8月 江戸っ子が夏に愛した「トキワシノブ」

こんにちは。さんち編集部の尾島可奈子です。
日本の歳時記には植物が欠かせません。新年の門松、春のお花見、梅雨のアジサイ、秋の紅葉狩り。見るだけでなく、もっとそばで、自分で気に入った植物を上手に育てられたら。

そんな思いから、世界を舞台に活躍する目利きのプラントハンター、西畠清順さんを訪ねました。インタビューは、清順さん監修の植物ブランド「花園樹斎」の、月替わりの「季節鉢」をはなしのタネに。

植物と暮らすための具体的なアドバイスから、古今東西の植物のはなし、プラントハンターとしての日々の舞台裏まで、清順さんならではの植物トークを月替わりでお届けします。

8月はトキワシノブ。漢字では「常盤忍」と書いて、いかにも日本らしい、クラシックな響きです。今回はどんなお話が伺えるでしょうか。

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◇8月 江戸っ子が夏に愛した「トキワシノブ」

夏はちょっとでも涼しさを感じたいですよね。例えば風鈴は、リンリンという音と風に揺れている姿で涼を感じます。風を視覚化しているんですね。

植物も同じで、この時期は風の動きを見た目に感じられるような植物がいいですね。江戸時代中ごろ、庭師が普段出入りしている屋敷へ「夏の挨拶の贈りもの」として贈って人気を呼んだのが、トキワシノブです。濃い緑が風に揺れる姿はなんとも涼しげです。

当時は山苔をつけた竹にトキワシノブを巻きつけて、風鈴のように軒下に吊るす仕立てが一躍ブームにもなりました。

トキワシノブは他の植物に着生して成長する「着生シダ植物」です。自然の中ではよく樹皮に張り付いていますが、鉢植えでは苔などいろいろなものに茎を絡ませて伸びていきます。

その根茎がまるで猫の手のようで、なんとも憎めない可愛らしい見た目ながらしたたかさを備えた植物と言えます。

水が大好きなので、水やりと一緒に葉に霧吹きをしてあげると生き生きして、見た目にも一層涼しげになります。夏は直射日光の当たらない日陰の屋内で、冬は室内で育てれば一年中緑を楽しめますよ。江戸の庭師にならって夏の挨拶に贈ってもいいですね。

それじゃあ、また来月に。

<掲載商品>

花園樹斎
植木鉢・鉢皿

・8月の季節鉢 トキワシノブ(鉢とのセット。店頭販売限定)


*季節鉢は以下のお店でお手に取っていただけます。商品の在庫は各店舗へお問い合わせください。
中川政七商店全店
(東京ミッドタウン店・ジェイアール名古屋タカシマヤ店・阪神梅田本店は除く)
遊 中川 本店
遊 中川 横浜タカシマヤ店

——


西畠 清順
プラントハンター/そら植物園 代表
花園樹斎 植物監修
http://from-sora.com/

幕末より150年続く花と植木の卸問屋「花宇」の五代目。
日本全国、世界数十カ国を旅し、収集している植物は数千種類。2012年、ひとの心に植物を植える活動「そら植物園」をスタートさせ、国内外含め、多数の企業、団体、行政機関、プロの植物業者等からの依頼に答え、さまざまなプロジェクトを各地で展開、反響を呼んでいる。
著書に「教えてくれたのは、植物でした 人生を花やかにするヒント」(徳間書店)、 「そらみみ植物園」(東京書籍)、「はつみみ植物園」(東京書籍)など。


花園樹斎
http://kaenjusai.jp/

「“お持ち帰り”したい、日本の園芸」がコンセプトの植物ブランド。目利きのプラントハンター西畠清順が見出す極上の植物と創業三百年の老舗 中川政七商店のプロデュースする工芸が出会い、日本の園芸文化の楽しさの再構築を目指す。日本の四季や日本を感じさせる植物。植物を丁寧に育てるための道具、美しく飾るための道具。持ち帰りや贈り物に適したパッケージ。忘れられていた日本の園芸文化を新しいかたちで発信する。

6月 一番簡単にお付き合いできる盆栽「復活草」

こんにちは。さんち編集部の尾島可奈子です。
日本の歳時記には植物が欠かせません。新年の門松、春のお花見、梅雨のアジサイ、秋の紅葉狩り。見るだけでなく、もっとそばで、自分で気に入った植物を上手に育てられたら。そんな思いから、世界を舞台に活躍する目利きのプラントハンター、西畠清順さんを訪ねました。インタビューは、清順さん監修の植物ブランド「花園樹斎」の、月替わりの「季節鉢」をはなしのタネに。植物と暮らすための具体的なアドバイスから、古今東西の植物のはなし、プラントハンターとしての日々の舞台裏まで、清順さんならではの植物トークを月替わりでお届けします。

6月は復活草(ふっかつそう)。大人しそうな見た目ですが、さてインパクト大な名前の由来はどこにあるのでしょうか。今回も清順さんが代表を務める「そら植物園」のインフォメーションセンターがある、代々木VILLAGEにてお話を伺いました。

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◇6月 一番簡単にお付き合いできる盆栽「復活草」

復活草は雨が大好きな植物です。乾燥が続くと葉を閉ざして、自ら生命活動を停止してしまうんです。いわば仮死状態ですね。それが、また水をあげると葉を開いていって、緑に戻るという特殊な性質を持っています。だから復活草。これから雨が多くなるので、水が好きな植物がいいかなと思って選びました。

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盆栽のように外で育てますが、シダ植物なので日陰にもある程度耐えます。別名イワヒバと言って、崖にくっついて自生しているんですよ。それも断崖絶壁の、風がビュンビュン当たるようなところに生えているんです。一度海外からきた植物学者のお客さんを案内がてら、近くの山に登って命綱なしで復活草を採っていたら、高いところに登りすぎて降りられなくなったことがありました。23・4歳の頃だったかな。しばらく岩にしがみついたまま動けずに、同行した人になんとか上から引き上げてもらって事なきを得ましたが、今思うと復活草の名前をなぞるような経験でしたね (笑) 。

ヨーロッパだったらバラやチューリップが「キレイ」となるんですけど、日本人はこういう“けったいな”ものを愛でる文化があります。それはもう江戸時代くらいから。ミニマリズムというか、ちっちゃい中に世界観が凝縮した感じが好きなんですね。復活草は長らく盆栽の世界で愛されてきた植物ですが、育て方はシンプル。土が乾いてきたら水をやる、でOKです。そういう意味では「一番簡単にお付き合いできる盆栽」と思ってもらったらいいと思います。名前も縁起がいいので、父の日のプレゼントにも良さそうですね。

それじゃあ、また来月に。

<掲載商品>

花園樹斎
植木鉢・鉢皿

・6月の季節鉢 復活草(鉢とのセット。店頭販売限定)

季節鉢は以下のお店でお手に取っていただけます。
中川政七商店全店
(阪神梅田本店・ジェイアール名古屋タカシマヤ店は除く)
遊 中川 本店
遊 中川 神戸大丸店
遊 中川 横浜タカシマヤ店
*商品の在庫は各店舗へお問い合わせください

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西畠 清順
プラントハンター/そら植物園 代表
花園樹斎 植物監修
http://from-sora.com/

幕末より150年続く花と植木の卸問屋「花宇」の五代目。
日本全国、世界数十カ国を旅し、収集している植物は数千種類。

2012 年、ひとの心に植物を植える活動「そら植物園」をスタートさせ、国内外含め、多数の企業、団体、行政機関、プロの植物業者等からの依頼に答え、さまざまなプロジェクトを各地で展開、反響を呼んでいる。
著書に「教えてくれたのは、植物でした 人生を花やかにするヒント」(徳間書店)、 「そらみみ植物園」(東京書籍)、「はつみみ植物園」(東京書籍)など。


花園樹斎
http://kaenjusai.jp/

「“お持ち帰り”したい、日本の園芸」がコンセプトの植物ブランド。目利きのプラントハンター西畠清順が見出す極上の植物と創業三百年の老舗 中川政七商店のプロデュースする工芸が出会い、日本の園芸文化の楽しさの再構築を目指す。日本の四季や日本を感じさせる植物。植物を丁寧に育てるための道具、美しく飾るための道具。持ち帰りや贈り物に適したパッケージ。忘れられていた日本の園芸文化を新しいかたちで発信する。

5月 ミニマムな世界を楽しむ「千島撫子」、園芸の醍醐味を伝える「アッツ桜」

こんにちは。さんち編集部の尾島可奈子です。
日本の歳時記には植物が欠かせません。新年の門松、春のお花見、梅雨のアジサイ、秋の紅葉狩り。見るだけでなく、もっとそばで、自分で気に入った植物を上手に育てられたら。そんな思いから、世界を舞台に活躍する目利きのプラントハンター、西畠清順さんを訪ねました。インタビューは、清順さん監修の植物ブランド「花園樹斎」の、月替わりの「季節鉢」をはなしのタネに。植物と暮らすための具体的なアドバイスから、古今東西の植物のはなし、プラントハンターとしての日々の舞台裏まで、清順さんならではの植物トークを月替わりでお届けします。

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5月の季節鉢は2種類。千島撫子(ちしまなでしこ)とアッツ桜です。清順さんが代表を務める「そら植物園」のインフォメーションセンターがある、代々木VILLAGEにてお話を伺いました。

◇大きな花束でなく、ミニマムな世界を楽しむ「千鳥撫子」

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5月の花といえば母の日に贈るカーネーションですが、撫子(なでしこ)もカーネーションも同じナデシコ科です。撫子は江戸時代に一大ブームになった植物。いろんな園芸品種があります。中でも千島撫子はシベリア原産。同じ千島とつく千島桜は、通常の桜が5〜10メートルくらいに育って花をつけるのに対して、2〜3メートル育ったところでもう開花します。寒いところで育つ植物は、大きくなっても得をしないので小さく育つんですね。そういう矮性(わいせい)が千島撫子の何よりの特徴です。限られた空間にたくさんの花をつけて、大味じゃなくぎゅっと凝縮された花の美しさを楽しめます。日本人はそういう、ミニマムな世界をよしとする美意識を持ってきたんですね。大きな花束じゃなくても小さな空間の中でたくさんの花を楽しむ、こうした花を母の日に贈ったりしてもいいだろうな、と5月の季節鉢のひとつに選びました。

◇園芸の醍醐味を伝える「アッツ桜」

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この花は南アフリカ原産で、桜とつくけれど桜ではないんです。園芸の世界では全く関係のない植物に有名な花木の名をつけることがちょこちょこあります。梅とつくけれど梅じゃない蝋梅(ろうばい)や、サクラ草なんかもそうですね。さっきの千島撫子と一緒で、これだけ小さい中に花芽がたくさんついて葉っぱの数も多いものが、園芸植物としては鑑賞価値が高いんです。葉は高山植物によく見られるうぶ毛で覆われていますが、実際アッツ桜は南アフリカのドラケンスバーグ山脈に自生しています。こういう、高い山に登らないと見れないような花を手元で楽しめる、というのが園芸の何よりの魅力です。遠くまで行けないお年寄りの方やまだ小さい子どもたちにも、遠い国の高山植物を届けて愛でてもらう。それも親しみやすい名前をつけてね。アッツ桜はそんな園芸の醍醐味を伝える植物だと思います。

それじゃあ、また来月に。

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5/3(水・祝)代々木VILLAGEにて、5月の季節鉢「千島撫子」と「アッツ桜」が「GOOD SUNDAY MARKET」に登場します!

「なるべくカラダに良いものを、無理なく、楽しく」
都会に暮らしながらも自然を大切にしたライフスタイルを願う人達にむけたイベント「GOOD SUNDAY MARKET 5/3(水・祝)@代々木VILLAGE」に、花園樹斎が出張出店。5月の季節鉢「千島撫子」や「アッツ桜」、4月にご紹介した「オリーブ」も登場します。会場のお庭には、清順さんプロデュースの見ているだけでワクワクするような珍しい植物もたくさん。ゴールデンウィーク、ぜひ足を運んで直接植物に触れてみてくださいね。
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<掲載商品>

花園樹斎
植木鉢・鉢皿

・植物(鉢とのセット。店頭販売限定)
千島撫子

アッツ桜

季節鉢は以下のお店でお手に取っていただけます。
中川政七商店全店
(阪神梅田本店・ジェイアール名古屋タカシマヤ店は除く)
遊 中川 本店
遊 中川 神戸大丸店
遊 中川 横浜タカシマヤ店
*商品の在庫は各店舗へお問い合わせください

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西畠 清順
プラントハンター/そら植物園 代表
花園樹斎 植物監修
http://from-sora.com/

幕末より150年続く花と植木の卸問屋「花宇」の五代目。
日本全国、世界数十カ国を旅し、収集している植物は数千種類。

2012 年、ひとの心に植物を植える活動「そら植物園」をスタートさせ、国内外含め、多数の企業、団体、行政機関、プロの植物業者等からの依頼に答え、さまざまなプロジェクトを各地で展開、反響を呼んでいる。
著書に「教えてくれたのは、植物でした 人生を花やかにするヒント」(徳間書店)、 「そらみみ植物園」(東京書籍)、「はつみみ植物園」(東京書籍)など。


花園樹斎
http://kaenjusai.jp/

「“お持ち帰り”したい、日本の園芸」がコンセプトの植物ブランド。目利きのプラントハンター西畠清順が見出す極上の植物と創業三百年の老舗 中川政七商店のプロデュースする工芸が出会い、日本の園芸文化の楽しさの再構築を目指す。日本の四季や日本を感じさせる植物。植物を丁寧に育てるための道具、美しく飾るための道具。持ち帰りや贈り物に適したパッケージ。忘れられていた日本の園芸文化を新しいかたちで発信する。


聞き手:尾島可奈子

4月のオリーブ

こんにちは。さんち編集部の尾島可奈子です。
日本の歳時記には植物が欠かせません。新年の門松、春のお花見、梅雨のアジサイ、秋の紅葉狩り。見るだけでなく、もっとそばで、自分で気に入った植物を上手に育てられたら。そんな思いから、世界を舞台に活躍する目利きのプラントハンター、西畠清順さんを訪ねました。インタビューは、清順さん監修の植物ブランド「花園樹斎」の、月替わりの「季節鉢」をはなしのタネに。植物と暮らすための具体的なアドバイスから、古今東西の植物のはなし、プラントハンターとしての日々の舞台裏まで、清順さんならではの植物トークを月替わりでお届けします。

4月はオリーブ。常緑樹であるオリーブはどの季節でも楽しめますが、「今改めて見直されるべき植物」と清順さんは語ります。さて、今月はどんなお話を伺えるでしょうか。

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◇4月「オリーブ」

4月って、植物を植えたり買ったりするには一番いい季節だと思っています。オリーブは常緑樹なのでいつ育ててもいいですが、十分に育ったオリーブは、5・6月になると花をつけます。今回花園樹斎の鉢に選んだオリーブはまだ若い木なので花はすぐには咲きませんが、花のシーズンに合わせて4月の季節鉢に選びました。これから頑張って育てたら、数年後に花をつけるかもしれませんよ。

オリーブは、いろんな植物を扱う中でも思い入れの強い植物です。平和と繁栄の象徴として国連のシンボルにもなっています。実のなる木としては世界で一番長生きで、縁起もいい。圧倒的なカリスマ性がありながら、屋外管理をする同じサイズの日本の果樹より圧倒的に育てやすいんです。光がある方が喜びますが、ある程度の日陰にも耐えるし、乾燥にも強い。

それと、古代オリンピックの勝者にオリーブの冠が贈られていたという話は有名ですね。今、日本は2020年のオリンピック開催に向けてスポーツの気運が高まっていますが、こういうことをきっかけに、もっと注目されていい植物じゃないかなと思います。育てやすくて縁起のいい植物だから、贈りものにしたっていい。新生活を始める人や、スポーツをする子に贈ったりね。水泳をやっている女の子から野球をやっている男の子へ贈ったりしてもいいかもしれない。

それじゃあ、また来月に。

<掲載商品>
花園樹斎
植木鉢・鉢皿

・植物(鉢とのセット):以下のお店でお手に取っていただけます。
中川政七商店全店
(阪神梅田本店・ジェイアール名古屋タカシマヤ店は除く)
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遊 中川 神戸大丸店
遊 中川 横浜タカシマヤ店
*商品の在庫は各店舗へお問い合わせください

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西畠 清順
プラントハンター/そら植物園 代表
花園樹斎 植物監修
http://from-sora.com/

幕末より150年続く花と植木の卸問屋「花宇」の五代目。
日本全国、世界数十カ国を旅し、収集している植物は数千種類。

2012 年、ひとの心に植物を植える活動「そら植物園」をスタートさせ、国内外含め、多数の企業、団体、行政機関、プロの植物業者等からの依頼に答え、さまざまなプロジェクトを各地で展開、反響を呼んでいる。
著書に「教えてくれたのは、植物でした 人生を花やかにするヒント」(徳間書店)、 「そらみみ植物園」(東京書籍)、「はつみみ植物園」(東京書籍)など。


花園樹斎
http://kaenjusai.jp/

「“お持ち帰り”したい、日本の園芸」がコンセプトの植物ブランド。目利きのプラントハンター西畠清順が見出す極上の植物と創業三百年の老舗 中川政七商店のプロデュースする工芸が出会い、日本の園芸文化の楽しさの再構築を目指す。日本の四季や日本を感じさせる植物。植物を丁寧に育てるための道具、美しく飾るための道具。持ち帰りや贈り物に適したパッケージ。忘れられていた日本の園芸文化を新しいかたちで発信する。


聞き手:尾島可奈子

3月の桜

こんにちは。さんち編集部の尾島可奈子です。
日本の歳時記には植物が欠かせません。新年の門松、春のお花見、梅雨のアジサイ、秋の紅葉狩り。見るだけでなく、もっとそばで、自分で気に入った植物を上手に育てられたら。そんな思いから、世界を舞台に活躍する目利きのプラントハンター、西畠清順さんを訪ねました。インタビューは、清順さん監修の植物ブランド「花園樹斎」の、月替わりの「季節鉢」をはなしのタネに。植物と暮らすための具体的なアドバイスから、古今東西の植物のはなし、プラントハンターとしての日々の舞台裏まで、清順さんならではの植物トークを月替わりでお届けします。

3月は桜。そろそろ開花予報が流れ出す頃です。日本人がこよなく愛する春の顔。その膨大な注文を受けるため、清順さんが代表を務める「そら植物園」では毎年、長野での「桜の枝切り合宿」で新年が始まるそうです。5日間で数千という枝を目利きするという清順さんに、早速桜のこと、伺っていきましょう。

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◇3月「桜」

前回も少し触れましたが、昔の日本でお花見といえば梅でした。梅から桜に取って替わったのは平安の頃から。庶民の間に広まったのは江戸時代頃だと言われています。

桜という名前の語源は、「さ」が田畑の神様、「くら」が神様が鎮座する場所。神様は大のお酒好き、お祭り好きです。桜の木の下で宴を開くことが、自然と農耕の始まるこの季節の行事になっていったんだと思います。

今回季節鉢に選んだ桜は「旭山桜」の盆栽仕立て。背丈が大きくならない矮性(わいせい)種ながらたくさんの花をつけるので、鉢に入れた状態で「小さな花見」を楽しむことができます。桜の魅力が凝縮された鉢です。水やりを忘れなければ、八重の大き目の花をたくさんつけてくれます。

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◇桜=日本のもの?

実は桜の起源も、日本とは限らないんですけどね。中国、韓国、ヒマラヤという人もいる。中国にも桜は自生するし、桜=日本のもの、とは決めつけない方がいいかもしれない。それでも、日本でもっとも愛でられた樹木であることには、変わりありません。神様が座る木がこれだと決めたというのは、それだけ別格だったということです。名前はそういう証拠やから。それじゃあ、また来月に。

(ひとこと)
プラントハンターは、初めて見た木が梅なのか桃なのか桜なのか、花も葉もない状態で一瞬でわからなければいけません。もっと言えば同じ桜でも何の種類か、いつ頃に、何色の花が咲くのか。一流のプラントハンターは、それが冬芽を見ただけで、パッとわかるんですよ。

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<掲載商品>
花園樹斎
植木鉢・鉢皿

・植物(鉢とのセット):以下のお店でお手に取っていただけます。
中川政七商店全店
(阪神梅田本店・ジェイアール名古屋タカシマヤ店は除く)
遊中川 本店
遊中川 神戸大丸店
遊中川 横浜タカシマヤ店
*商品の在庫は各店舗へお問い合わせください

——


西畠 清順
プラントハンター/そら植物園 代表
花園樹斎 植物監修
http://from-sora.com/

幕末より150年続く花と植木の卸問屋、花宇の五代目。
日本全国、世界数十カ国を旅し、収集している植物は数千種類。日々集める植物素材で、国内はもとより海外からの依頼も含め年間2,000件を超える案件に応えている。2012年、ひとの心に植物を植える活動「そら植物園」をスタートさせ、植物を用いたいろいろなプロジェクトを多数の企業・団体などと各地で展開、反響を呼んでいる。著書に『教えてくれたのは、植物でした 人生を花やかにするヒント』(徳間書店)、『プラントハンター 命を懸けて花を追う』(徳間書店)、『そらみみ植物園』、『はつみみ植物園』(東京書籍)


花園樹斎
http://kaenjusai.jp/

「”お持ち帰り”したい、日本の園芸」がコンセプトの植物ブランド。目利きのプラントハンター西畠清順が見出す極上の植物と創業三百年の老舗 中川政七商店のプロデュースする工芸が出会い、日本の園芸文化の楽しさの再構築を目指す。日本の四季や日本を感じさせる植物。植物を丁寧に育てるための道具、美しく飾るための道具。持ち帰りや贈り物に適したパッケージ。忘れられていた日本の園芸文化を新しいかたちで発信する。


聞き手:尾島可奈子

1月の梅、2月の木瓜

こんにちは。さんち編集部の尾島可奈子です。
日本の歳時記には植物が欠かせません。新年の門松、春のお花見、梅雨のアジサイ、秋の紅葉狩り。見るだけでなく、もっとそばで、自分で気に入った植物を上手に育てられたら。そんな思いから、世界を舞台に活躍する目利きのプラントハンター、西畠清順さんを訪ねました。インタビューは、清順さん監修の植物ブランド「花園樹斎」の、月替わりの「季節鉢」をはなしのタネに。「今の時期のおすすめ植物は?」「わたしでも育てられますか?」など植物と暮らすための具体的なアドバイスから、古今東西の植物のはなし、プラントハンターとしての日々の舞台裏まで、清順さんならではの植物トークを月替わりでお届けします。

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日本の植物は四季で劇的に変わっていきます。海外に比べると落葉樹がすごく多いから、春になったら花が咲いて、そのとなりで次の季節の植物が芽吹いて。季節を告げる花がたくさんある。だから花園樹斎でも、月ごとに違う植物の「季節鉢」ができるんです。人の手に取ってもらうものだから、選ぶのは育てやすさも考えながら。1月は梅、2月は木瓜(ぼけ)を選びました。

◇1月「梅」

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1月の梅はまさに「松竹梅」、新春のおめでたいイメージです。浮世絵にも、正月に梅を買う女の人が描かれていたりします。梅を愛でる文化は、元々は中国から入ってきたものなんですね。桜にとって変わられるまでは、昔の日本でお花見といえば梅でした。

◇2月「木瓜」

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2月の季節鉢に選んだ木瓜は個人的にすごく好きな植物で、ずっと花園樹斎に入れたいと思っていました。園芸植物に比べて、野性味が強い。いくら切っても新芽が出てきて、生命力が強いんです。剪定に強いので、盆栽の材料にもよく使われてきました。きれいな花をつけるんですが、実を食べられるので、昔から薬用にも重宝されていた植物です。さらには酒にもなる。万能なんです。江戸時代に入ってから爆発的な人気になって、当時200種類ほどの園芸品種が生まれたと伝わっています。外で育てる植物ですが、土質もあまり選ばなくて、管理がしやすいのも特長ですね。

◇わたしでも、育てられますか?

もし、植物をうまく育てられるか心配だったら、枯らしちゃったらかわいそうと思わずに、枯らしてもいいから付き合いたいな、と思うこと。枯らしてしまうことは確かに悲しいことなんですけど、枯らすのが嫌だから付き合わないよりは、付き合ってみて、何で枯れたんだろう、何で今年は花が咲いたんだろうと思うことが、すべての始まりですよね。だから、遠慮しないことですよ。

「育てられるかな、育てられないかな」よりも、枯れてもいいから「自分へのご褒美に買いたい」「プレゼントしてあげたい」「今年は身近で植物を感じてみたい」「ボケなら私でもできるかな」とか、そういう楽な気持ちで付き合っていくのがいいと思います。それじゃあ、また来月に。

(ひとこと)
おれがこの仕事をし始めたのは21歳ぐらいの、ちょうど1月なんです。年始から始まりました。働いた初日、木にのぼって枝を切った時に思ったんです。「これ、一番になれる自信がある」と。その日から今日に至るまで、1ミリもゆるぎなくそれを思ってます。

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<掲載商品>
花園樹斎
植木鉢

鉢皿

・植物(鉢とのセット):以下のお店でお手に取っていただけます。
 中川政七商店全店
 (阪神梅田本店・東京ミッドタウン店・ジェイアール名古屋タカシマヤ店は除く)
 遊中川 本店 
 遊中川 神戸大丸店
 遊中川 横浜タカシマヤ店
 *商品の在庫は各店舗へお問い合わせください

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西畠 清順
プラントハンター/そら植物園 代表
花園樹斎 植物監修
http://from-sora.com/

幕末より150年続く花と植木の卸問屋、花宇の五代目。
日本全国、世界数十カ国を旅し、収集している植物は数千種類。日々集める植物素材で、国内はもとより海外からの依頼も含め年間2,000件を超える案件に応えている。2012年、ひとの心に植物を植える活動「そら植物園」をスタートさせ、植物を用いたいろいろなプロジェクトを多数の企業・団体などと各地で展開、反響を呼んでいる。著書に『教えてくれたのは、植物でした 人生を花やかにするヒント』(徳間書店)、『プラントハンター 命を懸けて花を追う』(徳間書店)、『そらみみ植物園』、『はつみみ植物園』(東京書籍)


花園樹斎
http://kaenjusai.jp/

「”お持ち帰り”したい、日本の園芸」がコンセプトの植物ブランド。目利きのプラントハンター西畠清順が見出す極上の植物と創業三百年の老舗 中川政七商店のプロデュースする工芸が出会い、日本の園芸文化の楽しさの再構築を目指す。日本の四季や日本を感じさせる植物。植物を丁寧に育てるための道具、美しく飾るための道具。持ち帰りや贈り物に適したパッケージ。忘れられていた日本の園芸文化を新しいかたちで発信する。


聞き手:尾島可奈子