【あの人が買ったメイドインニッポン】#10 バイヤー・山田遊さんが“最近買ったもの”

こんにちは。
中川政七商店ラヂオの時間です。

今回からゲストは、バイヤーの山田遊さんです。トークテーマは、「最近買ったメイドインニッポン」。

それでは早速、聴いてみましょう。

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山田遊さんが“最近買った”メイドインニッポン

山田遊さんが“最近買った”メイドインニッポンは、「ramgu カッティングプレート」でした。


ゲストプロフィール

山田遊

南青山のIDÉE SHOPのバイヤーを経て、2007年、method(メソッド)を立ち上げ、フリーランスのバイヤーとして活動を始める。現在、株式会社メソッド代表取締役。
これまでの主な仕事に、国立新美術館ミュージアムショップ「スーベニアフロムトーキョー」、「21_21 DESIGN SIGHT SHOP」、「GOOD DESIGN STORE TOKYO by NOHARA」、「made in ピエール・エルメ」、「燕三条 工場の祭典」などがある。
各種コンペティンションの審査員や、教育機関や産地での講演など、多岐に渡り活動を続ける。


MCプロフィール

高倉泰

中川政七商店 ディレクター。
日本各地のつくり手との商品開発・販売・プロモーションに携わる。産地支援事業 合同展示会 大日本市を担当。
古いモノや世界の民芸品が好きで、奈良町で築150年の古民家を改築し、 妻と二人の子どもと暮らす。
山形県出身。日本酒ナビゲーター認定。風呂好き。ほとけ部主催。
最近買ってよかったものは「沖縄の抱瓶」。


次回予告

次回も引き続き、山田遊さんに出演いただきます。11/24(金)にお会いしましょう。お楽しみに。

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【あの人が買ったメイドインニッポン】#9 ラジオパーソナリティ・クリス智子さんが“一生手放したくないもの”

こんにちは。
中川政七商店ラヂオの時間です。

今回からゲストは、ラジオパーソナリティのクリス智子さんです。トークテーマは、「一生手放したくないメイドインニッポン」。

それでは早速、聴いてみましょう。

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クリス智子さんが“一生手放したくない”メイドインニッポン

クリス智子さんが“一生手放したくない”メイドインニッポンは、「深川製磁の屠蘇器」でした。


ゲストプロフィール

クリス智子

ハワイ生まれ。大学卒業時に、東京のFMラジオ局 J-WAVE でナビゲーターデビュー。現在は、同局「GOOD NEIGHBORS」(月曜〜木曜13:00〜16:00)を担当。ラジオのパーソナリティのほか、MC、ナレーション、トークイベント出演、また、エッセイ執筆、朗読、音楽、作詞なども行う。得意とするのは、暮らし、デザイン、アートの分野。幼少期より触れてきたアンティークから、最先端のデザインまで興味をもち、生活そのもの、居心地のいい空間にこだわりを持つ。ラジオにおいても、居心地、耳心地の良い時間はもちろん、その中で、常に新しいことへの探究心を共有できる場づくりを心がける。


MCプロフィール

高倉泰

中川政七商店 ディレクター。
日本各地のつくり手との商品開発・販売・プロモーションに携わる。産地支援事業 合同展示会 大日本市を担当。
古いモノや世界の民芸品が好きで、奈良町で築150年の古民家を改築し、 妻と二人の子どもと暮らす。
山形県出身。日本酒ナビゲーター認定。風呂好き。ほとけ部主催。
最近買ってよかったものは「沖縄の抱瓶」。


次回予告

次回のゲストは、バイヤーの山田遊さんです。11/17(金)にお会いしましょう。お楽しみに。

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【くらしの景色をつくる布】#1 中川政七商店・吉岡

皆さんは暮らしを飾るインテリアを、どんなふうに選んでいますか?

いわゆる賃貸のマンションに住んでいると、間取りや壁紙などの躯体はそんなに代わり映えがしません。かく言う我が家も賃貸マンション住まいです。
暮らしを飾る物を上手に取り入れることで、もっと自分らしい心地好い空間をつくっていきたい。個人的にもそう思っていた折に発売したのが、インテリアコレクション「くらしの工藝布」。使い手次第でさまざまな取り入れ方が膨らむ表情豊かな布たちは、暮らしを飾るのにぴったりのアイテムです。
実際に、家に取り入れたらどんな景色が生まれるんだろう?そんな興味が沸いて、心地好い暮らしを実践する皆さんに、取り入れてみてもらいました。

初回は、中川政七商店・吉岡のご自宅。取り入れたのは、こちらのラインナップです。

二重織刺し子の長座布団
二重裂織の飾り布
捨耳のタペストリー
二重裂織の簾
裂織の布籠
二重裂織の敷布

中川政七商店の新規事業や店舗開発の傍ら、その土地土地のものづくりを訪ね歩き、バイヤーの役割も担う吉岡。
パートナーと二人で暮らすマンションには、古今東西のさまざまなオブジェや暮らしの道具など、個性豊かなもの達がずらりと並びます。
「くらしの工藝布」は、そんな吉岡家の暮らしをどのように飾るのでしょうか。

もてあましがちな和室にシーンを作る。「二重織刺し子の長座布団」

二重織刺し子の長座布団 薄茶

まず最初に、これはぜひ使ってみたいと選ばれたのが、「二重織刺し子の長座布団」。和室に置いて使ってみたそうです。

「和室は普段もてあましがちなので、ゆっくりお茶を愉しむ空間として設えるなど、目に入ると使いたくなるシーンをあえて作っておくようにしています。ちょうど少し改まってお茶が飲めるように設えていた場所に、二重織刺し子の長座布団を敷いてみると、色も表情もしっくりと馴染みました。」

「うちでは日常的にお茶を飲みますが、友人やお客さんが来た時などは、ここでお茶を淹れながら四方山話に花を咲かせることも多いです。布団の上に座っているようで気持ちいいから、長話をしてても疲れずに過ごせそうですね。2~3人並んで座れるのも有難いです」

「個人的に一番ハマったのが、三分の一を二重に折り曲げた座椅子のような使い方でした。座っていると、ふかふかした布団に包まれているような安心感があります。生地は厚手で丈夫ですし、腰が沈むこともないので、楽な姿勢で、ずっと座っていられますね。座椅子とソファのいいところを足して割ったような印象でした。長座布団があると、和室にいる時間が増えそうです」

敷いても掛けても愉しめる。「二重裂織の飾り布」

次は、長座布団と一緒に茶席に設えていた「二重裂織の飾り布」について聞いてみました。

二重裂織の飾り布 柿渋染 薄茶 S

「気楽に茶席の雰囲気を楽しみたい時にはもってこいの敷布だと思います。薄手ですがしっかりと柿渋染された生地は丈夫ですし、多少こぼしてもまあいいかって余計な気遣いなしに使えます。
そうやって実用的な用途として使えるのはもちろん、飾って楽しめるのも魅力ですよね」

「敷布として使わない時には、壁に飾りたくなりますね。柿渋の濃淡から生みだされた有機的な表情が、空間にあたたかい空気感を与えてくれるなと思います。

長座布団もそうですが、寄りで見ると一つとして同じものがない個性や味わい深さを持ちつつ、引きで見るとどんな住空間にも馴染みやすい。繊細さと包容力のある布ですよね。」

床の間のはずしに、「捨耳のタペストリー」

触りたくなるような表情豊かな「捨耳のタペストリー」は、床の間に。もともと和すぎる床の間になるのを避けて、グラフィカルな版画とシェーカーボックスを飾っていたそうです。

「捨耳のタペストリーは、布なのに、お軸の絵のような奥行きと存在感があります。いわずもがな、よいですよね。
うちの床の間は昔ながらの和の雰囲気なのですが、それらしい和の室礼には正直あんまり馴染めなくて。とはいえ賃貸では内装を触れないので、クラシックな和の床には、お軸の代わりにモダンなアートを添えてあげるのが、個人的には好みです」

素材自体の表情が豊かな捨耳のタペストリー

空間の間仕切りに。「二重裂織の簾(すだれ)」

二重裂織の簾 白・墨斑染

「この簾は、組み合わせる枚数が自在なので、部屋の間仕切りのような機能をもたせるのが面白そうだなと感じました。扉のように完全に部屋を仕切るのではなくて、ゆるやかな境界として簾を掛けて。
一枚ずつ布を変えられるので、今回みたいに色替えして組み合わせると、季節や気分にあわせて模様替えもできるし、枚数によって仕切りの度合いも調整できますよね。日本人らしい曖昧な境界の作り方だなと思います」

プランターカバーとして暮らしを飾る「裂織の布籠」

裂織の布籠 S 黒
△裂織の布籠 M 黒

「裂織の布籠は、プランターカバーとして使ってみました。
裂織の布自体にゆらぎや個性があるじゃないですか。布の個性と植物の個性がぶつかり合うのが面白そうだなと思って。サボテンもドラセナも、布籠と植物のコントラストが効いているんじゃないでしょうか」

表情のある床が生まれる、「二重裂織の敷布」

二重裂織の敷布 M 墨

「二重裂織の敷布は、見た目にすごく工芸感のあるファブリックですよね。賃貸住宅は床が味気ないので、こういう布を敷くと一気に雰囲気が変わって絵になる風景ができることがあります。
二重裂織の敷布は、表情豊かですが、クセのある模様が入っているわけでもないので、シンプルな家にもいい意味でアクセントになるんじゃないでしょうか。うちみたいにあちこち雑多にものが置いてある家でも、他の物に負けてないですよね」

取り入れて感じる、「くらしの工藝布」の魅力

敷いたり掛けたりしながら、さまざまなアイテムで飾ってもらった吉岡家。最後に、取り入れてみての感想を聞いてみました。

「今回実際に家に取り入れる過程で、古くからある技がもつ、現代に生きる価値を再発見しました。
裂織が盛んだった頃は、今よりもはるかに物資が貴重な時代じゃないですか。そういう時代背景で育まれた日本人のつつましい美意識やもったいない精神が根底にある昔の裂織は、偶然の美や時間の経過がもたらす物としての魅力があると思っています。
それに対して、工藝布は、裂き糸と現代の織り技術、それらの組み合わせなどを掘り下げて、どうすれば暮らしの中で魅力ある布になるかをとても考え抜いてつくられているなと思います。こういったつくり方は、物が豊かになった今じゃないとできないですよね。今回使ってみて、実際の暮らしへの取り入れやすさを肌で感じることができました」

滝織の多様布 本藍染 中藍

「世間では、うちと同じように賃貸のマンション暮らしの人が大半じゃないですか。
インテリアを愉しもうとすると、標準的な間取りやマテリアルの中で、躯体に頼らない部屋作りをせざるを得ないですよね。そんな時、個性的な道具やオブジェも雰囲気を作る一つの要素やアクセントとして重宝しますが、面積の広いファブリックは、それだけで部屋の印象をガラッと変える力があるなと、今回改めて思いました。

そして、用途をもって使うこともできるし、暮らしを飾ることもできる。それが“くらしの工藝布”の魅力ですよね。どう取り入れるかが、こちらに委ねられているというのが、面白いと思います」

暮らしを飾り、家の景色をつくってくれる「くらしの工藝布」。使い方が定まっていないからこそ、さまざまなおうちでの取り入れ方に、より一層興味が沸いてきました。
あの人はどんな風に暮らしを飾るんだろう?そう気になる方々のご自宅におじゃまして、これからも「くらしの工藝布」の愉しみ方とともに、皆さんの暮らしの景色をお届けしていきたいと思います。

次回は、兵庫・丹波篠山の里山でお店を営む、archipelagoの小菅庸喜さんのご自宅にお伺いします。お楽しみに。

<掲載商品>
二重織刺し子の長座布団
二重裂織の飾り布
捨耳のタペストリー
二重裂織の簾
裂織の布籠
二重裂織の敷布

<関連特集>

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【くらしの景色をつくる布】

ひと針が紡ぐ100年先の町の歴史。「大槌刺し子」のものづくり。

遠くから見ると無地のようにも見えるけれど、近づくほどに模様の精緻さに圧倒される。「くらしの工藝布」のお披露目会に飾られた「手刺しのタペストリー」に、近づいたり離れたりしながらじっと見入る人を何人も見かけました。

手の痕跡が感じられる刺し子の布には、人の目を惹き付けてやまない引力があります。

人を想う心から生まれた「刺し子」の機能美

刺し子は、布が貴重な時代、寒さの厳しい地方を中心に、全国の家庭で暮らしの知恵として育まれた針仕事です。布地にひと針ひと針刺すことで、布の補強や補修することを目的として、主に女性たちが家仕事の中で受け継いできました。

もともと必要にかられて生み出した技ですが、時代が下るにつれて、機能性だけでなく装飾的な刺し子も登場するようになります。使う家族のためを思えばこそ、美しい装飾性をもつようになったのかもしれません。いずれにせよ刺し子は、「”誰か”のためを想う」そんな心から生まれ育まれた技なのだと感じます。

震災から立ち上がった「大槌刺し子」の手仕事

お話を伺った、大槌刺し子の佐々木かなこさん。「手刺しのタペストリー」をともに作っています

「“どんな人が使ってくれるんだろうねぇ”が刺し子さんの口ぐせになっています」

岩手県の海沿いの町、大槌町に暮らす佐々木かなこさんは、そう話します。「大槌刺し子」で12年刺し子を続けてきたベテランの刺し子さんです。大槌刺し子は、2011年の震災をきっかけに立ち上がった刺し子ブランド。避難生活を送る女性たちに、針仕事を通じて、もう一度生きる喜びや希望を見つけてほしいという想いから「大槌復興刺し子プロジェクト」として始まりました。

大槌町の刺し子さんとして活動する皆さん

数名のボランティアから始まった取り組みは、一人、また一人と仲間が増え、今では10~15人ほどが常に出入りする大所帯に。はじめはふきんやコースターなど小さなものから、次第にランチョンマット、Tシャツなど大きなものも手掛けていくようになりました。

「くらしの工藝布」での、新たなチャレンジ

手刺しのタペストリーのLサイズは、約90×135cm

「こんなに大きいものを刺したのは、初めてでした」

数々のアイテムを手掛けてきた佐々木さんによると、「大きいものと直線が続くものが一番難しい」とのこと。実は今回「くらしの工藝布」でお願いしたタペストリーが、まさにどちらにも当てはまるものでした。これほど大きいサイズの仕事は初めてだったと言います。

模様の角に印をつける作業

工程で最も大事なのが、実は下描き。模様が印刷されたパターンを生地に留め、模様の角となるポイントに穴を開け、印をつけていきます。消えるペンで印同士を線でつないだら下描きの完成。このとき生地がずれてしまったり印の場所を間違えたりすると、せっかくの模様が美しく仕上がりません。刺し子の良し悪しを決める、気の抜けない作業です。

消えるペンで印同士を線でつないだら、下描きの完成

ここからいよいよ針をさしていく工程。

「柄もシンプルだし、それほど時間がかからないかなと思っていました。けれど手を動かし始めたら、これは大変になりそうだぞと。なかなか下描きどおりに進まないんです。
タペストリーは、少し離れたところから見るでしょう。特に今回は直線が多いデザイン。生地のひっぱりぐあい、針をさす1、2ミリの差が、遠くから見た時にゆがんでみえてしまうんですね」

考えすぎると手元が狂ってしまう。集中してやり切る為に、今日はここまで、と時間を決めて、進んだら他の刺し子さんと離れたところから見せあい、ゆがみをチェックしながら進めていったそう。

大槌刺し子では、任された仕事は各自が家に持ち帰って進めるのが基本です。そのうえで、事務所には刺し子さんたちが自由に出入りでき、時折集まっては互いの進み具合を見せ合います。今回のタペストリーは、連日事務所に集い、仕上がりを確かめながら無事に完成を迎えることができました。

真っすぐだからこそ、その丁寧さと手の痕跡が際立つ

針と糸さえあれば誰にでもできる手刺しの技。誰もが学生時代に習う技であり、特別な技術ではありませんが、その分、向き合う姿勢が問われるものづくりです。ただただ真っすぐに、ひと針ひと針に向き合い、心を込める。一見簡単なようで、実はそう簡単でもない道のりです。

ひと針ひと針が紡ぐ、100年先の町の歴史

「針目が揃っているのを、直接見ていただけたら嬉しいです。光の具合や見る角度で模様の見え方が変わるので、いろんな角度で楽しんでほしい。

飾ってるうちに色が変わってきたら染め直せるし、柄を足したいなと思ったら自分で足してみてもいいかもしれない。長く変化させながら、楽しんでもらえたら嬉しいです」

使う誰かのことを考えながら丁寧に刺し綴った手の軌跡が、見る人の足を止め、思わず手で触れたくなるような、模様の奥行きとなって布にあらわれます。

その静かな迫力を直接目で見て見れば、時間をかけて刺し綴った均質でないゆらぎは、昔も今もこの先の未来も、普遍的に大切な価値があるものなのかもしれない。そんな風に感じます。

刺し子を続けている理由を伺ってみると、
「形になる喜びがあって、今ではもう、刺し子をするのが好きになってしまいました。
何より刺し子さんたちと一緒に事務所で集まったときの交流が楽しいんですよ。集う場があることは、大切なことです」

大槌町は、古くから現在に至るまで脈々と刺し子文化が受け継がれてきた地域ではありません。2011年にその歴史を歩み始めたばかり。それでも、この小さく尊い営みが、この町の人々の100年先の歴史に繋がるのかもしれない。刺し子さんが事務所に集い、ひと針ひと針歩みを進める姿に、そんな未来を予感させます。



時間をかけてひと針ひと針刺すことによって、布に宿る普遍的な価値。
「くらしの工藝布」では、大槌刺し子さんと一緒に、「刺し子」をテーマに今の表現を探りました。

手刺しのタペストリー(直)MサイズLサイズ
手刺しのタペストリー(散し)SサイズMサイズ

<関連特集はこちら>

裂織の技を障がいがある人とともに未来に繋ぐ。幸呼来Japanのものづくり

同系色のトーンの中に混ざる、多様な色のゆらぎ。布というにはしっかりとした厚み。凹凸があって、見るからに表情が豊か。

とにかく、触ってみたい。
そんな布に出会ったことはありますか?

私は、先日新たにデビューした「くらしの工藝布」の初期サンプルの裂織(さきおり)を目にした時にそう感じて、自然と手を伸ばしてしまいました。

この布はどうやって生まれてくるんだろう?そんな風に、もっと知りたいと思わせてくれる佇まいです。

暮らしの美しい発明「裂織」

裂織が生まれたのは、今よりも布が貴重な時代。

寒冷ゆえに材料となる木綿の栽培が難しく、流通も不便だった東北で、ようやく手にしたあたたかく肌触りのいい木綿の布。ボロボロになっても捨てるのはもったいないと、各家庭の生活織物として、裂織の技が発展していきました。

裂いて織る、と書く名前のとおり、着古した古布を捨てずに細く裂いて紐状にして集め、緯糸(よこいと)として新たな布に織り上げます。布をそのまま別製品に仕立て直すリメイクとは違って、まったく新しい布に生まれ変わらせてしまう、暮らしの中の発明でした。

緯糸の組合せや織り方によってさまざまな表情を見せ、既成の織物にはない独特の美しさがあります。

美しいとは知りつつも、効率的なものづくりが求められる現代において、その営みを続けることは容易なことではありません。

でも、そんな裂織のものづくりに取り組む企業があります。

今回、「くらしの工藝布」をともに作っていただいた、幸呼来Japan(さっこらじゃぱん)の皆さんです。

裂織を作る幸呼来Japanの代表、石頭悦(いしがしら えつ)さん

知らないなんてもったいない、がビジネスへ

「こんな素晴らしい織物があったなんて」

盛岡で会社勤めをしていた石頭さんは、裂織との出会いを「ショックだった」と回想します。元々着物が好きだったのに、仕事でたまたま裂織の現場を見るまで、その存在を知らないままでした。裂織との出会いは2009年、訪れた特別支援学校でのこと。一段一段、集中して生地を織り上げていく生徒さんたちのエネルギーと、仕上がりの緻密さに圧倒されたそうです。

幸呼来Japanでの製作風景

知らなかったなんてもったいない、という思いは、もっと多くの人に知ってほしい、という願いへ。支援学校の卒業生を織り子さんに起用し、2010年、石頭さんは勤め先に裂織事業部を立ち上げます。翌年、震災を機に独立。2011年9月に誕生したのが「幸呼来Japan」です。「さっこら」とは岩手を代表する夏祭り「さんさ踊り」のかけ声で、「幸せは呼べばやって来る」という意味。いずれは世界へ飛び立つ会社にと「JAPAN」を背負い、障がいがある人の就労支援と裂織の魅力発信を両輪で事業化する、一大プロジェクトが始まっていきました。

工房内に飾られている、岩手を代表する夏祭り「さんさ踊り」の写真

世界中の布が集う「幸呼来Japan」

取り組みは思わぬ波及効果を生みます。製造の過程で余ってしまった残反を活用してほしいと、大手のアパレルメーカーや世界的なファッションブランドから声がかかるように。今では盛岡の工房に、日本中、世界中から多様な布が集まってきます。

幸呼来Japanの棚に置かれる、多種多様な布を再生した裂織の布

「幸呼来Japan」のものづくりを、石頭さんは「チームさっこら」と表現します。ひとりひとり、異なる障がいがあるメンバーがスムーズに作業できるよう、製造はすべて分業制。生地を裁断する人、色柄の出方を計算してデザインする人、織り方を指導する人。バトンをリレーするように連携しながら織りが進みます。

工房を訪ねると、元気よく、とても丁寧に挨拶してくださる作り手の皆さん

そうしてある程度の設計はしても、織ってみないとどんな表情になるかわからないのが裂織の面白いところ。もともと表と裏で色が違う生地であれば、横糸の通し方、織る人の力加減で色の出方が変わってきます。同じ残反を使っても、人の手で裂いて織る、というプロセスの中で、他にふたつとない布に再生していくのです。

「くらしの工藝布」で出会う裂織の楽しさ、新しさ

「幸呼来Japan」誕生から12年。企業コラボを通してさまざまな生地を扱ってきた石頭さんですが、「くらしの工藝布」のものづくりには新しいチャレンジがいくつもあった、と振り返ります。

例えば、決まったデザイン画の通りに柄を出すのが難しい、裂織のタペストリー。
一段の中で別の色の裂き糸を織りこめるのは、機械にはない手織りならではの自由さですが、その製作は綿密な設計に基づいて行われます。
織ると縮む裂織の生地。完成形のサイズがぶれないように、どのくらいの力加減で織るか。素材の特性を掴むまでに苦労したと言います。

そして、高密度に織り上げられる布の収納籠。入れものとして使うことを想定しているため、強度が必要です。高密度で織り上げられる男性スタッフさんの打ち込み具合が標準になった為、女性の織り子さんが織る際は、通常3回程度の打ち込みを、倍の回数打ち込むことで、高密度に仕上げています。

そして、レピア織機で生地を織る際に出てしまう「捨て耳」と呼ばれる廃材を活用して織りあげた、タペストリー。

「フサフサした捨て耳を織りこんで商品を作るのは初めてでした。
裂いていないので、厳密には裂織とは言えないかもしれませんが、捨てられてしまう物を再利用するという考え方は、裂織の精神性に通じるものがあります。
本来捨てられてしまうものを活用して新たな価値を生む、廃材利用の新しい可能性を感じました。裂織は、こんなふうに色々な素材を組み合わせて布にできる。他にない織物だと思います」

本来捨てられてしまう廃材「捨て耳」

裂織の魅力と、障がいがある人たちの細やかで丁寧な仕事。どちらも埋もれたままではもったいない。裂織の営みに宿る「もったいない」精神を引き継いだ石頭さん率いる「チームさっこら」の手で、一段一段、今日も捨てられるはずだった生地たちが、裂織という新たな命を宿した布に生まれ変わっています。



元の生地からはまったく予想できないような、新たな命を宿した布に再生する裂織。
「くらしの工藝布」では、幸呼来Japanの皆さんと一緒に、あり余るほどに布が溢れている今の社会で改めて再生のありかたを見つめなおし、「裂織」をテーマに布を作りました。

左上から時計回りに、
捨て耳のタペストリー
裂織のタペストリー
裂織の布籠
裂織の敷布 SサイズLサイズ

関連特集はこちら

【あの人が買ったメイドインニッポン】#8 ラジオパーソナリティ・クリス智子さんが“人に贈るもの”

こんにちは。
中川政七商店ラヂオの時間です。

今回からゲストは、ラジオパーソナリティのクリス智子さんです。トークテーマは、「人に贈るメイドインニッポン」。

それでは早速、聴いてみましょう。

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クリス智子さんが“人に贈る”メイドインニッポン

クリス智子さんが“人に贈る”メイドインニッポンは、「潮工房のグラス」でした。


ゲストプロフィール

クリス智子

ハワイ生まれ。大学卒業時に、東京のFMラジオ局 J-WAVE でナビゲーターデビュー。現在は、同局「GOOD NEIGHBORS」(月曜〜木曜13:00〜16:00)を担当。ラジオのパーソナリティのほか、MC、ナレーション、トークイベント出演、また、エッセイ執筆、朗読、音楽、作詞なども行う。得意とするのは、暮らし、デザイン、アートの分野。幼少期より触れてきたアンティークから、最先端のデザインまで興味をもち、生活そのもの、居心地のいい空間にこだわりを持つ。ラジオにおいても、居心地、耳心地の良い時間はもちろん、その中で、常に新しいことへの探究心を共有できる場づくりを心がける。


MCプロフィール

高倉泰

中川政七商店 ディレクター。
日本各地のつくり手との商品開発・販売・プロモーションに携わる。産地支援事業 合同展示会 大日本市を担当。
古いモノや世界の民芸品が好きで、奈良町で築150年の古民家を改築し、 妻と二人の子どもと暮らす。
山形県出身。日本酒ナビゲーター認定。風呂好き。ほとけ部主催。
最近買ってよかったものは「沖縄の抱瓶」。


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次回も引き続き、クリス智子さんにご出演いただきます。次回は、「一生手放したくないメイドインニッポン」について、お話いただきます。
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