【季節をしつらう暮らし】節分

花やテキスタイル、年中行事にちなんだお飾り。

暮らしのなかに季節を感じる景色があるだけで、毎日にリズムが生まれ、目にしたときに少し幸せな気持ちになる気がします。

そんな景色の参考になればと、スタッフやお客さまのもとにお邪魔して、中川政七商店の季節のお飾りをインテリアに取り入れていただきました。今回は「節分」をテーマに、スタッフ・白石の自宅を訪れます。

花や郷土玩具で、四季の移ろいを子どもと楽しむ

白石:

中古のマンションをフルリノベーションした我が家。どんなテイストの家具や雑貨も合うように、壁は白一色、天井はコンクリートむき出しといったふうに、ニュートラルな印象に仕上げてもらいました。

妻は北欧テイストが好みで、ダイニングテーブルは北欧のヴィンテージ品。内装関係の仕事をしている妻の会社で作っていただいた家具もあります。テレビボードの収納部分には扉がついていたりと、基本的にはごちゃつかずすっきり見せられるような家具を選んでいますね。

撮影:白石

一方で、僕個人は日本の焼き物や郷土玩具の収集癖があり、花器やうつわに取り入れたり、各地で集めた人形を玄関に飾ったりしています。

旅行に行く前にリサーチして、好みに合うものを迎えるのが旅のひとつの楽しみです。

撮影:白石

しつらいは季節感も意識していて、床に敷くラグを夏はござっぽいものにしたり、冬は毛足の長いものに変えたりと、時季により心地好く感じる風合いのものを選んでますね。

旬の花を飾るのも好きな家しごとの一つ。

今は仕事でご一緒したことを機に出会ったオンライン花屋のLIFFTさんで、季節の花のサブスクリプションサービスをお願いしています。毎月新鮮な花が届くので、2週間ほどは飾れて。そのあとは庭の花や、近くの花屋で購入した花などを生けています。

花瓶はどちらも小鹿田焼のもの。背の低いものは小鹿田焼のピッチャーを花器として使用中

子どもがいるので端午や桃の節句だったりクリスマスだったり、子どもに関連する年中行事も積極的にしつらいに取り入れます。兜飾りやお雛様は悩んだ末に、一刀彫のものにしました。

他にも、玄関に飾っている郷土玩具も干支にまつわるものを目立つ場所に出して、ちょっとしたリズムを楽しんでいます。

鬼の張子面飾り 赤鬼・青鬼

今回飾った節分のお飾りは「僕の家にはちょっとかわいすぎるかな?」と思っていたのですが、もともとある郷土玩具のテイストが幅広いのもあって、違和感なくなじんで飾れました。

あと、子どもがすごく興味を示してくれて。行事の話を自然とするきっかけにもなりました。「紙でできているから大事に触ってね」と、ものを扱う心得も覚えてくれたように思います。

豆まき置き飾り 

しつらったお飾り

豆まき置き飾り 
鬼の張子面飾り 赤鬼・青鬼

今回の取材先:

中川政七商店 編集担当 白石雄太

ものづくりの様子を届ける読みものや、産地の作り手が集う展示会のWEBサイト運営などを担当。自宅には旅先で求めた多数の郷土玩具や縁起物をコレクションしている。

文:谷尻純子
写真:中村ナリコ

【四季折々の麻】1月:軽やかであたたかく、マットな質感「ヘンプ麻と綿」

「四季折々の麻」をコンセプトに、暮らしに寄り添う麻の衣を毎月展開している中川政七商店。

麻といえば、夏のイメージ?いえいえ、実は冬のコートに春のワンピースにと、通年楽しめる素材なんです。

麻好きの人にもビギナーの人にもおすすめしたい、進化を遂げる麻の魅力とは。毎月、四季折々のアイテムとともにご紹介します。

軽やかであたたかく、マットな質感「ヘンプ麻と綿」

1月は「初春」。心新たに年を迎える月に、清々しく着たい麻の服をご用意しました。

気持ちとしては春を迎えたい時期ですが、朝晩は空気がくっきりと冷え、まだまだ冬のさなか。生地感は春を意識しながらも、冬の寒さからあたたかく守り、次の季節まで着られる衣服をご提案できたらと思い仕立てたシリーズです。

麻生地といえば艶のあるシャリ感のあるものを想像される方が多いと思うのですが、今回はヘンプと綿を組み合わせることでマット感のある生地に。ひんやりせず、冬らしい質感が特徴です。

ラインアップは「中綿ベスト」と「ギャザースカート」の2種類。特にベストは、コートの下にインナーダウンのようにしても着られる、気温の変化に対応しやすいアイテムです。厚手で重い衣服の多くなるこの時期、着心地も見た目も軽やかなアイテムを楽しんでいただけたらと思います。

【1月】ヘンプ麻と綿シリーズ:

ヘンプ麻と綿 中綿ベスト
ヘンプ麻と綿 ギャザースカート

今月の「麻」生地

今回用いたのは、麻の一つであるヘンプと、綿を紡績した糸を経緯(たてよこ)に使い、密度を詰めて織り上げたヘンプコットン生地。

ヘンプの繊維はリネンなどに比べより多孔構造のため、繊維に空気の層ができることで冬にあたたかく着られます。また保温性だけでなく調湿性や調温性もあり、生地が呼吸をしながら快適さを保っているような素材です。

マットな質感と上品なネップ感(※麻繊維の太さのゆらぎによる、ぽこぽことした生地感)のある、ヘンプならではの表情を持つ生地に仕上がりました。

しめ縄にも使われる硬い繊維で、もともとはがっしりとした生地が作られることが多かったヘンプですが、最近では紡績技術の進歩でより細く糸を紡げるようになってきました。

ただ、ヘンプは繊維の長さが短いため、織り上げるなかで切れやすいという難しさがあり、特にやわらかな服地を織るのはかなりの工夫や技術が必要。今回の生地も丁寧にゆっくりと織り上げられた貴重な織物です。

ご協力をいただいたのは兵庫県の播州織の産元さん。「難易度の高い織物にチャレンジしてやろう!」という、気概のある作り手さんたちに携わっていただきました。

少し細かいお話になるのですが、例えば経(たて)糸を織る際に、糸をピンと張れるよう糸に糊をつける「糊付け」の工程も、こだわったひとつです。

通常の織物では糸巻きに糸を巻いたままの状態で糊にドボンとつけるのですが、より丁寧にむらなく均等に糊付けをするため、一本ずつ糊のなかをくぐらせていく「一本糊」という糊付けをされています。

さらには糸が切れないよう、織りの際は糸に含ませる油分を微妙に調整し、機械といえど目を離さずにゆっくりとしたスピードで織り上げてくださいました。

糸づくりから糊付け、織りまで、それぞれの職人さんが工夫を凝らして協力しあい、作られた生地です。

お手入れのポイント

ご家庭でお洗濯が可能ですが、ベストは手洗いで優しく押し洗いしていただければと思います。スカートはネットに入れて、洗濯機でお洗濯していただけます。

形を整えて干す際は、ベストはやさしくシワを伸ばして。スカートはシワを伸ばして干すか、お好みで少し縦に絞り、引っ張ってシワをつけることで、麻ならではのシワ感を楽しんでいただくのもおすすめです。

長く着られる2アイテム

春先まで活躍するベストと、オールシーズンの着用が可能なスカートの2アイテムをご用意しました。色展開は中綿ベストが「グレー」と「チャコール」の2色。スカートは「オフ白」「グレー」「チャコール」の3色展開で、いずれも長く着られる定番色とマットな質感がポイントです。

中綿ベストは、キルティングのようにステッチを表に出さず、中に板状の綿を入れたもの。スポーティな印象ではなく、ふんわりナチュラルに着られる綿入りのベストになっています。

前にはクルミスナップが一つ付いており、軽く羽織る感じで着られます。タートルネックニットの上や、シャツブラウスに重ね着してお楽しみください。もこもことした生地感ではないため、例えばお花見の時期ような、春先の肌寒い日も着ていただけたらと思い仕立てました。

ギャザースカートはたっぷり生地を使ったロング丈。冬の重めのニットやコートと合わせても、春の到来を感じられるような軽さに仕上げています。

裏地が付いているので透けの心配もなく、ふんわりとしたシルエットのため、寒い日は下にタイツやスパッツを着こむこともできます。年中着ていただける、着回しの定番となるアイテムです。

なお、今回のシリーズではスカートのみ「オフ白」を展開。生地を白色にするための晒す工程ではあえて白度を控えめにし、ややクリームがかった色にしています。あたたかみのある白は冬の麻衣服にぴったりで、晒しきっていないためよく見ると麻の繊維感があるのもお楽しみいただきたい点のひとつです。

素材自体が呼吸をしているような、気持ちの良さがある麻のお洋服。たくさん着ると風合いが育っていくので、ぜひ着まわしながら愛用いただけると嬉しいです。

「中川政七商店の麻」シリーズ:

江戸時代に麻の商いからはじまり、300余年、麻とともに歩んできた中川政七商店。私たちだからこそ伝えられる麻の魅力を届けたいと、麻の魅力を活かして作るアパレルシリーズ「中川政七商店の麻」を展開しています。本記事ではその中でも、「四季折々の麻」をコンセプトに、毎月、その時季にぴったりな素材を選んで展開している洋服をご紹介します。

ご紹介した人:

中川政七商店 デザイナー 杉浦葉子

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【わたしの産地旅】織物のものづくりが息づく町、桐生へ

中川政七商店の福利厚生制度に2024年度より加わった「産地視察支援金制度」。こちらはスタッフ一人ひとりが日本各地の産地を深く知り、工芸の奥深さを体感できる機会を持つことが、ひいてはビジョンの「日本の工芸を元気にする!」につながると考えはじまったものです。

日本のものづくりへの興味から、日頃からプライベートでも産地へ足を運ぶスタッフが多い当社。この制度を利用しながら産地を訪れたスタッフの声をお届けします。



旅の終わりの夕暮れ時、わたしは桐生駅のベンチで地元の高校生が奏でるピアノの音を聴きながら、帰りの電車を待っていました。手には桐生発祥、シロフジのアイスまんじゅう。カチカチに凍ったまんじゅうをゆっくり溶かしながら、この旅で出会った風景や人々を思い返し、じんわりと余韻に浸ります。

昔懐かしいパッケージに惹かれて。優しいミルクとしっかり餡子が最高です。

今回の旅に出るにあたり、会社の福利厚生のひとつである「産地視察支援金」に背中を押してもらいました。

中川政七商店のビジョンは「日本の工芸を元気にする!」こと。その実現の一歩として、店舗や本社で働くスタッフが実際に産地を訪れ、工芸が生まれる背景や職人さんたちの想いに触れるための支援制度が設けられています。

旅するなかで感じたこと、学んだことをもとに、お客さまや一緒に働く仲間にその魅力を伝えていく。それが日本の工芸を広め、元気にする力になるとの考えから誕生した制度です。

春に入社してはじめての産地訪問の旅。わたしが行き先に桐生を選んだ理由は、以前所属していた店舗でおこなった、同地のアクセサリーブランド「Triple O(トリプル・オゥ)」の企画展の経験です。

形も長さもさまざまな色とりどりのアクセサリーに胸が躍り、販売する商品に加えて制作風景や過程にも心惹かれました。「水に溶ける布に刺繍するってどういうこと?」「この立体的で繊細な刺繍がミシンでつくられているってほんとう?」と好奇心が湧き上がり、いつか必ず桐生の地を訪れるんだと心に決めたのです。

企画展で目にした、Triple Oのいろとりどりのアクセサリーたち。

いざ、出発の日。前日までの冷え込みが嘘のように、秋らしい爽やかな青空とあたたかな日差しに恵まれました。初めての土地を訪れる少しの緊張も、この絶好の天気が背中を押してくれるように感じます。

桐生駅に到着。構内には、自転車を押しながら歩く高校生がたくさん。

まずは、桐生のまちを探索。駅から20分ほど歩いて、重要伝統的建造物群保存地区に向かいます。通学中の学生とすれ違いながら、古き良き街並みで朝さんぽ。桐生天満宮にも立ち寄り、今回の旅が実りある素敵な思い出になるよう、お祈りしてきました。

江戸時代後期から昭和初期までのさまざまな建造物が残るエリア。なんだかわくわくする路地が。
桐生天満宮にて、よりよい旅になるようお祈り。

駅に戻り、今回の旅のお供となる自転車をレンタルします(なんと無料‥‥!)。観光センターの方の、「どこから来たの?」「行き先はもう決めた?」という優しいサポートを受けつつ、出発の準備は万端!期待に胸を膨らませながら、自転車のペダルを踏み込みました。

最初に訪れたのは、ジャカード織を手がける須裁(すさい)株式会社。ガシャンガシャンと規則的に動く織機の音に包まれながら、複雑な織物がつくられていく瞬間を見学させていただきました。

絶え間なく動く織機の音が響く工房。
音の正体は、紋紙と呼ばれる穴の空いた紙。織機の動きに合わせて送られ、模様ができる。

緊張していたわたしをとても朗らかな雰囲気で迎えてくださった、デザイナーの坂入さんと社長の須永さん。些細な疑問にも気さくに答えてくださいます。

お話を伺うなかで感じたのは、織物づくりに対する強い想いと誇り。“定番”はなく、常に新しいものと向き合い、付加価値の高い織物を生み出していること。それは簡単なことではないけれど、そこにこそものづくりの面白さがある。その言葉が、織り機の音に重なるように胸に残っています。

隣接するショップでは、まるで桃のような繊細な色使いの布でつくられたバッグにひとめ惚れ。聞くと、ピーチという名前の生地だそう(やっぱり!)。ちょっとそこまで、にぴったりなサイズ感もたまらなく、旅の記念に購入して工房をあとにしました。

ショップの窓に飾られたジャガード織の布。金魚がモチーフだそうで、こちらもとっても素敵!

続いて訪れた「笠盛パーク」では、株式会社笠盛が手がける刺繍のアクセサリーブランド「Triple O(トリプル・オゥ)」のアクセサリーがどのように生まれたのかを知りました。

迎えてくださったのは、広報担当の野村さん。まず会社の歴史を学び、刺繍の老舗である同社がどのように発展し、変化してきたのかを伺います。その後はいよいよ、ずっと楽しみにしていた工房の見学へ。目の前には、稼働中の4台のミシンがリズムを刻む、どこか心落ち着く作業スペースが広がります。

繊細なアクセサリーが少しずつ形づくられていく様子に目を奪われました。土台の布は水に溶ける素材の不織布でできており、その日の天気や湿度、作るアクセサリーの種類などに合わせ、ひとつのミシンにつきひとりの職人さんが貼り具合などを調整しているそうです(同じ糸でも、染める色によって丈夫さや縫いやすさが異なるのだとか)。

ミシンが並ぶ工房へ。ひとつのミシンに10の頭がついている。
中川政七商店のお店でも取り扱う、シルクリネンのネックレスができていくところ。至る所に職人さんのメモが。
土台の布をお湯で溶かす体験もさせていただきました。わたあめのように一瞬で溶ける姿にびっくり!

職人さんが重ねてきた経験と感覚を頼りに、一つひとつ丁寧に生まれていくアクセサリー。そこに込められた技術や想いがきらきら光っているように感じます。もっと多くの人にこの小さな輝きを知ってほしい、届けたい。そんな想いがふつふつと沸いてきました。

次に訪れたのは、織物参考館 紫(ゆかり)。「西の西陣、東の桐生」と呼ばれる織都・桐生は、奈良時代から絹織物の産地として知られていました。ここでは、桐生の織物がたどってきた、1300年もの長い歴史に触れられます。展示された古い織機や糸車を見学。3種類の織機を使った体験もさせていただき、積み重ねられた人々の工夫や知恵が織物づくりの今に繋がっているのだと感じました。

織機や糸車など、たくさんの織物に関する資料が並ぶ。
織物体験。紐を引くとシャトルが動く仕組みに、便利‥‥!と感動。

そしていよいよ、楽しみにしていた藍染体験!

はじめての染色に胸が高鳴ります。どのように結ぶとどんな模様になるかを教えていただきながら、デザインを決定。染料に布を浸して、真っ白な布が青緑に変化してく様子を見ながらじっくり揉み込みます。

藍の発酵した匂いを感じながら、うまくできますようにと祈りを込めて揉み込みます。

そろそろ‥‥と水ですすぐと、空気に触れて酸化することで綺麗な藍色に。出来上がるまでどんな仕上がりになるかわからない、予測できない楽しさにわくわくが止まりません。藍染の発酵した香りや、手先がほんのり藍色に染まる感覚。五感を使って全身でものづくりを感じることができ、大満足でした。

染め上がったネルシャツとハンカチたち。とってもいい感じ!

途中、サポートスタッフの方がかけてくださった「お気に入りだけど黄ばんでしまったシャツも、藍に染めるとまた同じだけ永く着られるね」という言葉が忘れられません。手仕事ならではの表情を持つハンカチとネルシャツは、いつまでも心に残り続ける、旅の思い出そのものです。

桐生のまちを歩いていると、ぽつぽつと現れるのこぎり屋根の建物に目を惹かれます。訪れる先々の工房の方に聞くと、その独特の形状には、地元の織物産業を支えるための知恵がぎゅっと詰まっていました。

北側に設けられた窓からやわらかな自然光を取り入れることで、一日を通して作業場の明るさを一定に保つことができます。その光が織りなす空間は、職人さんたちの手元を照らし、繊細な作業を支えてきたそうです。

知恵が詰まったジグザグの屋根。織都・桐生ならではの風景です。
ジグザグ屋根を中から見るとこんな感じ。採光部は北を向いているので、やわらかな光が差し込みます。

さらには、この屋根の形状がガシャンガシャンと響く機械の音を拡散させ、騒音を抑える役割も果たしているそう。長く織物を生み出してきた背景にぎゅっと詰まった、人々の知恵と工夫。古くから続くこのまちの風景は、時代を超えて今もなお、工芸と暮らしを静かに見守り続けています。

旅に出ると、食べたいものが渋滞してしまうのがわたしの悩み(1週間分食べ貯めることができたらと、何度思ったことか‥‥)。今回もその例に漏れず、胃袋が許す限りたくさんの魅力的な食を堪能しました。

お昼に向かったのは、地元名物ひもかわうどんの名店・藤屋本店。お店の方のおすすめ、鴨せいろとカレーせいろをいただきました。運ばれてきた瞬間から、平たく幅のある麺に期待が高まります。つけ汁とよく絡み、もちもち食感だけど重さのないひもかわうどん。あっという間にツルッと完食してしまいました。

カレーせいろ。写真を見返すだけでお腹が鳴ってしまいそう。

工房をめぐる合間には、焼きまんじゅうを食べてひと休み。注文後に焼いてくださるまんじゅうから漂う甘辛い味噌ダレの香りの、なんとたまらないことか。秋の心地よい風を浴びながら、外を眺めてぼんやり待ちます。近くの公園で熱々を頬張るのは、これ以上ない至福の時間でした。

できたてアツアツの焼きまんじゅう。甘辛いタレがたまりません‥‥!

工房見学や体験を終えた昼下がり、まちをうろうろしているときに見つけたのは「食と器ming」という名のお店。足つきの器に注がれたあたたかいミルクチャイや、生姜とさつまいものお団子が浮かぶ甘いスープ、湯圓(タンイェン)で心も身体もほっと一息。ショップスペースで手仕事を感じられる器や暮らしの道具に見惚れながら、ゆったり旅を振り返りました。

旅も終盤。赤城山や吾妻山などの山々に囲まれ、渡良瀬川や桐生川などの清流が流れる、自然豊かなまち、桐生。そんなまち全体を見下ろせると聞き、水道山公園へ向かいました。思った以上に険しく急な階段は、一歩進むたびに息があがり、背中に汗が滲みます。

軽い山登りのような道中、呼吸を整えるために立ち止まりふと見上げると、木々の間から差し込む光が揺れていました。ラストスパート!と気合を入れ、息切れしながら登り切り、辿り着いたその先に見えたのは夕暮れに染まる桐生のまち。ベンチに腰掛けると冷たい風が心地よく、いつまでもぼんやり眺めていたくなる景色でした。

水道山公園から、桐生のまちを一望。

公園内では幅広い年代の人が思い思いに過ごしており、とても落ち着くゆったりとした時間が流れています。日が暮れてしまう前にと少し早歩きで下る薄暗い帰り道、すれ違う方々が「こんにちは」と挨拶をしてくれました。その穏やかなやりとりが、静かに暮れていく風景と相まって、心にじんわり染み渡ります。わたしにとっての非日常と、桐生の地で暮らす人々の日常が交差するような、なんとも特別な時間を、じっと味わいました。

訪れる先々で出会ったたくさんの魅力を持ち帰るため、お土産選びにも熱が入ります。渋谷店の皆さんへは「からっ風カリン」を。紙袋を見た地元の方々に「ああそれいいね、美味しいよ」とお墨付きをいただいた地元の銘菓です(スタッフからも「人生で食べた中で一番美味しいかりんとう饅頭だった!」と大好評!)。

からっ風カリン。お店の方がリボンを結んでくださいました。

桐生の名産「花ぱん」は、友人に。桐生天満宮の梅紋をモチーフにした花の形の、素朴な甘さのおやつです。その歴史はなんと100年以上続いているのだとか!駅や土産店でいろいろな種類を見かけましたが、今回は小松屋で購入しました(ここでもお店の方が気さくに桐生のおすすめを教えてくださいました)。どちらも可愛らしい包装紙に包まれていて、紙もの好きのわたしはときめきが止まりません。

「小松屋」の文字が入った包装紙が素敵。

桐生で出会う人々は、誰もが笑顔であたたかく迎えてくれました。その土地の空気とともに、心まで包み込まれるような感覚。訪れた工房やお店で触れたすべてのものから、その地に根差し生きる人々の手のぬくもりと、土地が紡いできた暮らしの息づかいを感じることができました。

「百聞は一見にしかず」とはまさにこのこと。実際に見て、聞いて、嗅いで、触れて、味わって、五感を通して得たこの経験はわたしのなかの工芸への意識を大きく変えました。

その土地の暮らしや食べ物に触れ、実際にその地で暮らす人や、工芸を生み出す人と言葉を交わすこと。日々お店で取り扱っている工芸品には、背景にある想いや歴史がぎゅっと詰まっているんだと改めて強く認識し、奥行きが生まれて世界が広がるのを感じました。

「いろいろな場所に足を運んで、全国各地の暮らしや文化をもっと知りたい!」

桐生を旅してやりたかったことを思い出し、自分が生まれて育った国には、まだまだ知らないけれど、こんなにも面白くて魅力的なことがたくさんあるんだ!と嬉しくなりました。

まだまだ行ってみたい産地は尽きることがありませんし、これから働いていくなかでもどんどん増えていくだろう、と楽しい予感がしています。

旅を経て得た感動や気づきを、お客さまや一緒に働く仲間に伝えていくことで、日本の工芸を元気にするお手伝いが少しでもできたらなんて素敵なことだろう。旅から広がる新たな目標を胸に、帰りの電車に乗り込みました。


【産地視察支援金制度のご紹介】

中川政七商店ではスタッフが業務時間外に産地視察へ行く場合に、旅費交通費の一部を支給しています。日本各地の工芸品を毎日見ていると”もっと産地を知りたい”想いが湧いてくるという声が多く、2024年度よりこの制度を導入しました。日本各地の産地を深く知り、工芸の奥深さを体感できる貴重な機会を支援する制度です。

文:中川政七商店 渋谷店 山本結衣

【あの人の贈りかた】天然の優しい香りが、暮らしに寄り添う

贈りもの。どんな風に、何を選んでいますか?

誕生日や何かの記念に、またふとした時に気持ちを込めて。何かを贈りたいけれど、どんな視点で何を選ぶかは意外と迷うものです。

そんな悩みの助けになればと、中川政七商店ではたらくスタッフたちに、おすすめの贈りものを聞いてみました。

今回はEC課の岩井がお届けします。

香りに癒され、自分をいたわる時間に「植物由来の全身用オイル」

相手の暮らしにそっと、寄り添うようなものを贈りたい。
毎日がちょっと明るくなったり、ほんのり心があたたかくなるような。
贈りものは、いつもそんな気持ちで選んでいます。

20代後半にさしかかり、友人と集まった際には「肌質が変わってきた」という会話が増えました。私も含め、乾燥に悩んでいるという声が本当に多いのです。

そんな人へ贈りものをする機会があれば、迷わず選ぶのが「植物由来の全身用オイル」。
私自身も1年以上愛用しているスキンケアです。

植物の天然成分からできたこのオイル。肌に塗ると、べたつかないのにしっかりと保湿をしてくれるので、季節や肌の状態を問わず使いやすいなと感じています。

なにより人に贈りたくなる一番の理由は、「香りがいい」ということ。優しく漂うユズの香りに包まれて、使うたびにとても癒されるんです。

社会人になりたての頃の目まぐるしさは少し落ち着いたけれど、次のステップを考え出したり、家庭を持つ人が増えたりと、それぞれに忙しい日々を送っている友人たち。

一日のどこかで自分をいたわる時間として、優しい香りと使い心地に癒されてくれたらいいな、そんな気持ちとともに贈っています。

また「全身用オイル」という名の通り、顔や体、髪まで、全身どこにでも使えるので、コスメを贈る時に感じがちな「肌に合わなかったらどうしよう」という不安も少なく済みます。

年齢や肌質が大きく異なる私の母や夫も、乾燥が気になる箇所に使っているので、人を選びにくい低刺激な素材でできていることを実感しています。

気に入って使ってくれていると知らせを受けた際には、同シリーズの化粧水とクリームをおすすめしたり、お試しセットを次の贈りものにしても喜んでもらえます。

<贈りもの>
・中川政七商店「植物由来の全身用オイル」

親子ともに楽しめる天然木のおもちゃ「おふろでちゃぷちゃぷ」

中川政七商店へ入社する前から「素敵だな、いつか人に贈りたいな」と思っていた、山のくじら舎の「おふろでちゃぷちゃぷ」。

高知県産のヒノキでつくられたおもちゃで、その名の通りお風呂に浮かべて遊んだり、積み木としてお風呂以外でも使ってもらえます。

友人に2人目の子が生まれた時、「下の子には少し早いけど、もう少し大きくなったらお兄ちゃんと一緒に遊んでね」とプレゼントしました。

いきものに興味津々なお年頃のお兄ちゃんも、まだお風呂で遊ぶことはできない弟くんも、にっこり笑顔の海の仲間たちを気に入ってくれたよう。友人には、「2人でちゃぷちゃぷデビューするのが待ち遠しい!」と、とても喜んでもらえました。

さらに、思いがけず嬉しかったのが「お風呂に入れたらヒノキの香りがとっても良くて!毎日入浴剤代わりにして癒されてるよ〜」と言ってもらえたこと。

なんと。あの愛らしい生きものたちは、大人の癒しにもなってくれているのか、と感動したことを覚えています。

以来、お子さんが喜んでくれるのはもちろん、育児を頑張るお母さんとお父さんにとっても、お風呂時間がちょっとした息抜きになればいいな、という想いを込めて贈るようになりました。

おもちゃなど、直接赤ちゃんの肌や口に触れるものを贈る際には慎重になることも多いですが、こちらは天然木を一つひとつ人の手で磨き上げているので、すべすべの手ざわり。自信を持って贈れますし、安心して遊んでもらえます。

また、ナチュラルな見た目で相手の好みやインテリアの雰囲気を選ばないところも、贈る側としてはありがたいポイントです。

<贈りもの>
・山のくじら舎「山のくじら舎 おふろでちゃぷちゃぷ」

奈良の醤油蔵がつくる、ちょっと珍しい調味料「三つ揃え(火入れセット)」

相手の好みに迷ったり、気軽になにか渡したい時には、お菓子や調味料などの食べものが定番です。

よくお世話になっているのが、奈良県・田原本町の醸造所、マルト醤油さんの「もろみパウダー」。

醤油を絞った後に残った「もろみ」を乾燥させてパウダー状にしたもので、お料理のアクセントとして活躍します。醤油の風味がぎゅっと凝縮されていて、お醤油や粉チーズ代わりに使ったり、お菓子をつくるときに生地に混ぜたり、なんならそのまま舐めても美味しいんです!

基本の「もろみパウダー」と、そこに塩を混ぜた調味料「もろみ塩」、そして風味にこだわった「火入れ醤油」の3種入りのギフトセットが、常温で管理できることもあり、贈りものとして重宝しています。(お醤油もとても美味しいんですよ!)

調味料なら好き嫌いの心配も少なく、毎日の食事で使いやすい。
特にパウダーは貰ったことのないギフトとして、楽しく使ってもらえることが多いです。

製造元のマルト醤油さんは、奈良市内から車で40分ほどの場所に蔵を構える作り手さん。醤油蔵を改装してレストランやホテルも営業されています。手渡す際に伝えると、遊びにいこうかなと興味を持ってもらえることが多く、話に花が咲くことも。

私の住まいは奈良市から少し離れているので、多くの人が「奈良」と聞いて思い描くイメージの場所とは少し異なるかもしれません。

けれど、豊かな自然がすぐ近くにあったり、醤油蔵や酒蔵など地域のものづくりが盛んだったりと、市外ならではの魅力もたくさんあります。

こんな素敵な文化が根付く街で暮らしているんですよ、という、密やかな想いを込めた贈りものも、楽しいものです。

<贈りもの>
・マルト醤油 「三つ揃え(火入れセット)」

贈りかたを紹介した人:

中川政七商店 EC課 岩井皐月

【わたしの好きなもの】スタッフおすすめ「年末年始のご挨拶」編

ついこの間、年が明けたばかりの気持ちでいたのに、あっという間に2024年も残り1か月となりました。私はというと、友人から年末の都合について確認のメールが来たことを機に、あわてて年末年始の予定を立て始めたところです。

地元に帰省して親戚や友人と集まったり、改まった場でご挨拶をしたりと、何かと人と会う機会の多い年末年始。気を遣わせない程度の手土産が何かあれば心強いな‥‥と思い、社内のスタッフたちに、「いつも利用しているもの」「今年利用予定のもの」を聞いてみました。

普段から贈りもの上手の、中川政七商店のスタッフたち。私も聞きながら「真似してみよう!」と思う贈りかたがたくさんありました。ぜひ、年末年始のご挨拶の参考にしていただけると嬉しいです。

※「お正月を愉しむ」ページ:「干支づくし編」「お飾り編」「お年賀特集」

「干支ふきん 巳」

毎年お正月シーズンに大人気の「ふきん」。色やサイズ、厚さなどたくさん種類があるなかで、こちらは干支の刺繍が入った正方形の小さなふきんです。
ヘビをモチーフにした郷土玩具の絵柄は、手にとるたびに和むやさしい表情。うつわや台ふき、おてふきなどにもおすすめです。

詳細はこちら:「干支ふきん 巳」

スタッフのコメント

「定番中の定番。特に年末年始にはせっかくなので干支の柄を。毎年どんな柄が登場するかが楽しみのひとつです」

「白色を選び、めでたもなか(後ほど紹介)と合わせて紅白に。干支のモチーフは縁起がよくてお年賀にぴったりです」

「かや織ふきん 巳」

干支ふきんと同じく、奈良の工芸「かや織」の生地を用いたふきん。干支ふきんより少し厚手で、サイズも大きめ。中川政七商店の定番ふきんのひとつです。

かや織ふきんは一年を通じてさまざまな柄をご提案していますが、このシーズンになると登場するのが干支の柄。こちらには、全国各地の郷土玩具に着想を得た干支のモチーフと、縁起物である松竹梅を散りばめた絵柄を描いています。

詳細はこちら:「かや織ふきん 巳」

スタッフのコメント

「毎年、夫の実家でおせちを振る舞っていただくので、お礼にとお渡ししています。いつもかわいいと喜ばれます」

「一緒に働くスタッフさんへ、毎年かや織ふきんをプレゼントしています。感謝の気持ちと、新しいふきんで気持ちも新たに、心地好く新年を迎えていただきたい気持ちを添えてお渡ししています」

「招福干支みくじ 巳」

新年の運試しにと、会話に花が咲く「干支みくじ」。こちらも中川政七商店で毎年人気のシリーズです。にっこりと、前を向き進んでいくヘビの姿をイメージし、躍動感を表現した陶製の干支のなかに、小さく折りたたんだおみくじが入っています。

詳細はこちら:「招福干支みくじ 巳」

スタッフのコメント

「お正月のしつらいに無頓着な母ですが、ささやかなお正月感の出る干支みくじは気に入って飾ってくれます。入社してから毎年贈っていたら、渡すことが年末の恒例行事になりました」

「干支の勝わら細工」

干支のお飾りをお渡しするというスタッフも。こちらは「勝藁(かちわら)」と呼ばれる、嵐が来ても倒れにくい縁起物の藁を用いて、来年の干支・ヘビを表現したお飾りです。

詳細はこちら:「干支の勝わら細工」

スタッフのコメント

「一番の推しポイントは、しめ縄のような雰囲気がありながら、室内で楽しめるところ。狭い空間でも正月花や鏡餅飾りと合わせて、飾りものコーナーを作りやすいコンパクトさが絶妙です。

始末のしやすさも好みで、パーツをあれこれ分別しなくても地域のどんど焼きや燃えるゴミに出せるところが、現代の生活に合っているなぁと思います。お正月飾りや干支飾りは住まいによってはハードルが高いですが、これなら飾りやすいので親しい仲の友人に贈っています」

「めでたもなか」

趣味を問わずに渡しやすい、食べものを選ぶスタッフも多くいました。こちらは自分で餡をはさんで食べる手作りタイプのもなか。おめでたい縁起物の鯛、梅、瓢箪、招き猫をかたどっています。

詳細はこちら:「めでたもなか」

スタッフのコメント

「義実家へご挨拶の際に持っていこうと思っています。まだ結婚して日が浅く、相手の好みが分からないため、間違いなく使ってもらえたり楽しんでもらえたりするものをと、選びました。
お正月に渡したくなるようなおめでたいパッケージと、ご自身のタイミングで楽しんでいただけると思うので渡しやすいです」

「そばチョコぼうろ」

そば猪口にちなんだチョコ味のそばぼうろ。4つのパッケージにはそれぞれ、愛らしい鹿や犬などの動物と一緒に、お花や文様が描かれています。

詳細はこちら:「そばチョコぼうろ」
※オンラインショップでは4柄セットで販売。直営店では1個からご購入いただけます。

スタッフのコメント

「学生時代の友人と久々に会う際は、お菓子を手土産にするのが定番です。今年は新作のそばチョコぼうろを選ぶつもり。集まる友人たちのイメージに合わせてパッケージの柄を選び、その場で柄を見せ合って愉しみたいです」

「奈良産富有柿 黒糖きな粉」

あえて干支やお正月のモチーフから離れ、ほっと休まる時間のお供を選ぶというスタッフも。奈良県産の富有柿を乾燥させ、黒糖ときな粉を合わせたおやつは、お茶請けにぴったりです。

詳細はこちら:「奈良産富有柿 黒糖きな粉」

スタッフのコメント

「お正月は豪華でボリュームのある食事を食べることが多いので、素朴でやさしい味わいのお菓子でほっこりしてもらいたくてプレゼントしています」

「産地のごはん 冷めてもおいしい炊き込みご飯の素」

華やかな食事の時間にもぴったりの「炊き込みご飯の素」。ひとつあれば、忙しい年末年始の助けにもなりそうです。

詳細はこちら:「産地のごはん 冷めてもおいしい炊き込みご飯の素」

スタッフのコメント

「入れて普通に炊くだけで炊き込みご飯ができる優れもの。年末年始は家族も集まるし、ちょっと華やかなごはんを食べたいけど、他の準備もあるし大変‥‥という方に喜ばれます。1つで2合分なので、家族が多い方には2種類×各3個ずつくらいをセットにして贈るとちょうどよいです」



以上、【わたしの好きなもの】の「年末年始のご挨拶」編をお届けしました。
お渡しする相手によりお好みも異なりますが、ぴったりのものを見つける機会になれば幸いです。

今回ご紹介したほかにも現在公開中の「お年賀特集」ページや店頭では、年末のご挨拶やお年賀におすすめの品をたくさんご用意していますので、ぜひご覧ください。

2025年が皆さまにとって、よい年となりますように。

文:谷尻純子

【四季折々の麻】12月:あたたかいのに軽く、やわらかな生地感「麻とウールツイード」

「四季折々の麻」をコンセプトに、暮らしに寄り添う麻の衣を毎月展開している中川政七商店。

麻といえば、夏のイメージ?いえいえ、実は冬のコートに春のワンピースにと、通年楽しめる素材なんです。

麻好きの人にもビギナーの人にもおすすめしたい、進化を遂げる麻の魅力とは。毎月、四季折々のアイテムとともにご紹介します。

※この記事は2024年11月1日公開の記事を再編集して掲載しました。

あたたかいのに軽く、やわらかな生地感「麻とウールツイード」

12月の麻は、11月から継続の「麻とウールツイード」シリーズをお届けします。

寒さが深まり、いよいよ本格的に冬を感じる12月。ふんわりとした風合いの服が恋しい時季に着ていただける服を、麻とウールの糸を合わせて織り上げたツイード生地で仕立てました。両者ともに天然素材で相性も良く、ウールの保温性に麻の吸湿発散性が加わることで、あたたかなのに蒸れにくく、心地好く着られます。重い衣類が多い時期に、ふんわりと軽やかな着心地もおすすめしたいポイントです。

ラインアップは4種類。気温の差が激しい時期に心強い「かぶりベスト」や、ラクに履けつつ形のきれいな「テーパードパンツ」と「ワイドパンツ」、また冬の着こなしで活躍する「ワンピース」を揃えました。

【12月】麻とウールツイードシリーズ:

麻とウールツイード かぶりベスト
麻とウールツイード ワンピース
麻とウールツイード テーパードパンツ
麻とウールツイード ワイドパンツ

今月の「麻」生地

素材に使った麻は、衣類によく採用されるリネン。やわらかな風合いのシェットランドウールとリネンを合わせた混紡糸を用いて、密度を詰めすぎないよう、甘くやわらかに織り上げました。シワにもなりにくく、寒い冬も気持ちよく着られる生地となっています。

シェットランドウールはスコットランドの北にある、寒さや湿度が厳しいシェットランド諸島に生息する羊の毛を用いた糸。海草などを食べて育つため、やわらかい毛質が特徴です。

嵩の高いシェットランドウールから作られるふんわりした糸は、生地を織り上げる際に空気を含み、軽くあたたかな素材感に仕上がります。そこにリネンを混ぜることで、ウールだけで織り上げるよりも耐久性を増して、生地にしなやかさを加えました。

またウールの保温性にリネンの吸湿発散性が加わることで、あたたかなのに蒸れにくい生地となるのも特徴の一つ。屋外ではあたたかく身体を包み、暖房で汗をかいても湿気を逃がしてくれる、この時期に心強い組み合わせの素材です。

素材製造や生地加工は、一つひとつの工程を日本各地の得意な作り手に依頼しました。糸づくりは広島、糸の糊付けは和歌山、織りは岐阜、加工は愛知と、プロの集大成のような生地です。

お手入れのポイント

ウールを多く含むのでドライクリーニングがおすすめ。シワはつきにくいものの、たたみジワなどが気になりアイロンをかける際は、必ずあて布をしてください。

また毎日着たくなる軽やかさではありますが、長く着ていただくために毎日連続しての着用はお避けください。

ざっくりと織られたツイードは糸と糸の隙間にホコリが入り込みやすいため、着用した日は軽くブラッシングをしておき、シーズン終わりにはドライクリーニングに出して保管すると、長くきれいに着ていただけます。

気負わず上品に着られる4アイテム

カジュアルにもきれいにも着られる、冬のお出かけに使いやすい4つのアイテムを揃えました。色展開は生成、グレー、チャコールのナチュラルな3色。ウールの素材感を活かした、自然で上質な印象の色合いに仕上げています。

「かぶりベスト」はその名のとおり、かぶって着られるベスト。後ろの襟元にボタンを一つつけてかぶりやすいよう調整し、パンツにもスカートにも合わせやすい絶妙な丈感に仕上げました。

軽やかな着心地ではありますが、布帛(ふはく:織物のこと)のためニットベストよりもきちんと感を出せるのも嬉しい点。カットソーやタートルネックのセーターなどと合わせて、秋から冬まで長く着ていただけると嬉しいです。

パンツは、足さばきのよい「テーパードパンツ」と、ロングスカートのようにも見える「ワイドパンツ」の2種類。

どちらもウエストはゆったり履けるゴム仕様ですが、麻とウールの上質さがあるため、上品に着られると思います。先にご説明したベストとセットアップで着こなしていただくのもおすすめです。

「ワンピース」は袖なしのゆるやかなAライン。身幅をゆったりととっていますが、広がり過ぎず、かわいらしさはやや抑えた形に仕上げています。こちらもカットソーやタートルネックに合わせて、冬の装いを楽しんでいただければと思います。

素材自体が呼吸をしているような、気持ちの良さがある麻のお洋服。たくさん着ると風合いが育っていくので、ぜひ着まわしながら愛用いただけると嬉しいです。

「中川政七商店の麻」シリーズ:

江戸時代に麻の商いからはじまり、300余年、麻とともに歩んできた中川政七商店。私たちだからこそ伝えられる麻の魅力を届けたいと、麻の魅力を活かして作るアパレルシリーズ「中川政七商店の麻」を展開しています。本記事ではその中でも、「四季折々の麻」をコンセプトに、毎月、その時季にぴったりな素材を選んで展開している洋服をご紹介します。

ご紹介した人:

中川政七商店 デザイナー 杉浦葉子

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