あたたかく、肌にもやさしい「やわらウールのインナー」【スタッフが使ってみました】

寒くなる季節、あたたかく過ごすためにインナー選びは重要。ただし、着心地にもこだわりたい。

そんな、あたたかさと快適さ、どちらにもこだわったウール100%のインナー「やわらウールのインナー」が発売されました。

今回、この商品(やわらウールのインナー クルーネック)を中川政七商店の店舗スタッフが実際に着用し、使い心地を体験しました。

中川政七商店 札幌ステラプレイス店 星川さんによるレポートをお届けします。

屋内外の気温差にも対応できる

10月中旬の気温の変化が大きい時期に、仕事中は制服のシャツの下に着用して一日を過ごしました。

北海道では、屋外は厳しい寒さでも屋内は暖房がしっかり効いているため、重ね着しすぎると暑くなってしまうことがあります。このインナーは一枚でしっかりと暖かく、同時にウールがもっている「調湿効果」で蒸れにくく、室内で動いて汗をかいた際にも心地よい温度を保ってくれます。

熱がこもりにくいため、厚手のニットやフリースの下に着ても快適です。

重ね着しやすいデザインとサイズ感

また、八分袖のデザインや襟元の開き具合が非常にバランスよく作られており、アウターの袖口がもたつかず、重ね着スタイルが多い北海道の冬にもぴったり。朝晩と日中の寒暖差が大きいことも北海道の特徴ですが、寒い朝の通勤時から暖かい店内まで、一日を通して温度差に対応できる点が特に優れていると感じました。

季節の変わり目にも使いやすいアイテムだと思います。

八分袖でもたつかない

肌ざわりが柔らかく快適。季節の変わり目にもおすすめ

私は肌が弱く、これまでウール素材のインナーはチクチクしてしまう印象があって避けてきました。この商品もウール100%ということで肌への刺激を少し心配していましたが、実際に着てみると肌触りは想像以上に柔らかく、快適。さらに、洗濯を重ねるうちにより柔らかく馴染むような風合いになり、肌あたりの良さが増したようにも感じます。

 洗濯による縮みもほとんど見られず、型崩れの心配が少ない点も安心です。ウール素材でありながら乾くのが早く、日常的に扱いやすい点も好印象でした。

個人的に特に気に入っているのは襟元のつくりです。鎖骨の上までしっかりと生地があり、冬場にニットなど刺激のある素材を重ねても摩擦を感じにくく、首やデコルテの乾燥やかゆみを防いでくれます。

天然素材ならではのやわらかさや通気性の良さを実感でき、冬場だけでなく季節の変わり目にも活躍する一枚です。これまでウール素材に抵抗があった方にも、自信を持っておすすめできるインナーだと感じました。

中川政七商店札幌ステラプレイス店
星川

<掲載商品>
「やわらウールのインナー クルーネック」

<関連商品>
「やわらウールのインナー タートルネック」
「やわらウールのインナー スパッツ」

暮らしに、森の質感を。木の‟ありのまま”がやさしく寄り添う「木端(こば)の椅子と花台」

身近にあると空気が変わる気がして、深く呼吸をしてみたくなる。心をやわらかくし、森の時間を運んできてくれる。忙しい日々の中でも、部屋に自然の息吹を感じられるものがあると、不思議と気持ちが落ち着くものです。

中川政七商店ではこのたび、広葉樹の特徴を活かしたインテリア家具、「木端(こば)の椅子」「木端の花台」を作りました。

タッグを組んだのは、飛騨高山で広葉樹を用いたものづくりに取り組む「木と暮らしの製作所」さん。そして、素材を活かすデザインを得意とする、日本を代表するデザイナーの一人 倉本仁さん。

岐阜・高山の森で採れた広葉樹を組み合わせ、素朴ながら森の景色を思わせる仕上がりの椅子と花台。木目や手ざわりなど自然の表情を楽しむことができるこの商品を、今回はSNSで素敵なインテリアや日常の様子を発信している松井さんのお宅で、ひと足先に使っていただきました。

好きなものを丁寧に選ぶ暮らし

訪ねたのは、奈良市にある松井さんご夫妻のご自宅。4LDKのマンションを広々としたワンルームにリノベーションし、二人暮らしを楽しんでいます。コンクリートの天井にデザイナーズ家具が並ぶ空間の先には、窓いっぱいに広がる美しい景色が。隣接する緑地の自然が、まるで絵画のように季節を運んでくれます。

自然の光がふんだんに差し込む松井邸

「この景色に一目惚れして物件を決めたんです」

奈良の照明ブランドに勤務する松井さんは、仕事場の環境から“抜け感”や景色の大切さを日々実感し、それを住まいにも取り入れたいと考えたそうです。建築士に好みのテイストや希望を伝えて、ご夫妻のライフスタイルに合った理想の住まいが完成しました。

「家事や片づけをできるだけシンプルにしたくて、壁一面を収納にしました。衣替えもハンガーごと移動するだけ。来客時にはさっと物を隠せます。好きな漫画も収納してすっきり見えるように工夫しつつ、室内には余分なノイズをなくしたくて、床一面にカーペットを敷いています」

すっきりとした空間に、選び抜かれた小物やインテリアの数々が映える松井さん宅。

「基本的に“好きなデザインかどうか”が大前提。この部屋のどこに置いたら合うかをイメージしながら、長く使える意匠のもので、素材のこだわりや背景に物語があるプロダクトを選んでいます」

そう松井さんは話します。

奥のベッドスペースを遮るのは、アルミの断熱シートを短冊状にしたユニークなカーテン。必要な時だけ閉じられるこのスペースはパートナーのお気に入りの場所。

新鮮さをもたらす野趣ある質感

「どちらかというとクールでかっこいいデザインが好き」という松井さんに、今回の「木端シリーズ」を見てどう感じたかを伺いました。

「色や木目など、それぞれに個性のあるところが素敵ですね。自分の仕事でも吹きガラスや大理石など一つひとつ表情が違うものを扱っていて、それと同じ魅力を感じました。ワントーンではない色のニュアンスにも惹かれましたし、脚の取り付け方にも興味を持ちました」

実際の使い道を想像するとどうでしょうか?

「うちは玄関がフラットなので、靴を履くときのスツールとして便利そう。洗面所で髪の毛を乾かす時にちょっと座ることもできますし、来客時の補助椅子としてもいいですね」

フラットな玄関に、靴を履くときなどのスツールとして
ベッドの脇に置いてサイドテーブル的な使い方も

「これまで玄関に直置きしていた花器を置くのにぴったりでした」

と、花台については、すぐに使うイメージが浮かんだそう。

「以前、美容師をしていたので、家族や知人の髪をカットすることがあって。祖母の家の土間で切ると片づけが楽だったので、その発想から我が家もモルタルの床にしたんですけど、この無機質な空間に野趣あふれる花台は馴染みがいいですね。

木の質感に、自然の心地好さを感じます」

収納扉にラワン合板を使うなど、住まいに木の存在はあるものの、小物は無意識のうちに木製を選んでこなかった松井さん。

「室内にはお店で出会ったものや作家さんの作品などを飾っていますが、改めて見ると木のオブジェは置いていませんね。だからこの花台は新鮮でした。カーペットの上でごろごろする時も、癒されながら飲み物や本を置く台として使えそうです」

SNSの発信を見て憧れる人も多い松井さんのコーディネートの中に、「木端の椅子と花台」は見立て次第でさまざまに使える存在として、心地好く溶け込んでいました。

行き先をなくしていた木々が新たな価値をまとい、住まいに自然の景色を運んでくる。そこに生まれるのは、心がほどけるようなあたたかな時間。ぜひご自宅で、その豊かさを感じていただけると嬉しく思います。

<取材協力>
松井さん(instagram:@takayan_yan

<関連商品>
「木端の椅子」
「木端の花台」

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文:安倍真弓
写真:奥山晴日

日本の森林と暮らしをつなぐ。広葉樹を突き詰める「木と暮らしの制作所」のものづくり

「森の国」。そんなふうに言われることもあるほど、豊かな山や森林に囲まれた日本列島。

離れたところから見る山々の風景も圧巻ですが、少し近づいて森に目をやると、一つひとつの木々にそれぞれ違った特徴や表情があることに気が付きます。特に、広葉樹の森ではそれが顕著で、バラエティ豊かな植生に驚かされるばかりです。

中川政七商店ではこのたび、そんな広葉樹の特徴を活かしたインテリア家具、「木端(こば)の椅子」「木端の花台」を作りました。

木端の椅子
木端の花台

作り手は、「森と木と暮らしをつなぐ」をコンセプトに掲げる「木と暮らしの制作所」さん。そのものづくりについて伺いました。

使われていない、個性豊かな飛騨の木々

「使えそうなものも多いのに、なぜ広葉樹の丸太はチップにしてしまうんだろう」

「木と暮らしの制作所」代表の阿部さんは、山で伐採された樹木の丸太が集まる「中間土場」を見た際にそんな疑問を持ったと言います。

木と暮らしの制作所 代表取締役 阿部貢三さん
地元の林業会社「奥飛騨開発」の「中間土場」。「木と暮らしの制作所」はこちらの敷地内に工房を構えて活動している

標高差が大きく、ブナ・クリ・クルミ・ナラ・サクラ・カエデなどをはじめとして、多種多様な広葉樹が育つ飛騨の森。

しかし、一部を除いて、これらの木が家具や建築のための用材として市場に流通することは滅多にありません。樹種が多く、仕分けが難しいことに加えて、雪の重みで曲がったり、太さがまばらになったりしやすく、決まった規格の木材を安定供給することが困難である、というのが大きな理由です。

伐採された広葉樹の多くは一括りに「雑」と仕分けされ、機械でこまかく刻まれて、燃料やキノコ培養向けの「チップ」として安価に取引きされることが通例となっています。

「奥飛騨開発」が広葉樹を伐採している森。険しい斜面に様々な樹種が生育する
山と山の間に丈夫なワイヤーを張り、そこに伐採した木を吊るして下ろしてくる。急斜面での伐採のために考えられた方法。かつては雪の斜面を使って木を下ろしており、冬にしか伐採ができなかったのだそう
丈夫で重いワイヤーを人が背負って山に登る必要があり、非常に過酷で体力を要する仕事

「山の職人さんたちに聞いてみると『知名度が無いから』といった答えが返ってくることが多くて。

結局、販売者やエンドユーザー側の基準をもとに山で仕分けがなされている。

なので僕らは逆に、山側で基準を決めようと。どう見せればそこに価値を出せるのか、やってみようということで、活動を始めました」

チップに加工されていく丸太たち

豊かで魅力ある森林のはずが、ものづくりには活かされず、結果として十分な対価が得られないために山主や林業従事者の負担ばかりが大きくなっている。「木と暮らしの制作所」では、そんな課題に向き合い、‟飛騨らしさ”を活かして広葉樹の活用を広めようとしています。

広葉樹の活かし方を突き詰めて‟飛騨だからこそ”できる家具を作る

「樹種が豊富であることと、変形木が多いこと。これをどう見せるかにこだわって、その先に‟飛騨の木だからこそ”という表情や魅力を出したいんです。

そうすると、たとえば北海道の木との違いとか、地域性も出てくる気がしています」

そう話す阿部さん。まずは自分たちの手の届く範囲の木を活用するための試行錯誤がはじまりました。

まだ使い道が定まらない木も保管しておいて、かっこよくできる方法を常に考えている

多様な表情を見せる広葉樹を活かすにはどんな技術が必要なのか、どんな見せ方をすれば“飛騨らしさ”が魅力として伝わるのか。

「変形木そのままだと少しワイルド過ぎるところに、切り方を工夫して直線的な要素を入れるとか。真っ直ぐに木が育つ地域では必要のない技術なんかもあって、突き詰めるとオリジナリティが出てきます」

複数の木材を接着して一枚の板にしたり、あいてしまった穴を木の粉をブレンドしたもので違和感なく埋めたり。端材を使い切る技術が蓄積されている
接合面を補強する「チギリ」に真鍮を用いてモダンな雰囲気に

広葉樹の伐採や仕分けの目利きに長けた地場の林業事業者とも連携しながら、それまでであればチップになっていた木材を積極的に買い取り、テーブルや椅子などの家具に加工して、その木だからこその表情を価値として伝える方法を模索し続けています。

「木と暮らしの制作所」の工場

広葉樹の佇まいを活かしたスツールとミニテーブル

今回、中川政七商店では、広葉樹の佇まいを活かした家具シリーズ「木端の椅子と花台」の制作を依頼。素材の魅力を発揮しつつも今の暮らしに馴染みやすい、そのちょうど良いバランスを追及しました。

毎回、特徴の異なる材で新たなプロダクトを作るため、その都度作り方を検討し、工夫する

「不定形な素材を用いて一つひとつの個性は大切に、ただし商品としては安定した定形のものを作るという、難しい挑戦でした。木々の個性をしっかり“良さ”として感じてもらえるように工夫を凝らしています」と阿部さん。

まるで飛騨の森から抜け出してきたような、表情豊かなスツールとミニテーブルに仕上がっています。

丸板の部分も、いくつかの端材をはぎ合わせて制作。それぞれの材をあえて斜めにカットしてはぎ合わせることで、違和感のない仕上がりを実現
脚の部分は樹皮そのもののような表情に

阿部さん達の活動を通じて、地場の人たちの意識にも少しずつ変化が見られ、最近では「こんな木が採れたけど、使えるんじゃないか?」と提案されることも出てきたのだとか。

広葉樹はチップという常識を覆し、飛騨の森ならではの個性あふれる木々を活用するという機運が産地内で高まっています。

「たとえば、大きくて太い木は大手のメーカーさんが。そうでないものは、ひとつの材料に時間かけることができる僕たちのような作り手が。さらには個人作家や趣味で家具作りをする人まで。

関わる人が増えると、もっと色々な木が色々な用途で使えます。そのために、山や森への理解が広がると嬉しいですね。

今、広葉樹の山や森に対して、地域の人たちの気持ちが離れてしまっています。『森と木と暮らしをつなげる』と掲げて活動していますが、山の価値を向上させて、もう一度そこをつなげたいと思っています」

飛騨の豊かな森から木をいただく。伐採した木々の下からは新しい芽が出て、何十年という大きなサイクルで森は循環していく

<取材協力>
木と暮らしの制作所

<関連商品>
「木端の椅子」
「木端の花台」

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文:白石雄太
写真:阿部高之

【あの人の贈りかた】ちょっとした工夫に、想いをのせる(スタッフ榎本)

贈りもの。どんな風に、何を選んでいますか?

誕生日や何かの記念に、またふとした時に気持ちを込めて。何かを贈りたいけれど、どんな視点で何を選ぶかは意外と迷うものです。

そんな悩みの助けになればと、中川政七商店ではたらくスタッフたちに、おすすめの贈りものを聞いてみました。

今回は商品企画・デザイナーの榎本がお届けします。

家でも外でも美味しく食べられる「産地のカレー」

年齢を重ねるにつれて、お付き合いのご挨拶や御礼で、ちょっとした贈りものをする機会が増えてきた気がします。相手のことを思いながら選び、渡すこちらも嬉しくなるような、そんな贈りものをしたい。その想いは、若い頃よりもずっと強くなりました。

たとえば、週末をアクティブに、海や山、川といった野外で過ごすのが好きな人には、「産地のカレー」を贈ってみてはどうでしょう。

パッケージを開けた瞬間に広がる、カレーの芳醇な香り。ごろっとした野菜や肉の存在感が際立っており、外で食べるカレーをさらに美味しくしてくれます。

レトルトパウチなので、ハイキングやキャンプにも手軽に持ち運べますし、アウトドアのクッカー鍋などで、パウチごと温められるのも気に入っている点です。

ローカルカレーという少し通好みの贈りものは、「これ、実はね‥‥」と、贈る相手との会話を自然に弾ませてくれるはず。馴染みのある地域のカレーを相手に合わせて選ぶのも、楽しい時間です。

<贈りもの>

・中川政七商店「産地のカレー

お茶の時間が好きなあの人に「奈良の焙じ茶 丸カステラ」

家でお茶をゆっくり楽しむのが好きな方には、「奈良の焙じ茶 丸カステラ」をよく贈ります。

肩肘張らない価格と気軽なパッケージとは裏腹に、箱を開けると、思わず笑顔になるような愛らしい丸いカステラ。しっとりとしたスポンジが驚くほどふわりとしていて、焙じ茶の奥深い香りが広がります。

表面に散りばめられたザラメは、ひと噛みごとにザクザクと小気味よい音を立て、食感のアクセントに。いただく前に温まる程度に少し炙ると、ザラメが溶けてキャラメルのような香ばしさが加わり、焙じ茶の香りと最高の相性を奏でます。

小さいお子さんも喜んでくれる一品です。

<贈りもの>

・中川政七商店「奈良の焙じ茶 丸カステラ

ほんのりと想いを添える手づくりのスプーン

親しい知人や友人の祝い事には、手作りのスプーンを贈ることも。

スプーンは誰でも使うものですし、かさばらないので何本あっても困ることはないかなと思います。何より、削っている時間が好きなので、時間を見つけてはついつい作ってしまいます。

とはいっても作るのは大層なものではありません。身近な木の枝や木端を選び、長い時間をかけずに、あくまで短い時間でささっと作れるものです。

特別なものではなくても、そこに私の手が加わっているということ。日常的に使うものだからこそ、贈りものに一匙そっと忍ばせておくことで、私の想いがほんのり伝わる気がするのです。

贈りものを選んだあとも、その周りのことにちょっとだけこだわってみることがあります。

包み紙やメッセージカードの紙質、ペンのインクの色、結び紐の素材を少し変わったものにしてみたりと、自己流にあれこれ工夫するその時間が、実は贈る人とのつながりを実感させてくれる大切な時間のような気がしています。

以前、お茶の先生に「手づから」という言葉を教わりました。自ら手を動かし、相手をもてなすという意味だそうです。

たとえお店で買ったものをそのまま贈ったとしても、そこに込める本当の真心は、その品を心を込めて選ぶことや、手書きのメッセージ、相手を想いながら包む時間などの一つひとつの小さな工夫に宿るのかもしれません。

贈りものをするとき、ふと、その言葉を思い出したりします。

贈りかたを紹介した人:

中川政七商店 商品企画・デザイナー 榎本雄

【旬のひと皿】鮭と香草の紙包み焼き

みずみずしい旬を、食卓へ。

この連載「旬のひと皿」では、奈良で季節の料理と玄挽きの蕎麦の店「だんだん」を営む店主の新田奈々さんに、季節を味わうエッセイとひと皿をお届けしてもらいます。



窓から入る涼しい風とともに、やっとやっと、秋がやってきました。夏の暑さに加えて秋生まれということもあり、季節が変わるのをまちわびていました。

季節が変わったら挑戦したいなと思っていたのは、奈良を知ること。

旅行で来られる方はしっかり奈良を調べて、計画的にさまざまな場所へ行かれています。そんなお客様とお店でお話しをしていると知らないことも多く、「もう20年近く奈良に住んでいながら、なんてもったいないことを‥‥」と、ハッとしたのです。

というわけで書店へ行き、『奈良の歴史散歩』(山川出版社)という本を購入しました。
(故郷・島根の本も同時に見つけて、倍嬉しい!)

次の休みには奈良市内にある、唐招提寺へ。穏やかな秋の日、平日だったこともあり静かに拝観することができました。森に入ったかと思うくらい緑が深く、手入れの行き届いた木々の足元には、一面に美しい苔が。光に照らされて、なんともいえない穏やかな気持ちになったものです。

ずらりとあちらこちらに並ぶ、国宝の仏像。ちょっと車を走らせただけで、タイムスリップしたかのような日本の歴史に包まれました。まるで、慌ただしい日常をリセットさせてもらえたような時間。初めて御朱印も頂き、帰宅しました。

視点を変えて、気持ちも変えて、近すぎて見えなくなった大切なことや物、場所も見ていきたいなと思ったひとときでした。

今月のレシピで主役にしたのは秋鮭です。昔、お世話になったお店でよく作られていた紙包み焼きを思い出し、私流のレシピにしてみました。だんだんと寒くなってくるこの時期に愉しめるよう、今回はきのこやあさり、マスカット、香草と合わせ、秋をぎゅっと包み込んでいます。

ポイントは少し大きめの紙を使い、なかの空間に空気を入れて、蒸し焼きのようなイメージで作ること。秋鮭はふっくらしっとり、きのこやあさりはおいしいスープを出してくれるといいなと思いながら作りました。

うつわに用いたのは、中川政七商店さんの新作「瀬戸焼の印判角皿」。おいしいパンをおともにして、スープを浸して食べると、可愛い動物が見つかります。

肩の力を抜いて、いろんな場所の食卓で今日もほっとひと息つけますように。

<鮭と香草の紙包み焼き>

材料(2人分)

・鮭…2切れ
・あさり…4粒
・玉ねぎ…1/4個
・きのこ(お好みのもの)…全部で1パック程度
・かぼす(レモンでも可)…1個
・マスカット…6粒
・ハーブ(お好みのもの)…適量
※今回はタイムとローズマリーを使用。なければ乾燥ハーブミックスでも可

◆A
・白ワイン(料理酒でも可)…小さじ1
・塩コショウ…適宜
・酒粕…適宜
・味噌…小さじ2
・バター…10g

◆その他
・バケット…2切れ 

秋の食材をもりもりと入れたひと皿。マスカットは味のアクセントに入れていますが、なければミニトマトに変更するのもおすすめです。

作りかた

鮭に塩(分量外)をして10分ほど置く。あさりは砂抜きをする。玉ねぎはスライスしてから半分に切り、きのこは食べやすい大きさに切る。かぼすはよく洗い、皮つきのままスライスする。

クッキングシートを鮭の1.5倍程度のサイズで、2枚用意しておく。
鮭の水分をペーパータオルで拭き取る。

クッキングシートの中心にオリーブオイル(分量外)をひいて、玉ねぎ、きのこの順にそれぞれ半量ずつ重ねる。都度、塩少々(分量外)をして下味をつける。

続けて、鮭、あさり、マスカット、かぼすの順に上にのせる。ハーブを添えたらAをそれぞれ入れて、お好みで塩コショウをふる。クッキングシートで空気が抜けないように包んだら、端をホチキスでとめる。

160度のオーブンで12分焼く。オーブンがない場合はフライパンに少量の水を入れ、蓋をして蒸し焼きにする。うつわに盛ったら完成!

バケットを添え、ぜひスープをパンにつけながらお召し上がりください。

盛り付けが面倒な場合は、紙で包んだままうつわに載せても。絵柄入りのうつわなら、食べ進めるとかわいい景色が浮かびますね

うつわ紹介

瀬戸焼の印判角皿 鹿麻花、虎唐草

写真:奥山晴日

料理・執筆

だんだん店主・新田奈々

島根県生まれ。 調理師学校卒業後都内のレストランで働く。 両親が母の故郷である奈良へ移住することを決め、3人で出雲そばの店を開業する。  
野に咲く花を生けられるようになりたいと大和未生流のお稽古に通い、師範のお免状を頂く。 父の他界後、季節の花や食材を楽しみながら母と二人三脚でお店を守っている。
https://dandannara.com/

料理研究家・ツレヅレハナコさんがつくる、「野菜がたくさん食べられるひとり土鍋」を使ったレシピ

家事に仕事にと忙しく、思い通りのリズムとはいかない毎日。

心も体もくたびれてしまい、ヒットポイントはゼロに近い。けれど、そんな日こそ野菜をしっかり摂って体がよろこぶものを食べたいと、台所によろよろと向かう日もしばしばです。

この秋、新発売となる「野菜がたくさん食べられるひとり土鍋」は、毎日の料理の強い味方になればと開発したもの。野菜をもりもりのせても蓋の閉まるサイズ感や、土鍋ならではの機能性が特徴で、“土鍋まかせ”で手軽に料理が完成します。

監修をお願いしたのは、文筆家・料理研究家のツレヅレハナコさん。その気構えず、自由で楽し気な食卓にはファンも多く、台所道具との付き合い方にも信頼の厚い方です。

ハナコさんなら、この鍋で何をつくるんだろう。できたてほやほやのサンプルを、一足お先に使っていただきました。



「つい手にとっちゃう“いい”道具」を目指して

「台所に住みたい」と普段から話すほど台所愛の強いハナコさん。自宅を建てる際も台所のつくりに最もこだわったといいます。

広くとった台所スペースにはコツコツ集めてきた調理道具がずらり。特に目を惹くのが、その数なんと30を超えるという様々な鍋です。台所の手前には専用の陳列棚も設けられ、鍋愛の強さを伺えました。

「鍋って本当に万能で、焼きも炒めも蒸しも、もちろん煮ることもできます。フライパンのほうが簡単という方もいらっしゃるとは思いますが、私は普段からいろんな料理を鍋でつくってますね。

あと、鍋にはその土地の文化を表すものが多くて、そこも鍋の好きなところ。旅先の文化を持ち帰れるという意味でも鍋を迎えちゃいます」

そんなハナコさんに今回監修をお願いしたのは、その名も「野菜がたくさん食べられるひとり土鍋」。そもそもどうしてこの鍋に至ったのでしょう。

「一人暮らしをはじめるときに軽い気持ちで買った土鍋があったんですけど、気づいたらその鍋ばっかり使ってて。普通の一人鍋より少し大きめのサイズ感で、野菜がたくさん入れられるので、一人の日の食卓にも二人分の煮物なんかにもぴったりだったんです。

ただ、容量や重量が使いやすい一方で『もう少しこうしたいな』と思う点もありました。道具づくりをご一緒する機会を頂いたことを機に、一人の食事も気負わずつくれてたっぷり栄養が摂れるような、使いやすい鍋があったらと思ってご相談したんです」

「使いやすさ」を言語化しながら、あらゆるポイントに工夫を重ねた今回のひとり土鍋。特にこだわった点をハナコさんに紹介していただきましょう。

「まずは大きさと形。ふつうの一人土鍋って少し小さいものが多くて、例えば一人分のうどんをつくりたくても具材や水分があまり入らないんです。対してこれは一般的なサイズよりもやや大きめで、さらに底を直角に近い形に仕上げたことで、インスタント麺や冷凍うどんが横向きにすっぽり入ります。

うつわのようなフォルムの蓋も、デザインと機能性の両立を目指してこだわりました。少し異国のような雰囲気もあってかわいいですよね。蓋って平べったいものが多いですけど、栄養をたっぷり摂れるようにと蓋は高めにして、具材をたくさん入れても閉まるサイズ感にしています。

持ち手もあえて大きくとって、掴みやすい形に。裏返して置いたときに安定感がありますし、この蓋を取り分け皿や丼のように使っていただくこともできるんです。食器らしく見えつつ、蓋としても成立するようにと調整を重ねた部分ですね」」

「土鍋なのにそんなに重くないところもこだわった点のひとつです。作家もののようなどっしり感や繊細さも素敵ですが、今回の土鍋は毎日気負わず使えるものがいいなと思って。土鍋の機能は十分あるのに、さっと取り出せて気軽に使えます」

「注ぎ口があるのもこの土鍋ならでは。例えば汁物の場合、食事の最後に残った汁を土鍋から直接うつわに注げます。ちょっとしたことなんですけど、実はこういうのがすごく便利ですよね。

あとこれ、蒸気抜きの役割も果たしていて。蒸気を抜く穴ってふつうは蓋につきますけど、今回は蓋をうつわのようにも使いたいなと思ったので、あえて蓋に穴をあけなかったんです。でも蒸気は抜かないと溢れちゃうから、注ぎ口をつけて解決しました」

「料理の仕事をしていると、『いい道具の条件って?』と質問を受ける機会も多いのですが、私の答えは『ふと気づけば毎日のように手にとっちゃう道具』が『いい道具』。

今回ご一緒した土鍋もそんな存在になればいいなと、つい手にとる理由を何とか言語化しながら作りあげました。ぜひいろんな料理に使っていただけると嬉しいです」

「野菜がたくさん食べられるひとり土鍋」でつくる、手軽なレシピ

たくさんの調整を重ねて誕生したひとり土鍋。特におすすめの3つのレシピを、ハナコさんに教えていただきました。

ごま豆乳タンメン風うどん

<材料(1人分)>

・鶏もも肉…100g
・キャベツ…100g
・長ねぎ…10cm
・にんじん…50g
・ニラ…1/4束
・きくらげ(乾燥)…3g
・うどん(冷凍)…1玉
・豆乳(無調整)…1カップ
・水…1/2カップ
・オリーブオイル…小さじ1
・塩、こしょう…各少々

◆A
・すりごま…大さじ2
・みそ、みりん…各大さじ1

<作りかた>

1. 鶏肉は皮を取りひと口大に切る。キャベツは3cm角、長ねぎは斜め薄切り、にんじんは拍子木切りにする。ニラは3cm長さに切る。きくらげは水(分量外)で戻し、ひと口大に切る。

2. 土鍋にオリーブオイルを熱し、鶏肉、キャベツ、長ねぎ、にんじん、きくらげを炒める。全体がしんなりしたらニラを加えて塩、こしょうをふり、蓋に一度取り出す。

3. 土鍋に水を入れ、沸騰したらうどんを入れてほぐす。3分ほど煮て豆乳、Aを加える。沸騰直前まで温め、炒めた具材をのせる。

「この土鍋を一番使うのはやっぱりうどんやラーメンだろうなと、一つめのレシピは冷凍うどんを使ったものにしてみました。具材にしたのはたっぷりの炒め野菜。土鍋は空焚きNGのものも多いですが、今回のものは焼きの工程にも対応しているので安心して使えますね。具材を炒めたあとは蓋をバットとして使うと、同じ鍋でそのままスープまでつくれます。洗いものも少なく済むし、そのまま食卓に運べば冷めずに食べられるのも嬉しい点です」

和風鍋焼きビビンパ

<具材の材料(作りやすい量)と作りかた>

◆小松菜のごま和え

小松菜1/2束はさっと茹でて3cm長さに切る。ボウルにすりごま大さじ2、しょうゆ、砂糖各小さじ1を混ぜ、小松菜を加えて和える。

◆にんじんの塩きんぴら

にんじん150gはスライサーでせん切りにする。フライパンにごま油小さじ1を熱し、にんじんを加えて炒める。塩、七味唐辛子少々を振る。

◆紫キャベツのだし酢びたし

紫キャベツ1/4個(約300g)は千切りにして塩小さじ1をまぶし、10分ほど置いて水けを絞る。保存容器にだし汁2カップ、酢1/4カップ、薄口しょうゆ大さじ3、砂糖大さじ2を混ぜ、紫キャベツを30分以上漬ける。

◆しっとり鶏そぼろ

耐熱ボウルに鶏ひき肉200g、しょうゆ大さじ2、砂糖大さじ1を入れて全体を菜箸でよく混ぜる。小麦粉小さじ2を加えてさらに混ぜ、ラップをふんわりとかけて電子レンジ(600W)に2分かける。一度取り出して混ぜ、さらに2分かける。

◆薬味

大葉2枚はせん切り、みょうが1/2個は小口切りにする。混ぜて水に1分ほどさらし、水けを切る。

◆しらす

20g

◆卵黄

1個分

<作り方>

土鍋にごま油小さじ1を熱して全体に塗り、ごはん300gを敷き詰める。卵黄以外の具材をいろどりよくのせ、弱火にかけて5分ほどごはんを焼く。真ん中に卵黄をのせ、よく混ぜていただく。

「ごはんが焼けるという土鍋の特性を活かして、香ばしい鍋焼きビビンバを作ってみました。のせた具材は、作りおき未満の“仕込みおき”として普段から私の冷蔵庫にスタンバイしているもの。時間に余裕のあるときにつくっておけば、忙しくて料理をつくる気力がない日も、ご飯を焼いて具材をのせるだけで簡単に完成します」

豚肉と野菜の土鍋蒸し

<材料(1人分)>

・豚バラ薄切り肉…150g
・白菜…250g
・パプリカ(赤)…50g
・しめじ…1/2袋
・豆もやし…1/4袋
・青ねぎ(小口切り)…適宜
・酒…大さじ2

◆梅おろしポン酢だれ

・大根おろし…100g
・梅肉…大さじ1
・ポン酢…1/4カップ

◆ピリ辛みそマヨだれ

・みそ、マヨネーズ…各大さじ2
・豆板醤…小さじ1

<作りかた>

1. 豚肉は半分の長さに切る。白菜は4cm角、パプリカは長さを半分に切り3mm厚さの細切りにする。しめじは石づきを切ってほぐす。各たれの材料をうつわに合わせる。

2. 土鍋に半量ずつ白菜、豆もやし、しめじ、パプリカ、豚肉の順で重ね、残りを再度重ねる。

3. 酒をふり、ふたをして弱火にかけて10分ほど加熱する。青ねぎをのせてたれを添え、つけながらいただく。

「高さのある蓋の特性を活かしたレシピ。山盛りに入れてもちゃんと蓋ができるので、蒸し効果が得られるのがこの土鍋のよいところです。ほぼ野菜の水分だけで蒸すのでうまみもたっぷり詰まってますし、シンプルな味をたれで味変することで最後まで楽しく食べ続けられます」

最後にハナコさん、実際に使ってみていかがでしたか?

「まず、見た目がかわいいところが気に入っています。台所に出しっぱなしでもサマになるデザインですし、混ぜご飯や麺類をつくった時にそのまま食卓に出せるのもいいなって。

重すぎず、それでいて丈夫なのも毎日の料理で使いやすいですよね。欠けやすいと使うのも慎重になりますけど、これは日常使いできる頼れる感じがいいなと思いました。

あとは本当にすごくいっぱい入ります。極端な話ですが、雪平鍋くらいは入っちゃうなと。一人用ですけど、二人分くらいの調理は全然問題ない大きさで、ちょうどいいサイズですね。煮物にもいいだろうし、炒め煮みたいな調理にも活用したいです」

何をつくろうかなと迷った日は「今日も、土鍋まかせ」で、とりあえずこの土鍋を取り出してみる。

そんな風に、日々のごはんにそっと寄り添ってくれる、皆さまの頼もしい相棒になりますように。


ツレヅレハナコさん

食と酒と旅を愛する文筆家、料理研究家。著書に『まいにち酒ごはん日記』、『ツレヅレハナコのおいしい名店旅行記』、『ツレヅレハナコのからだ整え丼』など。食や日常を綴るSNSも人気。
https://www.instagram.com/turehana1


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野菜がたくさん食べられるひとり土鍋 白

文:谷尻純子
写真:奥山晴日