渋みが苦手な私が常飲する「大和園の一番煎茶」

日本各地から五十を越える作り手たちが集う中川政七商店主催の合同展示会「大日本市」。 その運営を担うメンバーは、日々、全国の作り手と交流し、年間何百という品物に出会う、いわば「いいもの」の目利き集団。 この連載では、そんな彼らが「これは」と惚れ込んだ逸品をご紹介。実際に使ってみての偏愛を語ります。

塩足 月和子

語り手:塩足 月和子

直営店店長を経て、日本全国の工芸品をお届けする展示会「大日本市」の担当に。 工芸だけでなくアートも好きで、休日は美術館やギャラリー巡りを楽しんでいます。 旅好きでもあり、冬には必ず雪国に行って温泉と日本酒を楽しんでます。

ブランド:大和園
推しの逸品:一番煎茶

大和園は自然豊かな奈良県大和高原にて、茶の生産から製茶を職人が一貫して担う大和茶製茶農園です。 旨いお茶は、強い土、美しい水、澄んだ空気、そして良い手仕事から生まれます。 数々の品評会での受賞歴が裏付けする技と心で仕上げた、大和園のお茶をお届けします。

つい最近まで、日常的に飲むお茶には、煎茶を選びませんでした。
丁寧に煎れられた煎茶をいただいた時の、旨みや甘み。あの美味しさは知っているものの、日々の生活の中で飲むお茶は、すっきりごくごく飲みたい。渋みや苦みはない方がいいなと感じていたからです。

そんな私ですが、大和園さんの煎茶に出会い、煎茶のイメージが一新されました。
煎茶好きの方はもちろん、煎茶に苦手意識がある方や、子ども、海外の方まで。自信をもって推せる!という煎茶を見つけました。

旨み甘みがぎゅっと凝縮されたお茶

ひと言で特徴を挙げるなら、渋みが少なく、凝縮された旨み甘みがぎゅっと詰まっています。
渋みや苦みの是非については好みにもよると思います。ただ、私にとっては、煎茶のいいところを詰め込んだようなお茶でした。

中でも、特におすすめしたいのが「一番煎茶」です。

おすすめは水出し。500mlの水にティーバッグをいれて、一晩(5~8時間程度)置けばそれで抽出完了です。

グラスに注ぐと、ふわっと爽やかな香りが立ち、そのまま一口含めば、その甘さに驚くこと間違いなし!です。
初めて飲んだ時、ひとりで「んー?!なにこれ美味しい~~~…!」と叫んでしまいました。

甘いと言ってもスイートな甘みではありません。まろみのあるふくよかな旨み、と表現するのが正しいのだと思います。

煎茶としてだけでなく、純粋に飲料として120点の美味しさ!日常で飲みたいと思い、仕事中にも、水とともに常飲するようになりました。

水出しの水色は、黄緑に透き通って美しい。お茶本来の色味

ただ、これからの季節は、温かいものを飲みたいですよね。
その点もご安心ください。おすすめは水出しですが、お湯でももちろん美味しくいれられます。

適温は、60~70度くらいの低めの温度です。水出しの衝撃的な甘みとはまた違う味わいですが、お湯でいれても渋みは少なく、旨み甘みが凝縮された奥深い味わいを楽しめます。

そういえば、煎茶を常飲しなかった理由に、お湯の温度を調整するの面倒だと思っていたこともあります。でも、その面倒さを超えるくらい美味しいのです。
ちょっとしたことでこんなに変わるのだと思うと、丁寧にいれようと思えるものです。

それに、お湯の温度は、一度うつわに移し入れれば10度下がると言われているので、3~4回カップを交互に移し替えれば最適な温度になります。やってみるとそんなに手間でもありません。

葉っぱがしっかり残っており、粉っぽさがない

また、私は煎茶をいれた時に出る粉っぽさが苦手なのですが、それがないのも嬉しいポイントです。
昔ながらの浅蒸しでつくられているので、葉っぱがしっかり残っており、粉が出ません。また、浅く蒸すことが、お茶本来の旨みや甘みを残し、まろやかで奥行きのある味わいを生んでいるそうです。

お客さまへのおもてなしにも、間違いなしのお茶

このお茶、お客様へのおもてなしにもおすすめです。
苦手な方がごく少ない万人受けする味だと思いますし、飲めば「美味しいお茶をいれてくれたんだな」と分かる味をしています。それくらい、しっかりとした旨みと甘みがあります。

ちなみに、中川政七商店でも1~2を争う味にうるさい同僚に出してみたのですが、「美味しい!」と評判でした。

畑の状態の品評会で受賞歴のある、大和園さんの茶畑

それもそのはず、受賞歴も豊富です。
味だけでなく、畑の状態の品評会など、多種多様の受賞歴を持っています。

奈良県の会社なので、茶畑にもお邪魔させていただいたのですが、驚いたのは、茶葉の品質管理。収穫後の茶葉が重みでつぶれないよう、下から風を当てながら工場に運んでいるのです。実際に見せていただいて、相当気を使い、品質管理されているのが分かりました。

収穫してトラックに移されたお茶。下部の茶葉がつぶれないよう、下から風をあてている

生産背景も含め、まだまだ伝えたいことも尽きないのですが、どんどん長くなりますのでこの辺で。とにかく一度、騙されたと思って飲んでみていただきたいです。

美味しいものを味わう喜びは、日常の幸福度を確実に上げてくれます。大和園さんの一番煎茶に出会って、口にする頻度の高い飲料が美味しいことは、何よりも日々の幸せに繋がるのかもしれない、と感じました。

ちなみに、大和園さんの1番のおすすめは氷出しなのだそうです。
私も今度挑戦してみたいと思っています。

<関連商品>
大和園 一番煎茶 ティーバッグ12包入
大和園 一番煎茶  60g
大和園 二番煎茶 ティーバッグ12包入
大和園 二番煎茶 60g
大和園 雁金焙茶(かりがねほうじちゃ) ティーバッグ12包入
大和園 雁金焙茶(かりがねほうじちゃ) 30g

ちなみに、今回販売している大和園さんの煎茶には、「二番煎茶」もあります。
二番煎茶は、一番煎茶と比べると、すっきりとした味わい。熱湯でいれても渋くなりにくいので、湯の温度を気にせずいれたい、という方にはおすすめです。
旨みと甘みを求めるなら、やっぱり一番煎茶です。

気持ちを晴れやかにしてくれる、自分好みの正月飾り

「来年こそは本気を出そう」

年末の追い込みを軽やかに諦めつつ、新年にやりたいことをあれこれ考えてそわそわする。そんな時期に差し掛かりました。

春夏秋冬、色々な季節の行事がある中で、やっぱりお正月はどこか特別なもの。

歳神様をお迎えして新年の幸福を祈る儀式としてもそうですが、前年の後悔や反省をリセットして再スタートを切るという気持ちの面でも、お正月の持つ意味は大きいと感じています。

お正月を迎える準備の中で特に大切に、そして楽しみにしているのが、新しい注連縄(しめなわ)飾りと干支飾りを用意すること。

どちらも地域やつくり手さんによって本当に様々な種類があり、お気に入りのものが見つかるとそれだけで気持ちが前向きになります。そして元日に飾ることがとても待ち遠しくなり、新しい年の訪れをより強く感じられるようになる。お正月飾りを選ぶことは、そんな体験とセットになっています。

おめでたい願いを込めた注連縄飾り

さまざまな形が作られている注連縄飾り

神聖な場所を示す注連縄に、稲穂や裏白(うらじろ)、だいだい、御幣(ごへい)などの縁起物を付けて作られる注連縄飾り。土地に伝承する物語が由来になっていたり、暮らしに馴染みの深い道具がモチーフになっていたり、全国各地でバラエティ豊かな注連縄飾りが今も作られ続けています。

中川政七商店では今回、「わらわら(藁)と喜んで(よろこぶ=昆布)、神(紙)を待つ(松)」という語呂合わせの意味を込めた組合せで、炭を昆布に、水引を松に見立てた注連飾りを作りました。炭の黒い色には邪気を払う願いも重ねています。

地域ごとや家単位で様々な形が存在する注連縄飾り。そんな、風土性・土着性の豊かさ、多様性を感じていただき、好みの飾りを選んでいただけるように、同じ想いを込めながら様々な形で注連縄飾りを表現しました。

二連飾り

注連縄飾り(二連飾り):約23×23cm

玉飾り

注連縄飾り(玉飾り):約23×26cm

輪飾り

注連縄飾り(輪飾り):約13×50cm

その他の注連縄飾りや鏡餅飾りなど、お正月飾りの商品一覧はこちら

昔から親しまれてきた干支飾り

無病息災や厄除祈念などの縁起物として昔から親しまれてきた干支もの。その年の干支を飾ることで「家内安全・商売繁盛」、人に授けることで「招福祈願・安寧長寿」という意味を持ちます。

2023年の干支は「卯(う・うさぎ)」。卯の跳ねる姿は「飛躍」に通じ、長い耳は福を集めるとされ、縁起がよいものといわれてきました。

かわいらしいイメージのウサギをモチーフにしつつ、会津の張子や瀬戸焼、こけしの技法でオリジナルの干支飾りを作りました。日本の伝統を感じられる品の良さを大切にデザインしています。

張子飾り 首ふり卯

張子飾り 首ふり卯(小/大)

福島県の「野沢民芸」さんとつくった、オリジナル絵付けの干支張子。素朴で愛らしい表情と長い耳が特徴です。ひとつひとつ筆を用いた手書きの彩色はまさに職人技で、心温まる味わいを感じられます。

干支張子 卯

干支張子 卯

金沢の老舗「中島めんや」さんと作った干支の張子。ウサギらしい丸みのある形を追求して形を起こしています。手作業の仕上げによりすべて表情が異なるのも魅力です。

瀬戸焼の干支飾り 卯

瀬戸焼の干支飾り 卯

愛知県瀬戸市で縁起置物や季節飾りなどの陶磁器を手掛ける「中外陶園」さんと作った干支飾り。古染釉と呼ばれる青みがかったつやのある質感の釉薬を用いています。古染釉が段差に溜まった時に青みが出る点を活かすため、耳や足の部分の段差を深くつけました。色数の少ない大人っぽい干支飾りです。

干支こけし 卯

干支こけし 卯

伝統的なこけしの技術を用いて作りました。斜めにカットした形状と、尻尾を別パーツにしたことで、よりウサギらしい形を表現しています。尻尾の部分にはこけしならではのろくろ模様を施しました。

その他の商品も多数「干支づくし」商品ページはこちら

少し気が早いかな、と思っているとあっというまに師走に入ってしまいます。余裕を持ってお気に入りのお飾りを見つけて、ぜひ、晴れやかな気持ちで新年を迎えてください。

思わず「はぁ~」と深呼吸する「HAA」の入浴剤

日本各地から五十を越える作り手たちが集う中川政七商店主催の合同展示会「大日本市」。 その運営を担うメンバーは、日々、全国の作り手と交流し、年間何百という品物に出会う、いわば「いいもの」の目利き集団。 この連載では、そんな彼らが「これは」と惚れ込んだ逸品をご紹介。実際に使ってみての偏愛を語ります。

梶川 今日子

語り手:梶川 今日子

中川政七商店の企画展の運営と大日本市でバイイングをしています。以前は自分でお店を運営していたこともあり、素敵なものを見たり探したり発見することに「ときめき」ます。陶器の産地「岐阜県土岐市」生まれ。これまで住んだ場所は沖縄・長野(松本)・東京・埼玉・そして奈良と引越しの多い人生です。

ブランド:HAA
推しの逸品:「HAA」の入浴剤

大分県にある別府八湯のひとつ、鉄輪(かんなわ)温泉は、古くから湯治文化が根づく場所。HAA(ハー)は、この鉄輪温泉から生まれた日本古来の養生法「湯治(とうじ)」をコンセプトにしたライフスタイルブランドです。

皆さんは1日を通して心から安堵しリラックスする時はどんな時でしょうか?

私はといえば、家に戻りご飯を食べて空腹を満たし、1日の最後にお風呂の湯船に浸かる、その瞬間かもしれません。

そんな癒し時間の最強ツールとなりそうな入浴剤「HAA」。
「HAA」は日本古来の養生法「湯治(とうじ)」をコンセプトにしたライフスタイルブランドです。

あまり聞きなれない「湯治(湯治場)」。
少し前までの湯治場は、農閑期など長期滞在できる時期に、重労働を終えた人々が、からだを休めに来る場所でした。
長期滞在しながら養生する習慣は今なお残り、湯治文化は、日本に根付く養生法となっています。

開発者の池田さん自身が、東京での激務から故郷の別府に戻り、深い呼吸が出来ていなかったことを実感。
深い呼吸が出来ていない人、それすら気づいていない人の、深呼吸のスイッチが必要なのかもしれない。
どんな場所や環境下においても「深い呼吸」をして、体を整えられるようなものになれば...
そんな思いから「HAA」が誕生しました。

実際、私も初めて「HAA」を入れて湯船に浸かった時、無意識に「はぁ~」と言っていることに気づきました。
普段決して長湯ではない私ですが、この時ばかりはいつまでも入っていられて、心から何かがほどけていくような感覚を体感しました。

本場の湯に限りなく近づける為、あえて香料を使用せずほぼ無臭。
淡い白濁の湯はとても柔らかく、少しとろりとした湯になります。
これは希少な青粘土を原料に育てられた「別府湯の花」由来の成分と、アルカリ性の温泉成分によるもの。
この対極の成分を絶妙なバランスで掛け合わせることで天然ミネラルを含みつつ、
肌ざわりがなめらかな湯質を実現されています。

まさにいつでも好きな時に気軽に自宅で温泉に入ることが出来る!
とても贅沢な気持ちになります。
敏感肌の私でも安心して入ることが出来るのもとても嬉しいです。

「HAA for bath日々」は入浴剤の包み紙の裏にテーマごとに、
さまざまな方の日々の日記のようなエッセイがつづられています。この文章がまた、何とも素敵なのです。
エッセイを読み、自宅で温泉に浸かる。ちょっとした余白を作ってくれる時間が、とてつもない贅沢をもたらしてくれます。

池田さんは言います。
「はぁ~」する瞬間を「HAA」で増やしたいと。

自分ヘのご褒美と、余白を作る時間を持つことの大切さを味わった私は、大切な友人にも早速贈ってみました。
友人からは、「私もは~って言ってた!」と返ってきて、嬉しい共有の時間となりました。
ぜひ皆さんも「はぁ~」を「HAA」で体感してみて下さい。


<関連商品>
【WEB限定】HAA for bath 入浴剤 900g

いってらっしゃい、おかえり、と言ってくれているような佇まい。「休日の雪だぬき」

日本各地から五十を越える作り手たちが集う中川政七商店主催の合同展示会「大日本市」。 その運営を担うメンバーは、日々、全国の作り手と交流し、年間何百という品物に出会う、いわば「いいもの」の目利き集団。 この連載では、そんな彼らが「これは」と惚れ込んだ逸品をご紹介。実際に使ってみての偏愛を語ります。

白山 伸恵

語り手:白山 伸恵

中川政七商店主催の展示会「大日本市」の実行委員。長い社歴の中で繋がった全国の小売店様へ更によいものをお届け出来るように奮闘しています。日々明るく楽しく過ごすことがモットーです。工芸メーカーさんもお客様も笑顔に出来ればうれしいです。

ブランド:山から福がおりてくる
推しの逸品:休日の雪だぬき

山形の残しておかなければならない文化や伝承、そこに紐づく手しごと。「山形のいいもの」をお届けします。
そのネーミングだけで、ほっこりした気持ちになる「休日の雪だぬき」。
奈良からは信楽が近いので、遠足などでも訪れたりして、信楽焼のたぬきは身近な存在なのです。
その信楽の職人のお世話をしたことで、お礼にと作り方を教えていったものを郷土の土を使って、山形県新庄市で作り続けているというのが「雪だぬき」という話を聞いて、日本昔話のような世界観にわくわくと嬉しさとで、あったかい気持ちに。


休日の雪だぬき

そして、この白い釉薬がとても新鮮な印象を受けたのと、ひと目見たときから、なんともいえないこちらに語りかけてくるような表情に魅了されました!


休日の雪だぬき

玄関付近に置いておくと、「いってらっしゃい」「おかえり」と言ってくれてます?と思ってしまう佇まい。
サイズ感も大きすぎず、小さすぎず、丁度いい高さにいるので、ただいまと話しかけたり、ちょっと頭をなでてみたり。


休日の雪だぬき

帽子をかぶせるだけで、どこかにお出かけですか?という雰囲気になるのが面白くて、今日は帽子の日、お天気悪い日は帽子取ってみましょうかと、ついつい構いたくなるんですよね。


休日の雪だぬき

徳利は花を生けるのにも使えるので、別で置いてみたり、徳利を持っていた手に直接ドライフラワーを持たせてみたりとアレンジもできて楽しんだり。


休日の雪だぬき

白い釉薬がいい意味で主張しすぎず、よく見かける笠をかぶる変わりに帽子をかぶってることで、洋風和風問わずそっと暮らしに馴染んで、やさしく見守っている雰囲気にしみじみとしてしまいます。


商品詳細はこちらから

<関連特集>

中川政七商店がなぜ菓子店を?「いいお店を増やす」奈良のまちづくり

鹿猿狐ビルヂングから町屋が連なる路地を歩くこと1分。歴史ある町並みの一画に、中川政七商店が営む菓子店「奈良御菓子製造所 ocasi(以下、ocasi)」がオープンしました。

工芸をベースにした生活雑貨をつくり販売する中川政七商店の新しいお店が、なぜ菓子店を営業するのか。今回は、私たちが掲げる「日本の工芸を元気にする!」というビジョンから、ocasiが誕生した理由をお話しさせてください。

ocasiのコンセプトは「水菓子、和菓子、洋菓子。三つのお菓子が重なりあう『奈良御菓子』」。同店では、奈良では「三笠」とも呼ばれ古くから愛される和菓子・どら焼きと、西洋から渡来し多様な深化を遂げたチーズケーキ、それらに合わせる、菓子の起源とも言われる水菓子・ジャムの3つのお菓子が提供されます。

食べ方はというと、まずはどら焼きやチーズケーキをそのままひと口。その後はペアリングジャムをひとさじ添えて。ジャムと合わせることで、果実の酸味や苦み、スパイスの香りがお菓子の甘みに重なり、より複雑で奥行きのある味わいへの変化が愉しめます。

奈良御菓子製造所 ocasiのスペシャリテ「ocasiプレート」(税込935円)

訪れる方が口々に「新感覚」と表現するこちらのメニュー、監修をお願いしたのは、鹿猿狐ビルヂング1階に入るすき焼きレストラン・㐂つねのオーナーであり、東京・代々木上原にある一つ星レストラン「sio」のオーナーシェフである鳥羽周作さんです。

「完成してから今日初めてocasiの世界を体験しましたが、予想のはるかに上をいっていてもう最高ですね。新しいけど尖りすぎてない絶妙なラインで、奈良のまちの中でのこの立ち位置というのがすごく良い。柔らかい圧倒感があって感動しました。自分の会社にもこんなお店があったらいいなって思いましたね(笑)」(鳥羽さん)

ocasiは㐂つねに続く、中川政七商店と鳥羽さんによる協働事業の第二弾。でもどうして東京で人気店を展開してきた鳥羽さんが、親交があったとはいえ、わざわざ奈良でお店を出してくれたのでしょう。そこには中川政七商店を応援したいという思いがあったといいます。

「初めて奈良に訪れた時、中川さんが車で奈良をアテンドしてくれたんです。人間らしさというか、中川さんの温かさに感動してしまって。その時に、僕にできることならなんでも手伝わせてほしいと思ったんです」(鳥羽さん)

実は㐂つねのコンセプトや店名の提案にも、中川政七が関わっています

ところで、なぜ中川政七商店が菓子店を?

実は今回のocasiは、中川政七商店による奈良のまちづくり・N.PARK PROJECTの取り組みとして誕生したものです。

これまでも「日本の工芸を元気にする!」をビジョンに、工芸をベースにした生活雑貨の企画製造販売の他、業界特化型の展示会・大日本市や、全国の工芸事業者への経営コンサルティングなど、工芸を元気にするための事業を多岐にわたり展開してきた中川政七商店。

N.PARK PROJECTはそんな私たちが、「工芸を元気にするためには、工芸の産地に人を招くアプローチも必要である」との考えから「産業観光」をキーワードに新たに始めた挑戦です。

いい工房があって職人の技を見て、併設されたショップでその手から生み出された工芸を手にする。そんな体験を生むことで工芸をもっと身近に感じてほしい。産業観光は工芸を元気にするために、今後欠かせないアプローチとなるでしょう。

ですが、工芸の産地があるのは基本的に地方ばかり。その地域を訪れたくなるには、工房以外に美味しいお店や泊まりたくなる宿も必要です。そんな風に魅力あるコンテンツが他にもないと、人はなかなか工芸産地を観光の目的地にはしないだろうと、私たちは考えました。

つまり産業観光を実現するためには、まち自体に魅力あるお店を増やす取り組みがキーになる。そう至り、まずは自分たちが事業を営む奈良の地で、奈良にいいお店を増やし街を元気にするN.PARK PROJECTに挑戦しはじめたのです。

まちづくりの拠点・鹿猿狐ビルヂング

2021年4月にオープンした当社初の複合商業施設である鹿猿狐ビルヂングは言わばまちづくりの拠点。その3階で運営するコワーキング施設のJIRINでは、奈良の事業者へ経営講座を開催したり、経営コンサルティングを実施したりと、これまでは主に他の事業者に対する経営支援を提供してきました。

でも、事業者の支援はあくまで一つの手段。もう一方では「自分たちもいいお店を展開できたら」と、志を応援してくれた鳥羽さんチームと共に、第一弾として鹿猿狐ビルヂングに入る㐂つねを、そして今回第二弾としてocasiの取り組みを進めてきたのです。

「僕たちは菓子店をミーハーに出したのではなくて、このお店はあくまで奈良を元気にするための手段。ただ自分たちは飲食のプロではないので、鳥羽さんに協力を依頼しました。鳥羽さんと僕は見た目が全然違うので(笑)タイプが異なるとよく思われますが、実はとても思考回路が似てる。例えば事業を始めるときにクリエイティブなことを実現するのが目的になる方もいますが、鳥羽さんも僕も、クリエイティブはあくまで手段として考えています。事業成功の手段としてクリエイティブがあって、その事業の成功した先に目指すべきところがあるんです」(中川)

こんな風に合流し、ocasiの計画が始まった1年以上も前から、メニューの検討やレシピ開発を進めてきた鳥羽さんと中川政七商店。「本当に美味しい体験って何だろう?」そんな思いでお菓子の定番であるどら焼きもチーズケーキも、一から材料や作り方を考えてきました。オープンの日に至るまで、重ねた試食の回数は数えきれないほどです。

「どら焼きの糖度を落として甘すぎないようにしたり、チーズケーキをとにかく丁寧に作って滑らかで軽やかな味わいを表現したり、今回のお店で“美味しい”がどうあるべきか考え抜きましたね。

あと特にこだわったのは全体の体験価値や、そのバランスです。どら焼きとチーズケーキとジャムが三味一体になっているなかで、どれも突出しないように注意しました。今回のocasiプレートは誰も食べたことがない食体験。単純にそれぞれのお菓子を食べて美味しいって話じゃなくて、ちょっと考える時間があるのが新しいんです。ジャムが三つあることで『これが好き』『これが苦手かもしれない』と、あのコンテンツの中で思考する時間を設けたことに体験の価値や意味があると思っています」(鳥羽さん)

いいお店を奈良の街に増やすことで、奈良を元気にするまちづくり「N.PARK PROJECT」に取り組む中川政七商店。「幸せの分母を増やす」をモットーに、レストラン展開や食のプロデュースを重ねてきたsio・鳥羽周作。ocasiは、そんな両者の想いを詰め込んだお店なのです。

奈良に暮らす人は、大切な人へのギフトや日常のおやつに。また奈良を訪れる人は目的地の一つや、ならまち散策中にホッとひと息つける休憩場所として。「奈良土産」にご利用いただくのもおすすめです。ならまちに新たな景色をうみ、少しずつ時間をかけて奈良の”普通”になっていく。そんなお店を目指して、これから末永くocasiを運営していけたらと思います。

<店舗情報>
奈良御菓子製造所 ocasi
〒630-8221 奈良県奈良市元林院町5
(近鉄奈良駅から徒歩約7分)
google map

営業時間
10-18時 定休日:不定休

席 数
10(屋外席含む)

文:谷尻純子


あわせて読みたい

奈良散策のおともに、お土産に。「奈良御菓子製造所 ocasi」

→読みものはこちら

中川政七商店の謎を解く、6つの問いと1つの答え

→読みものはこちら

【季節の手ざわり】師走に備える、小掃除のススメ

こんにちは。中川政七商店ラヂオの時間です。

中川政七商店ラヂオ「季節の手ざわり」は、月に一度、季節ごとの風習や、暮らしに取り入れたい日本の文化についてお届けしています。
季節の移ろいを感じ暮らしを整える、そんなひと時をご一緒しませんか。

立冬を迎え、暦の上ではいよいよ冬が始まりました。カレンダーを見ると、残すところ2ヶ月弱と、そろそろ年末の足音が聞こえてくる頃です。年末といえばクリスマスやお正月の準備と、行事が目白押し。「大掃除」もその一つですね。そこで今回は本格的な12月の大掃除の前に、習慣にしておきたい「小掃除」についてのお話です。


ナビゲーター:クリス智子
ハワイ生まれ。大学卒業時に、東京のFMラジオ局 J-WAVE でナビゲーターデビュー。現在は、同局「GOOD NEIGHBORS」(月曜〜木曜13:00〜16:00)を担当。ラジオのパーソナリティのほか、MC、ナレーション、トークイベント出演、また、エッセイ執筆、朗読、音楽、作詞なども行う。得意とするのは、暮らし、デザイン、アートの分野。幼少期より触れてきたアンティークから、最先端のデザインまで興味をもち、生活そのもの、居心地のいい空間にこだわりを持つ。ラジオにおいても、居心地、耳心地の良い時間はもちろん、その中で、常に新しいことへの探究心を共有できる場づくりを心がける。


プラットフォーム

ラヂオは7つのプラットフォームで配信しています。
お好きなプラットホームからお楽しみください。

Spotify
Apple Podcast
Google Podcasts
Voicy
Amazon Music
Castbox
YouTube


小掃除におすすめの、暮らしの道具

室内や玄関先の小掃除にちょうどいい「吉野桧のほうきちりとり」

→関連商品はこちら

「収納しない掃除道具」のススメ

→関連記事はこちら

天然素材で作った手肌にやさしい洗剤「植物からできたキッチンクリーナー」

→関連商品はこちら

やさしく洗えて、汚れ落ちはすっきり「傷がつきにくい抗菌銅スポンジ」

→関連商品はこちら

お便りを募集しています

番組内でご紹介させていただく、リスナーの皆さまからの投稿を募集しています。
「わたしの心地好い暮らしをつくる道具」をテーマに、お気に入りのアイテムや、しつらいの風景、意外な使いかたなど、皆さまの暮らしの中のこだわりや想いをお聞かせください。


次回「季節の手ざわり」は、12月2日(金)配信を予定しています。

「中川政七商店ラヂオ」では、別番組「工芸うんちく旅」も配信中です。
こちらは、工芸好き男子二人が日本全国の工芸産地を訪ね知った工芸のうんちくを語る番組。
次回は11月18日(金)配信予定です。

お楽しみに。

中川政七商店ラヂオのエピソード一覧はこちら