自分らしい服ってなんだろう。年を重ねるごとに、似合うものも自分の好みも少しずつ変わってきました。
シルエット重視だった20代、何を着ればいいか迷走した30代前半。30代後半のいまでは、素材や質感など布自体が気になるようになりました。
着心地のよさはもちろん、年相応の服を着ているという安心感を求めているのかもしれません。日常の服はもちろん、特別な日となると、その安心感は一層大切です。
その場にも、年を重ねた自分にもふさわしい服。
中川政七商店のセミフォーマルシリーズは、そんな思いに応えてくれる一着です。デザイナーの一人である山口さんに、どんな風に考えて作ったのか、話を聞いてみました。
「私は30代後半で出産して、上の子はこれから卒園式入学式を迎えます。
この年でそういった式に出ると、周りのお母さん達は年下の方も多いんです。20代の方と同じ服を着ても似合わないし、それなりに年を重ねてる分似合うものを着ていたいと感じます。
ものづくりに信頼を置ける服を身に着けていると、背筋が伸びてそれが自信にも繋がると感じました」
自身の経験を糧にしながら作り進めていった、中川政七商店のセミフォーマル。
2019年からさまざまな型を発売し、それぞれにデザインのテイストが異なりますが、そこには共通する一つのコンセプトがあると言います。
「中川政七商店のセミフォーマルを貫くものは、“世界に誇る日本の技術”です。
テイストの好みは人それぞれですが、普段着ではなく特別な日に着る服なので、身に着けると自信に繋がるものを作りたいと考えました。そこで、技術も世界に誇れるようなものを採用しています」
ものづくりを知ることが自信に繋がるということで、一つずつ、どんなものづくりの背景があるのか、お話したいと思います。
ウールの世界三大産地が作る「尾州ウールシリーズ」
シワのできにくい生地とゆとりのあるパターンが毎年人気の尾州ウールシリーズ。
愛知県一宮市を中心にした尾州地域は、イギリスのハダースフィールド、イタリアのビエラと並ぶ世界三大毛織物産地。海外のメゾンブランドも買い付けに訪れるような日本が誇るものづくりの産地です。
今回採用したワッシャー加工を施した凹凸のある生地はシワができにくく、目立ちにくいのが特徴です。
「保育園の式では、ヒールの高い靴はまずはけません。抱っこをしたり、子どもと目線を合わせる為に低い位置で動いたり…子どもがぎゅっと掴んでくることもあります。動きにくいのはいやなので、ゆとりのあるシルエットにして、シワが目立ちにくい加工を採用しました」
また、ウールと麻を織り交ぜた生地を採用した為、清涼感のある肌触りで長いシーズン活躍します。
「安いものではないので、たまにしか着れないのはもったいないと思い、長いシーズン楽しめる質感を目指しました。また、デザインもシンプルなので、色んなシーンで着やすいものになっていると思います」
装飾を折り目で表現する日本らしさ「重ね襞シリーズ」
昨年発売したものからデザインを微調整し、今年も登場する、重ね襞シリーズ。
「袴や折型など、日本人は装飾を折り目で表現する文化を持っています。技術だけじゃなくて、昔から日本にある表現も含めて取り入れながら展開していきたいという想いで、プリーツを採用したシリーズをつくりました」
もちろん、その技術も特別なものです。
手がけるのは、プリーツを専門に新技術の開発を行うオザキプリーツ株式会社。こちらには特許技術である「MAX PLEATS」を採用しています。
元来、プリーツがかからないと言われてきた天然素材。MAX PLEATSは、そんな天然素材にプリーツをかけることを可能にした特許技術です。
今回も表地は麻54% 綿46%の天然素材ですが、水洗いしてもプリーツ性を損なうことはありません。
自然の景色を思わせる、波皺の表情「リネンキュプラの波皺シリーズ」
中川政七商店のセミフォーマルに今年新たに加わったのが、リネンキュプラの波皺シリーズ。ベーシックでシンプルなデザインの尾州ウールシリーズや、華やかな見た目が特長の重ね襞シリーズとは、あえて印象が異なるようにとデザインされました。体のラインを拾わず全体をすっきりと見せてくれるシルエットが心強い一着です。
「次のシリーズでは上質感があって大人っぽいものを作りたくて、絹織物をはじめ高級裏地の産地として歴史が深い、山梨県の富士吉田市で織られた生地を使用しました。上質な布の美しさが映えるように、あえてすとんとしたシルエットを採用し、シンプルな形で作っています。
生地に揺れる波皺の表情は、経(たて)糸に使用したキュプラと、緯(よこ)糸に使用したリネンや綿の、それぞれの縮率の違いから生まれるもの。なみなみとした揺らぎが、水面のさざ波や富士山の裾の尾、地平線・水平線などを思わせてくれるので、『風景の見える布』をコンセプトにしています」
※担当デザイナーにものづくりについてインタビューした記事はこちら
古い織機でしか出せない細やかなレース「刺繍のかさねブラウス」
ジャケットの下に着たり一枚でさらりと着用したりと、何かと活躍する、刺繍のかさねブラウス。手がけるのは、刺繍レースを専門とするフロリア株式会社です。
「レースというと海外のイメージを持たれる方も多いと思いますが、じつは日本で独自に進化を遂げ、いいものを作っているんです。中でもフロリアさんは歴史をもち、海外からも注目されている企業さんです」
あえて古い機械でゆっくり織ることで、ふんわりと⽴体的なふくらみや、繊細な模様を表現しています。
「フォーマルなシーンでは、基本的にはジャケットを羽織っていることが多いと思いますが、長時間過ごす中で温度調整したいタイミングもあります。
でも、ジャケットを脱ぐと急に質素な印象になってしまったり、透けてしまったり…脱ぐのをためらうことがあって。そういう不安がなく、脱いでも華やかさが損なわれないものにできたらと思って、前面を二重にして刺繍を刺しました」
最後に、中川政七商店のセミフォーマル、どんな風に着てほしいですか?と聞くと、
「ハレの日にはもちろん、ちょっとしたお出かけにも、普段からたくさん着てもらえると嬉しいです」
とのこと。
中川政七商店のセミフォーマルは、シリーズを通して天然素材をベースに作っているため、素材感がマットで落ち着きがあります。きちんと感や品はありつつも、確かにちょっとしたお出かけなど、日常のシーンでも使いやすい質感です。
ものづくりについて語りたくなる、特別な日に自信をもたせてくれる服。フォーマルシーンにも、ちょっとしたお出かけにも、様々な場で一緒にお出かけしていただけたら嬉しく思います。
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*この記事は2022年1月11日公開の記事を、再編集して掲載しました。