敬老の日に贈る。メガネの聖地で作られた美しい携帯ルーペ

こんにちは。ライターの小俣荘子です。

たとえば1月の成人の日、5月の母の日、9月の敬老の日‥‥日本には誰かが主役になれるお祝いの日が毎月のようにあります。せっかくのお祝いに手渡すなら、きちんと気持ちの伝わるものを贈りたい。この連載では毎月ひとつの贈りものを選んで、紹介していきます。

敬老の日に、元気な日々を過ごすための贈りもの

今回のテーマは「敬老の日」です。

「敬老の日」は、1947年に兵庫県の多可郡野間谷村 (たかぐんのまだにむら、現在の多可町八千代区) で、「老人を大切にし、年寄りの知恵を借りて村作りをしよう」と、9月15日に敬老会を開いたのが始まりといわれています。

当初は「としよりの日」、その後は「老人の日」と呼ばれましたが、1966年に祝日法で国民の祝日として「敬老の日」と定められました。祝日法が改正された現在は、9月の第3月曜日に制定されています。

「多年にわたり社会につくしてきた老人を敬愛し、長寿を祝う」とされる敬老の日。国が定める「高齢者」は65歳以上ですが、現代の日本では、いつまでも若々しくてお元気な方々がたくさんいらっしゃいます。

結婚や初孫、還暦や古希、喜寿といった節目をきっかけにお祝いを始めることが一般的ですが、両親や祖父母、お世話になっている人生の先輩に対して感謝を伝え、これからも元気で日々を楽しんでくださいね、という思いが伝わるお祝いを贈りたいですね。

メガネの聖地 鯖江で作った「読む」「見る」のお助け道具

そこで選んだのは携帯ルーペ、その名も「読書グラス」です。

めがね産業110年以上の歴史を持ち、世界三大産地のひとつである福井県・鯖江市。国産品としての国内めがねフレームのシェアは、なんと90%以上を誇ります。そんな鯖江めがねの製法を活かして作られました。

読書グラス
読書グラス。軽くて手に馴染み、扱いやすいのは、長年培ってきた鯖江のめがね作りの技術があってこそ

新聞や書籍を読む際、お買い物の時など、細かい文字が見づらい場面で、さっと手に取って使えるデザインです。本体上部に小さな穴が開いているのもポイント。首から下げたり、手からすべり落としてしまわないようにストラップを通したりできます。

ストラップを付けてすぐに使えるように
紐やストラップを付けて使いやすく

最近、見えにくいけれど‥‥

この読書グラス誕生のきっかけとなったのは、ある先輩女性の言葉でした。

「まだ老眼鏡はかけたくないけれど、かと言って素敵な携帯ルーペにはなかなか巡り会えない。私に合うものが欲しい」

制作チームによる、アクティブな大人の女性がスタイリッシュに持てる携帯ルーペづくりがはじまりました。

目指したのは、使い心地の良さと美しさが共存するもの。

フレームのカーブの角度は、手に馴染むなめらかさと美しさを追求し、何度も調整されました。鯖江の職人さんの腕の見せ所です。レンズの度数は、初めて老眼鏡を使う人が使いやすい度数に設定されています。

大きさは、小さなハンドバッグに忍ばせられるカードサイズ。「おしゃれして買い物にでかけても、店頭で値札が見えない」という声を受けて、お出かけ先で取り出しやすくしました。また、レンズ部分が傷つかないように収納して持ち歩ける、専用の小袋も付いています。

色は鯖江のメガネとしてスタンダードな黒と茶色の2色展開です。

レンズ部分が傷つかないよう、収納して持ち歩ける専用の小袋付き
フレームカラーと合わせた専用の小袋付き カラー:茶
黒のフレーム
カラー:黒

まだ老眼鏡にためらいがあったり、購入に迷っている方も、贈られたら便利で嬉しいもの。贈りものとしても選びやすいように化粧箱も用意されています。

贈りものとして使いやすいように化粧箱に入っています
化粧箱に入っているので贈りものにも

「見える」って、好奇心や楽しみを広げてくれる重要な機能。道具を使うことで、年齢を重ねても毎日を充実して過ごせたら。日々の暮らしの中で役立ててもらえる実用的な贈りものは、お互いにとって嬉しいものですね。

<掲載商品>

鯖江のメガネ屋さんで作った読書グラス(中川政七商店)

文:小俣荘子

こちらは、2017年9月11日の記事を再編集して掲載いたしました。

父の日に贈る、中川政七商店の「靴のお手入れ道具」

たとえば1月の成人の日、5月の母の日、9月の敬老の日‥‥日本には誰かが主役になれるお祝いの日が毎月のようにあります。せっかくのお祝いに手渡すなら、きちんと気持ちの伝わるものを贈りたい。

この連載では毎月ひとつの贈りものを選んで、紹介していきます。

父の日の贈りもの、中川政七商店とコロンブスが作った「靴のお手入れ道具」

今回のテーマは「父の日に贈るもの」です。

もともとアメリカで母の日が始まった後、せっかくならお父さんに感謝する日も、と始まった記念日。

すでに当日なのでもうプレゼントは買ってある、という人も多いかもしれませんが、今回はわたしが以前に父の日用に探して、つい自分も欲しくなったものをご紹介します。

それが中川政七商店とコロンブスが作った「靴のお手入れ道具」。

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国内トップシェアを誇る靴のお手入れアイテムの老舗、コロンブスと中川政七商店が「初めての人でもまずこれだけあればOK」な基本セットとして作ったのが、今回の「靴のお手入れ道具」です。

働くお父さんなら仕事上、ベーシックな色の革靴を何足か履きまわす、という人も多いのではと思います。もともと持っている愛用のものに磨きをかける道具なら、好みを選ばず喜んで使ってもらえそうです。

靴のお手入れクリームの秘密

内容は、靴のほこりを払うブラシ、汚れを落とすクリーナーに保革クリーム。付属のカットクロスにつけて使います。

中川政七商店「靴のお手入れ道具」

この靴を手入れするクリーム、何からできているかご存知ですか?実は動植物の、様々な成分のミックスでできているのです。

革用クリームの開発は、革の開発との追いかけっこ。

トレンドに合わせて新しい質感の革が開発されると、革用のクリームもそれに合ったものが作られます。

コロンブスさんの製造現場の様子
コロンブスさんの製造現場の様子

今回の「お手入れ道具」に入っているのは、靴以外にもハンドバックや革小物にも使えるオールラウンドタイプのクリーム。

主な成分は「カルナバ」「スクワラン」「コーンスターチ」。カルナバは南国に生息するヤシの木、スクワランはサメから抽出された保湿成分、そしてコーンスターチはとうもろこしです。

自然界ではおよそ出会うはずのなかったもの同士がミックスされて、それぞれ靴のツヤ出し、保湿、表面をサラッとさせる、などの効果を発揮します。

革ごとに適切な成分を選び抜き、目指す効果を最大に発揮できる塩梅で組み合わせるのが、開発メーカーの腕の見せどころ、というわけですね。

プロに聞くお手入れのコツ

中川政七商店「靴のお手入れ道具」

営業の窪田さんに、靴のお手入れのコツを伺いました。

「革製品は、しっかりとお手入れすることで長持ちします。大切な靴を長く履き続けるにはビフォアケア、つまり履く前にコンディションを整えておくことが重要です。

革も人間の肌と同じです。革の組織の中には15~18%の水分が含まれていて、そのままにしておくと表面から油や水分が抜け、カサカサ肌になってしまいます。

ひどくなるとケバケバが出たりひび割れを起こします。人間なら薬などで治りますが、革は一度なってしまうと修復不可能です。

そのため革本来の風合いや潤いを守るには、ケアする事がとても大事になるのです。

きちんとお手入れすれば、天然皮革に勝る素材はありませんよ!」

また、「靴につく汚れは水性なのか油性なのかわからない場合があるので、このクリーナーは両面の汚れに対応できるように作られています」とのこと。

日常生活に密着したお手入れアイテムのお話は面白く、奥深く、使う人の生活を親身に考えて開発されているのがうかがえました。

「いい靴を履くと、その靴がいい場所へ導いてくれる」

これは、イタリアの格言だそうです。

よく手入れされた靴は見た目の印象をよくするだけでなく、履いて過ごす時間や気持ちをぐっと充実させてくれるように思います。

父の日の贈りもの。

「ありがとう」と面と向かって言うのはなかなか照れくさいですが、使う人の日常を思って選んだものなら、きっと喜んでくれるはず。

贈った後に一緒に使ったら、家族の会話も増えそうですね。

<取材協力>
株式会社コロンブス
東京都台東区寿4-16-7(本社・ショールーム)
http://www.columbus.co.jp/

<掲載商品>
靴のお手入れ道具(中川政七商店)


文:尾島可奈子


*2017年6月掲載の記事を再編集して掲載しました。湿気の多い梅雨から日差しの強い夏に向かうこの時期。寒暖差の激しい今から、しっかり靴のお手入れをしておきたいなと思います。

二人の門出に贈る 男女の理想の違いを追求したタオル

こんにちは。ライターのいつか床子です。

たとえば1月の成人の日、5月の母の日、9月の敬老の日‥‥日本には誰かが主役になれるお祝いの日が毎月のようにあります。せっかくのお祝いに手渡すなら、きちんと気持ちの伝わるものを贈りたい。この連載では毎月ひとつの贈りものを選んで、紹介していきます。

第10回のテーマは「ブライダル」。
気候がおだやかで晴れ間も多い10月は、多くの結婚式が開かれる絶好のシーズンです。ゲストも服装を選びやすく、秋の味覚を取り入れたおいしいおもてなし料理にも心が踊りますね。

さて、今月のさんちが特集している島根県の出雲は、縁結びとゆかりの深い土地です。
全国的には神無月、出雲では神在月と呼ばれている旧暦の10月。全国の八百万 (やおよろず) の神様たちは出雲大社に集合して、男女を始めあらゆる縁結びについて話し合う「神議り (かみはかり) 」と呼ばれる大会議を開きます。

神様の世界でも、人の世界でも、10月はご縁の糸が深く結ばれる特別な時期のようですね。そこで今回の贈りものには縁結びの「糸」にちなんで、結婚祝いにぴったりのタオルを選んでみました。

男性と女性はタオルの理想も違う

今回ご紹介する「THE TOWEL」が画期的なのは、女性用と男性用の2つのバリエーションがあることです。「タオルに男性用と女性用があるってどういうこと?」と不思議に思う人も多いでしょう。

開発したのは、世の中の新たな定番を生み出すことを目指すブランド「THE」。オリジナルタオルを作るにあたって、女性と男性で必要とするタオルの質感に違いがあることに気付いたそうです。

WHAT A WONDERFUL TOWEL for LADIES!

女性用タオルの箱

女性用の「THE TOWEL for LADIES」は、肌を優しく包み込む極上の柔らかさが魅力。糸を撚 (よ) る回数を抑える「甘撚り (あまより) 」製法を使うことで、しっとりした肌触りを実現しています。

さらに、甘撚り製法の弱点である毛羽立ちやすさを防ぐため、パイル糸には特殊な「コンパクト糸」を使用。縦糸と横糸には、マカロニのように中心が空洞で吸水性・速乾性も高い「中空糸」を使い、軽量化に成功しました。

女性用タオルの質感

WHAT A WONDERFUL TOWEL for GENTLEMEN!

男性用タオルの箱

一方で、男性用に開発された「THE TOWEL for GENTLEMEN」は、ごしごし思い切り拭いて水気を取れるようにと、糸は通常の2倍の密度で織り上げられています。

女性用と同じく中空糸を使用することで軽やかな使い心地を実現しつつ、横糸の3分の1に麻 (リネン) を使ってタフさと速乾性を追求。毎日使ってもへたれず、豪快に使用できます。

見た目にも女性用との質感の違いがわかります
見た目にも女性用との質感の違いがわかります

タオルはいずれも日本最大のタオルの産地であり、世界トップの製造技術を誇る今治で製造。糸には絹のような光沢がある綿「スーピマコットン」を使っています。

実はこの糸の使用量も「理想のタオル」を実現する鍵のひとつ。バスタオルを一本の糸に撚り直すと、市販品はおよそ6キロメートル。

それに対して「THE」の女性用は10キロ、男性用はなんと17キロ。従来のタオルより、圧倒的に使われている量が多いのです。糸から考え抜かれた使い心地、というわけですね。

タオルは毎日使うもの。心地よいタオルがある暮らしは、日々をさりげなく、それでいて確実に豊かなものにしてくれるはず。新しい門出を迎える大切な二人に、お互いの違いもどうぞ楽しんで、とちょっぴりお節介なメッセージを託くして贈りたくなります。

タオルにしっかりと織り込まれた糸のように、二人のご縁が固く、末長く結ばれますように。

<取材協力>
株式会社THE
http://the-web.co.jp/products/towel-for-ladies

<掲載商品>
THE
THE TOWEL for LADIES
THE TOWEL for GENTLEMEN

文:いつか床子

帰省の手土産に贈る 花ふきん

こんにちは。ライターの石原藍です。

たとえば1月の成人の日、5月の母の日、9月の敬老の日‥‥日本には誰かが主役になれるお祝いの日が毎月のようにあります。せっかくのお祝いに手渡すなら、きちんと気持ちの伝わるものを贈りたい。この連載では毎月ひとつの贈りものを選んで、紹介していきます。

連載第8回目のテーマは「帰省のときの贈りもの」です。もうすぐお盆。夏休みを利用して、ふるさとに帰省される方も多いのではないでしょうか。普段なかなか帰ることができないからこそ、せっかくの帰省は、久しぶりに会う親戚や地元の友人に、心ばかりの、だけどとっておきのものを持ち帰りたい。でも、何を手土産にすればいいか、頭を悩ませる方もいらっしゃるかもしれません。

特に夏場の贈りものは、ほかの季節より気を遣います。気温が高いので食べ物を選ぶといたむのが心配ですし、すぐに冷蔵庫・冷凍庫へ入れなくてはならないものだと、保管に困ってしまうことも。
以前、お酒を手土産に選んだときは、帰省の荷物だけでいっぱいなのに、手土産の重さで移動が大変だったこともありました。

・上質だけど相手に気を遣わせないささやかなもの
・気軽に使ってもらえるもの
・帰省では「電車や飛行機で移動するときにかさばらないもの」
この3つに当てはまるものということで、今月の贈りものには、「花ふきん」を選んでみました。

奈良の蚊帳(かや)生地でつくったふきん

花ふきんは奈良県の伝統産業である蚊帳生地を再生し、ふきんに仕立てたもの。もともと蚊帳は中国から伝えられ、日本では紀元5世紀頃から作られるようになったと言われています。
奈良は蚊帳生産の原料となる麻がよく取れたことから産地として発展を続け、全国で生産される蚊帳の約8割を担っていました。昭和30年代のピーク時には全国で約250万張りもの蚊帳が売れていたそうです。

時代とともに需要は減り、現在では蚊帳を使う家庭がほとんど見られなくなってしまいましたが、蚊帳生地が持つ優れた吸水性、速乾性に着目し、家庭で気軽に使える機能的なふきんとして新たに生まれ変わりました。

用途いろいろ、使うたび手になじむ感触

花ふきんを広げてみると、その大きさに驚くかもしれません。58センチメートル四方のサイズは一般的なふきんの約4倍の大きさ。
食器を拭いたり、台拭きにしたりと、いわゆる普通の「ふきん」として使っていただけるほかにも、出汁漉しや野菜の水気取りといった料理の下ごしらえやお弁当を包む風呂敷代わりにも活躍します。

中川政七商店 花ふきん
程よい目の細かさ
中川政七商店 花ふきん
大判なのでグラス全体をしっかりと拭ける
中川政七商店 花ふきん
鍋つかみにも1枚でしっかり
お弁当包みにも

また、目の荒い蚊帳生地を2枚仕立てにしており、4〜8枚仕立てのものが多い一般的なふきんより薄いのも特徴です。
ふきんは使うたびに衛生面が気になってしまうのですが、花ふきんはたたんで使うとしっかり水を吸い、広げるとすぐに乾くので、いつでも清潔に使うことができるのも嬉しいですよね。

おろしたては、ノリがついているためパリッとしていますが、何度も洗って使い続けることで、くったりとした柔らかい肌ざわりになっていきます。
使っていくと、使いはじめより一回りほど小さくなりますが、その頃には使う人の手になじんだ柔らかい風合いになっているはずです。

中川政七商店 花ふきん
ノリを落とした後は一回りほど小さくなる

暮らしのそばでいつも使い続けたい花ふきん。2008年にはグッドデザイン賞金賞を受賞するなど、今や人気商品になっています。

一度使うと、上質な肌ざわりや、その手軽さ・丈夫さに手放せなくなる人も多いそう。カラーラインナップも豊富なので、用途に合わせて使い分けたい方には、セットで贈っても喜ばれると思います。今度の帰省のおともにいかがでしょうか。

<掲載商品>

花ふきん(中川政七商店)

文:石原藍

母の日の贈りもの、一生ものの日傘

こんにちは。さんち編集部の尾島可奈子です。

たとえば1月の成人の日、5月の母の日、9月の敬老の日‥‥日本には誰かが主役になれるお祝いの日が毎月のようにあります。せっかくのお祝いに手渡すなら、きちんと気持ちの伝わるものを贈りたい。この連載では毎月ひとつの贈りものを選んで、紹介していきます。

第5回目のテーマは「母の日に贈るもの」。今年は5/14です。ご準備はお済みでしょうか。定番は何と言ってもカーネーションですが、ものを贈るとなると、あれこれ迷ったりもします。今年は奮発していいものを贈ろう、という人に、おすすめしたいものがあります。それはこれからの季節に活躍する日傘。それも、一生付き合える日傘です。

傘と言うとちょっとした衝撃で骨が曲がってしまったりして、気に入ったものでも数年と使い続けるのは難しい印象ですが、東京・台東区にある洋傘店、前原光榮商店さんの傘は一度買ったらずっと付き合える一生ものの傘として人気です。

皇室御用達の洋傘

前原光榮商店さんの歴史は1948年、初代・前原光榮さんが東京にて高級洋傘の企画・製造・販売を開始したところから始まります。1961年には株式会社化し、1963年、皇室からのご用命を受けるように。傘づくりの工程は、「生地」づくり、「骨」組み、生地を骨組みに貼り合わせていく「加工」、手に握る「手元」づくりの4つに大別されます。その全てを、前原さんでは人の手で行っています。

伝統的な機が織りなす生地づくり

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かつて甲斐織物の産地だった山梨県の富士山麓の伝統的な機(はた)を使って、時間をかけてオリジナルの生地を織っています。一方、こうした生地を扱うノウハウを生かして、他社ブランドの生地とコラボした商品づくりも行われています。

一本の角材から始まる骨づくり

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中棒(中心の棒部分)は元は一本の角材から削り出されたもの。自然のものだからこその木地のクセや曲がりを熱を加えながら整えて、少しずつ真っ直ぐに仕上げるそう。ここに生地を張り合わせる骨を組んでいきます。

手製の木型でこそ生み出せる傘のシルエット

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傘の生地は、よく見ると三角形の生地を縫い合わせてあるのがわかります。大量生産傘の場合、生地を何枚も重ねてまとめて裁断をしますが、前原さんの場合は4枚重ねでの裁断。そうすることで効率は悪くとも、より精度高く生地を裁断できると言います。職人さんは自前の三角型の木型をそれぞれに持っていて、その形に合わせて生地を裁断しているそう。こうして生地の形を細やかに整えることで、変につっぱったりたわんだりしない、開いたときに美しいカーブを描く傘のシルエットが生まれます。

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天然素材を生かした手元

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前原さんの傘の手元はそのほとんどが天然素材。寒竹、楓、エゴの木、ぶどうの木と、素材によって傘の印象もまたガラリと変わるそうです。面白いのはその加工方法。本来真っ直ぐ生えている木材にカーブを描かせなくてはならないため、火で熱を加えたり、熱湯につけて柔らかくしたり。特性に合わせて素材と向き合います。

一生付き合える理由

こうした丹精込めた傘づくりの工程を追うだけでも、特別な贈りものにふさわしいように思えますが、中でも前原さんの傘を贈りものにおすすめしたい理由は、その修理サービスにあります。前原さんでは、傘がどんなに大きく損傷してしまってもパーツをなくしてしまっても、替えの材料在庫がある限りは、自社で作った全ての傘の修理を引き受けています。全ての工程を人の手で行っているからこそ、壊れてしまったときも人の手で直すことができるのですね。
そして何より嬉しいのが、生地がくたびれてしまったら、新しい生地と張り替えができること。同じ生地でも、全く違う生地にも、相談次第で張り替えができるのです。悪いところをなおす、という消極的な修理ではなく、長く傘を愛用してもらうための、積極的な修理。一生ものの傘、の理由はここにあります。

日傘をさす立ち姿は、女性を一層上品に、女性らしく見せてくれるように思います。いいお母さんでいて欲しいというよりも、いつまでも美しく、素敵な女性でいて欲しいと願う母の日の贈りものに、ずっと美しく、持つ人を装う日傘を一本、贈るのはいかがでしょうか。

<関連商品>
日傘 ならい小紋

<取材協力>
前原光榮商店
*修理は有料で、傘の状態によって金額が変わります。


文:尾島可奈子

新生活に贈る 古都の筆ペン

こんにちは。さんち編集部の尾島可奈子です。

たとえば1月の成人の日、5月の母の日、9月の敬老の日‥‥日本には誰かが主役になれるお祝いの日が毎月のようにあります。せっかくのお祝いに手渡すなら、きちんと気持ちの伝わるものを贈りたい。この連載では毎月ひとつの贈りものを選んで、紹介していきます。

第4回目のテーマは「新生活に贈るもの」。4月は入学、入社と新生活を始める人も多いと思います。新たなスタートを切る人への贈りものには、名刺入れや腕時計など、身近に使えるちょっといい小物を贈るのが定番です。

今回選んだのは筆ペン。自分ではなかなか買いませんが、節目の挨拶や冠婚葬祭など、大人になるほど使う機会が増えていく、ひとつ持っておくと心強い道具です。聞けば書道発祥の地、奈良で300年以上続く筆やさんが作る筆ペンがあるとのこと。万年筆のようにインクを補充して長く使えるそうなので、贈りものにもぴったりです。早速どんなものか、覗いてみましょう。

日本に筆が伝来したのは飛鳥時代。お手本としていた中国の文化とともに日本にやってきました。さらに国内でも筆が作られるようになったのは平安時代に入ってから。空海がその製法を唐から日本に持ち帰ったのが始まりと言われています。「弘法も筆のあやまり」ということわざで有名な空海ですが、なるほど日本での書道の起源に深く関わっていたのですね。その空海が筆の作り方を伝えたのが大和の国、今の奈良です。

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1716年創業の筆メーカー、あかしやさんは、もともと奈良に都があった時代に朝廷の保護を受けて大きな力を持った「南都七大寺」に仕える筆司(筆職人)でした。七つのお寺とは興福寺・東大寺・西大寺・薬師寺・元興寺・大安寺・法隆寺(唐招提寺とする場合も)。僧である空海がわざわざ筆作りを他国から学び伝えたように、お寺にとって書をしたためる道具はなくてはならない存在だったのですね。

ちなみに美しい阿修羅像が一躍ブームとなった興福寺は、日本で初めて墨を作った場所でもあります。近くには今も伝統的な製法で「奈良墨」を作り続ける、古梅園さんという墨やさんがあります。

そんな日本の書道文化発祥の地で、江戸時代の中ごろに筆問屋として看板を掲げたのが、今に続く筆メーカーとしてのあかしやさんの始まり。国の伝統的工芸品に指定された「奈良筆」を今も機械を入れず、全て人の手で作り続けています。

筆ペンも、もちろん筆職人による手作りです。持ち手となる軸も奈良筆と同じ天然の紋竹が使われています。インクがなくなればカートリッジを交換して補充できるのも嬉しいところ。本物の筆で書いているような墨の濃厚さとコシのある滑らかな書き心地を長く楽しめます。

コシのある筆先は、繊細な細い線から力強い太い線まで使い分けて表現できるのが特長。
コシのある筆先は、繊細な細い線から力強い太い線まで使い分けて表現できるのが特長。
天然の破竹を使った軸。写真は中川政七商店オジリナルの、正倉院宝物からとった鹿の焼印入りのもの。
天然の破竹を使った軸。写真は中川政七商店オジリナルの、正倉院宝物からとった鹿の焼印入りのもの。

スマートフォンやタブレットで文字が書けてしまう今でも、会社や自宅の机の上には必ずペンケースがあります。ボールペンや油性ペン、蛍光マーカーと並ぶ中に、すらりと一本、趣のある筆ペンが入っていたら。何か一筆添えるときに、さっと筆文字で言葉を贈れたら。それだけでちょっといい大人になれるような気がして、なんだか人に贈る前に、自分が欲しくなってきてしまいました。

<掲載商品>
中川政七商店
筆ペン 鹿紋

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<取材協力>
株式会社 あかしや


文:尾島可奈子