【あの人が買ったメイドインニッポン】#39 発酵デザイナー・小倉ヒラクさんが“自分で作るもの”

こんにちは。
中川政七商店ラヂオの時間です。

ゲストは引き続き、発酵デザイナーの小倉ヒラクさん。今回は「自分で作るおすすめメイドインニッポン」についてのお話です。

それでは早速、聴いてみましょう。

[小倉ヒラクさんの愛着トーク]
・自分で作るおすすめは、調味料「みりんとす」
・オーナーを務める発酵デパートメントオリジナル商品
・味醂と酢を混ぜると万能調味料になることに気付いて商品化!
・肉じゃがにも、炒飯にも、ミートソースパスタにも!
・おすすめは、ポークビンダルーに使うこと
・伝統的な食文化を現代のライフスタイルに合うようにデザイン

ラヂオは7つのプラットフォームで配信しています。
お好きなプラットフォームからお楽しみください。

Spotify
Apple Podcast
Amazon Music
Google Podcasts
Voicy
Castbox
YouTube

小倉ヒラクさんが最近買ったメイドインニッポン

小倉ヒラクさんが“自分で作るおすすめ”メイドインニッポンは、「みりんとす」でした。


ゲストプロフィール

小倉ヒラク

東京農業大学で研究生として発酵学を学んだ後、山梨県甲州市に発酵ラボをつくる。「見えない発酵菌たちのはたらきを、デザインを通して見えるようにする」ことを目指し、全国の醸造家たちと商品開発や絵本・アニメの制作、ワークショップを開催。「手前みそのうた」でグッドデザイン賞2014を受賞。著書に『発酵文化人類学』(角川文庫)、『アジア発酵紀行』(文藝春秋)等。


MCプロフィール

高倉泰

中川政七商店 ディレクター。
日本各地のつくり手との商品開発・販売・プロモーションに携わる。産地支援事業 合同展示会 大日本市を担当。
古いモノや世界の民芸品が好きで、奈良町で築150年の古民家を改築し、 妻と二人の子どもと暮らす。
山形県出身。日本酒ナビゲーター認定。風呂好き。ほとけ部主催。
最近買ってよかったものは「沖縄の抱瓶」。


番組へのご感想をお寄せください

番組をご視聴いただきありがとうございました。
番組のご感想やゲストに出演してほしい方、皆さまの暮らしの中のこだわりや想いなど、ご自由にご感想をお寄せください。
皆さまからのお便りをお待ちしております。

次回予告

次回も引き続き、発酵デザイナーの小倉ヒラクさんにお話いただきます。6/21(金)にお会いしましょう。お楽しみに。

中川政七商店ラヂオのエピソード一覧はこちら

【あの人の贈りかた】身に纏って楽しめる工芸で、自分の想いを届ける(スタッフ佐々木)

贈りもの。どんな風に、何を選んでいますか?

誕生日や何かの記念に、またふとした時に気持ちを込めて。何かを贈りたいけれど、どんな視点で何を選ぶかは意外と迷うものです。

そんな悩みの助けになればと、中川政七商店ではたらくスタッフたちに、おすすめの贈りものを聞いてみました。

今回は総務担当の佐々木星がお届けします。

日本の染織技術を身に纏って楽しめる「布ぬのTシャツ」

私は東京から奈良への移住者です。活動の拠点が奈良に移ること、そして中川政七商店への就職が決まったことを家族や友人に報告したとき、様々なリアクションがありました。

同年代の友人から返ってきたのは、「母への贈りものを選ぶところだ!」「工芸品を売ってるんだよね」などの声。

「自分のための買い物をするというより、誰かへの贈りものを選ぶためのお店」と考えていて、そしてそもそも商品やお店のイメージばかりが先行し、中川政七商店がなぜ工芸をベースにした商品を扱っているのか、どんな会社なのかを知らない人がとっても多かったのです。

だから、友人への贈りものは特に、中川政七商店のお店で選ぶようにしています。実際に商品を使ってもらうこともできるし、渡すときに会社の取り組みもちょっと話せる。ほんの少しでも、私が働く会社に興味をもってもらえたらいいなぁなんて思っています。

そんな私のとっておきの贈りものは「布ぬのTシャツ」です。Tシャツの前身頃にアップリケのようにあしらわれた日本の布は、産地や技術によってこんなにも個性がでるのかとつくづく驚かされます。
布を囲うステッチはなんだか額縁のようにも見えて、店頭で「どのTシャツが相手に合うかな」と、じっと見つめるひと時すら楽しい。とっても好きな商品シリーズのひとつです。

工芸がTシャツになったなんともキャッチーな商品は、中川政七商店初心者への贈りものにぴったり。「あのお店ってこんなにかわいい商品もあるんだね!今度じっくり見てみようかな」と言ってもらえると、一生懸命悩んだかいがあります。

<贈りもの>
中川政七商店「布ぬのTシャツ」

健康的な食生活への想いを込めて「産地のごはんのとも ふりかけ」

この春、一緒に働いていたアルバイトスタッフさんたちが大学を卒業して社会人になり、それぞれ奈良を離れていきました。

日頃から仕事のやり取りはもちろんのこと、大学生活やプライベートの話なども交わす親交の深い方々だったこともあり、彼女たちの門出には(勝手に)特別な想いを感じざるを得ませんでした。

そんな彼女たちに、これまでの勤務のお礼と卒業のお祝いをかねて贈ったのが「産地のごはんのとも ふりかけ」です。

大学卒業間近、寝食を惜しみながら卒業論文に追われている様子。そして卒業目前、入社準備や引っ越し準備で休む間もなく、慌ただしく活動していた彼女たちを見ていたので、「忙しくてもご飯は食べるんだよ」という想いを込めて贈りました。

手軽なサイズなので引っ越し準備の邪魔にもならない。
始まったばかりの社会人生活、楽しいこともそうでないこともたくさんあるかもしれませんが、「せっかく貰ったから、お米炊かなきゃ!」と、奈良での生活を思い出しながらもりもりご飯を食べてくれているとうれしいです。

余談ですが、ふりかけを贈った方からは喜びの声と一緒に「佐々木さん、もはや奈良の親戚みたいです」と言われました。

<贈りもの>
中川政七商店「産地のごはんのとも ふりかけ」

美味しいものは“わかちあってなんぼ”の哲学で「ゑびやのかりんとう」

「これ美味しかったから、あなたにもお福分け」と、お菓子をいただいたことがあります。
誕生日でも何かの記念日でもない、なんてことない日。相手にとってはただの気まぐれだったかもしれないですが、「美味しかったから」という極めてシンプルな理由に私はときめきを覚えたのです。

それからというもの、「美味しいものはわかちあってなんぼ」という哲学を密かに掲げ、美味しいと感じたものは積極的に贈るようになりました。

選ぶ基準としては、美味しいのはもちろんのこと、パッケージデザインが素敵だとなお良し。前職でデザイナーとしての仕事もしていたので、目を惹くパッケージデザインの商品についつい手が伸びてしまいます。

私のイチオシはゑびやさんのかりんとう。
三重県の言わずと知れた特産品を使った3種類からなるシリーズですが、私は圧倒的に「真珠塩」推しです。一般的な塩味のお菓子に比べて優しい風味と、甘じょっぱさが癖になります。

そしてお味もさることながら、パッケージも本当に素敵なんです‥‥。
優しい風合いのイラストは、どんな年代の方に贈っても喜ばれます。パッケージを留める紐には、三重県の伝統的工芸品「伊賀くみひも」が使用されていて、お菓子を食べた後にも伊勢の名残が手元に残るところがまたいい。

ひとりで噛みしめる「美味しい」も悪くはないですが、誰かと「美味しいね」とわかちあえる方が、より一層美味しくて楽しい気がします。
だから美味しいものに出会えると、自然と「次は誰と食べようか」なんて考えてしまうのです。

<贈りもの>
・ゑびや「かりんとう」
・販売サイト:https://ebiyashop.stores.jp/

贈りかたを紹介した人:

中川政七商店 総務担当 佐々木星

【出張版わたしの好きなもの】家事問屋 片口ごますり(ツレヅレハナコさん)

「わたしの好きなもの」の出張版。バイヤーや料理家など各分野のプロフェッショナルに、中川政七商店で販売する商品の中から好きなものと、その理由をお聞きました。
実際に使っているからこそ分かる、手ざわりと愛着を綴っていただきます。


家事問屋 片口ごますり
文筆家・料理研究家 ツレヅレハナコ

ごまが大好きで、白ごまも黒ごまもたっぷりと常備しています。

パラパラとふりかけるいりごまも良いけれど、すりたてのすりごまは風味が格別。でも、一般的な陶器のすり鉢は重くて割れやすく、すったごまが刷毛目に詰まってしまうのが難……。そんな困りごとが、「家事問屋」の「片口ごますり」に出会い解消されました。

ステンレス製なので、軽くて割れず衛生的。手のひらにすっぽり収まるサイズとデザインで、するときにも安定感があります。ポイントは表面の細かな凸凹。ごまがしっかりとすれるうえ、刷毛目がないので目詰まりゼロ!使用後は、サッと洗えばOKです。片口なので、すったごまをスムーズに移せるのもうれしいところ。

おかげで「ちょっとすりごまが欲しいな」という時にも大活躍。これまで以上にごまを食べるようになりました。オススメは温かいごはんに、かつおぶしとすりごまをたっぷり、しょうゆをチラリとかけていただく「ごまかつおめし」。これ、すりたてのごまだからこその美味なのです。

すったごまの香ばしい風味は、料理をよりおいしくしてくれる大切な仕上げ。これからも良き相棒となってくれそうです。


ツレヅレハナコ

食と酒と旅を愛する文筆家・料理研究家。著書に『まいにち酒ごはん日記』(幻冬舎)、『ツレヅレハナコのじぶん弁当』(小学館)、『ツレヅレハナコの薬味づくしおつまみ帖』(PHP)、『女ひとり、家を建てる』(河出書房)『ツレヅレハナコのおいしい名店旅行記』(世界文化社)、『47歳、ゆる晩酌はじめました』など。食や日常を綴るSNSも人気。


<掲載商品>
家事問屋 片口ごますり

【あの人が買ったメイドインニッポン】#38 発酵デザイナー・小倉ヒラクさんが“最近買ったもの”

こんにちは。
中川政七商店ラヂオの時間です。

今回からゲストは、発酵デザイナーの小倉ヒラクさん。初回は「最近買ったメイドインニッポン」についてのお話です。

それでは早速、聴いてみましょう。

[小倉ヒラクさんの愛着トーク]
・自身の不調が発酵について学ぶきっかけに
・発酵には、体の基礎体力をつくる力がある
・山梨暮らしの魅力は、「用事」の世界を知れたこと
・最近買ったのは、「小牧公平さんのワイングラス」
・持ち手がゆがんでいることで、飲みやすい
・不均一なので、口をつける場所によって飲む体験が変わる
・じつは何にでも対応する酒器は、分厚いガラスのコップ

ラヂオは7つのプラットフォームで配信しています。
お好きなプラットフォームからお楽しみください。

Spotify
Apple Podcast
Amazon Music
Google Podcasts
Voicy
Castbox
YouTube

小倉ヒラクさんが最近買ったメイドインニッポン

小倉ヒラクさんが“最近買った”メイドインニッポンは、「小牧公平さんのワイングラス」でした。


ゲストプロフィール

小倉ヒラク

東京農業大学で研究生として発酵学を学んだ後、山梨県甲州市に発酵ラボをつくる。「見えない発酵菌たちのはたらきを、デザインを通して見えるようにする」ことを目指し、全国の醸造家たちと商品開発や絵本・アニメの制作、ワークショップを開催。「手前みそのうた」でグッドデザイン賞2014を受賞。著書に『発酵文化人類学』(角川文庫)、『アジア発酵紀行』(文藝春秋)等。


MCプロフィール

高倉泰

中川政七商店 ディレクター。
日本各地のつくり手との商品開発・販売・プロモーションに携わる。産地支援事業 合同展示会 大日本市を担当。
古いモノや世界の民芸品が好きで、奈良町で築150年の古民家を改築し、 妻と二人の子どもと暮らす。
山形県出身。日本酒ナビゲーター認定。風呂好き。ほとけ部主催。
最近買ってよかったものは「沖縄の抱瓶」。


番組へのご感想をお寄せください

番組をご視聴いただきありがとうございました。
番組のご感想やゲストに出演してほしい方、皆さまの暮らしの中のこだわりや想いなど、ご自由にご感想をお寄せください。
皆さまからのお便りをお待ちしております。

次回予告

次回も引き続き、発酵デザイナーの小倉ヒラクさんにお話いただきます。6/14(金)にお会いしましょう。お楽しみに。

中川政七商店ラヂオのエピソード一覧はこちら

【心地好い暮らしを訪ねて】#1 ひとともり・長坂純明さん、知子さん

年を重ねるごとに、家の中での過ごしかたをどう心地好いものにするか、が大きな関心事になってきました。誰かの家にお邪魔することで、暮らしが少しずつアップデートされているようにも。参考に取り入れてみては濾過され、我が家だけの暮らしが積み上がっていく。そんなことが楽しくて仕方ないな、と感じています。
そこでこの連載では、奈良に住む皆さんのご自宅にお邪魔しながら、その人ならではの心地好い暮らしをお届けします。

今回訪ねたのは、奈良に拠点をおき「建築・旅・健康」を軸とした3つの事業を展開する、「ひとともり」の長坂純明さんと知子さん。純明さんは、住宅やホテルなどの設計を通して美しい日常の提案を。知子さんは、ヴィ―ガンカフェ「生姜足湯休憩所」を運営しています。私生活ではどのように心地好い暮らしを実践されているのか、お聞きしました。
心地好い暮らしを積み重ねるヒントを見つけていきたいと思います。

すこやかな空間と健康的な食事で、こころと暮らしをととのえる

朝はふたりで近所を散歩するのが日課

光や影、マテリアルが美しく好きなもので埋め尽くされている(純明さん)

僕は30年近く企業で設計の仕事をしていたんですね。大きな建物を設計していたので、効率重視のものづくり。やりがいはある反面、もう少し人が生き生きと暮らすための「生活のデザイン」をしたかった。その一つの体験の場として、12年前に家を建てました。そこから独自の暮らしやアイデンティティが出てきて、その延長で個人の仕事が始まっていった感覚です。
自宅を建てる時に考えたのは、何よりもまず小さい家にすること。この家は77㎡くらいで、家族との距離が近いんです。廊下がなくてリビングと各部屋が繋がっているので、どこにいても家族の気配を感じます。子ども達も部屋にこもらず、いつもリビングに出てきていました。娘は受験勉強もリビングでしていましたね。バリアフリーってあるじゃないですか。僕は1番のバリアは温度だと思っていて、部屋は暖かいけど廊下に出ると寒いから出たくないってあると思うんです。だから、できるだけ温度の差をなくすために廊下がない家を建てました。家には空調はひとつしかなくて、各部屋の上部の窓を開ければ空気が循環するようになっています。これが正解とも思わないけど、でも僕らの生活の真ん中には、家族との距離感が近いこの家があります。

家族が思い思いにリビングで過ごす様子

仕事で提案していることにも通じていますが、暮らしをととのえるためには、やっぱり健康的な食事とすこやかな空間が大事。食事は妻(知子さん)任せですけど…すこやかな空間には、嫌なものが見えない環境づくりが大事だと思っています。

気持ちいい光が入っているなとか、梁にきれいにカンナがかけられてツヤっとしていたりとか….僕はそんなことが気になるんですよ。今日も掃除をしながら、杉の板が古くなってきたけど、でもやっぱいいよなって思ったりして。光や影、マテリアルが美しく、好きなもので埋め尽くされていることが心地好い。細部まで気が行き届いていて、そういうところから生活の豊かさを感じられる。じつは最近初めてアートを買ったのですが、アートを一つ飾ることによって、見える景色がまた少し美しいと感じるものになりました。12年前にこの家で過ごし始めてから、まだまだなんですけど、でもちょっとずつよくなっているような感覚はあります。

習慣があることで、自分のリズムがととのっていく(知子さん)

私は、ヴィーガンカフェ「生姜足湯休憩所」を運営しています。足湯の他、ドリンクやヴィーガンスイーツの提供、オーガニック食品の販売を行うカフェです。生姜足湯は体をととのえるお手当法の一つで、子どもが小さい頃はなにかとやる習慣でした。生活の中で実践していることが地続きで仕事になっているのは、夫と同じです。

お味噌汁や発酵玄米など、発酵食品が中心の朝食。琺瑯容器の中に3種類の味噌が入っており、日によって使い分けている

健康を意識して食生活を変えていったのは、17年前。子どもの不調をきっかけにマクロビオティックを学びました。食事を変える中で少しずつ調子を崩すことが減っていきましたし、なにより気持ちの安定にも通じていると思います。人の体は食べたものでできていますよね。30代で食べたものが40代に、40代で食べたものが50代以降に出ると言われています。私達は50歳になる手前で独立したので、そこからもう1回人生が始まった感覚なんです。長く元気で楽しむために、食事でととのえることを大切にしています。食事の中でも1番大切にしているのは朝食。酵素玄米とお味噌汁、お漬物などの発酵食品を中心にいただきます。塩気のものをいただくことで、体のスイッチが入ります。これを食べちゃダメっていう制限があるわけではありませんが、マクロビオティックを学ぶ中で、調理法は色々と変えていきました。野菜の切り方や、食材を鍋に入れる順序を変える事で身体にもたらす作用が変わります。食べる順序も重要で、一口目はお味噌汁で胃を温めながら、ゆっくり体を起こしてあげます。発酵食の作り置きがあって毎朝同じように食べるだけなんですけど、それが心地好いんですよね。縛りがあるわけではなくととのっている感じ。

この1年ほど、夜寝る前に編み物をして1日をリセットしている

もともと春巻きを巻いたり餃子を包むような反復作業が好きで、この1年は寝る前に編み物もしています。編むことで気持ちが落ち着くんです。日々ストレスがたまるわけではないけど、寝る前に一日がリセットされるというか。朝食と夜の編み物と、習慣があることで、自分のリズムがととのっていくような気がします。習慣って言うと決まりのように思うかもしれませんが、そうじゃなく好きなことを選んでしている感覚で、自然と生活がととのっている気がします。

ひとともり 長坂純明、長坂知子

奈良に拠点をおく建築設計事務所。住宅や集合住宅、ホテル、事務所、店舗などの設計を通して日常を豊かにする様々な提案を行う。また、同敷地内では奈良町屋を宿泊施設に改修し、暮らすように泊まる一組限定の宿「宿一灯」や、ヴィーガンカフェ「生姜足湯休憩所」も展開している。
https://hitotomori.net/

奈良に遊びにいらした際は、お二人が運営する下記の施設にもぜひお立ち寄りください。

<生姜足湯休憩所>
https://hitotomori.net/footbath/

<宿一灯>
https://hitotomori.net/hotels/

文:上田恵理子
写真:奥山晴日

料理家・今井真実さんに聞く、梅干しづくりの愉しみとアレンジレシピ

ちょっと気が早いですが、もうすぐ梅仕事の季節。中川政七商店でも、「旬の手しごと 梅しごと」の予約が始まっています。
私自身、数年前から梅シロップを作るようになってからというもの、梅のあまい香りに包まれる梅しごとの時間が毎年の愉しみになりました。
作ってみると思っていた以上に簡単で、あっという間に終わってしまう。もう少し幅を広げて梅しごとを楽しみたい。でも、梅干しはできあがったものをスーパーで手軽に買えるし、干す場所や道具を考えるとちょっとハードルが高いかも….。そんな風に思って手を出せずにいました。

そんな折に、じつは干さなくても作れるらしいということを聞きつけて、じゃあやっぱり作ってみようかな、と再奮起。でも自分で作ると何がいいんだろう?干す場所や道具は?そんな梅干しづくりの疑問がむくむくと湧いてきたので、料理家の今井真実さんに聞いてみました。

<目次>
・梅干し作りのQ&A
・梅干しの作り方
・梅干しのアレンジレシピ①鯛と茗荷、梅のすまし汁
・梅干しのアレンジレシピ②鶏ひき肉のクリームスパゲティ

料理家の今井真実さん。2023年には、『今井真実のときめく梅しごと』など、梅しごとに特化した書籍を発行されています

梅干しを自分で作る魅力って?

「スーパーで梅干しが置いてある場所って、お漬物などのちょっと渋めのコーナーじゃないですか。その印象も相まって、昔ながらの伝統的なものっていう印象があると思うんですけど、その印象とは違って、生の梅は可愛いんですよね。旬のシーズンにしか会えないし、やってる人だけ分かる多幸感があるんです。それに魅了されて毎年作っています」

「何より、自分で作るとシンプルな材料で作れますよね。梅と塩だけの原材料の物って最近は中々売っていないんです。昔ながらのしょっぱくて酸っぱい味を味わえるのが、手作りならではの魅力だと思います」

梅の品種はどう選べばいいの?

「初心者の方は南高梅が扱いやすいと思います。間違いなく美味しく作れるのが魅力。地方によっても変わりますが、スーパーで売っているのも南高梅が多いです。
まずは気負わずスーパーで買ってみて、慣れてきたら自分の住むエリアに近い梅の産地のものを取り寄せるのもおすすめです。完熟した梅が最短で届くので、よい状態のものが届きます」

手作りの梅干しってどれくらいもつの?味は変わる?

きほんの塩分18%で漬ける様子

「塩分18%で漬けると一生もつと言われています。梅干しの塩分濃度は、きほんの18%を保っておくと失敗がありません。

味わいの変化はもちろんあって、ピークで美味しいと言われているのが漬けてから3年経ったものと言われています。1年だと柔らかくて、少し若い味がしますが、4年くらい経つと、少しずつ小さくなってかさついてきます。
私はそのまま食べるなら3年後くらいのものや比較的若いものが好きですが、その時の気分で食べ分けています。食感や味の違いを楽しめるのも、自分で作る醍醐味ですね」

ベランダが小さくて、干す場所がない場合は?

「干すのは日光を当ててあげるためなので、室内の窓際に置いても大丈夫です。室内が暑くなってしまう場合は扇風機をあててあげると、疑似的に室外のような環境を作れます。

私はザルにくっつくのを防ぐために、そのまま載せるのではなくて間にオーブンペーパーを挟んでいます。オーブンペーパーをくしゃくしゃにしてから載せることで、接地面が減って空気の通りもよくなるんです。ザルがなくても、木のまな板やお皿でも代用できますが、金属は熱をもちやすいので避けたほうがいいと思います」

「じつは干さなくても1年ぐらいは日持ちします。私も1年間そのまま漬けっぱなしのものを食べたりもしますし、次の年に改めて干したりもします。
干すことのメリットは、日持ちすることです。紫外線の殺菌効果と梅酢が乾くことによって、日持ちしやすくなります。

干すことで味もぎゅっと濃縮するんですよね。干したての皮はパリッとしていて、いくらのようにプチっと弾けるような触感になります。
干した後しばらく置いておくと、果肉から梅酢が出てきてまた皮が柔らかくなるんです。干した後、もう1回水分が戻った時に1番美味しい状態になります。でも、できたては市販では売ってないので、ぜひ味見してみていただきたいです。
干し終わっていないものとの味の違いも面白いので、干している間に毎日1つずつ食べたり、色々お試しできるのも手作りの醍醐味かなと思います」

梅干しのきほんの作り方

▪梅の下処理

梅はすばやく丁寧に洗い、よく水気を拭き、なり口のへたを爪楊枝等でそっと傷つけないように取ります。
このなり口も丁寧にキッチンペーパーをこより状にして水気を拭き取ります。

▪材料
・黄熟した梅   1kg
・粗塩(梅の18%)  180g
・焼酎(35度)    カップ4分の1

1.容器は熱湯消毒し、乾かす。下ごしらえした梅と焼酎を一緒に入れ、梅を充分に湿らせ
  る。
2.塩を1度に入れ大きく揺すって、梅に塩を絡める。
3.梅酢が上がるまでは1日に10回ほど瓶を揺する。
4.3~4日ほどで梅酢が上がってくる。浮いている梅があれば、カビの原因になるので、消  毒した菜箸などで 沈める。
5.1ヶ月ほど漬けたら、晴れの日が3日続くタイミングを見計らって、ザルにオーブンシー  トを敷き、清潔な道具で取り出した梅を並べる。

6.ときどき裏返しながら3日間干す(天気が怪しくなったら、室内の窓際に)。
 梅酢もガラス瓶に移し、ラップをして1日日光に当てて殺菌する。

〈保存場所〉冷暗所
〈保存期間〉賞味期限はなく、塩分濃度を18%で守るとずっと食べられる。

波佐見焼の保存の器 中鉢」で漬ける様子。200gほど漬けられる。密閉性がない容器は、間にラップを挟んで漬けるといいそうです

「これがきほんの作り方ですが、塩分を18%に保っていただければまず失敗しないので、ぜひ気軽に試してみてください。

私自身、少量をジップロックで漬けることも多いんです。家にある容器に合わせて少量を梅シロップに、少量を梅干しにしたり、まずはあんまり気負わずにやってみていただけたらと思います」

梅干しアレンジレシピ①鯛と茗荷、梅のすまし汁

手作りした梅干しをより楽しむために、梅干しを使ったアレンジレシピを教えていただきました。梅の酸味が爽やかで、暑くなるこれからの季節にぴったりの味わいです。

▪️材料(2人分)
・梅干し  1/2個(叩いて上に載せる)
・みょうが 1個
・鯛 サク  150g

Aだし汁   500ml
A醤油    小さじ1
A塩     小さじ1/2
Aみりん   小さじ1

1.鯛の水気をキッチンペーパーで拭き、6cm幅に切る。
  茗荷は縦半分に切ってから斜め薄切りに、梅干しはたたいておく。

2.Aを鍋に沸かし、鯛を入れ、中火で一煮立ちさせたら茗荷を入れる。
  器によそい、梅を載せる。

「おすましの出汁は、今回『焼津鰹節専門店 基本の合わせだし』を使いました。シンプルな材料で作られた出汁の香りを生かしながら、鯛の旨味と梅の酸味、ミョウガの香りを足しています。爽やかで夏にぴったりの味わいになったと思います。
こちらは冷やしても美味しいですよ。例えばそうめんのつけ汁にしたり、ご飯にかけてお茶漬けのようにして食べたりするのもおすすめです」

梅干しアレンジレシピ②鶏ひき肉のクリームスパゲティ

▪️材料(2人分)
・スパゲティ    180g
・生クリーム    200ml
・鶏ひき肉     150g
・梅干し      2個
・青紫蘇     10枚
・パスタの茹で汁 小さじ2(水1Lに塩小さじ2)

1.梅干しを荒く潰す。青紫蘇は千切りにする。

2.生クリーム1パックに鶏ひき肉120gを溶かすように混ぜて、弱めの中火に2分かける。
  パスタは1%の塩分の茹で汁で、表記時間より1分早く茹で上げる。

3.1の梅と青紫蘇をフライパンに加えて、茹で水を大さじ3入れる。
  茹で上げたパスタを和える。

「梅干しのクリームパスタは、定番のレシピでよく作ります。今回は大葉を使って、より夏らしく爽やかな香りになるように作りました。
これからの季節、冷たいものやサラッとしたものばかり食べたくなってしまいますよね。でも、温かいものに梅干しを入れて、さっぱりした味わいにすることで食べやすくなりますし、体をいたわっている満足感なども得られると思います。そういうことも食事には大切だと思うので、ぜひ活用していただければ嬉しいです」

<関連商品>
旬の手しごと 梅しごと
琺瑯の手しごと容器
波佐見焼の保存の器 中鉢
焼津鰹節専門店 基本の合わせだし
食洗機で洗えるお椀 ハンノキ
小鹿田焼の平皿

今井真実

料理家。「作った人が嬉しくなる料理を」をモットーに、雑誌、ウェブ、企業広告など、様々な媒体でレシピの制作、執筆を行う。身近な食材、意外な組み合わせなど、新しい発見を見出す個性的な料理は、何度も作りたくなる、やがて我が家の定番になると、多くの支持を受ける。

今井真実さんの書籍『今井真実のときめく梅しごと』では、今回紹介しきれていない梅しごとのレシピが多数掲載されています。
完熟梅のスパイス砂糖漬けや梅ダージリンなど、梅しごとの楽しみをどんどん広げてくれるようなレシピの数々です。ぜひあわせてご覧ください。

今井真実さんの書籍『今井真実のときめく梅しごと』では、今回紹介しきれていない梅しごとのレシピが多数掲載されています。
完熟梅のスパイス砂糖漬けや梅ダージリンなど、梅しごとの楽しみをどんどん広げてくれるようなレシピの数々です。ぜひあわせてご覧ください。

文:上田恵理子
写真:田ノ岡宏明