインのものを選んで問題ありませんが、口径が広めだと果実が入れやすいのでおすすめです。必ず密閉できるものを選びましょう。

今回は中川政七商店「吹きガラスの保存瓶」を使用しました

また瓶は使用前に消毒が必要。アルコール消毒の場合はアルコールスプレーを、煮沸消毒の場合は瓶が入る大きな鍋と、瓶を扱うトングを用意します。瓶を拭くための、清潔なふきんも準備いただくと便利です。

※今回はアルコール消毒で行いました

1. 瓶を消毒する

アルコール消毒の場合は、瓶の内側にアルコールを吹きかけ清潔なふきんで軽く拭き取ります。煮沸消毒の場合はたっぷりのお湯を沸騰させた鍋に瓶を入れ、瓶の内側にしっかりお湯が回るよう、トングなどで瓶をやさしく回転させましょう。5分ほど煮て完了したら、瓶に残った水分を拭き取ります。

堀内さん:
「瓶は自然乾燥でも大丈夫ですが、水分が残っていると果実がカビるので、しっかり水分をとって使用してくださいね」

2. 果実と砂糖を計量する

作りたいシロップの量や、瓶の容量に合わせて果実と砂糖を計量します。今回は約1Lが入る瓶に対し、果実と砂糖を350g程度ずつ(計600g程度)用意しました。

3. 果実の下準備

果実をサッと洗い、水分を丁寧に拭き取ります。水分がついているとカビの原因になるので注意しましょう。

梅やブルーベリーの場合は皮を剥かずにそのまま使いますが、すもものように、皮に厚みのある果実には穴をあけてください。竹串を手に持って皮に刺し、ぷすぷすと全面をランダムに突いていきましょう。もし冷凍のものを使いたい場合は、半解凍して穴をあけるか、穴をあけてから冷凍しておきます。

パイナップルや柑橘類、柿などの果肉がしっかりしている果実は表皮を剥き、瓶へ入れやすいようにカットします。なお今回、柿はカットして冷凍したものを使いました。

梅やすもものようにヘタがついている果実は、ヘタ部分を竹串などで取っておきましょう。

堀内さん:
「果実を皮ごと使う場合は、できるだけ農薬や防カビ剤不使用のものを選んでくださいね」

すももは皮に竹串を刺し、穴をあけます

4. 清潔な瓶に、砂糖と果実を適量ずつ交互に入れる

下準備が完了したら、果実と砂糖が交互になるよう、瓶に詰めていきます。

まずは底にうっすらと砂糖が敷かれるよう、砂糖から先に入れましょう。このとき、あと2層ほど砂糖を重ねられるよう、量を残しておきます。

次に果実を入れ、砂糖、果実と重ねていき、最後に砂糖を載せて蓋をしたら完成です。

なお、冷凍果実を使用する場合は、解凍せずに冷凍状態のまま入れるのがおすすめ。解凍される際に果実から蜜が溶け出し、砂糖が溶けやすくなるため、シロップ作りが早まります。

5. 冷暗所に置き、一日に一度ほど瓶を回して果実に砂糖をなじませる

保管の際にじわじわと氷砂糖が溶け始めたら、果実に液糖がコーティングされるように瓶を回します。目安は一日に一度程度です。

堀内さん:
「見た目もかわいい果実シロップ。毎日世話をしながら、シロップの様子を眺めて楽しんでいただけたらと思います」

<果実シロップづくりの心得:作り方>

・瓶は消毒し、水分を拭き取っておく
・果実は特徴に応じて下準備を変える。果肉がやわらかいものは切らずに使う。皮が硬い場合は竹串などで穴をあける
・皮ごと使う場合は薬剤不使用のものを
・砂糖と果実は、交互に瓶に詰める。底に砂糖を敷き、上面も砂糖で蓋をする
・保存の際は一日に一度、瓶を回して液糖を果実にゆきわたらせる


「自宅でシロップを漬ける」と聞くと、何だかとても丁寧な家しごとのように思えますが、ポイントさえ押さえていれば、実はとても簡単。漬けている最中からその涼やかな景色が心地よく、好みの味を自分で調整できるのも、家で作るからこそです。

基本のシロップが作れるようになったら、ハーブを入れてみたり、スパイスを入れてみたり、少し珍しい果実でも挑戦してみたりと、いろいろ楽しめそう。旬を迎えるよろこびが、また、一つ増えました。

堀内果実園さん、ありがとうございました。


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文:谷尻純子
写真:関口高史