【わたしの好きなもの】フローリングのお家にこそ!Broom Craftの「国産棕櫚箒 7玉」

裸足で歩くと、なんとなく足裏に埃の気配がする。
ふりかえると、小さい埃がなぜかいる。
なぜ。あれだけ掃除したはずなのになぜ。
汗でびしゃびしゃになりながら掃除したのに。

今年の春、マンションから一軒家に引っ越しました。

大好きな我が家だけれど、ずっと小さなストレスだったのは掃除の問題。家の形状が変わったからか、今までのお掃除道具を使ってもどうもきれいになりきらないことにストレスを抱えていました。

コードレス掃除機、吸着剤付き化繊モップ、使い捨てフロアモップ、高性能お掃除ロボット。
今までありとあらゆるお掃除道具を使ってみたけれど、どれを使っても“すっきりきれいに”とはならない。痒い所に手が届かないのです。

ちなみに、マンションではコードレス掃除機を使っていたのですが、引っ越して一部屋の面積が増えた途端、掃除機のヘッドが小さいため一気にきれいにならず、疲れて非効率だと感じるように。前は小回りが利いて便利だな~と思っていたのですが‥‥。

おまけに今の家はフローリングの色が深くて、どこを掃除したのか目視では分からない。
きれいに掃除できた!と思い裸足で歩いたら、足裏に感じる吸い残し。
ちょっとした絶望です。費やしたお掃除時間が報われない感じ。

単に私の掃除の仕方がへたな気もしますが、掃除の道具選びに迷走を重ねていました。

そんなときに出会ったのが、Broom Craftさんの「国産棕櫚箒(しゅろほうき)」です。
こちらは棕櫚の木の繊維を使った天然素材の箒で、和歌山県の工房で作られているそう。

箒と聞いて、畳の部屋が一つもない我が家には無縁だな、と思っていたのですが、商品紹介文に「畳にもフローリングにも使えます」の文字が!

さらには「ハリ・コシのある厳選した棕櫚は程よくしなやかでそれ自体に油分を含み、埃を舞い上げることなく集めることができます」とのこと。

これがほんとならすごくいいな!いや、ほんとに??と思いつつ、早速使ってみました。
箒を手にするのは久しぶりで、過去に使ったのは祖母の家に行った時か、学校の清掃の時くらい。ちょっと新鮮です。

色も質感もかわいくて、そのまま出していても様になります。

かっこいい!色がいい!素敵!テンションが上がります

手に取ると、すこし重みがあります。
メーカーさんの説明文には、「7玉タイプはやや重く感じることもありますが、その重みで自然にしなることを利用してスムーズに動かせます」とありました。

斜めに傾けて床においてみるとこんな感じ

動かしてみると、そのまますっとすべって、しなりの反動で少しもちあがるので、最初に感じた重みはあまり気になりませんでした。
掃くたびにシャッと、いい音で、うちにある掃除機よりも幅が広いので、効率よく掃除できます。

フローリングの凸凹に棕櫚がフィットしていて細かいところまではける

また、巾木(はばき)をそのまま箒ではけるのが、思った以上に便利!

今まで巾木掃除はハンディモップを使って腰をかがめていましたが、これなら床掃除のついでにそのままの姿勢でできる!これが私には革命的でした。

巾木を掃除しているところ。このほか、幅のある机の脚や、ベンチの脚も掃けました

我が家には3歳の暴れん坊息子がいて、彼が眠っている間(彼が散らかさないうち)に掃除をしたいな~と思っても、埃が舞い上がるからできなかったのですが、箒なら埃が舞い上がる心配もなく、気になったところの掃除が可能。これも、嬉しいポイントでした。

擦るようにゆっくりごみを集めれば、大きな音もならず、埃も舞い上がらず、彼も起きずで最高です。

掃ききった床を裸足であるいてみましたが、以前感じた足裏の違和感はなく、埃がなくなったのを感じました。
残ったゴミも見当たらず、すっきり。

また箒掃除は静電気が起こりにくいため、埃が舞い上がりにくいそうで、鼻がムズムズせずNOくしゃみなのも快適でした。

メンテナンスもお水で洗えて簡単とのことなので、これから末永く愛用していきたいと思います。
フローリングだから箒は関係ないよな~と思っている方にこそ、おすすめしたいです!

棕櫚の良さに目覚めたので、次は手帚が気になっています。これもすごく便利そう。
これを機に、お気に入りのお掃除道具が増えそうです。

<掲載商品>
【WEB限定】Broom Craft「国産棕櫚箒 7玉」

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編集担当:木村

【イベントレポート】和歌山の箒職人「Broom Craft」のさんち語り&手箒づくりワークショップ開催 in「ものづくりから覗き見るディープな世界展」

先日、「さんち商店街」初のポップアップイベント「ものづくりから覗き見るディープな世界展」が開催されました。この企画は日本各地のものづくりや職人の技、ものづくりから見える各地の歴史や風土、文化に魅せられた学生たちが経営するセレクトショップ「アナザー・ジャパン」とのコラボレーションによって実現したものです。

会期中は、さんち商店街が取り扱う商品のなかから、学生セトラー(※)がセレクトした商品の販売をはじめ、つくり手を招いたワークショップや、特別ゲストとの「異業種コラボな夜咄会」と題したお茶会など、さまざまなイベントが行われました。

※店舗を経営する学生たちのこと

職人の奥深き世界に触れる

プレオープニングイベントとして開催されたのは「和歌山の箒職人『Broom Craft』のさんち語り&手箒づくりワークショップ」です。「Broom Craft」は、棕櫚(しゅろ)製品の一大生産地である和歌山県海南市において約70年の歴史をもつ深海産業が立ち上げた新ブランド。産地ならではの伝統を受け継ぎつつ、掃きやすさを追求した棕櫚箒やキッチンブラシなど、現代に寄り添う製品を数多く手がけています。

3人の息の合った掛け合いで笑い溢れるトークショーに

前半は、産地である和歌山県海南市の個性や魅力、産業の成り立ち、そして原材料である棕櫚についてなど、スライドを使った〝さんち語り〟からスタート。話し手は「Broom Craft」の専務取締役であり〝ほうき〟プロデューサーの深海耕司さんと職人の津村昂さん、同じく職人の深海由衣さん。3人による楽しいトークショーが繰り広げられました。

「みなさんは棕櫚ってどんな素材か、知っていますか?」と深海耕司さん。

すでに箒やブラシになった状態は知っているものの、その原材料の棕櫚となると……参加者の頭にはパッと思い浮かばない様子です。

「棕櫚とはヤシ科の植物。その昔、和歌山県には山間部一帯に棕櫚が自生する〝棕櫚山〟があって、その収穫を生業とする山師は、当時の公務員の月給がたった1日で稼げるほどだったといわれています」

和歌山には、今でも棕櫚が多く自生する山がある(写真:阿部高之)

「実際、箒やブラシなどに使用するのは棕櫚の皮の部分。木の幹を守るように巻き付いている皮を1枚1枚丁寧にはいで使うんです」と話す深海さんの言葉に、「皮をはぐ様子は筍の皮に似ていますよね」と津村さんは加えます。

「Broom Craft」専務取締役の深海耕司さん(右)と、棕櫚を手にもつ職人の津村昂さん

ちなみに「Broom Craft」の母体である深海産業は、全国各地で使用される緑化資材(街路樹などの植栽の幹に巻きつける棕櫚テープや、植物の成長を支える棕櫚縄など)の90%以上のシェアを誇っているとか。まさに棕櫚のスペシャリストです。

これが棕櫚。皮を輪転機にかけて繊維状にしていくとか

「ひとくちに棕櫚といっても品質はさまざまですが、良質な棕櫚はハリとコシがあって、かつ、しなやか。水に強く、汚れたら洗って使えるのも特徴です。だからこそ箒やたわし、ブラシなどに向いているんです」(津村さん)

自分だけのオリジナル手箒をつくる

さて、トークショーの後はワークショップに突入。今回は卓上用箒として開発された手箒の仕上げ作業を体験していただくことに。テーブルや棚、窓のサッシなどに溜まったゴミや埃をサッと掃き出してくれるコンパクトな手箒です。

「Broom Craft」の手箒は埃を舞い上げることなくサッと掃き出せるのが魅力

赤やピンク、オレンジ、紺、茶色など、色や質感の違う15種ほどのレザーのなかから、自分の好きなものを選び、「Broom Craft」さんが用意してくれた手箒本体の持ち手に巻いて、銅線で留める作業を行いました。

「えー、たくさんあって迷う……どのレザーにしようかな」
「きれいに巻きつけられるかしら」
「銅線で巻きつけるってどうやるの?」

そんな声が挙がりながらも、作業開始です。

1人1人丁寧に指導する深海さん。笑いも絶えません
縁の下の力持ち!優しく教えてくれた深海由衣さん

ただ巻きつけるだけなのに、これがなかなか難しい。銅線をきつく巻きつけなければレザーが浮いてしまい、かといって力を入れすぎればレザーがよれたり、導線が切れてしまったり……。自分で実際に手を動かしてみると、こうした作業の一つ一つに職人の知恵や技が詰まっているのだと、改めて実感します。

少し戸惑い気味で始まったワークショップですが、作業を進める間にみなさん、なんだか楽しそうな雰囲気に……。

「これはなんだろう……?」「どうやって使うの?」との声が

作業に使う工具にも興味津々の様子です。たとえば上記写真の参加者が手にしているのは、簡単にいえば、巻きつけた銅線をねじり上げてきれいに締めるための道具ですが、「これは棕櫚箒用の道具なんですか?」との質問に、深海さんから出たのは意外な回答でした。「いいえ、元々は電気工事用の工具なんです。いろいろ試してみたところ、これがもっとも銅線を巻くのに適していたので採用することに。職人それぞれが、自分の扱いやすいように改良しながら使っています」。

掃き心地の良さにびっくり!

参加者がつくった手箒。素敵な仕上がりに!

普段、聞くことのできないさまざまな話をうかがいながら、作業は着々と進み……遂に完成!参加者それぞれに個性の違う、世界に一つだけの手箒が完成しました。

自分でつくった手箒でなんとなく机の上を掃いてみると……正直、驚きました。というのも、棕櫚の繊維そのものは意外としっかりとして硬めなのに、ササッと掃いてみると柔らかくしなり、びっくりするほど掃き心地が良かったのです。テーブルの溝に入り込んだゴミまでしっかりと掃き出してくれました。ほかの参加者からも、

「棕櫚って意外と軽いんですね」
「家で使うのが楽しみです!」
「手箒のとんがった形状が、細かな場所にもフィットして使いやすそう」

さんち商店街 × アナザー・ジャパンコラボ展「ものづくりから覗き見るディープな世界」の楽しいプレオープニングイベントは、こうして無事にお開きとなりました。

・「Broom Craft」のページはこちら:https://www.nakagawa-masashichi.jp/shop/r/rbrand05/

文:葛山あかね

【四季折々の麻】10月:ふっくらとあたたかく、上品な艶感「綿麻のコール天」

「四季折々の麻」をコンセプトに、暮らしに寄り添う麻の衣を毎月展開している中川政七商店。

麻といえば、夏のイメージ?いえいえ、実は冬のコートに春のワンピースにと、通年楽しめる素材なんです。

麻好きの人にもビギナーの人にもおすすめしたい、進化を遂げる麻の魅力とは。毎月、四季折々のアイテムとともにご紹介します。

ふっくらとあたたかく、上品な艶感「綿麻のコール天」

10月は「清秋」。残暑もようやく終わり、清く澄みわたる空に爽やかな秋を感じる月となりました。木々が色を染める景色や、遠くから聞こえる虫の声。そんな時期に着ていただけたらと、豊かな空気を吸い込んで出かけたくなるような服を、綿麻のコール天で作りました。

素材に採用したのは、綿麻の糸を使って織ったコール天生地。コール天とはいわゆるコーデュロイのことで、日本の遠州地方で作られるコーデュロイを昔からこう呼びます。手間ひまをかけて職人が手がけた、畝(うね)のふっくらとした丸みと艶が特徴です。

毎年人気で、中川政七商店でも秋の定番となっているこの生地を用いて、今シーズンは「ベスト」と「ジャケット」、「イージーパンツ」「フレアスカート」をラインアップ。いずれも着まわしやすく、寒い季節まで長く着られるアイテムを揃えました。

【10月】麻の高密度織シリーズ:

綿麻のコール天 ベスト
綿麻のコール天 ジャケット
麻の高密度織 イージーパンツ
麻の高密度織 フレアスカート

今月の「麻」生地

秋から冬まで長い時期で着られる、綿麻素材の肉厚なコール天生地。

夏のイメージが強い麻ですが、実は秋冬にもたくさん着たいおすすめの素材です。吸湿発散性があるので重ね着する場合もムレにくく、何より上品な艶感で秋冬らしい落ち着きを纏っていただけます。今回は綿が主流のコール天生地に麻を取り合わせることで、綿の肌あたりの良さと、麻ならではの軽やかで上質な質感をそなえた生地に仕上げました。

国産コーデュロイ、特に遠州のコール天は、一つひとつの工程が丁寧で手が込んでいるのが特徴です。ベースとなるのは、タオルのように糸をループ状にして織り上げたパイル織生地。そこから糸をカッティングして凸凹した畝を作り、全体の糊を洗い落とす「糊抜き」後に、「毛焼き」の作業を施していらない毛羽を落とします。こうすることで、ふっくらとやわらかで、なめらかな生地に仕上がるのです。

完成した生地は艶があるためカジュアルすぎず、上品な“大人のコール天”といった印象に。

現場では腕の良い職人さんの高齢化も進んでいて、「あと何年できるか」という話もよく出ます。ですが一方で、国産のコール天に魅力を感じた若い職人さんが後を担おうとする動きも出てきているそう。いずれにせよ、貴重な生地であることに変わりはありません。

お手入れのポイント

お洗濯はできるだけ手洗いで。脱水で洗濯機を使う際や、洗濯機の手洗いモードを使って洗濯する際は、お洋服を裏返してネットに入れてください。

また着用時や着用後に洋服ブラシを軽くかけてもらうと、毛並みが整い艶も美しくなり長持ちします。毛並みは下から上の流れになっているので、ブラシも下から上にかけてくださいね。

ひと手間かかってはしまいますが、手間をかけることで良い状態で長く着られるはず。お洋服を手入れする時間も楽しんでいただければ嬉しく思います。

きちんと感もカジュアル感も出せる、上下でバランスのとれた4アイテム

セットアップにブーツや革靴を合わせてきちんと着たり、単品アイテムにスニーカー合わせでカジュアルに着たりと、いろいろな雰囲気を作れる4アイテムをラインアップ。

色展開は、生成・カーキ・墨紺の3色で、長く着たい定番の色合いを選びました。特に生成は素材そのものの色合いのため、麻の繊維も混じり杢(もく)感があり、奥行きのある雰囲気でおすすめです。

フィット感のあるベストは、きちんとした雰囲気が出せるアイテム。ずらりと並ぶボタンも端正で、やさしくもきりりとした印象をつくる一着です。

まだコートを着るまでもない秋の日に軽く羽織りたい、ノーカラーのジャケットは、カットソーやタートルネックとも相性の良いVネックラインに仕立てました。すっきりと大人っぽくも着られますし、パーカーを中に着ればカジュアルにも。シリーズのベストと合わせて、ジャケットからチラッと見せるコーディネートも魅力的です。

イージーパンツはとにかく暖かく、秋冬にたくさん履きたい楽ちんシルエットに。シンプルなトップスと合わせてパンツの存在感を引き立てたり、ざっくりしたニットに合わせてほっこりしたコーディネートにしたりと、合わせるアイテムで印象ががらりと変わります。おしりのポケットの毛並みを横に配しているのがポイントです。

後ろの裾を少し長くとったフレアスカートは、ぐるりとどこから見てもフレアの立体感がきれいになるよう調整しました。シリーズのベストとセットアップで着ると、上下でバランスのとれたコーディネートが楽しめます。タイツやブーツを合わせ、秋冬のお出かけ服としていろんな場所へ出かけていただけたらと思います。

素材自体が呼吸をしているような、気持ちの良さがある麻のお洋服。たくさん着ると風合いが育っていくので、ぜひ着まわしながら愛用いただけると嬉しいです。

「中川政七商店の麻」シリーズ:

江戸時代に麻の商いからはじまり、300余年、麻とともに歩んできた中川政七商店。私たちだからこそ伝えられる麻の魅力を届けたいと、麻の魅力を活かして作るアパレルシリーズ「中川政七商店の麻」を展開しています。本記事ではその中でも、「四季折々の麻」をコンセプトに、毎月、その時季にぴったりな素材を選んで展開している洋服をご紹介します。

ご紹介した人:

中川政七商店 デザイナー 杉浦葉子

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【わたしの好きなもの】和洋問わず盛り付けやすい「明山窯 古信楽プレート」

ごはんができた。さぁ盛り付けよう。
さてこのとき、みなさんはどのようにお皿を選んでいますか?

「その料理を一番引き立てるお皿を」
「とにかく洗いものが少なくなるように」

人それぞれ、答えがあると思います。忙しい日とそうでない日で、答えは変わってくるかもしれません。

しかしいかがでしょう。
そんななかにも、「このお皿、よく選ぶかも?」というものが、きっとひとつは思い出されるのではないでしょうか。

どんなときでも、なぜか手に取ってしまうお皿。私にとって、そんな不思議な魅力をもつお皿のひとつが明山窯さんの「古信楽プレート 角」です。

なぜ手に取ってしまうのか。
今回、この記事を書くにあたって改めて考えてみたところ、その理由は「形」と「色」にあると気づきました。

まずは「形」。お皿としては珍しいシンプルな平たい形状ですが、とにかく幅広く使えるんです。メインディッシュとして炒めものを盛り付けたり、ワンプレートとしてパンとサラダを盛り付けたり。

食後のスイーツも、古信楽プレートに置いてみると、ぴったりと落ち着きます。

こんなふうに「ごはんでもスイーツでも、いかなるものでも受け止める度量の深さ」が、私の心を無意識のうちに射止めているのだと思います。

そしてもうひとつの理由である「色」。こちらの品は、表面に白い釉薬をかけた「白釉」と、素地に緑の釉薬がまだらに入った「緑釉」の2色がラインアップされています。

「白釉」はシンプルな色合いで、食卓のほかのうつわともなじみます。と言ってもツルツルの白色ではなく、よく見ると“石ハゼ(※)”がところどころに。やきものの豊かな表情を楽しめるのも、このお皿の愛すべきところです。

※石ハゼ・・・土の中に含まれる長石が焼成時に爆(は)ぜることによって、表面に露出した状態のこと。(明山窯「古信楽プレートの品質について」より)

一方「緑釉」は、素地と釉薬のコントラストが目を惹きます。一見、少し派手で和食には合わないかも‥‥?と思ってしまいますが、色味の落ち着きがちな和食でこそ、このお皿は特別に輝きます。

形は同じでも、まったく景色が違う「白釉」と「緑釉」。

「これを盛り付けたらどうなるだろう?」とイメージしながら、お気に入りの色を選ぶのが毎回楽しみになります。普段の何気ない食事に、少しだけワクワクをプラスしてくれるのも、古信楽プレートを選びたくなる理由のひとつです。

「なにを食べるかではない。“どこで”食べるかだ。」

これは、私の大好きな三谷幸喜さん脚本のドラマ、『王様のレストラン』に登場するセリフです。古信楽プレートに盛り付けてごはんを食べるとき、私はこのセリフを思い出しながら、次のように言い換えてみるのです。

「なにを食べるかではない。“なにで”食べるかだ。」

みなさんも「なぜか手に取ってしまう使い勝手のよいお皿」のコレクションに、古信楽プレートを加えてみませんか?

<掲載商品>
【WEB限定】明山窯 古信楽プレート 角 L
【WEB限定】明山窯 古信楽プレート 角 M

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編集担当・稲田

【旬のひと皿】椎茸と鶏肉の照り焼き

みずみずしい旬を、食卓へ。

この連載「旬のひと皿」では、奈良で創作料理と玄挽きの蕎麦の店「だんだん」を営む店主の新田奈々さんに、季節を味わうエッセイとひと皿をお届けしてもらいます。



専門学校の2年生だった10代最後の年は、学校の制度を利用して海外へ留学していました。貴重な経験をさせてもらっていたのだから、もっと貪欲に、がむしゃらに頑張れればよかったなと今は思うのですが、当時は自分の知らない世界が広がりすぎていて、日常を送ることすらあやふやで。

まず言葉がわからない、そして伝えられない。もどかしい日々でした。

短い期間だったけど、とても長く感じられたあの時間。「良い時間だったな」と思えるようになったのは、ずいぶん時間が経ってからです。

留学直後のしばらくは、私とは別の料理学校の研修制度を利用して来られた、アメリカ人で元ダンサーのお姉さんと一緒に暮らしていました。とびきり明るい性格で、母国にいらっしゃるボーイフレンドとの電話を部屋で聞いた時には、映画の中かと思いました。

全力で感情を伝えている姿に「アイラブユーは日常だったんだと!」と、当時の私はとてつもない衝撃を受けたものです。

2人とも予定のないお休みの日には、近くにあるピッツェリアに行き、家族の話、日本ではどうなの?アメリカではどうなの?と、お互いの日常を聞き合って。貴重な同居生活でした。

しばらくして、彼女が研修期間の終わりを迎え帰国してしまうことに。急に静かになった部屋で生活することになりました。

そこからは寂しさとともに、全然成長のできていない自分に悔しさもつのり、辛い期間が続きました。まだしばらくは、どれだけ帰りたくても帰れない状況で、20歳の誕生日がきて。

そんなときに、スーパーでお醤油を見つけた時の喜びったら!日本を感じられる貴重なお醤油。高価だなと思いましたが、醤油味がどうしても恋しかったので一番小さなボトルを買い、親子丼風の料理を作って一人で誕生日のお祝いをしました。

「これから頑張っていこう」という前向きな気持ちと、目の前の生活に負けそうな気持ちが入り混じり、嬉しいだけではない誕生日の思い出です。

それから帰国し色々な経験を経て、今は奈良で楽しく暮らしています。ずいぶんと時間が経ちましたが、未だに誕生日が近くなると、「あの時、一人で作って食べたなぁ」と思い出しては懐かしい気持ちにかられます。

秋を迎えた今回のレシピ。何にしようかなと考えているときに、ご近所の美味しいすき焼き屋の女将さんが、東京へ異動されるとご挨拶に来てくださいました。

異動される前にと先日お店へ伺ったところ、お店の皆さんのおもてなしに感激。目の前でお話ししながら焼いてくださるすき焼きは、きっとここでしか体験できない素晴らしい時間だなぁと、嬉しく、美味しくいただきました。

近くにいる人がずっと近くにいるわけではない。日々に追われつつも、ちゃんと今を「楽しむ」ことを目標にしたいなと改めて感じた時間でした。

そんな、懐かしの「親子丼」と、女将さんに焼いていただいた「すき焼き」の美味しさを思い出しながら考えたレシピ。秋の食材・きのこに、すき焼き風の甘じょっぱいタレと親子丼に欠かせない卵を合わせたひと皿をご紹介します。

<椎茸と鶏肉の照り焼き>

材料(2人分)

・鶏もも肉…1枚
・卵…2個
・椎茸…4枚
・玉ねぎ…1/2個
・青ねぎ…適量
・天津甘栗(あれば)…適量
・蜂蜜…小さじ1
・万能醤油(作りかたは以下を参照)…大さじ2

◆万能醤油

醤油、酒、みりんを同量ずつ鍋に入れ、軽く煮立たせたら完成。今回は量を使わないので大さじ2と表記していますが、私は各100mlずつを合わせて火にかけ、冷ましたものを冷蔵庫で保管しています。多めに作って保存しておくといろいろな料理に使えるのでおすすめです。このたれに生姜を加えれば、生姜焼きのたれとしても。

作りかた

まずは鶏肉から。余分な脂や骨を取り除いてそうじしたら、肉の1%弱を目安にした重さの塩(分量外)をして、しばらくおく(ここまでを前日にしておくと味が染み込んで美味しい)。

調理の直前に、鶏肉を半分に切る。

続いて、ゆで玉子を作る(お好みの固さでOK)。今回は水から茹で始め、7~8分ほどで鍋からあげたものを使いました。

椎茸は軸をとる。玉ねぎは繊維に対して直角になるよう、大きめの輪切りにする。青ねぎをざっくりとななめ切りにする。

華やかになるよう、椎茸は飾り切りしても

フライパンを熱して鶏肉を皮面から焼き始める。余分な脂が出てくるので、キッチンペーパーに吸わせながらじっくり焼いていく(皮を下にしたまま)。

きれいなキツネ色に皮面の焼き色がついてきたら、野菜を入れて一緒に焼く。野菜に塩(分量外)をして、途中、鶏肉を野菜の上にのせて休ませながら焼いていく。

「全部に火が通ってきたな」というタイミングでフライパンの端を空け、蜂蜜を入れてブクブク沸くまで焦がす。甘さを加えるというより香ばしさをつけたい。

はちみつに泡が出てきたら、大さじ1〜2ぐらいの水を入れて、万能醤油を全体に回しかけ、味を見る。足りなければ足す。鶏肉や野菜には下味をつけているので、かけすぎに注意。

ねぎも入れて全体を軽く炒める。

火を止め、鶏肉を食べやすい大きさに切って野菜と共に盛り付ける。ゆで玉子も半分に割り、一緒に添える。甘栗もお好みで。

フライパンに余ったたれを全体に回しかけ、茶色い秋のお皿が完成!

うつわ紹介

美濃焼の平皿 土灰


写真:奥山晴日

料理・執筆

だんだん店主・新田奈々

島根県生まれ。 調理師学校卒業後都内のレストランで働く。 両親が母の故郷である奈良へ移住することを決め、3人で出雲そばの店を開業する。  
野に咲く花を生けられるようになりたいと大和末生流のお稽古に通い、師範のお免状を頂く。 父の他界後、季節の花や食材を楽しみながら母と二人三脚でお店を守っている。
https://dandannara.com/

【つながる、お茶の時間】「お茶、淹れよっか」が、家族団らんの時間を過ごすきっかけに(中川政七商店 渡瀬聡志さん、諭美さん夫妻)

「お茶にしましょう」。私たちがそうかける声は、何を意味するのでしょうか。

喉を潤すだけでなく、誰かと時間を共にしたり、自分自身の素直な声に耳を傾けたり。せわしない日々に一区切りつけて言葉を交わし合う、つながる時間がそこにあります。

皆さんがどんなお茶の時間を過ごされているのか。3組の方々の、それぞれのお茶の時間を覗いてきました。

この記事では、中川政七商店のプロダクトデザイナー・渡瀬聡志さんと、妻・諭美さんのお茶の時間を紹介します。

プロフィール:

渡瀬聡志・諭美
夫は中川政七商店のプロダクトデザイナー、妻は元中川政七商店で店長や茶道ブランドの企画運営などを担当。夫婦で奈良に暮らしながら、産地やギャラリーをまわって暮らしの道具を迎えたり、旬の食材を使った料理をしたりと、自分たちにとっての心地好い暮らしを愉しんでいる。



聡志さん:

普段は主に、プロダクトの企画、デザインを担当しています。転職前は文具のデザイナーでしたが、シンプルで生活とともにある、暮らしの道具の仕事がしたくて中川政七商店に入ったんです。

工芸の良さは、ものの根っこがある信頼感や面白さ。古い物を見ると「昔はどんな人が使っていたんだろう」とロマンを感じるし、紐解いていくと昔と今の違いに気付けたり、日本人が昔から大切にしてきた美意識や価値観が垣間見えたりするのも魅力ですね。

商品開発をするときは、そうやって人が過去から繋いできたものへのリスペクトを持ちながら、自分が使いたいと思えることも大切に、企画・デザインしています。

もともと家の設えや暮らしの道具が好きで、家具やうつわをよく集めていましたが、入社してからは拍車がかかって。特に、がちがちに決めてデザインされたものよりも、理屈がないものに惹かれることが多いですね。旅先で産地やものづくりの現場を見たり、作り手さんと話したりすると、ついつい買ってしまいます。

とはいえ、デザイン性のあるプロダクトも好きです。普段は手工芸のものを扱っているので、何となく自分の気持ちにバランスをとっているところがあるのかもしれません。

今はもう暮らしに必要なものは揃っているから、必要に駆られて買うことはほぼなくて。それよりも用途や機能に縛られず、迎えること・使うことによって新しい暮らしのイメージが開けるものに挑戦したくなるんです。

諭美さん:

私も、もともとは中川政七商店で働いていて、今は和菓子屋さんに勤務しています。

茶器やうつわでよく手にとるのは、やさしい印象で長く持てるもの。パッと見たときに心が穏やかになり、20年、30年と飽きがこず大事にしてあげたいと思えるものを選んでいます。ものに背景のある、作家ものや古物も好きですね。

父が美術工芸好きで、家族旅行では窯元見学をするような家で育ちました。幼いころから日常に手仕事のものが当たり前にあって、その影響なのか、特別に意識して工芸品を迎えているわけではありませんが、一つずつ表情が違う、人の手が入ったものの魅力に無意識に惹かれているのかもしれません。

茶器の蒐集は主に諭美さん。磁器・陶器・ガラスなどさまざまな素材のものが並ぶ

聡志さん:

お茶を飲むのは、食後やおやつの時間。夫婦で一緒に飲むことが多いですね。僕が静岡出身なので親が送ってくれた新茶を飲んだり、いい和菓子が手に入ったときは、せっかくだからと、妻が抹茶を点ててくれたりすることもあります。

茶道ブランドで働いていた経験を持つ諭美さん。気分をしゃんとしたいときには、抹茶を点てて飲むことも

諭美さん:

特におやつの時間が好きで。美味しいお菓子を手に入れては、何を合わせて飲もうか考えるのが楽しいんです(笑)。

抹茶や中国茶、日本茶など、その日のお茶選びはお菓子や料理に合わせて。夏はすっきり飲める水出し番茶、冬はほっこり飲めるほうじ茶など、季節でもよく登場するお茶は違いますね。

夫婦それぞれが本を読んだり洗濯物を畳んだりしていても、「お茶、淹れよっか」の言葉で一つの場所に集まって家族の時間が過ごせる。お茶の時間には、家族団らんに繋がる良さがあるように思います。


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