山の中の、みんなの場所。気持ちのいい開放感を味わう「ドライブイン茂木」

その土地の色を感じられるお店を紹介する連載、「さんち必訪の店」。

本日訪れたのは、栃木県芳賀郡茂木町の「ドライブイン茂木」です。

都会の喧騒をはなれ、町の小景がある「ドライブイン茂木」へ

東京から車でおよそ2時間。常磐道から見える景色は、徐々に自然が多くなっていきます。窓を開けると、心地よい茂木の風が吹き抜けてきました。

車一台がやっと通れる道。まだ誰も踏んでいない落ち葉の上を進んでいくと、ついに平屋建ての「ドライブイン茂木」と出会えました。

ドライブイン茂木・看板写真
ドライブイン茂木
ドライブ人茂木
扉のない入り口からするりと中へ

2016年7月にできたドライブイン茂木。この地域に生きる人やこの土地の風景、生み出される作物の「美しさ」を伝えるために始まりました。もともとは瓶詰め工場だけでしたが次々と人が集まり、現在居を構えているのは瓶詰め工場、カフェ、パン屋、古本屋、お菓子屋の5店舗です。その他にも茂木で生まれるものと、できることで土地の魅力を伝えてくれています。

ドライブイン茂木・風
ドライブイン茂木・干しぶどう
ドライブイン茂木・花
ドライブイン茂木・キッチン
ドライブイン茂木・光
ドライブイン茂木
ドライブイン茂木

広さのある、倉庫のような建物。やわらかい光が差し込み、風がゆっくりと通り抜けていきます。「きれい」とか「気持ちいい」とかいう感覚が、素直に開放されていくような、心地よい空間です。

「みんなから頂いた大葉のジェノベーゼソース」「大越さんの那須のオリーブオイル漬け」「富田さんのルバーブのジャム」

雰囲気を味わいながら周囲を歩いていると、農家の方が今日採れた野菜を手にやって来ました。

茂木では、さまざまな作物が育てられています。大切な人においしく食べてもらうため、自然と正直に向き合いながら丁寧に育てる。そうしてできた作物を、自慢しあい、喜びあっているそうです。

ご近所で野菜を育てている大内さんご夫妻
ドライブイン茂木
ドライブイン茂木・毎朝地元の野菜が届く
毎朝、この地で採れた野菜が並ぶ。自ら畑に採りに行くことも多いのだそう。

地元野菜のお料理は、カフェ「雨余花(うよか)」で。眼前に畑が広がるテラス席があり、ゆったりと過ごせます。飲みものはコーヒーからビール、そして「稲葉さんのゆず」「矢野さんのいちごミルク」などが揃っています。

ドライブイン茂木・メニュー
雨余花の風間さん、綱川さんがセルフビルドしたキッチン
ドライブイン茂木・ご飯
地元野菜を使った、「雨余花カレー」と「地元野菜とお肉のごはん」

お腹がいっぱいになり、心地よい秋の陽だまりの下でうとうとしていると、12時から開く落合さんのパン工房「Serendip」に、町の方がふらっと訪れてきました。

オープン前の来客に雨余花の店員さんが「よかったらお茶でもどうぞ」と声を掛けていて、この場所、この地域の温かさを感じます。

「Serendip」に併設されている陶器店「成井窯アンテナショップ」
ドライブイン茂木・Serendip
「Serendip」はパンの他、陶器も取り扱っている
ドライブイン茂木

そして素敵な小屋が目を惹き、つい足を踏み入れてしまったのが古本屋の「ハトブックストア」。建築や文筆、映像をお仕事にされている町田さんがつくったものです。

「Serendip」の設計をした方で、それが終わった後もここの魅力に心惹かれお店を始めたといいます。

入らずにはいられないつくり「ハトブックストア」
ドライブイン茂木・町田さんの古本屋さん

季節の色を大切にしたお菓子屋さん「色実茶寮(いろのみさりょう)」には、店主の磯部さんが茂木のお野菜で作ったマフィンやクッキーが並んでいます。

ドライブイン茂木・色実茶寮
色実茶寮
ドライブイン茂木・ドライブイン茂木・色実茶寮
ドライブイン茂木・ドライブイン茂木・色実茶寮
茂木の食材を生かしたクッキーはお土産に

都会ではありえない魅力を放つドライブイン茂木。上澤さんと町田さんは「地域が元々もっている魅力だと思う」と言います。

ドライブイン茂木

「この地域はちょうど、日本の南北が交わる場所。お茶が採れる最北端だったり、逆に、寒い地方だけで生える木が育つ最南端だったりします。自然がとても豊かだし、人も北から、南からと多様な人が集まっているような気がします。

僕たちが届けたいのは、地域の『風景』です。この美しい風景や、暮らす人たちの自然体の生き方を伝えていきたい。この土地でどうにかして営業をしていきたいというより、ただここで生きていきたいだけなんです。

美しい茂木のゆるぎない土を根底に、自然や人と一緒に暮らしていったり、地域と地域が出会う場所になっていけたらなと思います」

ドライブイン茂木
ドライブイン茂木
ドライブイン茂木

「その上でやれることが、瓶詰めや料理、パンやお菓子を作ること。また、麦や野菜も育てています。他にも、地元で採れたお茶を自分たちで揉んで淹れたら美味しいはずだから囲炉裏を作ったり、この土地で採れる粘土で陶器を作ってみたり。ここの大きな壁で映画を観たら気持ち良いだろうなぁと思って、上映会を開いたりもしています。

今、ここには、可能性しかないんです。未来しかない。

だからこそ、この場所でできることを自分たちなりに最大限に楽しみながら生きています」

囲炉裏を置く小屋。これらは全て古い納屋の古材を利用して建てている

「僕らはここで生きていきたいだけ」という言葉で、ここの居心地の良さのわけが分かったような気がしました。

こうあらなければならないとか、こうすべきとかではなく、自然と肩肘張らずに生きている人たちが作る空間。そこはいるだけで、そのままで良いと認められているようです。等身大でいられる場に、じんわりと気持ちが満たされていきました。

ドライブイン茂木・雨余花
栃木県芳賀郡茂木町町田21
0285-81-5006
info@uyoka.com
営業日:火・水・金・土
※各店舗の営業日がことなることがあります
営業時間:
雨余花・町田古本店:10時-16時
Serendip(パン):12時-16時

文:田中佑実
写真:今井駿介

全国から工芸好きが訪れる、器や生活雑貨を扱うセレクトショップ「objects」

こんにちは。ライターの小俣荘子です。

「さんち必訪の店」とは、産地のものや工芸品を扱い、地元に暮らす人が営むその土地の色を感じられるお店のこと。
必訪 (ひっぽう) はさんち編集部の造語です。産地を旅する中で、みなさんにぜひ訪れていただきたいお店を紹介していきます。

今回は島根県松江市にある、器と生活道具の店「objects (オブジェクツ) 」。

店内のモチーフは「船室」。商品が並ぶ棚まで手仕事の技

JR松江駅から歩くこと13分ほど。宍道湖 (しんじこ) へと流れ込む大橋川のほとりに位置します。

大橋川に掛かる橋を渡り、柳がそよぐ川沿いを少し歩くとお店が現れます
大橋川に掛かる橋を渡り、柳がそよぐ川沿いを歩くと程なくしてお店が現れます
歴史を感じる趣きを持ちつつ、どこかモダンな石造りの建物。中に入る前から心が踊ります
歴史を感じる趣きを持ちつつ、どこかモダンな石造りの建物。中に入る前から心が踊ります

木枠に厚手のガラスがはめ込まれた懐かしい雰囲気の扉を押して中に入ると、「こんにちは、いらっしゃいませ」と店主の佐々木創(ささき・はじめ)さんと、陽子 (ようこ) さんご夫婦に暖かく迎えられます。軽やかな音楽が流れる店内をまずはゆっくり拝見することに。

大きな窓から柔らかく差し込む陽の光が商品を照らしていました
大きな窓から柔らかく差し込む陽の光が商品を照らしていました

埼玉県出身の佐々木夫妻。もともとはテーラーだったこの地で2011年にobjectsをオープンしました。現代の作り手の作品を中心に、陶器、ガラス、木工、織物といったさまざまな工芸品を扱っています。

船室をイメージして作られたという店内のしつらえ。改装時もほぼ手を加えずにそのままの内装を使っているのだそう
船室をイメージして作られたという店内のしつらえ。改装時もほぼ手を加えずにそのままの内装を使っているのだそう
地元松江市を代表する窯元のひとつ「湯町窯」で作られた器
地元松江市を代表する窯元のひとつ「湯町窯」で作られた器

商品を並べる棚は、島根で出会った家具屋さんに依頼して作った特注品。店内に馴染む素材とサイズ、作品の魅力を引き立てる照明が配置されています。商品が眺めやすく、実際に使うときのことをゆっくりとイメージしながらお気に入りを選ぶことができるように感じました。

ガラスの照明は、岐阜のガラス作家 安土草多 (あづち・そうた)さんの作品。販売もされていました
ガラスの照明は、岐阜のガラス作家 安土草多 (あづち・そうた)さんの作品。販売もされていました

店内の商品は、全て佐々木さんが全国をまわって見つけてきたもの。

岐阜のガラス工芸作家、安土忠久さんの作品。どっしり感のあるグラスやお皿は、手にしっくり馴染む
岐阜のガラス工芸作家、安土忠久さんの作品。どっしり感のあるグラスやお皿は、手にしっくり馴染む
大きな押紋土鍋は、鳥取県「岩井窯」の山本教行さんの作品。真鍮のおたまは岡山県の菊地流架さん作
大きな押紋土鍋は、鳥取県「岩井窯」の山本教行さんの作品。真鍮のおたまは岡山県の菊地流架さん作
愛知県の「瀬戸本業窯」の器
愛知県の「瀬戸本業窯」の器

各地に赴き、じかに相談してきたからこそ扱える

この地でお店を開く前に、7年ほどインターネット上でお店を営んでいた佐々木さん。当時から各地で「これは!」という作品を見つけては、窯元や工房へ赴きました。作品に惚れ込んだ思いを伝えるとともに取り扱いの相談をし、少しずつ作家さんとの関係を築いていったそうです。

民藝好き仲間やお客さまからの情報で展示会へ出かけ新たな作品に出会ったり、古道具の買い出しに出かけたりすることもあるのだとか。

「ふるいもの」と書かれた棚に並ぶ器。同業の方から譲り受けたり、骨董市や展示会で出会って仕入れてきたもの。「骨董」というと堅苦しい印象があるので柔らかい言葉を選んでいるそう
「ふるいもの」と書かれた棚に並ぶ器。同業の方から譲り受けたり、骨董市や展示会で出会って仕入れてきたもの。「骨董」というと堅苦しい印象があるので柔らかい言葉を選んでいるそう

その時々の巡り合わせで、異なる地域、作家さんの作品が並ぶので、店頭に並ぶ品物もその時々で変わります。何度も通いたくなりますね。器の他にも、カトラリーやかご、布製品なども。

縁が薄く作られ、口当たりが抜群の木製匙と蓮華。長野県の大久保公太郎さんの作品
縁が薄く作られ、口当たりが抜群の木製匙と蓮華。長野県の大久保公太郎さんの作品
ラオスで村の人々と布作りをしている谷由起子さんの仕事。バッグやストール、豆敷など
ラオスで村の人々と布作りをしている谷由起子さんの仕事。バッグやストール、豆敷など

店内では定期的に個展や企画展も開かれ、作家と交流しながら作品を購入する機会もあります。訪れたのはちょうど、谷由起子さん率いるHPEの作品展が終わったところでした。

店主の佐々木さんは、学生時代に旅行で訪れた沖縄で金城次郎さんの作品に衝撃を受け、それから民藝に興味を持つようになったそう。その後いだいた「いつか工藝に携わる仕事がしたい」という思いが現在につながっています。「こんなにカッコいい作品がある!作り手がいる!」ということを、広く伝えていきたいと考える佐々木さん。その思いが溢れるお店でした。

商品を綺麗に磨くことにも余念のない佐々木さん
商品を綺麗に磨くことにも余念のない佐々木さん

「重苦しい雰囲気にせず、むしろどこか軽やかさのある店。居心地の良い空間にしたかった」という佐々木さんの言葉の通り、ゆったりとリラックスして楽しめるので、ついつい長居してしまいました。

買い物をしてお店を後にすると、もうすっかり夕暮れどき。

お昼間とはまた違った雰囲気の外観。
お昼間とはまた違った雰囲気の外観。

「日本一の夕日」と謳われる松江の宍道湖周辺の夕暮れ。この日はあいにくの曇り空でしたが、橋の向こうの宍道湖に沈む太陽の名残で、湖だけでなく川にも空にも美しいブルーが広がっていました。

マジックアワーは空も川も美しいブルーで目を奪われました

出雲には、「ばんじまして」という挨拶があります。夜が訪れる間際の美しく儚い時間に交わされる言葉。出雲の人々の特別な思い入れが詰まったこの言葉を思い出しながら、景色を味わいました。

お店のそばに掛かる橋を臨む景色。空気全体が青みがかっていました
お店のそばに掛かる橋を臨む景色。空気全体が青みがかっていました

島根県は、湯町窯や出西窯など、有名な窯元もあり、器好きが多く訪れる場所。objectsは、そんな器好きの人々からも好評で、今では全国から多くの方が訪れるようになったお店です。

景色を楽しみ、松江の町歩きを堪能する際に、ふらりと気軽に立ち寄れる場所。店内の居心地の良い雰囲気は、器に詳しくない方、これから器を集めていきたいと思っている初心者の方にも嬉しいもの。

笑顔で迎えてくれる佐々木夫妻の案内で、お気に入りの作家さんや作品にきっと出会えます。

objects
松江市東本町2-8
0852-67-2547
営業時間:11:00〜19:00
不定休

文・写真:小俣荘子

鎌倉観光におすすめの、小町通りにある土産・雑貨店「鎌倉八座」

こんにちは。さんち編集部の西木戸です。
「さんち必訪の店」。産地のものや工芸品を扱い、地元に暮らす人が営むその土地の色を感じられるお店のこと。
必訪(ひっぽう)はさんち編集部の造語です。産地を旅する中で、みなさんにぜひ訪れていただきたいお店をご紹介していきます。
今回は、2017年3月末に鎌倉・小町通りにオープンしたばかりの「鎌倉八座」をご紹介します。

鎌倉駅東口を出て、鶴岡八幡宮に続く小町通りを進むこと約3分。賑わう小町通りの角に、藍色の看板の「鎌倉八座」が見えてきます。

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内装や商品でも使われているイメージカラーの藍色は、鎌倉時代の武士に「勝ち色」と呼ばれ、縁起がいいとされていた色。湘南在住の藍染ユニット、Litmusさんによる藍染暖簾も素敵です。

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「鎌倉八座」は、“八百万の神奈川土産と、「八」にかけた末広がりの縁起もの”と出会えるお店。鎌倉は、鶴岡八幡宮のお膝元であったり、八福神がいると言われていることもあって、「八」がコンセプト。お店の中央にある什器が八角形になっている他、ロゴ、商品、商品掛けなど「八」にちなんだ縁起のいいもので囲まれています。

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また、「鎌倉八座」という店名には、古都・鎌倉の歴史に紐付く意味合いも。
武家政権の中心地として発展した鎌倉には、幕府に商売の権利を保護された7つの商いの場がありました。絹座、炭座、米座、檜物座、材木座、相物座、馬商座など、業種によって分かれており「鎌倉七座( かまくらしちざ )」と呼ばれたそうです。今でも鎌倉の地名として残っている「材木座」は、文字通り材木を扱う場所だったのでしょう。材木座海岸の東側にある和賀江島( わかえじま )は、材木を集散する貿易の拠点となっていた国内最古の築港( 人口の港 )遺跡。今でも潮干時に見ることのできるたくさんの小石は、その跡だと言われています。

和賀江島にある石碑には、材木座に関する由来も。

和賀とは今の材木座の古い名前であり、この場所が昔はいかだ木が集散する港だったことから、やがて現在の名がつけられるようになった。和賀江島は、その和賀の港の出入り口に築かれた堤を言い今から694年前の貞永元年に、勧進聖人往阿弥陀仏の申請を受け平盛綱の協力を得て7月15日に起工し8月9日に完成させたものである。
参考サイト:鎌倉市HP

「鎌倉八座」は、そんな商業が花開いた歴史ある町・鎌倉で、地域の工芸や食材をはじめ、鎌倉のモチーフや四季を感じられる「土産もの」を揃えた8つ目の新しい商業になる、という意味も込められているのだそう。
地元に古くから続く技術と、現代の新しいものづくりが組み合わさった土産ものが揃っています。古都でありながらも、新しい文化が発展し続ける鎌倉らしいです。
鎌倉の伝統技術を用いて作られた工芸品や、八幡さまの使いであり平和の象徴とされる「鳩」をモチーフにした商品、漫画「オチビサン」の限定アイテムなど、「鎌倉八座」でしか手に入らないオリジナル商品にも注目しながら、気になった商品を紹介していきます。

鳩しるべ

陶器でつくられた鳩の中に、おみくじが入っている「鳩しるべ」。鎌倉の「鶴岡八幡宮」の他、京都の「石清水八幡宮」、大分の「宇佐神宮」など、全国に多数点在している八幡宮ですが、これらの八幡宮を移動する際に道しるべとなったのが鳩だったことに因んで作られました。鎌倉名物に因んだ言葉でお告げが書かれています。

鳩しるべ : 各450円(税別)
鳩しるべ : 各450円(税別)

オチビサングッズ

鎌倉のどこかにある「豆粒町」を舞台にした、安野モヨコさんによる漫画「オチビサン」。鎌倉に住んでいた安野モヨコさんが四季折々の自然や文化を描いています。これまで、オチビサンのWEB SHOPのみで展開していた限定グッズが、初めて実店舗に登場です。アイテムの一例、オチビサンの御朱印帳。四季の草花をイメージしたリースの中でオチビサンたちが遊んでいます。

オチビサンの御朱印帳 : 2400円(税別) ※赤のくみひもは付きません
オチビサンの御朱印帳 : 2400円(税別) ※赤のくみひもは付きません

鎌倉の手彫り豆皿

鎌倉の伝統工芸「鎌倉彫」の工芸士・遠藤英明さんによる鳩の豆皿。一つひとつが手作業で掘られています。丸みを帯びたフォルムがかわいいです。対になった形をセットにして贈りものにも。生漆(茶)と白漆(白茶)で仕上げた2種類です。

鎌倉の手掘り豆皿 : 各4,000円(税別)
鎌倉の手掘り豆皿 : 各4,000円(税別)

鎌倉 ハニカムコーヒー

3分ほどで一気に焙煎するのが一般的なコーヒー豆ですが、ハニカムコーヒーは低温で20分ほど時間をかけて焙煎。豆の持つ苦味の旨さと柔らかさを調整しながら、ていねいに焙煎されたコーヒー豆です。北鎌倉の焙煎工場「ベルタイム」と一緒に作った「鎌倉八座ブレンド」です。

鎌倉 ハニカムコーヒー : 640円(税別)
鎌倉 ハニカムコーヒー : 640円(税別)

鎌倉ハト豆

子ども達にひもじい思いをさせたくないと、平和を願い作られた”ハトマメ”。130年間作り続けられている「ハト豆」は、今でも手作業で作られており、永らく福岡県朝倉のみで販売されていましたが、この度はじめて、平和を願う思いと八幡さまの鳩に縁を感じ、鎌倉八座限定で販売です。オリジナルのパッケージで展開します。

鎌倉ハト豆 : 300円(税別)
鎌倉ハト豆 : 300円(税別)

藍色だるま

平塚市にある、創業150年のだるま屋・荒井だるま屋さんと作った、藍色のだるま。藍色は鎌倉時代、武士たちに「勝ち色」とされ、縁起のよい色とされてきたそうです。末広がりの八の字が胸に入っています。

藍色だるま 大 : 2,000円(税別)/小 : 1,000円(税別)
藍色だるま 大 : 2,000円(税別)/小 : 1,000円(税別)

湘南手捺染 鳩菱紋(はとびしもん)

平塚市にある手捺染工場で、昔ながらの技法を用いて一反一反ていねいに手染めされたテキスタイルを使ったシリーズ。八幡さまの使いである鳩を、子孫繁栄・無病息災に無病息災に通じるとされる「菱紋」に見立てた縁起の良い文様。鎌倉で時々見かける、愛らしくもお騒がせなリスも時々登場しています。

八の字型の袋と鳩テキスタイルの2つの「ハ」が合わさった「八重ご縁守り」。お清めした5円玉を納めて身につけることで、末広がりにご縁が訪れるよう願いが込められています。

八重ご縁守り : 800円(税別)
八重ご縁守り : 800円(税別)
ペットボトルカバー、御朱印帳、ギャザーポーチ、小銭入れ、定期入れ、香袋などの、日常的に使えるアイテムが揃います
ペットボトルカバー、御朱印帳、ギャザーポーチ、小銭入れ、定期入れ、香袋などの、日常的に使えるアイテムが揃います

鎌倉にちなんだお土産の揃う「鎌倉八座」は、誰かへのお土産に加えて、鎌倉観光の思い出として自分の分も持ち帰りたくなるような商品がたくさんありました。
明月院・長谷寺・成就院といった紫陽花の名所も見頃を迎える時期です。お出かけ際には、「鎌倉八座」へも足を運んでみてはいかがでしょうか。

鎌倉八座

鎌倉市小町1-7-3
0467-84-7766
営業時間 : 9:30〜18:30

文 : 西木戸弓佳
写真 : Nacása & Partners Inc.

さんち必訪の店 先人の心と建物の歴史を受け継ぐ、はこだて工芸舎

こんにちは、さんち編集部の山口綾子です。
「さんち必訪の店」。産地のものや工芸品を扱い、地元に暮らす人が営むその土地の色を感じられるお店のこと。
必訪(ひっぽう)はさんち編集部の造語です。産地を旅する中で、みなさんにぜひ訪れていただきたいお店をご紹介していきます。

今日は、地元で作られた陶器・ガラス・木工品を中心に、服飾品、家具、雑貨を扱う「はこだて工芸舎」を訪ねました。
はこだて工芸舎は、函館駅から車で約7分、函館市電・十字街電停の手前にあります。函館は古くからの建物が多く残る街ですが、はこだて工芸舎の建物はゆるやかな曲線が印象的な外観で、ひときわ目を引きます。その場所だけ、昔懐かしい映画の街並みのようです。

はこだて工芸舎の入り口。左側は壁面のカーブに合わせてアーチ窓になっています
はこだて工芸舎の入り口。左側は壁面のカーブに合わせてアーチ窓になっています

碧色ののれんをくぐり、木枠のガラス引き戸を開けて中にお邪魔します。旧い内装と、現在の装飾が絶妙に組み合わされています。
オーナー夫人の堂前邦子(どうまえ・くにこ)さんにお話を伺いました。

オーナー夫人の堂前邦子さん
オーナー夫人の堂前邦子さん

建物の歴史ごと引き受ける

26年前、堂前さんは愛知県の瀬戸から陶芸作家でもあるご主人とお子さんと函館にやってきました。当時は様々な土地を旅行して、各地の工芸品を見ることが好きだったという堂前さん。中でも函館は工芸品の作り手がいるにも関わらず、工芸品を扱うお店がほとんどなかったことがはこだて工芸舎を立ち上げるきっかけになります。

「どこの馬の骨ともわからない私たちに、作り手の方を始め、たくさんの方が手を貸してくれました」

20年前に函館市宝来町でスタートしたお店は、当初14人の作家が協力して始められたそうです。それから、同じ函館市内の元町、そして2014年、ここ末広町へ移転しました。紆余曲折あり、堂前ご夫妻が引き継いで今に至ります。

「この建物は梅津福次郎さんという、食料品やお酒の問屋業をされていた方が1890年(明治23年)に梅津商店として創設されたものなんです」

明治23年 末広町進出当初の店舗
明治23年 末広町進出当初の店舗

梅津福次郎は茨城県の出身で、1880年(明治13年)に函館へやってきました。当時の函館は北海道の商業の中心として、販路は東北・北海道・千島・樺太まで広がっていたそうです。福次郎は類まれなる商才で、巨万の富を得ます。函館は「火事は函館の名物」と呼ばれるほど火事が多く、梅津商店も現在の場所に移ってから3度も火事に遭ったそうです。しかし、災厄に遭っても常に備え、より良い策を考えてすぐに実行に移した福次郎は、その都度再建していきます。現在のこの建物は1934年(昭和9年)の大火後の建築だそうです。

明治後期の店舗(大正10年の大火により焼失)
明治後期の店舗(大正10年の大火により焼失)

「梅津さんは、一般的にはあまり有名ではありませんが、学校の建設費全額を寄付したり、函館だけではなく各地に多大な貢献をされた方なんです。一代で財を成したそうですが、跡取りができず、時代の流れと共に商売も衰退していったそうです。私たちがここの存在を知ったときも、いつ壊されてもおかしくない状態でした。でも、何度も火事を乗り越えた建物と、梅津さんのやってこられたことを聞いて、建物の歴史ごと引き受けたいと思いました」

2階は建築当時の面影を残す応接間や所蔵室があります。福次郎が寄付した建物の記念碑の拓本や、梅津商店の古い帳簿などが展示されており、見学可能となっています。

「たくさんの資料があるわけではなく、ここが昔問屋だったことがほんの少しわかるくらいのものではありますが、大切に残していきたいですね」

2階の廊下の様子。広間は貸し出しも行っているそう
2階の廊下の様子。広間は貸し出しも行っているそう

「この建物は、放っておくとすぐボロ家になっちゃう(笑)。特に気をつけているのは日々の小さな積み重ねの掃除ですね。木が古いので、あっちこっちがすぐにカサカサになるんです。ガラスも1週間ほど掃除をしないでおくと曇ってきてしまう。あからさまにきれいに掃除した、ではなく、何もしていないようでいて、片付いていることを理想にしています。
あとは、建物ができた時代に使われていたかもしれない物と、今私たちが手を加える物のバランスを大切にしないといけない。古い木を使わないと雰囲気が合わないので、建物の昔の姿に戻すように手入れしていく感じですね」

地元客と観光客に向けた商品

はこだて工芸舎のお客さまは、地元の方がほとんどだそうです。お店にお伺いしたときには、地元のお客さまが“食器はここで買うって決めているの”と堂前さんにお話されていました。

「地元のお客さまは観光のお客さまと違って、来られる頻度が多くなります。なので、季節や時候を考えて、なるべく新しい商品を置くようにしています。買うことを目的とせずに、ふらっと偶然入ったお店で素敵な商品に出会うこともありますよね。うちの商品がそういうきっかけになるといいなと思って選んでいます」

店内には北海道で活躍する作家を中心に、全国各地の作家の作品が並んでいます
店内には北海道で活躍する作家を中心に、全国各地の作家の作品が並んでいます

観光のお客さまもいらっしゃいますか?

「ここ数年は観光のお客さまも増えてきています。うちは北海道の作家の作品をメインで置いているんですが、ある日、沖縄の作家さんの作品も一緒に置いていたんですね。観光のお客さまからしたら、“どうして北海道に沖縄の作家さんの作品があるんですか?”と聞かれました。そりゃあそう思いますよね(笑)。それは地元のお客さまに向けて置いているんです、ということをお話しました。地元のお客さまは、函館や北海道以外の土地の作品もご覧になりたいでしょうし、日本各地の作家さんの作品を扱うようにしています。半分は函館、半分は違う土地というように、混在しているのはうちの店としては必要不可欠なことなんです」

堂前さんが函館に来てから26年。最近気になっていることは、人口が少なくなっていること。元々は人口30万人都市と言われていましたが、今は27万人ほどに。毎年3000人ずつくらいの人口が減っているようです。

「人口の減少は食い止めようがないのかなとも思いますけど、函館は環境的には本当に恵まれている良い街なんですよね。ふるさとにするにはもって来いですよ。足は電車、空港、フェリーがあるし、見どころは函館山、大沼、湯の川、五稜郭、トラピスト…。食べ物も美味しいですしね。これを当たり前だと思わず、コツコツと守っていきたいですね。パッと見の派手さはなくても、沸々と熱いものがこの地域には流れているぞっていうことを若い人にも知ってほしいです」

“函館は恵まれた街”。暮らしている人が自信を持ってそう言えることは、本当に素晴らしい街なのだと思います。実際に訪れた私も、景色・食・人、あらゆる点で函館の魅力を知る日々でした。はこだて工芸舎は、梅津福次郎さんから建物と共に“函館の土地と人に貢献する”という意思を受け継がれているような気がしました。

はこだて工芸舎
函館市末広町8-8
0138-22-7706
営業時間:10:00〜18:00(冬期)
駐車場(6台)有あり

文:山口綾子
写真:菅井俊之