夏の朝習慣で、暮らしを整える

どんどん気温が上がるこれからの季節。
日中は暑さでぼーっとしてしまったり、身体が重くて思うように行動できないこともありますよね。

そんな夏の時期は、早めに起きて、日が昇り暑くなる前に動き出すよう心がけています。
余裕を持って起きて、朝に自分のための時間をつくると、一日を気持ちよくスタートさせることができますよ。

汗ばむ季節のスキンケアは、丁寧に

「肌が乾燥しやすいのは冬」というイメージがありますが、実は夏の肌も乾燥しやすく、注意が必要なのだそうです。

冷房による乾燥に加えて、汗が蒸発するときに肌の水分も一緒に奪われてしまうのだとか。
言われてみると、夕方頃には、なんとなく肌がカサカサしていることも多いのではないでしょうか。

梅雨も明け本格的に汗をかくこの頃、朝に少しだけ時間をかけて、丁寧に肌を整えることを心がけています。


目を覚ますために毎朝使っているのが、「お顔の蒸しタオル」。
前日に冷蔵庫に入れて冷やしておき、翌朝洗顔をした後に顔に乗せます。

首まで覆ってくれる形状なので、リンパを冷やすことができ、顔の汗の対策にも。
なによりひんやり気持ち良いので、蒸し暑い朝におすすめです。


その後はスキンケア。
夏は保湿がおろそかになりがちですが、メイク崩れを防ぐためには肌をしっかりと潤わせておくことが大切です。

「植物由来の保湿化粧水と保湿クリーム」には、天然植物の保湿成分がたっぷりと配合されています。

化粧水をつけるとすぐに浸透し、もちもちした肌に。

クリームはこっくりとしているので、夏は少量を薄く手のひらに広げて、やさしく顔を包むようにつけています。
私の場合は、Tゾーンを避けると、テカリも気になりにくくなりました。

きちんと保湿はしてくれるけれど、べたつかずさっぱりした使い心地で、夏でもつけやすいところがお気に入り。
肌への負担が少ないのも嬉しいポイントで、使うたびに肌が整っていくような気がします。

毎朝の“ちょこっと掃除”を習慣に

暮らしを整えるために毎朝の習慣にしているのが、お掃除です。

といっても、部屋に掃除機をかけて、拭き掃除をして、と本格的なことはしません。
今日はここ!と決めたスペースをさっときれいにするだけ。

朝に5分だけでも時間を使ってほこりを払い、大がかりな掃除は週末に。
目につく場所をきれいにしておくだけで、気持ちも整い、家での時間を気分よく過ごせます。

私なりの朝掃除のポイントが、そのまま出しておける佇まいの掃除道具を揃えること。

道具を見えないところにしまい込むと、見た目はすっきりして気持ち良いけれど、お掃除のハードルは一気に上がってしまいます。

出しておいても気にならないデザインのものに変え、さっと手に取れる場所に置くようにしたところ、朝の“ちょこっと掃除”が習慣化しました。
お気に入りの道具たちは、掃除の時間を楽しくしてくれます。

お出かけ準備をルーティン化し、“いつものわたし”で今日をスタート

家を出る前に焦ることのないように、お出かけ前の準備も習慣化しています。

必需品になったものの、持ち歩きに困っていたのがマスク。
マスク専用のケースは、かばんの中で迷子になりやすく、必要な時にさっとつけるのが難しいことも。

この「化粧ポーチ」はマスクを入れるのにぴったりのサイズ。
マスクをつけずに持ち運ぶことが増えた最近は、特に重宝しています。

内側のポケットに畳んだマスクを忍ばせます。
他にもお化粧直しの道具など、必要最低限のものはこのポーチに収まります。


おでかけ前の最後には、ハンカチを選び、その日の気分の香水を少しだけつけます。

5つの香りを楽しめるHandkerchief Perfume。フレッシュな「kaju」は夏のお気に入りです。

以前は香りものが得意ではなかったのですが、服ではなくハンカチにつけるようにしてから、気軽に楽しめるようになりました。

かばんを開けた際に少しだけ香る自然の香り。
気分を落ち着かせたいときにはハンカチを顔に近づけて、ふんわりとした香りに癒される。

こんな風に、“自分のための香り”を持ち歩くようにしています。

ポーチのがま口を、ぱちんっとしめる。
お気に入りの香りがついたハンカチをかばんに入れる。

そんな小さな習慣が、“いつものわたし”をつくってくれる気がして、どこか安心して新しい一日を迎えることができます。




「早起きは三文の徳」と言いますが、確かに早起きをすると、余裕が生まれて気持ちの良い一日のスタートを切ることができます。
小さなことでもいいので、自分なりの朝の習慣をつくってみると、毎日の暮らしが少し良いものになるかもしれませんよ。

私も夏の朝のルーティンを、時々アップデートもしながら、続けていきたいと思います。


<関連商品>
お顔の蒸しタオル
植物由来の保湿化粧水
植物由来の保湿クリーム
化粧箱
化粧ポーチ
やわらか立体ガーゼマスク 普通サイズ
熊野で作った掃除筆
吉野桧のハンディモップ
motta020
Handkerchief Perfume
麻太糸の手績み手織りバッグ 小


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【はたらくをはなそう】中川政七商店 店長 芦田陽香

芦田陽香
中川政七商店コレド室町店 店長


2015年 中川政七商店みなとみらい店 入社前アルバイト
2016年 入社 
     遊中川 ルクア店 配属 
2017年 遊中川 ルクア店 店長
2017年 中川政七商店 ジェイアール名古屋タカシマヤ店 店長
2019年 中川政七商店 大名古屋ビルヂング店 店長
2021年 日本市 エキュート東京店 エキスパート
2021年 中川政七商店 コレド室町店 店長



中川政七商店を知ったきっかけは、就活を控えた2014年に放映されたカンブリア宮殿でした。

仕事について考えるときに、「将来何がしたいか」「どうなりたいか」という軸ではなかなか考えられなかった私ですが、おじいちゃんやおばあちゃんの家が好きで、田舎で育ったのもあり、古いものやものづくり、伝統的な文化や風習に対しては、「なんか好き」という気持ちや「こういうのがなくなってしまったら悲しい‥‥」という思いを持っていました。

番組を見て、中川政七商店が「日本の工芸を元気にする!」というビジョンに向かい事業を進めていることを知り、「そんな気持ちと仕事が結びつくなんて!」「会社のビジョンが意思を持っているなんて!」と驚き、この会社で同じ価値観を持って同じ方向を向いている人たちと一緒に働きたいと思い、ご縁あって300周年という節目の年に入社しました。

現在は都内の店舗で店長として、とても頼もしいメンバーと一緒にお店に立っています。

日々のお仕事のなかで、大事にしていることは「正しくあること」と「気持ちよくいる(ある)こと」です。

前者は、当社ではたらくうえでの心構え10か条が書かれた「こころば」にも含まれる言葉で、会長や社長からのメッセージでもあります。

自分に対して、お客さんに対して、同僚に対して‥‥人として正しくあるか。

直感的に思う「正しい」を大切にできているか。

いろいろな理由をつけてそれを後回しにしたり、曲げてしまうこともありますが、ふっとこの言葉を思い返しては「あかんあかん!」と自分に喝を入れて背筋を伸ばすようにしています。

後者は接客のなかで大事にしている言葉です。お店は、いろいろな人の手を経てできあがった商品を最終的にお客様にお届けする場所であり、会社や商品、作り手さんとお客様との接点でもあります。

そんなお店で、お客様を気持ちのよい笑顔でお出迎えし、気持ちのよい空間で気持ちのよい時間を過ごしていただけるよう、そして自分たち自身も気持ちよく働けるように整えることを意識しています。

なかでも嬉しいのは、やっぱりお客様からのお言葉です。「これ使ってるの!」と教えてくださったり、「いい商品に出合えた」「気持ちのよい買い物ができた」などと言ってくださったりすると、心のなかでは小躍りするくらい喜んでしまいますし、こちらこそ商品を手にとっていただいてありがたく、作り手さんからお客様への橋渡しができたことが嬉しい限りです。

中川政七商店には暮らしのなかで使う商品が並んでいます。各商品の”推しポイント”をしっかりとお伝えし、愛着を持って使っていただけたら嬉しいです。

お客様それぞれにご来店の目的も気持ちのよいお買い物の仕方も違うと思いますが、私たちのお店や接客を通じてよい出合いを見つけていただけるよう、力を尽くしていきたいです。


<愛用している商品>

夏の麻スリッパ

先輩に、「芝生の上を裸足で歩いてるみたいだよ!」とおすすめされて試すと、まさにその通りの爽快感に感動し、数年愛用中。べたつかず、裸足で履いて気持ちがよい、汗っかきな私の夏のマストアイテムです。

植物由来の保湿化粧水 

シンプルに丁寧に保湿をしてくれる化粧水で、季節を問わず肌のうるおいを保ってくれている感じがします。柚子の香りも心地よいので、癒されながらこれまでよりもゆっくりと肌をケアするようになりました。

常滑焼きの塩壷常滑焼きの砂糖壷

塩壷と砂糖壷をセットで使っています。陶器の調湿機能を利用して塩や砂糖を固まりにくくしているのが面白く、またふたつ並んでいる姿が可愛らしいのもあって愛用中。使い勝手もよく、これからも使い続けたい商品です。

2&9シリーズ

「しめつけないくつした」、「さらっとするくつした」など、各靴下の特徴をストレートに表現したネーミングに加えて、何より奈良でつくられたこの2&9(ニトキュウと呼びます!)は、機能性もデザインもとてもいいんです。季節ごとにシリーズを変えながらほぼ毎日履いていて、足元からその日の私を支えてくれる心強い相棒たちです。

【旬のひと皿】トマトのはちみつマリネ

みずみずしい旬を、食卓へ。

この連載「旬のひと皿」では、奈良で創作料理と玄挽きの蕎麦の店「だんだん」を営む店主の新田奈々さんに、季節を味わうエッセイとひと皿をお届けしてもらいます。



もうすぐ夏。たっぷり太陽の光を浴びた夏野菜が美味しい季節です。毎年、桜の咲く頃に「今年こそは畑をやりたい」と張りきるのですが、いざシーズンに突入すると夏の暑さに手入れをめげてしまうこと、数回‥‥。今年は、収穫は期待せず成長観察と思って見てみようと、春に数種類の野菜の種を買ってきて、我が家の小さな畑に撒きました。

なんとか育ってくれたのがミニトマト。他の野菜は発芽しなかったり、発芽はしたものの大きくなる前に元気がなくなったり。こうして小さな家庭菜園をしていると、さまざまな天候のなかでもコツコツ育ててくださる方のおかげで、毎日新鮮なお野菜を食べることができているのだなと改めて感じます。本当にありがたいことです。今あるものを大事に工夫して、美味しく食事できたらなと思います。

家庭菜園より

さて、ここ奈良でもだんだん暑くなってきて、スーパーや産直市場の売り場には夏野菜がたくさん並ぶようになりました。少し前まで筍だ!いちごだ!と喜んでいたのに、季節が変わるのは一瞬ですね。過ぎ去っていく季節のスピードに負けないよう、彩り豊かな夏野菜を楽しみながら食卓も賑やかにしたいものです。

この「旬のひと皿」の連載、初めてのひと皿で扱う食材は「トマト」にしました。そのままでも食べられるし、焼いても煮ても万能!優秀〜!なトマト。記憶に残るトマト料理は、ご近所にある美味しいスペイン料理のお店で食べたひと皿です。パエリアに魚介と半分に割ったトマトがどーんと入っていて、熱々のトマトがじゅわっと口の中で溢れだす夏の味は忘れられません。トマトを見るたびに楽しい時間を思い出します。

今回ご紹介するひと皿は、気負わず作れてほぼ火も使わない、あっという間にできる「トマトのはちみつマリネ」です。レシピでは大玉トマトを使っていますが、ミニトマトもおすすめです。さっぱりしているので、食欲のない日でもパクパク食べられそうです。

トマトのマリネ液は、はちみつと赤ワインビネガー(もしくは、りんご酢)、オリーブオイルを「1:1:2」程度の割合で作っていますが、お好みやトマトの量によって調整してください。ほんのりとした酸味が夏にぴったりなので、ぜひお気に入りのお酢で作ってみてほしいです。

最近、保育園に通う小さな友達ができました。まだ緑色のトマトを一緒に見て、真っ赤になったら食べにきてねと話していたら、保育園でも作っているから交換しようという話になりました。

この夏は暑さに負けず、かわいい友達との約束を守りたいなと思っています。

<トマトのはちみつマリネ>

材料(2人分):

トマト…2個(お好きなトマトと、お好きな量で)

◆基本のはちみつマリネ液
はちみつ…大さじ1杯
塩…2つまみ
赤ワインビネガー(または、りんご酢でも)…大さじ1杯
オリーブオイル…大さじ2杯

つくり方:

大きな鍋にたっぷりの湯をわかす。トマトのおしりに十字に切り目を入れる。鍋のお湯がぐつぐつと沸騰したらトマトを10秒ほど鍋に入れる。皮が剥がれてきたらおたまですくい冷水に落とし、冷めたら皮をむく。大玉トマトを使う場合は、ここでくし切りにする。

小さめのボウルに、はちみつと塩、赤ワインビネガーを加え、よく混ぜ合わせる。オリーブオイルを入れたら再度混ぜ合わせ、トマトを漬け込む。冷蔵庫で数時間置いたら、できあがり。

【ひとこと】
・時間がない場合はトマトを湯むきせず、包丁でむいても大丈夫。
・ミニトマトを使用するとひと口でマリネされたトマトを味わえて、これもまたおすすめ。

アレンジ編:<夏野菜のきまぐれサラダ


お好みの野菜(今回はきゅうりと蒸したトウモロコシ)を食べやすい大きさに切る。パセリ(または青じそなどのお好みのハーブ)を粗みじん切りにする。フライパンに卵を割り入れ、クミン(なくてもOK)と塩をぱらぱらと振り、半熟の目玉焼きを作る。トマトのマリネ、きゅうり、トウモロコシをお皿に盛り付け、目玉焼きをのせる。上からパルメザンチーズをふりかけ、パセリを散らしたら完成。


【ひとこと】

たくさん作ったトマトのマリネ。一日目はそのまま食べて、2日目はたっぷりの野菜と一緒にサラダにしました。目玉焼きをのせてチーズを振れば、ボリュームとコクが出て満足のひと皿に。夏野菜の鮮やかな色合いが、食卓を夏の装いにしてくれます。

さらにこの他にも、食欲のない暑い日は、お肉やお魚をさっと焼いて付け合わせにしたり、小さく切ったトマトマリネをぎゅぎゅっと絞ったレモンと和えてソースにしたりと、いろんなアレンジでさっぱり食事をいただけます。

うつわ紹介

・基本のひと皿:RIN&CO. 越前硬漆 平椀(INDIGO 02)

・アレンジのひと皿:小鹿田焼の平皿(白刷毛目 浩二窯)

写真:奥山晴日



料理・執筆

だんだん店主・新田奈々

島根県生まれ。 調理師学校卒業後都内のレストランで働く。 両親が母の故郷である奈良へ移住することを決め、3人で出雲そばの店を開業する。  
野に咲く花を生けれるようになりたいと大和末生流のお稽古に通い、師範のお免状を頂く。 父の他界後、季節の花や食材を楽しみながら母と二人三脚でお店を守っている。

暮らしを良くする家具づくり。カリモク家具が追求する、木の魅力と人の技の可能性

日本の工芸とともに、日本の心地好い暮らしをつくり続けていきたい。

中川政七商店は日々、そんな想いで全国のつくり手たちとのものづくりを進めています。

その中で今回、日本を代表する木製家具メーカー カリモク家具株式会社とともに、「座椅子」と「盆ちゃぶ台」という二つの家具を開発しました。

目指したのは、“床座”でくつろぐための家具。

畳文化がある日本ならではの、床だからこそ得られる安息のひとときに着目し、座椅子のある心地好い暮らしを提案します。

国産材の魅力を最大限に活かし、佇まいの良さや使い心地にもこだわり抜いた座椅子、そしてちゃぶ台はどんな風につくられたのか。

愛知県知多郡にある、カリモク家具の工場を訪ねました。

産地ではない場所だから生まれた「木を“使い込む”」文化

カリモク家具は1940年に愛知県刈谷市にて創業。以来80年以上にわたって日本の暮らしに寄り添った家具を提案し続けてきました。

木材の調達から資材管理、家具の生産から販売までを自社でおこなう日本有数の木製家具メーカーである同社ですが、その所在地が愛知県だと聞くと、少し意外に感じるかもしれません。

資材管理から製品の完成・販売まで一貫して自社で手がけている

木製家具の産地というと、たとえば旭川や高山、福岡の大川などが思い浮かびます。いずれも周辺に良質な木材の産地があり、その資源を背景に木工産業が振興してきました。

さらに、高山であれば寺社仏閣、大川には造船といった木工が隆盛する理由も存在し、宮大工や船大工など専門の職人たちが育ったという背景があります。

「その反面、このあたりには木工のDNAと呼べるようなものが何もなかったんです」

カリモク家具株式会社 取締役副社長 加藤洋さん

そう話すのは、カリモク家具 取締役副社長の加藤 洋さん。加藤さんは、カリモク家具の創業者である祖父の正平氏から「自分たちはずぶの素人集団だ」という話をよく聞かされていたそうです。

その素人集団がどうすれば、熟練の職人たちに負けないクオリティの高い家具をつくれるのか。そう考えて、積極的に機械設備を取り入れたり、他産業のやり方を学んだりということを続けた結果、今のカリモク家具のスタイルが固まったのだとか。

同社で働く人たちは折に触れて「木を“使い込む”」という言葉を用います。木材を出来る限り無駄にせず、効率よく利用するという意味で、ここに同社のマインドがよく表れていると感じました。

資材担当の女性。入荷した木材を余さず活用するため、日々素材と向き合っている

「創業当時、木材は信州や東北から運んできていました。せっかく遠路はるばる運んできたものを、決して無駄にできない。

産地から遠い不利な立地だからこそ、そうした想いが強くなり、機械の導入や他産業のやり方も柔軟に取り入れるマインドに繋がったのかもしれません」(加藤さん)

各資材の樹種や産地はバーコードで管理されている。ここから、どんな製品に使用するのかをプロの目で見極めるのも、木を使い込むために重要なポイント

資源の無い土地だからこそ生まれた、木を“使い込む”という考え方。木を“使い込む”ためにできることを模索し続け、どんな種類や形状、サイズの木材であっても工夫して使い切れる技術と経験を蓄積していく中で、カリモク家具純粋培養ともいえる職人集団が育っていきました。

どんな製品に使用するかを見極めた上で、最大限無駄なく使えるようにカットしていく
木材を継ぎ合わせることで様々な製品に活用できることも

人と機械が融合したものづくり

現在カリモク家具では、高度な機械技術と職人の技術を融合させる「ハイテク&ハイタッチ」という製造コンセプトを掲げてものづくりに取り組んでいます。

工場を見学すると、木材を研磨するロボットアーム、単純な直線ではなく有機的なデザインを加工できる機械、牛革の傷をチェックする電子ペンなど、家具作りの各工程に最新の機械設備が導入されていて圧倒されました。

「この加工が機械に任せられれば、もっと効率的にできるはず」。そんな現場の声をきっかけに設備投資が進むことも

「機械の方が効率がいい、あるいは安全である、というケースでは積極的に機械を活用しています。

それでも、あくまで主役は人の手。人の仕事を機械に置き換えるということではなく、むしろ人の手でなければできないことに人が集中できるように、機械が環境を整えているというイメージです」

そう加藤さんが話すように、それぞれの機械の前には必ず人がいて、その工程の仕上げを手でおこなっていることも印象的でした。

木は天然の素材であるがゆえに、ひとつひとつ硬さも密度も異なり、同じものは一つとしてありません。その個体差に対応するには熟練の職人の技術と経験が不可欠になってきます。

塗装工程。木の個体差で塗料の吸収具合も変わるため、ムラなく仕上げるには高い技量が必要

職人が職人であるために。人と機械の双方がアップデートする未来

「機械自体はお金を出せば買えるものですが、それを適切に使いこなす土壌ができていることが何より重要です。今の体制もまだまだ発展途上なので、改善できるところは日々磨き上げていきたいと思っています」

木材の特性に合わせた適切なセッティング、機械に取り付ける刃物の切れ味を保つ研ぎ作業など、機械を使うこと自体に関しても、職人の知見と経験が無ければはじまりません。

機械でできることは恐らく今後も進化していく中で、人と機械が融合したものづくりはどこまで続くのか。加藤さんは、それでも人の手にしか生み出し得ない価値は必ず残ると話します。

「素材として木を使って家具をつくる以上、人の技術でしか出せない丁寧さ、美意識、工芸的な価値、それらを製品に宿す余地は無限大にあると考えています。

むしろ職人が職人であるためには、そういった、人ならではの工程にもっと注力していくべきで、人も機械もどちらもアップデートしていくのが健全な未来なのかなと思っているところです」

木を知り、木を愛するカリモク家具と開発した床座のための家具

今回、中川政七商店が開発をお願いした「座椅子」や「盆ちゃぶ台」には、こうしたカリモク家具の精神や技術が詰まっています。

カリモク家具の“使い込む”という考えに私たちも共鳴し、いずれの製品も、通常は使いづらいと敬遠されがちな国産の広葉樹を採用。「座椅子」は楢材、「盆ちゃぶ台」は栗材をそれぞれ有効活用し、木の風合いが美しい製品になりました。

折りたたみ式の座椅子は、カリモク家具としても初めての挑戦でしたが、木材の使い方や構造にこれまでのノウハウを活かし、美しい佇まいと機能性・安全性を両立した、長く使っていただける家具に仕上がっています。

設計を担当した河合さんは、特に工夫した点や問題を解決した方法について、満足そうな表情で話してくれました。

「安全面を重視して、指を挟まないように設計時にリスクを低減しています。その次に強度面。単純に木材を厚くすれば強度は増しますが、せっかくの折りたたみ式で持ち運びを考えると重くなるのも避けたい。

そこで本当に必要な部分の強度だけを上げるような調整をしていきました」

設計を担当した河合さん

「ちゃぶ台については、通常、天板に使用する金属の止め具を使用していません。そのため、反りをどのように少なくするのかが大きなポイントでした」

一枚板ではなく、細長い材を継ぎ合わせる「幅はぎ」という方法でつくられた天板。その幅はぎの向きや、木材の幅、厚み、樹種など組み合わせを変えて何度もテストして、反りの少ない方法にたどり着いたとのこと。

よく見ると複数の材が組み合わさっていることが分かる。その風合いも美しい

春夏秋冬で湿度が大きく変わる、木部品には厳しい日本の環境で安心して使っていただけるように、湿度80%、温度50℃という過酷な条件下でテストをおこない、品質を確認しています。

ボイラーの蒸気を利用して木材の乾燥を行う人工乾燥機

家具づくりで社会や暮らしが良くなるように

私たち中川政七商店が日本の工芸を元気にし、そして心地好い暮らしを届けようとしているように、カリモク家具は家具づくりを通じて快適な暮らしを届け、日本の森を元気にしようとしています。

荒廃した日本の森を蘇らせるため、国産材の活用に取り組んでいるのもその一環です。

「家具をつくり続けることで、世の中が良くなってほしい」

加藤さんはそう話します。

国産材の適切な利用で日本の森が蘇り、お気に入りの木製家具を手にした人たちの暮らしが明るくなる。小さな範囲からでも積み重ねていけば、少しずつ世の中が良くなっていくかもしれない。

今回、初めてカリモク家具とともにつくった「床座」のための「座椅子」と「盆ちゃぶ台」。この家具を手にしていただいた方たちの暮らしが心地好く、快適になることを願っています。

文:白石雄太

写真:西澤智子

カリモク家具とつくった「床座」のための家具はこちら

夏のおでかけバッグから紐解く、中川政七商店と手績み手織り麻

涼しげに愉しめる、夏のおでかけバッグができました

夏のバッグの定番といえば、籠バッグ。そんな籠バッグを思わせる佇まいで、麻にルーツを持つ中川政七商店らしい、夏のおでかけバッグができました。

誕生したのはトートバッグフラットバッグポシェットの3つの形。

縦と横に方向転換させて生地を組むことにより、籠バッグのような印象に仕上げ、同色でありながら少しの凹凸と陰影が生まれることで、動きのある表情を楽しめます。

いずれの形も、ナチュラルな「生平(きびら)」と落ち着いた「銀鼠(ぎんねず)」の2色をご用意。シャリシャリとした質感と涼やかな見た目の麻生地が、夏の装いを品よく爽やかに引き立ててくれるバッグです。

使用した「手績(う)み手織り麻」は、中川政七商店が創業から300有余年の歴史のなかで、大切に守ってきたものづくりから生まれる生地。実はこのバッグ、中川政七商店に入社まもないデザイナーが、その手績み手織り麻のものづくりに感動し、皆さんに知っていただける機会になればと考えたものなのです。

今日は、そんな中川政七商店の手績み手織り麻への想いについて、少しお話ししたいと思います。

中川政七商店と、手績み手織り麻

西洋で人気のやわらかいリネンに対して、硬くて張りがあり、独特の光沢感を持つのが魅力の、中川政七商店の手績み手織り麻。ところで皆さん。手績み手織りとは、どんな作り方なのかイメージはできますか?

「績む」とは、繊維を細く長くよりをかけて紡ぐこと。つまり手績み手織りとは、人の手で績んだ糸を、人の手で織るということを意味しています。その工程は、糸を績むだけで1か月。生地を1疋(いっぴき=24メートル)織るのには、熟練の織り子さんでも10日はかかると言われます。様々な生地が機械ですぐに作れる現代において、それはもう、気の遠くなるような道のりですよね。

世の中すべての麻製品が手績み手織りなのかといえば、そうではありません。これは高級麻織物「奈良晒」を祖業とする私たちが、創業から300年以上、大切に守り続けている麻生地の一つの製法です。

人の手で作るため、完成まで時間がかかる。機械で作るより、価格も高くなってしまう。ではなぜ、私たちはそこまでして、手績み手織りにこだわるのでしょう。そこには、機械では決して再現できない、手しごとが生み出す風合いを大事にしたいという想いがありました。

300有余年の歴史で、守り続けたもの

江戸中期、奈良晒の卸問屋として創業した中川政七商店。長く続く歴史のなか、よりよく商うためにと積極的な変化を重ねてきた一方で、創業当初から守り続けているものが、手績み手織りの麻生地作りです。

かつては奈良晒の産地として栄えた奈良。その起源は鎌倉時代にまでさかのぼり、南都寺院の袈裟として使われていたと、記録が残っています。江戸時代には主に武士の裃(かみしも)、僧侶の法衣に使用され、また千利休が茶巾(ちゃきん)として愛用したことでも知られています。17世紀後半から18世紀前半にかけて産業はピークを迎え、生産量はなんと、40万疋にも達しました。

ところが明治維新にともない武士が消滅したことで、最大の需要源を失った奈良晒は、次第に衰退の一途をたどるように。そこで9代中川政七は、奈良晒を使った風呂あがりの汗取りや産着の開発に着手します。厳しい時代に立ち向かうため新たなニーズを生んだ取り組みは、皇室御用達の栄誉を受けることにも繋がりました。

しかし、つくり手の減少により産業の衰退は続きます。10代中川政七の時代には廃業寸前にまで追い込まれるなか、奈良晒の自社工場を持つことを決断。製造卸として商売を再建させました。

その後、1925年にフランス・パリで開かれた万国博覧会では麻のハンカチーフを出展。このときの1枚は、いまも当社の奈良本店に飾っています。

高度経済成長期に突入してからは、人件費の高騰やつくり手の高齢化などの問題により、手しごとでの製造が徐々に難しくなりました。機械化へ踏み切った同業者も多いなか、中川政七商店が大切にしたのは、「手しごとから生まれる独特な風合いを守る」こと。機械化も撤退も選ばず、生産拠点の一部を海外へ移すことで、昔ながらの製法を守りました。

この人がつくる「工芸」ならではの魅力を、私たちはずっと、ものづくりで大事にしています。その後も時代にあった変化と挑戦を重ねつつ、今も江戸時代の奈良晒と同じ製法で作り続けているのが、中川政七商店の「手績み手織り麻」なのです。

唯一無二の魅力を、今の暮らしに

中川政七商店では工芸から受け取る心地好さはそのままに、もっと気軽に取り入れていただきたいとの想いから、今の暮らしに合わせた形にアップデートを試みながら、様々な品を生み出してきました。

例えば手績み手織り麻なら、注染掛敷布手織り麻を使ったフリルシャツ手織り麻の文庫本カバー手織り麻の印鑑ケースなど。そのラインナップに新しく加わったのが、今回の夏のバッグです。

「入社した際の研修で、今の時代においても人の手により、長い時間・たくさんの工程を経て作られている手績み手織り麻について知り、とっても感動しました。それを商品を介して伝えられたらなと考え、作ったバッグがこのシリーズです。 希少な生地を大切に使うことも大事にしたくて、幅の狭い布を組むデザインが生まれました。 工芸独特の風合いから生まれる心地好さを、ぜひ楽しんでいただければと思います」(デザイナー・奈部)

改めて、工芸の魅力って何かなぁと、考えてみました。

一つとして同じものが作れない、手しごとならではの形や表情。受け取る相手への心遣いを感じる、気のきいた工夫。不思議と心惹かれる、独特の佇まいとぬくもり。

自分の気持ちをじんわりとあたためる大切な存在で、暮らしの景色を心地好くしてくれる、私にとってのお気に入り。まるで、お守りのような安心感があるなと思います。

そんな工芸の営みや豊かさを、ぜひこのバッグを通じて、夏の装いのなかに感じていただけたら嬉しいです。

<ご紹介した品>

手織り麻格子のトートバッグ
手織り麻格子のフラットバッグ
手織り麻格子のポシェット

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【お知らせ】

中川政七商店 奈良本店では、奈良晒の道具が残る「布蔵」の中で、手績み手織り麻のものづくりに触れられる体験を開催しています。 

詳細はこちら:https://www.nakagawa-masashichi.jp/shop/pages/shikasarukitsune-experience.aspx

文:谷尻純子