こんにちは。ライターの小俣荘子です。
私はここ数年、洋装と和装それぞれ半分ずつくらいの割合で外出するようになりました。慣れてしまうと思いのほか楽しく快適なものですが、出かける先々で「大変でしょう」と労いの言葉をかけられてしまったり、不安を口にされつつも興味を持ってくださる方にたくさん出会いました。きものは現代の装いとして身近なものではなくなっている一方で、いつかは着てみたいと興味を持っている方も多いようです。 洋服と同じようにきものも日常に取り入れられたら、毎日はもっと彩り豊かになるはず。連載「きものを今様に愉しむ」では、きものとの付き合い方や、愉しむヒントをご紹介してまいります!
ゆかた姿でおでかけ
夏は普段きものを着ない方も和装になる方が増える時期ですね。そう、ゆかたの季節です。最近では、洋服のブランドでのゆかたラインの展開や、リーズナブルなセットアップ販売のゆかたなど、身近な場所での購入機会も増えました。ゆかた姿の方向けの来店サービスのあるお店や、ビアガーデンでのゆかたパーティなど、お祭りや花火大会だけでなく、ゆかた姿で出かけることでより楽しめる機会もたくさんあります。男女問わず、お昼間からゆかたを纏う方を見かけることも多くなりました。かく言う私も、友人とゆかたランチやお出かけを愉しんでいます。
そんな身近になったゆかたではありますが、今年初めてチャレンジしようと思っている方には着こなしや着付けなど不安な点もきっと多いはず。単発の着付けレッスンに1度行ってみたり、動画を見ながらほんの数回練習すればゆかたはすぐに自分で着られるようになりますので、どうぞご安心を。慣れてしまえば思いのほか簡単です。また、必要なのは帯とゆかたと腰紐などのシンプルな小物のみなのですぐに揃えられます。加えて、帯留めなどのきものの小物や、洋服のアイテムなどを加えてアレンジして愉しむこともできるのです。
今回は、「きものが着たくなる呉服店」をコンセプトに、呉服に馴染みのない現代人も気軽にライフスタイルに取り入れられるように提案している「大塚呉服店 (おおつかごふくてん) 」さんへお邪魔して、夏のゆかたの着こなしについてお話を伺ってきました。
自由なアレンジで、キレイめにもカジュアルにも
一見、きものを纏っているようにも見える店頭のトルソー。実は2体ともゆかたをアレンジしたものなのです。ゆかたの下に衿がついていたり、帯締めや帯揚げ、帯留めを加えていたり、少しドレッシーな装いです。元々は湯浴みや部屋着として使われていたゆかた(旅館でもお風呂上がりに纏いますね)。おでかけに纏うことが一般的になった現代でも、そのままのシンプルな着こなしで出歩くのには少し恥じらいのある大人の女性も多いのだとか。近年のトレンドとして、きもののような雰囲気にアレンジして愉しむスタイリングが人気となっているそうです。
簡単に取り入れることのできるアレンジや、スタイリングのポイントについて店長の森村 祐妃(もりむら・ゆき)さんが詳しく教えてくださいました。
衿をはさんで、きもの風に
きものでは、長襦袢 (ながじゅばん) と呼ばれる衿付きのインナーの上からきものを重ねますが、ゆかたの場合は直接下着の上にゆかたを纏うのが基本のスタイルです。アレンジして衿を重ねると、華やかさや、きちんと感のある雰囲気が生まれます。
ゆかたの下着はタンプトップなど洋服用のものでも問題なく着られますが、写真のように衿が付けられる肌着もあります。この襟の部分に半衿をつけて着ると先ほどのような首もとに。(専用の半衿でなく、お気に入りのスカーフや手ぬぐいでアレンジされる方もいらっしゃいます。)
シーンに合わせて履き物もアレンジ
続いて、ゆかたの時の履き物についても伺いました。
スタンダードな下駄を合わせるスタイルはもちろんのこと、洋装のサンダルを合わせたり、草履風の下駄を合わせても少し改まった雰囲気になるそうです。ストラップ付きのデザインのサンダルなどを合わせるときは、足首まわりのデザインとの相性に注意。足首のベルトを見せたくて裾を短めにしてしまうと子どもっぽくなってしまうこともあるのだとか。上品な大人の装いにしたい場合は「くるぶし丈」くらいがおすすめとのこと。また、「裾が短い方が歩きやすいと思われる方も多いですが、かえって足首のところで裾が擦れて違和感があったりもするので、短くしない方が着心地も良く、快適に歩けますよ」と教えていただきました。
レースの足袋などを合わせても、涼しげな雰囲気と改まった印象のスタイリングになりますね。裾丈はこちらを参考にしてみてください。
アクセサリーや小物アレンジも自由に
「和装にはパールやカチっとしたアクセサリーじゃないとダメかしらと心配される方も多いのですが、大ぶりのピアスなどカジュアルなものを合わせても素敵なんですよ」と森村さん。店頭にも洋装にも使えるようなモダンなデザインのものが並んでいました。
きもの風アレンジとして、帯締め、帯留めを加えるというアレンジも。去年と同じゆかたと帯に小物を合わせることで、少し雰囲気を変えた着こなしを愉しむという方も多くいらっしゃるのだとか。また、帯の結び方を変えるだけでも印象が変わるのでおすすめです。
和装小物をつかったアレンジの他、洋服の時に使うアクセサリーを活用するというアイデアもあります。例えば、こちらはブローチですが、帯締めにつけることで帯留めとして活躍します。お気に入りのアクセサリーを洋服の時にも和服の時にも活用できたら嬉しいですね。
ゆかたといえば、手には巾着のイメージもありますが、最近は大きめの籠バッグも人気です。お財布や携帯電話、ポーチや水筒なども入る洋装にも使えるような籠バッグ。涼やかな見た目も夏のお出かけにぴったりですね。
似合うゆかたの見つけ方
ここまでゆかたのスタイリングやアレンジをご紹介してきましたが、そもそもゆかたを選ぶ時のポイントはあるのでしょうか?
洋服と和服では不思議と似合う雰囲気が異なったり、思いがけないいつもと違う自分に出会えるのも醍醐味です。「自分にぴったりの一着」に出会うためのゆかた選びについても伺いました。
「和服は、帯や小物合わせて雰囲気を大きく変えることができます。ですので、まずはお好きな一着を選んでみてください。もしくは、なりたい雰囲気があれば店頭でおっしゃってみてください。ふんわりした雰囲気がお好きなのか、レトロな感じが良いのか、クールに着こなしたいのか‥‥など、何かイメージされているものがあればそこからお似合いになるもの探しをお手伝いできますよ。また、すでにご自宅にあるゆかたや帯に合わせたい場合などは写真を撮って持参されると選びやすいです」と、森村さん。
実際に同じゆかたでも合わせるものでガラリと印象が変わるところを実際に見せていただきました。
まずは黄色い帯を合わせてみました。コントラストがしっかりとついてアクティブな印象です。続いて、薄いブルーの帯を合わせてみると‥‥。
こちらは色が馴染んで、落ち着いた雰囲気に。確かに、印象がだいぶ異なりますね。そして、小物を合わせてみることでさらにアレンジすることも可能です。
同じ黄色い帯を別のゆかたに合わせてみると、また異なる趣きになりました。
こちらは可愛らしい印象になりましたね。
最後に、小物合わせによる雰囲気の変化も見てみましょう。
綺麗めアレンジで、はんなりとした雰囲気となりました。帯揚げや帯留めの色を選ぶときは、ゆかたの柄の中にある色を持ってくると一体感が生まれやすく、おすすめです。
帯締めと帯留めを変えるだけでも印象が変わりました。こちらの方がキュート、カジュアルといったイメージでしょうか。
こうしたアレンジを加えるだけで、1着のゆかたを様々な雰囲気で楽しめますね。
ゆかたで夏を愉しんで
今回ご紹介してきたように、アレンジやスタイリングに難しいルールなどはありません。好きな雰囲気をイメージしたり、使いたい小物を生かして、洋服をスタイリングするように自由自在です。
履きなれない下駄で歩くことに不安があれば、普段履いているサンダルやパンプス、バレエシューズを合わせてみても。素材が夏仕様なので、夏の和装は案外涼しいものですが、炎天下を歩くよりは室内が安心ということであれば、ランチやレトロ喫茶店でのティータイム、水族館やプラネタリウム、映画館などへのおでかけもおすすめです。今年の夏はゆかた姿で愉しんでみてはいかがでしょうか。
◆大塚呉服店 着付け教室
大塚呉服店 ルミネ新宿店では、ゆかたの着付け教室を開催しています。
日時:7月22日、23日(いずれも時間は14:00〜15:30)
参加費:1,000円
お問い合わせ:03-6279-0112 shinjuku@otsuka-gofukuten.jp
まずはゆっくりと手順の解説を受けながら着てみます。難しい用語は使わず、シンプルな言葉に導かれながらみなさん着付けていきます。一度着たら脱いでもう1度。2度目は少しスピードをあげつつ、綺麗に着るポイントや、自分に合う帯の長さ調整などをしながら再チャレンジ。2度の練習でしたが、そのまま着て出かけられるような綺麗な着姿に仕上がっていました。「あと自宅で数回練習すれば大丈夫です」と、先生。ゆかたは、慣れてしまえば本当に簡単なのです。
<取材協力>
大塚呉服店 ルミネ新宿店
東京都新宿区西新宿1-1-5 ルミネ新宿店 ルミネ14F
03-6279-0112
文・写真:小俣荘子