スタッフに聞く、母の日の贈りもの事情

大切な人に喜んでほしいものの、何を選ぶかが悩ましい母の日の贈りもの。お店ではどんなものが人気なのか中川政七商店のスタッフに教えてもらいました。スタッフのコメントを添えてお届けします。

アームカバー

母の日の贈りものとして、とても人気のアームカバー。「毎年購入しています!」と嬉しいお声をいただくことも多いアイテムです。
日除けとしてはもちろんのこと、冷房対策としてもお使いいただけて、これからの季節にぴったり。
デザインや生地感を豊富に揃えているので、いつものファッションや生活スタイルに合わせてお選びいただけます。
なかには「毎日使うものなので洗い替え用に!」と、複数枚プレゼントされる方も。
お手頃な価格なので日頃の感謝の気持ちを込めて、お花やお菓子などと一緒に贈るのも素敵ですね。

推薦スタッフ:
中川政七商店 東京スカイツリータウン・ソラマチ店 恒松 汐里

<写真の商品>
指が通せるアームカバー  桜墨
ひんやりアームカバー 浅縹
綿麻ふんわりアームカバー 黄/薄緑

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アームカバー

香りもの

いつも頑張ってくれているお母さまやおばあさまにと、自分の時間を楽しめる香りの贈りものが人気です。
お店にはお香やアロマオイルなど色々な香りものを揃えているので、ご家族だからこそ分かるお好みの香りや、お仕事の合間や寝る前にリラックスしていただける香りなどをぜひ見つけていただけたら!
お贈りすることで、お母さまご自身で好きな香りを探しにいく、新たな趣味のきっかけにもなるかもしれません。
また自分が好きな香りを贈って一緒に楽しむのも、素敵な母の日の過ごし方だと思います。

推薦スタッフ:
中川政七商店 札幌ステラプレイス店 森 美沙

<写真の商品>
薫玉堂 試香 朱
瀬戸焼の線香皿 白志野
桜の手彫線香立て

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香りもの

櫛、ヘアブラシ

身体をいたわるケアアイテムは「贈る相手を大事に思いやる気持ちが込められる」と、母の日の贈りものにもよく選ばれています。
なかでも櫛などのヘアケアアイテムは毎日使う身近なものだからこそ、特別感のある贈りものにするともらった方の嬉しさもひとしお。
髪のお手入れはもちろん、頭皮のケアもできるので、リラックスする時間を贈りたいときにもおすすめです。
場所や季節も問わず長く愛用していただけるところもポイントです。

推薦スタッフ:
中川政七商店 新潟ビルボードプレイス店 初見 幸夫

<写真の商品>
天然毛のヘアブラシ ブナ
つげ櫛 手織り麻袋入り

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美容と健康の道具

このほかにも、中川政七商店では母の日におすすめの商品を多数そろえています。人気の品を詰め込んだギフトセットのご用意もございますので、ぜひご来店ください。

皆さまの母の日がよい日となりますように。

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コンセプトは「日常を豊かにする服」。STAMP AND DIARYによる、遊び心を纏ったシンプルな服づくり

普段使いをしたいけれど、ちょっとした遊び心は忘れたくない。

纏うと少し自信がわいて、心と体がふわりと浮くような服。

このたび、そんなわがままな洋服選びの気分にも寄り添ってくれる洋服ブランド「STAMP AND DIARY」と、中川政七商店がコラボレーションし、ブラウスとカットソーを作りました。

数あるブランドのなかでも、ものづくりに信頼が厚く、中川政七商店のお店でも多くのファンを持つSTAMP AND DIARY。その魅力のもとや、コラボレーションシリーズに込めた想いを取材しました。

消費されず「日常を豊かにする服」を目指す

訪れたのは東京・代官山。やわらかな白の壁に高い天井、時々聞こえてくる笑い声。服の印象にそのままリンクする清潔で軽やかな空間を拠点に、STAMP AND DIARYのものづくりは進められています。

創業11年の同社で代表を務めるのは吉川 修一さん。もともとはアパレルメーカーでの仕事が長く、同社を起こしたのは48歳の時でした。

「会社の名前は、空港の税関で押されるスタンプから。会社員時代に海外出張でヨーロッパに行くことが多くて、税関でパスポートにスタンプを押してもらっていたんです。よく考えてみるとそれが、いろんなきっかけをくれた時間の象徴だなと思って。

日本と海外、日常と非日常を行ったり来たりしたことで、知恵とか知識が得られたんじゃないかなと思うんですよ。いつもスタンプを押されるたびに、自分にどんどん蓄積されていく感覚があって」(吉川さん)

STAMPS 代表取締役 吉川修一さん

会社員時代、海外のなかでもヨーロッパを頻繁に訪れていた吉川さん。通ううちに少しずつ、日本と欧州が持つ消費への意識の向け方に興味が及んでいったと話します。

当時の日本は、今よりももっと“モノ”の消費が優先された時代。ファッション業界でも時間の流れは速く、「作っては売る」という過熱した消費ムードがあったそうです。

対してヨーロッパで感じたのは「いかに時間を豊かに生きるか」。

物を持たない人、親子3代にわたって長く着られる服‥‥。そんな現地の人々の物との付き合い方を知るうちに、吉川さんは日本の消費ムードに疑問を抱くようになりました。

「それで、自分がヨーロッパで感じた空気をもうちょっと洋服で表現したいなって、起業のイメージが出てきたんですね。同じようなスタンスをもつ企業へ転職する選択肢もなくはなかったんですけど、自分の思いを100%伝えるブランドにするのは難しいじゃないですか。

あと、個人的にも親の介護とか子どもの進学とか、いろんなタイミングが重なって。親の介護のなかでは、当たり前ですけど『人って死ぬんだな』とずしりと受け止めたりしました。人生は一回しかない、今が最後のチャンスかもしれないって」(吉川さん)

そうして株式会社STAMPSが誕生し、まもなくして「STAMP AND DIARY」が立ち上がります。コンセプトは「日常を豊かにする服」。会社名と繋いだ「ダイアリー」には、「日常」という意味を込めました。

STAMP AND DIARY独特の、繊細でやわらかな模様が浮かぶテキスタイル

目指すのは、時間の流れをちょっと変えるアパレル。去年も、今年も、10年後も、纏う人の日常を長く豊かにしてくれる“消費されない”服づくりです。

「僕が魅力的に感じるヨーロッパのご婦人方の方々って、着飾ってる“素敵”じゃなくて、自分らしい日常を楽しんでいる空気が“素敵”なんです。その人たちを見ると、素材がよくて、リラックスできるシルエットの服を着ていらっしゃることが多いんですね。それこそが、“デイリー”なんじゃないかなって思ったんですよ。

日常でも気負わず着られるし、例えば外出や食事の場合は華やかなアクセサリーを加えるだけで印象も変えられる。それって、素材がよくないと成り立たないんですよね。だからうちでは素材にこだわるし、日常で着心地がいいことも大事にしたいと思っています」(吉川さん)

ところで取材を進めていて感じたのは、職場の雰囲気のよさ。明るい空気が流れる理由を尋ねてみると、「会社に来ても楽しい、家に帰っても楽しい。それが一番最高だと思うんです。そういう会社になりたいですね。ミーティング中でも別のフロアから笑い声が聞こえたりすると、僕自身、すごく自分が豊かになるというか」と回答が。

服をつくるときに大切するスタンスが、会社の運営でも同じように大切にされている。簡単なようでいて難しいその体現と、のびやかな会社の空気に、ますますファンになってしまいそうです。

倉庫に眠る、アーカイブ生地を使った服

中川政七商店ではこれまで直営店やオンラインショップでSTAMP AND DIARYの服を販売させてもらってきました。

今回はその一歩先へ進んで、洋服づくりをご一緒することに。用いたのは中川政七商店の倉庫に眠るアーカイブの布たちです。

日本の染織技術で織り上げたそれらの布を、STAMP AND DIARYが誇る独特のデザインに落とし込み、春の終わりから長い夏まで存分に楽しめるブラウスとカットソーに仕立てていただきました。

「自分たちでもブランドの10周年のときに、過去のアーカイブ生地を使ったアイテムをつくったんですよ。それがお客様にすごく人気で。

その時使った生地は、僕がブランドを立ち上げる時になけなしのお金で初めて作った尾州の布で、いろんなことを教えてもらいながら織り上げていただいた思い出深いものでした。たくさんつくったから残ったんですけど、それって『余った古い布』ではなくて『宝』なんですよね。

つくり手さんが真摯につくったものは、余ったから安くするという考え方ではなくて、きちんとお客様に評価してもらえるようなデザインにして、価格も見合うものでご提案したいなと思ってずっと残していたんです」(吉川さん)

その考え方は中川政七商店とも共鳴し「新しく生み出すだけでなく、残っているものにも目を向けたものづくりを」と企画したのが、今回の「めぐり布ブラウス・カットソー」です。

皆さんより少し先に服を手に取り、感じたのは、“緊張しないときめき”。

一枚ではインパクトのある柄も、ポケットや袖に用いることで程よく着やすくなり、個性豊かな染織を纏うことも気後れせず、存分に楽しめそうな仕上がりとなっています。

「中川政七商店さんの生地を最初に見て触れた時、生地からとてもエネルギーを感じました。きっと多くの方たちが携わって生まれた貴重な生地だからこそ、惹きつけられたのだと思います。

こうした生地を使った、日常着としてのアイテムが出来上がりました。着ると少し豊かな気持ちになってくれたら、この上なくうれしいです」(吉川さん)

つくる人への尊敬を忘れず、手に取る人の心を豊かにする遊び心もあわせもつ。中川政七商店としても大事にしたい矜持が、STAMP AND DIARYの手がける服には詰まっています。

創業から貫く「洋服で豊かを目指す」というSTAMPSの思い。今回のコラボレーションシリーズが皆さまの日常を豊かにして、長くご愛用いただける服になれば嬉しく思います。

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めぐり布 身頃刺繍ブラウス
めぐり布 袖刺繍ブラウス
めぐり布 ドローストリング付きカットソー
めぐり布 ポケット付きカットソー

文:谷尻純子
写真:戸松愛

【旬のひと皿】春野菜とそばがきの豚汁

みずみずしい旬を、食卓へ。

この連載「旬のひと皿」では、奈良で創作料理と玄挽きの蕎麦の店「だんだん」を営む店主の新田奈々さんに、季節を味わうエッセイとひと皿をお届けしてもらいます。



私の営む店の前には子ども園があり、子ども達の様子を毎日見て過ごしています。そこへ通うお子さんのお母さんがお店に来てくださったことをきっかけに、5歳の男の子と友達になりました。このエッセイをはじめた頃にも登場した“5歳の友達”です。

店の前をおうちの方と通る時は、外から「ななさーーーん」と大きな声で元気に声をかけてくれます。園のみんなとお散歩へ行く時にも大きな声で外から呼んでくれるので、店の奥の方にいてもすぐに分かり、飛んで出ます。

まわりのお友達もつられて、十数人の園児たちが一斉に大きな声で呼んでくれる日もあり、かわいい元気な声に嬉しい気持ちでいっぱいになっています。子どもちゃんたちありがとう!

6歳になった友達は卒園し、この春ピカピカの1年生になります。毎日会うことがなくなってしまうので、何か一緒に思い出を作りたいなと思いました。「料理に興味なんてあるかな?」と思いましたが、お母さんを通じて聞いてもらうと「やりたい!」と言ってくれ、今回の「旬のひと皿」を一緒に作ることに。お誘いした私自身もわくわくし、撮影の日を楽しみにしていました。

今回のレシピはその友達が「豚汁と蕎麦が好き!」ということで、季節の野菜を入れた豚汁にそばがきを浮かべてみることにしました。そばがきは冷めると固くなりますが、温かい汁物に入れれば、ほわほわ柔らかい時間が長く楽しめます。

「包丁は大丈夫かな?」「怪我をさせては大変だな」と、私が提案したものの不安に思い、一緒に料理をする際の段取りを考えていたのですが、とても上手に野菜やお揚げさん、お肉を切ってくれて、一緒に作る時間や楽しさ、温かさが「おいしい」を作っていくのだなと感じました。

途中、その場にいるみんなで味見をし、おいしいねを共有できて嬉しかったです。

お野菜も季節ごとに変えれば旬を楽しめ、何より一日一杯のお味噌汁を飲むことは身体にもとってもよいと思います。楽しい時間を一緒に過ごさせてもらい、思い出のひと皿ができました。

一緒にお料理をしてくれてありがとう。また一緒にごはんを作ろうね。小学校入学おめでとう!これから先、楽しいことや嬉しいことがいっぱいいっぱいありますように!

<春野菜とそばがきの豚汁>

材料(2人分)

・豚バラ薄切り肉…適量
・春キャベツ…1枚
・新玉ねぎ…1/4個
・菜の花…2本
・ごぼう…10cm程度
・油揚げ…1/2枚
・味噌…適量
・出汁…360ml

◆そばがき

・そば粉…大さじ2 ※ない場合は米粉や小麦粉でもOK
・水…適量(今回はそば粉の3倍程度の量を使用)

作りかた

豚肉と春キャベツ、新玉ねぎ、菜の花はそれぞれ食べやすい大きさに切る。ごぼうをささがきにして水にさらす。

油揚げは熱湯をかけて油抜きし、食べやすい大きさに切る。

「ふわふわして切りにくいね」と、6歳のお友達。

鍋に少量の油(分量外)を入れ、ごぼうを炒め蒸しして香りを出す。ごぼうがしんなりしてきたら豚肉も入れて炒める。

出汁を注ぎ、軽く沸騰するまで火にかける。少ししてから灰汁をとり、新玉ねぎを入れてしばらく煮る。春キャベツ、菜の花、油揚げを加えたら味噌を溶き入れて火を消す。

小さめの別の鍋を用意し、そばがきを作る。鍋にそば粉を入れて火にかけ、少しずつ水を加えてダマにならないように練っていく。ゆるさはお好みで。

※小麦粉や米粉を使用する場合は鍋に入れて練り上げず、すいとんを作る要領で、粉を水で溶き別鍋で茹でてから汁に加える。水を粉の同量弱くらいで溶くと、ゆるくて形は整えられないが汁に入れた時に柔らかく食べやすい。

うつわに豚汁をよそい、真ん中に先ほど作ったそばがきを入れて完成!

6歳の友達からもらった折り紙の手紙。「おいしーのつくろーね」

うつわ紹介

食洗機で洗えるお椀 ハンノキ
陶器の箸置き

写真:奥山晴日

料理・執筆

だんだん店主・新田奈々

島根県生まれ。 調理師学校卒業後都内のレストランで働く。 両親が母の故郷である奈良へ移住することを決め、3人で出雲そばの店を開業する。  
野に咲く花を生けられるようになりたいと大和未生流のお稽古に通い、師範のお免状を頂く。 父の他界後、季節の花や食材を楽しみながら母と二人三脚でお店を守っている。
https://dandannara.com/

何もほしがらない人への贈りもの【母の日特別エッセイ】

「今年の母の日は何を贈ろうか」。そんな風に悩むひとときも、相手の暮らしを想う大切な時間。作家・文筆家の安達茉莉子さんによる、母の日のエッセイをお届けします。



私の母は、もっとも贈りものに困る人だ。こだわりが強いとか、好みがうるさいとかそういうわけではない。いつ聞いても、特にほしいものはないそうなのである。

母はどこか不思議な人だ。私の実家は九州の山間の集落にあり、家には田んぼや畑がある。文学少女だった母は、インドア派で、家にはいつも母が集めた絵本やミステリー小説が多くあり、私もそれらを読んで育った。茉莉子という私の名前も、作家の森茉莉さんからとったという。

生き物が好きで、珍しい鳥や金魚、亀、猫、犬、なんでも育ててきた。いつかはアボカドを種から育てていた。今は元保護猫を飼って、大事にしている。死んでしまったまた別の猫にも、毎日遺影に向かって話しかけているという。

何かを育てるのが好きだが、見返りは求めない。贈りもの以前に、母は何もほしがらない人だ。特別無欲というわけではなく、私の目から見ると、母はなんだかいつも満たされているように見える。今あるもので十分足りているし、特にほしいものはないという。

記憶をたどっても、母に何かを求められたり、頼まれたりされたことはない。私が大学進学で上京する前、実家にいたときは、もちろんゴミ捨てや洗濯物の片付けなどの家事はやってと言われていたが、母個人に対して何かやってほしいとお願いされたことはない。マッサージや、冬に家の外にストーブの灯油を入れにいく作業くらいだろうか(母は寒いのも暑いのも嫌いだ)。

プレゼントに何がいいか聞くと、いつ聞いたって、「何もいらないよ」としか言わない。それでも何かあげたいので、頭を悩ませて探す。だけど母はこだわりがない。「なんでもいいね、これでいいね」が口癖。清貧を好む思想というわけではなく、ただ単に欲や執着がない。もしかしたら、何がほしいか考えるのも少し面倒くさいのかもしれない。

さらに、こだわりはないようでいて、好きと嫌いのセンスは、母ワールドにはっきり存在しているようで、贈っても結局大して使われないことも多い(娘は気づいている)。私のセンスは微妙に母とずれていて、私が良いと思ったものを贈っても、なんだかいつも、的を外している気がする。

それでは母の生活や趣味に有益なお役立ちグッズを贈ろうと思うと、母は自分に必要なものは、大抵既に揃えてしまっている。ストレスや不快なことが嫌いなので、早々に自分で適当に見繕ってしまうのだろう。贈りものをする隙が、ない。全方位にとっかかりがないのだ。

あまりにも難しいので、昨年、誕生日のプレゼントは何がいいか聞いたら、珍しく明確な回答があった。「何もいらないけど、しいて言うならバラかな」と。バラの花束かと思いきや、欲しいのはバラの苗だそうだ。

母は花も好きで、せっせと世話をしている母ガーデンに植えるという。そう来たか。バラの苗、そんな、誰が贈っても同じそうなものを‥‥。ちなみに、娘がくれたから特別喜ぶという性質は母には恐らくない。バラはバラ。どんな苗にも公平に分け隔てなく接する母だ。

だけど、その時に気づいた。母は、特別なものは求めていないが、母が日々愛でているものは、たしかに存在する。ならば、不足を補うという発想で贈りものを選ぶのではなく、ただ美しかったり、かわいかったり、美味しかったりする、普遍的に素敵なものを贈れば、ただ愛でるように、喜んでくれるかもしれない。

そういえば、以前、母が拙著『私の生活改善運動 THIS IS MY LIFE』(三輪舎)を読んで感想をくれたことがあった。「まりの本を読んで、家の食器を新調してみたよ」とあった。あまり何かに影響されることのないマイペース・マイワールドの母にしては、珍しい。

よくよく考えると定番の贈りものかもしれないけれど、食器や、身の回り品を贈るのもいいかもしれない。きっと、今あるものですでに問題なく暮らしは回っている。でも、私が贈る、新入りのものたちを、猫や生き物たちのように、ただ可愛がってくれるかもしれない。よし、日々の暮らしが華やぐような、母のいる風景に合いそうだと思ったものを、贈ってみようか。

今年も母の日がやってくる。どんなに考えても結局悩ましいのだけど、母の日の贈りものをどうしようと考えるこの幸福な悩みが、ずっと長く続くことを、いつも、いつも願っている。

安達さんが選んだ母の日ギフト:

奈良藤枝珈琲焙煎所 ドリップパック アソート珈琲
BARBAR 蕎麦猪口大事典 エキゾチックショート 色絵同 小皿 
かや織の色あわせストール 黄
000 政七別注スフィアプラスシルクリネン ホワイト 80cm

プロフィール:

安達茉莉子
作家・文筆家。大分県日田市出身。著書に『毛布 – あなたをくるんでくれるもの』(玄光社)『私の生活改善運動 THIS IS MY LIFE』(三輪舎)『臆病者の自転車生活』(亜紀書房)『世界に放りこまれた』(twililight)などがある。


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【四季折々の麻】4月:風通しよく爽やかに着られる「綿麻のちりめん織」

「四季折々の麻」をコンセプトに、暮らしに寄り添う麻の衣を毎月展開している中川政七商店。

麻といえば、夏のイメージ?いえいえ、実は冬のコートに春のワンピースにと、通年楽しめる素材なんです。

麻好きの人にもビギナーの人にもおすすめしたい、進化を遂げる麻の魅力とは。毎月、四季折々のアイテムとともにご紹介します。

風通しよく爽やかに着られる「綿麻のちりめん織」

4月は「清明」。うららかな春の陽が心地よい、明るく清らかな月となりました。植物の息吹もそこかしこに見られ、いよいよ春本番を感じますね。

今月は、春のあたたかな陽気から、少し汗ばむ夏まで長く着ていただきやすい、さらりと着られる風通しのよい麻の服を作りました。

生地に用いたのは経(たて)糸にリネン、緯(よこ)糸に綿麻の素材を採用し、ちりめん織にした織物。麻だけでもちりめん織にはできるのですが、シャリ感をやわらげ春にも着やすい生地感にするため、綿と合わせる方法をとりました。やさしい肌あたりで、春のやわらかな気候にもぴったりの生地に仕上げています。

ラインアップは「開襟シャツ」と「開襟ワンピース」、「ロングキュロット」の3種類。きちんとしたおでかけにも着やすい開襟シャツやワンピースを作りたくて、相性のよい生地を検討するなか今回のシリーズに至りました。

実は、3年前に登場してから長くご愛用の声をいただいている本シリーズ。今年は春らしい緑色を加えて展開します。

【4月】綿麻のちりめん織シリーズ

綿麻のちりめん織 開襟シャツ
綿麻のちりめん織 開襟ワンピース
綿麻のちりめん織 ロングキュロット

今月の麻生地

「ちりめん」というと、きものや和小物の「ちりめん」を想像する方も多いかもしれません。

ちりめん織とは強く撚りをかけた糸を織り込んだ織物のことで、生地の表面にシボ感が出るのが特徴。一般的には絹素材のものをちりめんと呼ぶことが多いのですが、今回は綿と麻の糸を使ってちりめんの風合いに仕上げました。

新潟県・見附にある機場で、何度も試織を重ねて丁寧に織っていただいた中川政七商店オリジナルの生地です。

強撚(きょうねん)糸の伸び縮みによる天然のほどよいストレッチ感があり、独特のやわらかさがあって快適な着心地。凹凸があることで肌にあたる面積が少なく、通気性が抜群のため、春から夏まで涼しく着られます。

また麻をとりいれたことでさらりとした心地よさがあり、シワになりにくく乾きやすいことも嬉しい特徴です。

生地を織る前に糸の状態で染める「先染め」を採用することで、奥行きのある色合いに仕上げたのも工夫した点のひとつ。経糸にはリネンのトップ糸(=リネンをワタの状態で染めたもので、メランジ感のある糸)、緯糸には綿麻の染糸を使い、小さな格子柄に仕上げました。

お手入れのポイント

ネットに入れれば、ご自宅の洗濯機で洗っていただけます。目立った皺を伸ばしてから干すとノンアイロンでも着られますし、気になる皺ができた場合はあて布を使用すればアイロンもかけていただけます。

なお、アイロンをかけるときれいな表面感にはなりますが、つるつるになることはなく、ちりめん織の風合いはちゃんと残るのでご安心くださいね。

リラックス感のある生地を、きちんとしたお出かけ服に

ご用意したのは「開襟シャツ」と「開襟シャツワンピース」、「ロングキュロット」の3アイテム。カジュアルな素材感なので、家着っぽくならないようにとシルエットを工夫して仕立てました。

毎年人気の本シリーズに今年は新緑を思わせる「緑色」が新色で登場。昨年もご提案したベーシックで根強い人気の「黒色」と、涼し気な「空色」と合わせた3色展開にしています。

シャツのデザインでは、若い方も年を重ねた方もきれいに着られる形を意識しました。襟は小さめで首回りがあきすぎないように調整し、身巾はゆとりがありつつももたつかず、ストンと着られるサイズ感に仕上げています。

ワンピースもゆったりしたシルエットではありますが、ウエストに切り替えを入れて少し絞ることで、きちんと感を出しました。少し懐かしい感じもある開襟アイテムを、爽やかに着こなせるようデザインしています。

前のボタンを閉じて着用するほか、ボタンを開ければ羽織りのようにも着ていただけます。

ロングキュロットは、ロングスカートのようなシルエットで着られます。とにかく気負わず履きやすいアイテムなので、春夏のボトムとしてたくさん着ていただけると嬉しいです。シャツとロングキュロットをセットアップで合わせていただくのもおすすめです。

「お出かけにも着られるきちんと感と、着心地のよさを兼ね備えた服を作りたい」と考えて企画した本シリーズ。普段着はもちろん、靴やカバンなど小物で印象を変えて幅広いシーンでお楽しみください。

素材自体が呼吸をしているような、気持ちのよさがある麻のお洋服。たくさん着ると風合いが育っていくので、ぜひ着まわしながら愛用いただけると嬉しいです。

「中川政七商店の麻」シリーズ:

江戸時代に麻の商いからはじまり、300余年、麻とともに歩んできた中川政七商店。私たちだからこそ伝えられる麻の魅力を届けたいと、麻の魅力を活かして作るアパレルシリーズ「中川政七商店の麻」を展開しています。本記事ではその中でも、「四季折々の麻」をコンセプトに、毎月、その時季にぴったりな素材を選んで展開している洋服をご紹介します。

ご紹介した人:

中川政七商店 デザイナー 杉浦葉子

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麻の老舗が届けたい、麻の魅力をのせた衣「中川政七商店の麻」

1716年(享保元年)に高級麻織物「奈良晒」の問屋として創業し、以来300余年、麻とともに歩んできた中川政七商店。麻を知り尽くした私たちだからこそ伝えたい、うつりゆく季節や暮らしに寄り添う麻の魅力があります。

通気性の高さや生地のシャリ感から夏の素材として想起されやすい麻ですが、実は、ウールと合わせて冬のコートに用いたり、厚手に織り上げた生地を春や秋も着られるボトムスに仕立てたりと、一年を通じて心地好く着られることもぜひお伝えしたい点。

そんな想いから、中川政七商店では「中川政七商店の麻」と名をつけて、麻の魅力を届ける衣服をつくり続けてきました。

デザインを担当する杉浦に、麻の基本と、中川政七商店の麻シリーズのこだわりを聞きました。

日本の衣を長く支える、天然素材

植物繊維の総称である「麻」は、古来より世界各国で用いられてきた天然の繊維。紀元前1万年前には古代エジプトで、その使用が認められたという記録もあるほどです。

日本でも縄文時代には使われていた形跡が残っており、その後、江戸時代には武士の裃として重宝されるなど、武士階級の衣類の中心的存在でした。

また古来「ケガレを祓う」ものとして神事とのつながりも深く、神社でのお祓いに使用する御幣(ぬさ)や、参拝時に鳴らす鈴に垂らされた縄にも麻が用いられています。

今の日本の衣類では綿のほうが多用されていますが、お伝えした通り、昔は多くの場で麻が使われていたのです。

「麻って繊維が強いので、古いものでもまだ残っているんです。正倉院の宝物にも麻を用いた染織品などが残っています。そうやって人の暮らしに寄り添ってきた、歴史の深い素材なんですよ」(杉浦)

ひとことで「麻」といってもその実は20種類近くに分かれ、そのうち衣料用に使われる主な麻には「リネン(亜麻)」「ラミー(苧麻)」「ヘンプ(大麻)」などが挙げられます。

リネンは一般的な麻の衣料にもよく使われる麻。しなやかでやわらかさがあり、麻のなかではやさしい肌触りなのが特徴です。

一方ラミーはシャリ感が強く、清涼感があるため主に夏の衣料に重宝される素材。硬さがあり、繊維として強さのある麻です。

ヘンプは空気を含む特徴があり、保温性・保湿性に優れているため、特に冬におすすめしたい麻。育つのが早く、サスティナブルな素材ともいわれています。

「麻といってもそれぞれの繊維ごとに特徴も違って面白いですよね。『中川政七商店の麻』シリーズではこれに加えて、糸づくりや織り方、布地にする際の加工など、さまざまな要素を組み合わせて生地の質感をつくっています。日本では麻って夏の素材と思われがちですけど、素材の特徴を活かして夏に限らず楽しんでいただけるご提案がしたいなって」(杉浦)

そんな私たちの暮らしを長く支えてきた麻ですが、植物繊維であるがゆえ、年によっては天候不順による不作があるほか、品質も不安定でよい素材を手に入れるのが難しいことも。

その天然の素材を糸にして織り上げるには、長年の経験から積み上げた職人の技が必要とされます。

「織物や染織工芸は水が豊富な土地で特に栄えたので、日本では琵琶湖のある滋賀県や、大きな河川がある地域に多くの染織産地があります。

当社で使用する麻生地は基本的に機械で織っていただくのですが、機械は自分で素材の特徴ごとの調整まではしてくれません。だから職人さんがスピードを調整したり、糸に油分を含ませて織りやすくしたりと、その設定の塩梅に人の技が出るんです」(杉浦)

麻素材の特徴

麻素材の特徴でよく知られるのは通気性の良さ。けれど実はそれ以外にも、暮らしに寄り添う麻の魅力がたくさんあります。

一つ目は「吸放湿性に優れていること」。一年を通して呼吸している素材ともいえる麻は、夏はさらりと着られて、冬は空気を含みあたたかく着られます。

また「見た目の素材感」も魅力的で、洗いざらしでもさまになるようなシワ感は麻ならでは。綿だと洗濯後のアイロンなしではシワが悪目立ちするような場合も、麻のシワは独特の表情をうむためアイロンなしでも着られます。

加えて麻の生地にみられる「上品なツヤ感」は、カジュアルなアイテムでも上品で大人っぽい印象になる嬉しい魅力のひとつ。

さらに、もとはハリのある生地感ですが、だんだんなじんでやわらかくなるのも特徴で、「経年変化の楽しさ」を感じられます。

「表現するなら『古びる』ではなく『育つ』がしっくりくるような。そうやって着るごとに愛着がわくのも、麻の衣料をもつ面白さですね」(杉浦)

汚れがつきにくく落としやすいといわれる素材のため、「洗濯性のよさ」もぜひ知っておきたい点。洗いに強く、先ほどお伝えした通りアイロンいらずでも着られるため、実は扱いやすい生地なのです。

最後になんといっても伝えたいのは「異素材との相性の良さ」。

「中川政七商店の麻」シリーズでも、麻100%で織り上げることもあれば、綿やウールと合わせながら、生地を開発する場合も多くあります。

「例えば綿と合わせて肌あたりのよさを足したり、ウールのあたたかさを足したり、ポリエステルの強さを足したり。他の素材と糸を混ぜたり、交織(素材の異なる糸で織り上げること)しても麻の特性が失われず、むしろ新しい風合いを生み出せて、お互いを活かしあえる素材なんですよ」(杉浦)

中川政七商店と、麻

“誰とでもうまくやれる、コミュニケーション力が高い素材”である「麻」。中川政七商店ではそんな麻の特徴を活かして、定番の麻衣類と、四季折々の麻生地を用いた洋服のシリーズも展開しています。

例えば、定番の麻シリーズで提案するのは、Tシャツやデニムパンツ、また私たちのルーツ・奈良晒と同じ製法でつくる「手績み手織り麻」を使ったシャツ。長きにわたって麻をお届けしてきた中川政七商店だからこそ、いつもの衣類に麻の魅力を取り入れながら、その着心地や表情を楽しんでいただける一着に仕上げています。

中川政七商店の定番服。左は「手織り麻を使ったフリルシャツ」、右は「麻のデニムパンツ」

また、四季折々のコンセプトでつくる「毎月の麻」シリーズでは、毎回、その季節にまつわる言葉とビジュアルを沿えて展開。麻と別素材を合わせたり、麻の特徴にスポットをあてたりと、いろいろな織り方や加工方法で季節に合わせた麻をご提案しています。

「日本には四季があって、気候や、植物の移ろいを表す二十四節季などの美しい言葉もありますよね。そうやって季節の移ろいを楽しみながら、旬の食材を食べたり季節に合わせたしつらいをするように、服にも季節を上手にとりいれて、その時季の風景に自然と溶け込む佇まいになるように『毎月の麻』シリーズは企画しています。

あとは気候だけじゃなくて『新年はこんな服が着たい』といった風に、暮らしや気分に寄り添えるよう生地やデザインを考える月もありますね。そうやって素材や色、形を毎月検討しながら、麻の魅力をもっと知れる機会になればと思ってつくっています」(杉浦)

その懐の広さこそ、他の素材にはない麻ならではの大きな魅力。

江戸時代に麻の商いからはじまった中川政七商店は、これからも、過去にも、未来にも思いをはせながら麻のものづくりを丁寧に続け、皆さんに麻の魅力をお届けしてまいります。

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麻とはどんな素材なのか?日本人の「服と文化」を作ってきた布の正体

文:谷尻純子