3月14日に贈る 奈良を描くハンカチ

こんにちは。さんち編集部の杉浦葉子です。

たとえば1月の成人の日、5月の母の日、9月の敬老の日‥‥日本には誰かが主役になれるお祝いの日が毎月のようにあります。せっかくのお祝いに手渡すなら、きちんと気持ちの伝わるものを贈りたい。この連載では毎月ひとつの贈りものを選んで、紹介していきます。

連載第3回目のテーマは「ホワイトデーに贈るもの」。2月14日のバレンタインデーにチョコレートをもらった男性は、そろそろお返しの準備ができたころでしょうか。ホワイトデーの起源が、実は日本のお菓子屋さんが考案した文化だったという説は、先日3月6日の記事でお話しましたが、定番の贈りもの「マシュマロ」だけでなく、今年はちょっと特別なハンカチを贈ってみるのはいかがでしょうか。

パリ万博から、88年の時を経て生まれたハンカチ

1925年、奈良で麻を扱ってきた中川政七商店の10代中川政七が、フランス・パリで開催された万国博覧会に「鳥草木紋」の手刺繍をほどこした手織り麻のハンカチーフを出展しました。それから88年の時を経て、2013 年にデビューしたハンカチブランド「motta(モッタ)」 は、幼いころ玄関先で耳にしていた「ハンカチ、持った?」という決まり文句からスタート。「肩ひじはらないハンカチ」をコンセプトに、素材の持つ自然なシワ感を大切にしたハンカチ「motta」は、手を拭き、汗を拭き、ときには涙をぬぐってくれる頼りがいのある布。誰もが親しみやすく使いやすい、日常使いのハンカチです。

1925年のパリ万博に出展した、手織り麻に「鳥草木紋」の手刺繍を施したハンカチーフ。
1925年のパリ万博に出展した、手織り麻に「鳥草木紋」の手刺繍を施したハンカチーフ。
2013年にデビューしたハンカチブランド「motta」のハンカチ。素材の持つ自然なシワ感を生かした商品を展開しています。
2013年にデビューしたハンカチブランド「motta」のハンカチ。素材の持つ自然なシワ感を生かした商品を展開しています。

フィリップ・ワイズベッカーが描いた奈良を贈る

「motta」の起源、1925年の万博開催地であるパリを中心に活躍するアーティスト、フィリップ・ワイズベッカー氏と、「motta」がコラボレーションしたハンカチがこの3月に発売されました。日本でも人気の高いワイズベッカー氏が、「motta」のために描いたのは奈良の風景です。

奈良と言えば、の「鹿」。奈良の伝統工芸である一刀彫の鹿をモチーフにしています。
奈良と言えば、の「鹿」。奈良の伝統工芸である一刀彫の鹿をモチーフにしています。
歴史ある建築物「五重塔」も、ワイズベッカー氏の手にかかればこのとおり。
歴史ある建築物「五重塔」も、ワイズベッカー氏の手にかかればこのとおり。
ちょうど3月のこの時期、東大寺二月堂で行われるお水取りに使われる椿の造花「のりこぼし」をモチーフに。
ちょうど3月のこの時期、東大寺二月堂で行われるお水取りに使われる椿の造花「のりこぼし」をモチーフに。

ワイズベッカー氏が描いた奈良の風景は、直線的で繊細な雰囲気をまといつつも、あたたかく懐かしさを感じるタッチ。四角いハンカチながら、素材の持つシワ感を大切にしている「motta」のハンカチとも、どこか繋がるところがあるように感じます。

この企画が始まった、ちょうど1年ほど前のこと。
ワイズベッカー氏と「motta」の担当者のはじめての顔合わせ。彼は自身の名前を記したあとポケットから金定規を取り出して、その定規で名前の下にていねいに1本の直線を引いたのだそう。定規は彼が絵を描くときに使う道具。彼が1本の線に何か大切なものを込める自然な所作こそ、彼の描く絵が人々を魅了する所以かもしれません。

その後、日本に到着した原画は、風合いのある古い紙にやわらかな芯の鉛筆で描かれたであろう奈良のモチーフがそっと佇んでいました。その雰囲気を壊さないように、その魅力が伝わるように。微妙な力を調整しながら、シワ感のある「motta」の生地の上に、1枚1枚「捺染(なっせん)」という方法で染められた絵は、あたたかみのある仕上がりになっています。

ハンカチというアイテムは、いつも持ち主のすぐそばに寄り添うもの。遠くパリの地から奈良に思いを馳せて描かれたワイズベッカー氏の絵は「motta」のハンカチにのって、贈りものとしてたくさんの人の元へ届くのではないでしょうか。

「フィリップ・ワイズベッカー ×motta 」コラボレーションハンカチは、3柄6種の展開。
「フィリップ・ワイズベッカー × motta 」コラボレーションハンカチは、3柄6種の展開。

また、この発売を記念して期間限定で原画3点が展示されます。
3月は「中川政七商店 表参道店(東京)」にて。
4月は「遊 中川 本店(奈良)」にて。
※営業時間は店舗に準じます

大切な人と一緒にワイズベッカー氏の原画を楽しんだあと、このハンカチを贈る。そんなホワイトデーも素敵だな、と思うのでした。

<掲載商品>
「フィリップ・ワイズベッカー ×motta」コラボレーションハンカチ
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Philippe WEISBECKER (フィリップ・ワイズベッカー)
パリとバルセロナを拠点にするアーティスト。1968 年から 90 年代まで N.Y.に在住。フランス政府によるアーティスト・イン・レジデンスの招聘作家となり、4ヶ月間の京都滞在経験も。展覧会は世界の各都市で50回以上、日本ではクリエイションギャラリー G8、クラスカなど各地で開催。2014 年秋には NY のギャラリーで大規模な個展を開催。現在日本で出版されている作品集は、『INTIMACY』『104Batiments』『POBLE NOU』『ACCESSOIRES』『MARC’S CAMERAS』『HAND TOOLS』など。
http://bureaukida.com/philippe-weisbecker

文:杉浦葉子

2月14日に贈る 日本一の靴下

こんにちは。さんち編集部の尾島可奈子です。

たとえば1月の成人の日、5月の母の日、9月の敬老の日‥‥日本には誰かが主役になれるお祝いの日が毎月のようにあります。せっかくのお祝いに手渡すなら、きちんと気持ちの伝わるものを贈りたい。この連載では毎月ひとつの贈りものを選んで、紹介していきます。

連載第2回目のテーマは「バレンタインに贈るもの」。愛を伝える日、贈るものの定番は何と言ってもチョコレートですが、実はヨーロッパでは、恋人探しにあるアイテムの力を借りる風習があるそうです。それは靴下。男性が女性と話しながら脚を組み、チラリと靴下を見せたらそれは彼女を愛しているサイン。値段も手頃で何足あっても困らないので、異国のお話にあやかって贈りものにするのもいいかもしれません。

そんなわけで2月の贈りものは靴下に決定。今日は靴下を編み続けて生産量日本一の奈良県に、贈りものにぴったりの靴下を探しに行きましょう。最近は履く人や季節、目的に合わせて様々なタイプの靴下が作られているようですよ。

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奈良県の靴下生産量は国内シェア約34%(平成24年統計)で全国第1位。ソックス丈に限ればなんとシェア率約56%(同上)にものぼります。県内では北西部の大和高田市、広陵町、香芝市一帯にその生産が集中。もともと綿織物の産業が発展していたこの一帯に、明治に靴下の編み立て機が持ち込まれ、次第に農家の閑散期の副業として靴下作りが広まっていったそうです。

そんな日本一の靴下産地の技術を生かして商品開発をしている靴下ブランドがあります。奈良の県番号から名前を取った「2&9(ニトキュウ)」。ブランド名の示す通り、商品づくりを奈良県内の靴下工場に限定。「しめつけないくつした」「ぬげにくいくつした」など機能や履き心地を追求した靴下を、県内の各メーカーさんとオリジナルで開発しています。2&9のアイテムを例に、日本一の靴下産地ならではの個性豊かな靴下をいくつか追ってみましょう。

しめつけないくつした

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ストレッチ性の強い糸を極力使わずに、細い糸を2本合わせて編むことで足をしめつけないように作られた靴下。通常履き口に入るゴム糸をあえて少し低い位置に入れることで、ずり落ちを防ぎならゴム跡がつきにくい仕様に。昨年11月にさんちが取材した御宮知靴下さんと何ヶ月も試作を繰り返したという、2&9のデビューアイテムにして一番の人気シリーズです。

ぬげにくいくつした

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靴の中でするんと脱げてしまいがちなフットカバー。スポーツソックスを得意とし、世界的な大手スポーツブランドの靴下も手がける株式会社キタイさんと「どうしたらぬげにくくなるか」を研究して生まれました。2cm刻みの細かなサイズ対応や足の形にフィットするポケット状のかかとなど、キタイさん最新の立体成型技術を駆使して作られています。「もっとぬげにくくなりました」と自信を持って改良版の「2」を新たに出すところに、メーカーさんと一対一で商品開発をしているファクトリーブランドらしさを感じます。

におわないくつした

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インパクト大なネーミングの靴下には、越前和紙のふるさと福井県産の和紙繊維が編みこまれています。綿に比べて吸水性が高く匂いを分解する効果がある和紙繊維は、消臭・抗菌に優れ丈夫なので、何と宇宙滞在用の服にも採用されているそう。和紙繊維が靴下の内側で水分量を調節して、蒸れにくくさらりとした履き心地を保ってくれます。父の日にも人気が高いそうです。

しめつけるくつした

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「しめつけないくつした」の逆を行く「しめつけるくつした」は、足首に強めの圧をかけ、ふくらはぎにかけて圧がゆるやかになる構造。血の流れをサポートしてむくみを防いでくれます。土踏まず部分にはゴム糸が入っていて、足裏を刺激して足の疲れを和らげてくれるそうです。敏感肌の人でも履きやすいよう、糸は人間の皮膚に近く蒸れにくい絹糸が採用されています。立ち仕事をしている女性に人気があるそうで、バレンタインを機会にお世話になっている女性に贈るのもいいかもしれません。

山を登るくつした

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その名の通り、山登りやハイキングの足元を考えて作られた靴下。疲れとともに指先が上がりづらくなるのを、つま先立体構造が助けてくれます。足袋型なのは親指に力を入れやすいように。生地は長時間の歩行による足の疲れを和らげるよう、クッション性のあるパイル編み。春先のお出かけシーズンに向けて「一緒に行こう」と贈ったら、先の楽しみがひとつ増えそうですね。

足の形は人によって千差万別。合わせる靴や体調によってもコンディションが変わります。だから「機械に合わせて靴下を作るというより、靴下に合わせて機械をセッティングします」とは、以前さんちでご紹介した御宮知靴下さんの工場長、山下さんの言葉。その時工場に伺って感じたのは、糸の素材、太さ、編み方、デザイン、作る機械など、靴下は無数の条件のかけ算で作られている、ということでした。一つひとつの条件を変えていくことで、全く顔の違う靴下が生まれる。それはひとえに履く人を思ってこそ。

大切な人の足元を包むもの。ぜひ、贈る人を想いながら「これ!」というひと品を見つけてみてくださいね。

<掲載商品>
2&9商品一覧
しめつけないくつした
ぬげにくいくつした
におわないくつした
山を登るくつした


文:尾島可奈子

※掲載商品は、2017年2月時点のものです。