天然染料・手染めの洋服を、気軽に手に取れる未来へ。宝島染工が臨む「天然染めの中量生産」

大人になってから好きになったものって、何がありますか?

食べ物、本、音楽、服‥‥。新しい“好き”が見つかるのはいつでもとても嬉しくて、自分の世界が広がったように、ちょっとだけ誇らしくも感じます。

最近、そんな“好き”に新しく加わったのが天然染料で染めた洋服です。これまでそもそも出会うことが少なく、化学染料との違いを特別に意識したこともなかったのが正直なところなのですが、一つの作り手さんとの出会いが意識を向けるきっかけに。

福岡県三潴郡大木町(みずまぐんおおきまち)で天然染料・手染めのものづくりに取り組む宝島染工さんの仕事に心を奪われ、試しに‥‥とその手から生まれる洋服を暮らしに取り入れてみると、自分だけの静かな幸福感と、それでいて誰かに自慢したくなる晴れやかさに包まれました。

この感動を伝えたくて。今日は宝島染工さんのご紹介をさせてください。

天然染め“らしくない”、ユニークな柄やシルエット

博多市内から熊本方面へと車を走らせること1時間弱。周りを民家と田畑に囲まれたのどかな地に、天然染料・手染めのものづくりを今に引き継ぐ、宝島染工の工場とショールームが点在します。

「宝島倉庫」と名付けられたショールーム兼出荷場は、外から見ると素っ気ない物置場のような印象。ですがその扉を開くと、高い天井からたっぷりとかけられたカーテンが、いきいきと布の表情を変えながら出迎えてくれるのです。

シンプルな室内の中央には、これまた天井から吊られた大きな紙のモビールが。木々が風に葉を鳴らすように、ゆらゆらと揺れています。これらのカーテンやモビールは宝島染工によって染められたもの。無機質な倉庫に植物の息吹を感じられるその美しさに、思わず息をのみました。

「カーテンはシーズンごとにその季節らしい染めに変えています。モビールは藍の染料を使って板締めの技法で染めたもの。藍染めって葉っぱから色素をとるんですよ。それで、木って枝になってるじゃないですか。その理屈で、『葉っぱから作った染料で、もう一度木を作ってみる』というコンセプトで作りました。室内でも植物の美しさを感じられるようにしたいなと思って。

ただ、いろんな場所で取り付けていただけるようにと思って設計したものの、結局組み立ての難易度が高くて、私しか取り付けられなくて。注文いただくこともできるんですけど、私が全国に取り付けに伺うことになっちゃいました(笑)」

あははと笑ってチャーミングに話すのは、宝島染工の代表・大籠千春(おおごもり・ちはる)さん。30歳で宝島染工を立ち上げ、少量生産が当たり前の天然染料・手染めのものづくりの世界で、中量生産に臨む稀有な作り手です。

またその珍しさは洋服のデザインにも。天然染料の洋服と聞くとイメージするのはナチュラルな色とシルエットですが、宝島染工が作るオリジナル商品は、言葉で表すなら“スパイシー”。同社のSNSにはエッジのきいた大胆で繊細な染めの柄と、ユニークなシルエットの洋服の写真がずらりと並んでいます。

一つひとつの洋服は一見「着こなすのが難しそう」と怯むのですが、鏡の前で合わせてみると不思議となじむ。性別も世代も関係なく、着る人の意思を引き立てる服のような印象を受けました。

「藍染めとか草木染めって『ナチュラルで着心地がいい』みたいなイメージがあるじゃないですか。素材も、リネンや綿だけが使われたり。それって間違いじゃないんですけど、宝島染工では少し違うアプローチがしたいなと思ってます。

天然染料のお洋服って価格をそんなに安くはできないので、購買層が比較的お金に余裕のある、30代後半から70代の方になってくるんですね。でもそうなると、自分も年を重ねて味が出ているのに、服も味が出ているみたいになっちゃって。カドが全部とれちゃうんですよ。

だからうちでは柄を大胆にしたり、素材に少しだけキュプラやシルクを入れたり、綿を使うにしても細番手(=細い糸)を使って生地の目を詰めて、纏ったときにしゃんとして見えるような洋服に仕上げているんです」

掲げるのはジェンダーレスでエイジレスなものづくり。先ほどのSNSでは20代から70代までの男女モデルが同じように、同じ服を纏います。年齢も性別も関係なく着られる天然染料の服を作るのも、同社ならではの特徴です。

「年齢や性別を区切ることに私がメリットを感じないというか。天然染料・手染めで作る服を特定の層だけが着るっていうのも、自分がやりたいことと齟齬があるなって。同じ服をご夫婦や親子で着れたりとか、そういう感覚がいいなって思うんです」

事業体さえ健康であれば「どうにでもなる」

大籠さんが宝島染工を起ち上げたのは30歳の頃。高校でデザインを学び、大学では染織を専攻して、卒業後は天然染料を扱う染工房へ就職しました。

「化学染料に興味がないわけではないんです。でも、天然染料の魅力に惹かれちゃって。天然染めのいいところって、思い通りにならないってデメリットもあるんですけど、思い通りにならなくてもきれいなんですよね。化学染料は思い通りに染まらないと『目指すものにそぐわない』って、それがストレスになったりするんですけど、天然染料は100%に仕上がらなくてもきれいだなって思える。そこがいいなと」

婦人服を手がけるその企業で染めのものづくりに没頭した大籠さんですが、天然染料で仕上げた婦人服には、高単価で装飾性の高い商品が多いことに違和感を持ち、自分で着られるような“普通の服”を作りたいと思うように。染めの可能性を探るために経験を積みたいと、化学染料を使って手染めのものづくりを手がける企業へと身を移します。そして5年ほど経験を積み、時代はインターネット普及期へ。買い物や流通に変化の兆しが表れ、さらにはインクジェットプリンターの登場によりものづくりも様変わりしていきました。

自分がこれからやるべきこと、やりたいことを改めて考えたとき、浮かんだのは「やっぱり天然染料・手染めのものづくりがしたい」という想い。ただしどこも小規模の工場ばかりで就職口はなく、色々と考えた末、自分で起ち上げようと決意したといいます。

「閉業された染工房になら設備もあるし、もともとはそんな場所を引き継げないかなって何社か見に行ったんですけど、簡単に言うと女だからダメって言われるんです。会社の信用もないし、大手にいたわけでもないし、地元の事業者さんとのルートもないしで、結構風当たりが厳しくて。だから自分で作るしかないと思って、父が作っていた田んぼを潰して今の工場を作りました。お客さんに来ていただくにはまぁ、便利な場所とは言えないんですけどね(笑)。

でも私、事業体さえ健康であればどうにでもなるという考え方なんです。専門性を高めて特化すべき技術があれば人が集まるから、運送の利便性とWi-Fi環境と空港が近ければ、仕事はできるなって思って」

天然染めが手に取りやすくなるように。中量生産にこだわる理由

OEM(=他企業から依頼を受け、商品を製造すること)とオリジナル商品開発の二軸でものづくりを届ける宝島染工。天然染料・手染めの工房は他にもありますが、やがて宝島染工にはたくさんのOEM依頼が舞い込むようになりました。中川政七商店も同社と共にものづくりに取り組む企業の一社です。

2023年に中川政七商店が宝島染工と作った、藍染めの洋服

多くの企業から支持される理由の一つが、「中量生産」に臨む姿勢。染めの工程を長年の経験と勘に頼って進める事業者も多いなか、同社では工程を全てデータ化し、スケジュールも最初に取り決めたうえで、ものづくりを進めます。誰が、どの工程を、どの程度の時間をかけて作業したのかも全部資料に落としていくそう。

そうやって製造量や納期をきちんとコントロールすることで中量生産を可能にし、特定の層だけでなく、天然染料・手染めの良さを多くの人に届けたい。そんな想いが背景にはあるようです。

「作品を作りたいのか、商品を作りたいのかということだと思うんですよ。少量生産の作り手さんを否定しているわけではなくて、そこでは本当に美しく丁寧なものづくりをされていると思います。

でも商品にできる仕組みを作るのが、自分たちの仕事だなって私は感じてるんですよね。全部データ化するのもそうだし、テキスタイルを開発したり、お取引さんとの窓口に自分が立って、そのブランドのイメージや企業スケールに合う柄や作り方を提案したりするのが自分がやるべき仕事だなって」

この日は2024年の初夏に中川政七商店が発売する商品の染めの最中だった
染め専用の道具もたくさんあるなか、今回の柄入れはあえて“ラップ”で。身近な道具を使い、誰でも、専用道具がなくなっても染められるよう工夫を重ねる

国内を中心に受けるOEMは、生産量では同社の6割程度。一方で売上にすると、オリジナル商品と割合が逆転するのだといいます。けれど、自社商品だけを作る判断はあえてしないそう。その理由を大籠さんはこう話します。

「自社商品だけになると、貴重な無駄がなくなる気がして。各社のデザイナーさんとお仕事をしていると『何でそんなことを思いつくんだろう』って、うちでは思いつかないようなデザインを上げてこられる場合もあるんです。そういう、社外のデザイナーさんとできるスペシャルな仕事に自分は喜びを感じるんですよね。あとはご一緒する企業さんのものづくりを叶えるために、自分たちにできることを考えるのに面白さや意義も感じるし」

経年変化が味を出す。天然染料の魅力

改めて、天然染料・手染めのものづくりの良さとはどこにあるのでしょう。何となく「自然でいいな」というイメージは持つものの、これを機に大籠さんが思う、着る人にとっての魅力を聞いてみました。

「天然染料のほうが洗っていくと風合いが出るってイメージですね。普通はお洋服って、お店で購入したときが“完全な”状態だと思うんですけど、天然染料の洋服って育っていくんです。化学染料だと着る回数を重ねると、完全品からどんどんマイナスになっていくような印象があるかもしれないですけど、藍染めとか草木染めの場合は何年か経ったときのほうがいいってこともあるんですよね。『未使用で無傷の状態よりいい色になってる』ってことがあると、私は思うんです。

ただ化学染料が悪いって言いたいわけでは全然なくて。プラスチックのコップもいいところはあるけど、クリスタルのコップだと透明度が高くてきらきらしてて、食卓に並べると気持ちいい。同じ“コップ”でも、受け取る気持ちが違ったりしますよね」

もう一つ大籠さんに質問です。天然染料の洋服を迎えたい気持ちはあるけれど、お手入れが少し大変なイメージが。どう付き合っていくのが、長く“育てて”いくコツなのでしょう。

「かまってやることですね。忘れないでいるというか。天然染料で染めたものって日焼けもするし、経年変化もするんです。忘れて使わなくなると、日焼けも見過ごしちゃう。例えば藍染めならたまに洗うだけで日焼けはきれいになじむし、そうやってかまってやることでコンディションが長く保ててきれいに着れる。放っておくって、服にとっても寂しいですよね。

うちでは気軽に着られるように、お手入れもできるだけ自宅でできるように作っています。難しくしちゃうと、みんな着ないですよね。例えば私も、全部の服にアイロンをかけて着るかって言われたらかけないですし(笑)。天然染料の洋服を、デイリーユースにしたいから」

会話を重ねるうちに、どんどんハマっていく天然染料の魅力。出会う機会の少なかった洋服も、宝島染工が中量生産に臨むことで、これまでより気軽に迎えられるようになりつつあります。

「ありがたいことに天然染めに興味を持ってくれる方がちょっとずつ増えてきて、私としては『農道を走ってたのに国道に出ちゃった』みたいな感じなんです(笑)。でも『もっともっと大きくしたい』とは思ってなくて、今より少し大きいくらいの規模が自分の望むものづくりを叶えるにも、工場の体力的にも、最適かなって思うんですよね。大きくしたいわけじゃなくて、長く続くのがいいことって感覚で。作る人も着てくれる人も気持ちよくいられるような環境にしないと、お互い結局、長くいられないと思うんですよ。

今の規模をちゃんと保って回して人がしっかり働ける形態を整えていけば、私がいなくても自走できる組織になる。今は私がいないとオリジナル商品の開発はできてない状態ですけど、それが例えば、外部のデザイナーが入っても自走できるような工場になるのが次の形態だと思います。

天然染めって今はまだ特別な洋服だけど、たくさん作って誰でも買えるようにしたくって。安くはできないんだけど、買いたいときに手に入って、『特別だけど特別じゃなくなる』のような感覚までいきたいですね」

やわらかな陽光がさす染め場でたたんだ端切れを藍に染め、ゆらぎあるその模様を見せてくれた大籠さん。染料の発色を確認するためあえて白色を選んでいるという作業着には、藍の色が美しく散らばります。

「天然染料はままならないからこそ、美しい」。大籠さんのその言葉を、宝島染工で染められた洋服を身につけるたびに思い出し、毎回、今日が少し特別な日になるのです。



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中川政七商店では、宝島染工さんと作った「草木染め」シリーズを販売中です。天然の草木を染料に、手捺染で色を重ねた洋服や小物たち。裾をふわりとゆらしながら、夏空のもとのお出かけ着としてお楽しみください。

草木染めの色かさねワンピース
草木染めの色かさねスカート
草木染めの色かさねストール
草木染めのバッグ

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文:谷尻純子
写真:藤本幸一郎

【スタッフのコーディネート】草木染めの色かさねワンピース

この夏、中川政七商店からお届けするのは、福岡の宝島染工さんと作った草木染めの洋服。手しごとならではの偶然が生んだ生地の表情と、軽やかさと力強さを感じる自然の色が特長です。

一枚でも主役になる印象的な柄ですが、実は色々な着こなし方もできて、コーディネートの幅が広いのも嬉しいところ。夏の空の下どんなコーディネートで出かけたいか、スタッフ4人に教えてもらいました。

この記事では「草木染めの色かさねワンピース」を取り上げます。皆さまのご参考になれば幸いです。

さらりと着て、夏の旅行へ

スタッフ身長:159cm

「暑い夏は重ね着をするのが少し億劫で、丈が長めのワンピースにサンダルやスニーカーというスタイルが多いです。このワンピースは全体的に肌の露出が少なく、しっかり丈の長さがあるのもいいところ。一枚でさらりと着たいです」

「一枚でさまになるのでお出かけにもぴったり。今回は旅行先で着るイメージでコーディネートしてみました。身幅がゆったりしているので長距離の移動もこのワンピースなら楽ちんですね。そのままでも可愛いのですが、お出かけ気分を高めるためにベレー帽や革っぽい見た目のサンダルできちんと感も出してみました」

<合わせたアイテム>
草木染めの色かさねワンピース 黄 
・HEP サンダル DRV BRACK

※上記以外のアイテムはスタッフ私物です

気の置けない友人たちとの時間に

スタッフ身長:157cm

「柄にインパクトがあるのでストールを巻き、全体をなじませてみました。ぽってりとしたサボと光沢感のあるバッグで、ナチュラルな雰囲気になりすぎないよう少しエッジもきかせています。合わせるアイテムでグッと大人な印象にもできるので、何を合わせるか考えるのが楽しかったです」

「イメージしたのは友人とのお茶や、飲み会に出かけるときのコーディネート。ちょっと大胆な柄は、洋服好きの友人たちと会う時間にぴったりだなと思います。手染めで染め上げているので一枚として同じ柄がないなど、この服ならではの魅力もあって会話に花が咲きそうです」

<合わせたアイテム>
草木染めの色かさねワンピース 墨

※上記以外のアイテムはスタッフ私物です

おしゃれしつつも、動きやすさと両立を

スタッフ身長:162cm

「爽やかな黄色にピリッとスパイシーな柄が入り、そのまますとんと着ても全身がぼやけないのが魅力。衿元や袖のバランスも絶妙で、少しアクセサリーを足すだけでこなれた雰囲気になるので嬉しいです」

「我が家は子どもがまだ小さいので、母として動きやすいコーディネートが日々欠かせません。やわらかな生地のパンツや歩きやすいサンダルと合わせて、活動的に過ごす日の服装を意識しました」

<合わせたアイテム>
草木染めの色かさねワンピース 黄
播州織の高密度ワイドパンツ 生成
HEP サンダル BNH IVORY
天日干しリネンの巾着バッグ 生成

※上記以外のアイテムはスタッフ私物です

子どもと一緒に、公園とカフェへ

スタッフ身長:162cm

「普段は柄ものをあまり着ないので、自分らしさも出るようシンプルなアイテムと合わせてみました。メインのワンピースが目立つように他は黒色でまとめ、ワントーンでコーディネートしています。このワンピースは手染めならでは独特の表情がありつつも、着ると顔なじみがよく派手すぎないのでお気に入りです」

「子どもと一緒に公園に行った後、そのままカフェに寄ってお茶もできるようなコーディネートに。太陽の照りつけが容赦ない日でも日焼けの不安がないよう、衿元の開きにはハイネックTシャツを合わせました」

<合わせたアイテム>
草木染めの色かさねワンピース 墨
強撚綿のハイネックプルオーバー 黒
涼やか綿の重ね着パンツ テーパード 黒
国産牛革のポシェット 黒

※上記以外のアイテムはスタッフ私物です

草木染めの色かさねシリーズご案内

染料について

今回展開する二色はともに、全体をミロバランという木の実で染め上げています。染めの工程で使う材料との反応により、同じミロバランで染めていても異なる発色となるのも草木染めの面白いところ。夏服に広がる柄の染料には、「黄色」は渋木と墨、「墨色」は墨とミロバランを採用しています。

お手入れについて

草木染めの洋服のお洗濯には中性洗剤がおすすめです。一般的な洗剤も使用いただけますが、中性洗剤の方が色落ちがよりゆっくりとなり長く色を楽しめます。
また他の洋服とは一緒に洗わず、単独でのお洗濯をおすすめします。柑橘果汁に反応し色落ちすることがあるため、ついてしまった場合は部分的にでもすぐに洗い流してください。
日焼けにより退色する場合があることから、保管は日陰でお願いいたします。

草木染めは年月とともに、色がゆっくりと変化していきます。時間を共に重ねることにより自分だけの色になる、「育てる服」としてお楽しみください。


※別の記事では「草木染めの色かさねスカート」を使ったスタッフコーディネートもご紹介しています。ぜひ併せてご覧ください。
【スタッフのコーディネート】草木染めの色かさねスカート

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【わたしの好きなもの】暑い夏もさらりと過ごす!風が通る「タイプライター生地のバルーンパンツ」

タイプライターもんぺの気持ちよさはそのままにバルーンパンツ登場

毎年もんぺ偏愛を語っている私ですが、今年は「これはもんぺ好きのための進化版では…!」という感動パンツが出たので、そちらを購入しました!(もちろん夏のもんぺ生活は、今年も継続しています。)

もんぺにもタイプライター生地のものがあるので、そのパリッとした質感は私も大好きです。ハリがあるけど薄手で軽いんですよね。
夏のもんぺ生活は、軽くて楽ちんこの上ないのですが、このパンツを試着したときは、他のスタッフに「私履いてるよね?」って本当に聞いたくらいです(笑)
ということで、興味本位で量ってみました!

タイプライター生地のバルーンパンツ 約200g
タイプライター生地のもんぺパンツ 約240g

どちらも軽い!!バルーンパンツが40gさらに軽いのには、感動ものでした。
「夏に履くのに、そりゃ楽ちんだ」と納得。

一番左がバルーンパンツ、真ん中がタイプライター生地のもんぺパンツ Lサイズ、一番右が同じもんぺパンツのMサイズ。バルーンパンツともんぺパンツのLサイズが、同じような丈感です。

風が通る形

実はバルーンパンツが軽いというのは、もんぺパンツのように晒しの裏地が付いていないからなんです。じゃあ肌あたりはもんぺの方がいいのでは?と思いますよね。
バルーンパンツはその肌あたりを形で解決しているんです。
名前の通り、ふんわりとしたシルエットで、夏に汗が気になるお尻から太ももあたりは、まとわりつかないバルーン形状になっています。裾に向かってはテーパードなので、ゆったりしてるけどスッキリとした足さばきの良いデザイン。
このバルーンのおかげで、空気がこもらないし、風が通り抜ける感じで涼しく過ごせます。

動きやすい形

何度も言いますが、私はもんぺパンツの楽ちんさが大好きです。このバルーンパンツもウエスト部分はゴム仕様。股上がもんぺパンツとほぼ同じサイズで、しゃがんだときもお尻周りに余裕があります。
しゃがんだり立ったりの動作がノンストレス。もんぺパンツは裾部分がゴム仕様ですが、そこが気になってた方にとっては、まさに楽ちんパンツです。

身長164cmの私は腰履きでくるぶしにかかるくらいで、ウエストまで上げれば足首が出て涼しげな感じになります。股上が深いのでその日の服装や気分で自由に楽しんでいます。

左側が腰位置で履いて、右側がジャストウエストで履いています。

シワが目立たちにくい生地感

パリッとした生地感なので、座ったときのシワがガッツリ入るんじゃないかというのも気になるところ。
もちろん椅子に座るとシワは入りますが、くしゃっとなっても立つとバルーンの形にきれいに戻ります。ギンガムチェック柄との相互作用で、間近で見ないとシワが目立ちません。

しばらく椅子に座ってから立った状態の生地感です。

肌離れよく汗ばむ季節もさらっと

暑くなると、座っている時に気になるお尻あたりから太ももの裏の汗。立ち上がった時に、服がまとわりつきますよね。タイプライター生地も、まとわりつかないわけではないのですが、肌離れがよくて、パタパタっと手で整えれば元のバルーンの形に戻ります。乾きやすい生地で、汗をかいた後もパリッとした質感のままでした。

さらに私は、「更麻のペチパンツ」を愛用しているので、汗ばむ季節を快適に過ごしています!
「更麻のペチパンツ」の読みものはこちら

ちょうどいいチェックの大きさ

いつもは柄物を選ばない私ですが、こちらはギンガムチェックの大きさがちょうどいい!というのも気に入ったポイント。
大きすぎると私にはちょっと可愛すぎるし、細かすぎるとせっかくのチェック柄が楽しめないし。これくらいなら、遠目でも柄物とわかるけど、主張しすぎてなくてちょうどいい。
レビューにも「格子の大きさが丁度良くて・・」というお声を見つけたときは、「そうですよね!!」と嬉しくなりました。

ちょっとだけ専門的な柄のお話ですが、このギンガムチェックの柄は糸の段階で染める「先染め」の糸を使って織っています。
4色の糸を使って微妙な濃淡を表現しているんで。織り上がった布を染める「後染め」でも表現できるのですが、糸の段階で染めて織り上げることで綺麗なチェックになっています。

細かなデザインでは、ウエスト部分の前側はゴム仕様ではなくギャザーが入っていないので、お尻周りのボリュームがあっても、ウエスト部分がスッキリして見えるのもお気に入りポイント。
もんぺパンツは前ポケット1つですが、こちらはサイドポケットが左右についているので、ポケット対決だとこちらの勝ちです!

トップスをパンツの内側に入れてもスッキリとした印象に

洗濯後も楽ちんです

洗濯はネットに入れて洗いますが、パンパンと形を整えて干したら、生地の風合いのおかげで私的にはアイロンなしでもOKです。
乾きやすいので、今の時期なら半日もかかりません。
旅行に持っていくのもオススメです。最初にお伝えしたとおり、ペットボトルの半分以下の重さで、くるくるっと畳んで小さくなるし、荷物の負担になりません。シワも目立ちにくいから旅先でアイロンがなくても平気ですし、旅先でごろごろするのにもいいですよ。

もんぺ愛が語れなくて残念な気持ちもありますが、今年はタイプライター生地のバルーンパンツで暑い夏の装いを楽しみながら、ご機嫌に乗り越えたいと思います!


<掲載商品>
タイプライター生地のバルーンパンツ
更麻 ペチパンツ レース

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初夏のボトムス選び

編集担当
平井

【あの人が買ったメイドインニッポン】#33 プロダクトデザイナー・柴田文江さんが“自分で作るもの”

こんにちは。
中川政七商店ラヂオの時間です。

ゲストは引き続き、プロダクトデザイナーの柴田文江さん。今回は「自分で作るおすすめメイドインニッポン」についてのお話です。
セレクトしたのは、中川政七商店でも販売している「庖丁工房タダフサの包丁」。どんな風に考えて作ったのかデザイナーの話を聞ける中々ないチャンスです。

それでは早速、聴いてみましょう。

[柴田文江さんの愛着トーク]
・自分で作るおすすめは「庖丁工房タダフサの包丁」
・デザインは作りこむだけじゃなく見つけることも大事
・材のよさを生かして、作ったというよりも見つけだしたデザイン
・使う人が「自分の物」と思えるものを作りたい
・物は本来無機質だけど、湿度感を感じる物を作ろうとしている
・物がそのひとの生活空間をつくり、人生をつくることに繋がる
・自分自身、物を買った後に暮らしが変わるのがすごく楽しい

ラヂオは7つのプラットフォームで配信しています。
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柴田文江さんが自分で作るおすすめメイドインニッポン

柴田文江さんが作るおすすめメイドインニッポンは、「庖丁工房タダフサの包丁」でした。

企画展「design by Fumie Shibata」を開催中

5/6まで、東京・丸の内のコンランショップで、「design by Fumie Shibata」を開催中。
柴田文江さんがデザインした物だけでなく、どんな風に考えてデザインしたかを知れるまたとない機会です。

柴田文江さんと作った商品①琺瑯の手しごと容器

柴田文江さんと作った「琺瑯の手しごと容器」を6月5日から発売します。梅干しや漬物を漬けたり、味噌を作ったり、さまざまな手仕事に活躍します。
琺瑯の手しごと容器で作る大粒梅の梅干しセット」は、ただいま予約受付中です。

柴田文江さんと作った商品②かきまぜやすい琺瑯のぬか漬け容器

こちらは昨年発売した「かきまぜやすい琺瑯のぬか漬け容器」。時に”柴田アール”とも呼ばれる柔らかい曲線を描いた丸角の形状が特徴です。 和洋を問わず、どんなキッチンにも馴染む、自然な佇まいをもった容器になっています。

柴田文江さんと作った商品③吹きガラスの保存瓶

こちらは、旬の果実酒づくりに活躍する「吹きガラスの保存瓶」。食材が時間をかけて育っていく過程を最大限に楽しむべく、あえて出して飾っておきたくなるような佇まいの保存瓶です。


ゲストプロフィール

柴田文江

武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科卒業後、大手家電メーカーを経てDesign Studio S設立。エレクトロニクス商品から日用雑貨、医療機器、ホテルのトータルディレクションなど、国内外のメーカーとのプロジェクトを進行中。iF金賞(ドイツ)、red dot design award、毎日デザイン賞、Gマーク金賞、アジアデザイン賞大賞・文化特別賞・金賞などの受賞歴がある。武蔵野美術大学教授、2018-2019年度グッドデザイン賞審査委員長を務める。著書『あるカタチの内側にある、もうひとつのカタチ』。


MCプロフィール

高倉泰

中川政七商店 ディレクター。
日本各地のつくり手との商品開発・販売・プロモーションに携わる。産地支援事業 合同展示会 大日本市を担当。
古いモノや世界の民芸品が好きで、奈良町で築150年の古民家を改築し、 妻と二人の子どもと暮らす。
山形県出身。日本酒ナビゲーター認定。風呂好き。ほとけ部主催。
最近買ってよかったものは「沖縄の抱瓶」。


番組へのご感想をお寄せください

番組をご視聴いただきありがとうございました。
番組のご感想やゲストに出演してほしい方、皆さまの暮らしの中のこだわりや想いなど、ご自由にご感想をお寄せください。
皆さまからのお便りをお待ちしております。

次回予告

次回も引き続き、プロダクトデザイナーの柴田文江さんにお話を聞いていきます。5/10(金)にお会いしましょう。お楽しみに。

中川政七商店ラヂオのエピソード一覧はこちら

【旬のひと皿】緑の豆のポタージュ

みずみずしい旬を、食卓へ。

この連載「旬のひと皿」では、奈良で創作料理と玄挽きの蕎麦の店「だんだん」を営む店主の新田奈々さんに、季節を味わうエッセイとひと皿をお届けしてもらいます。



随分前に気に入ってよく読んでいた、料理とエッセイの本があります。日常の暮らしや日々の料理について書いてあり、自宅での味噌作りや、手作りがんもに焼き味噌おにぎりなど、見ているだけでホッとするメニューも紹介されていました。

読んでいると、著者の穏やかな日常が自分のなかにもスーッと入ってくる。そんな時間に救われる感じがしました。

それから時間が経ち、自分でも味噌を作るように。お味噌汁の味噌を溶くとき潰しきれなかった大豆を見つけると、古くからの友人に再会できたようなあたたかい気持ちになります。

茹でただけだったらこんなに長くはもたないのに、麹と発酵の力で何年も食べられる姿に変身するなんてすごいなぁ、よく頑張った、と、心のなかで大豆を讃えつつ、お味噌汁をよそっています。

大豆に限らず、栄養価の高い豆類は普段から食べたい食材の一つ。特に春から初夏にかけては、たくさんの豆が旬を迎えます。

気候もすっかり温かくなった最近では、木々の色と同じような爽やかなお豆さんたちがスーパーや産直市場に並んでいますね。

急に気温が上がると野菜の成長もいっきに早くなってしまうそうで、昨年は収穫期が集中したのか、たくさんのそら豆がいっきに出回りました。大量に迎えたそら豆は、自家製の甜麺醤に。初めて作ったので、正しいゴールだったのかはわかりませんが、お客様に美味しいと食べていただけて嬉しかったです。

豆は筋を取ったり、皮を剥いたりとひと手間かかるお野菜ですが、農家さんが作ってくださる労力を考えたらせっせと手を動かしたいなと思います。

何度も読んだあの本。しばらく開いていませんが、いつも豆の季節になるとその本のタイトルにあった『まめまめしく』というフレーズを思い出し、気持ちも食事も基本に戻り、丁寧に向き合いたくなるのです。

<緑の豆のポタージュ>

材料(作りやすい量 ※約4人分)

・えんどう豆…400g(さや付き)
・玉ねぎ…1個 ※今回は新玉ねぎを使用
・無調整豆乳(牛乳でもOK)…200ml
・水…500ml
・オリーブ油…小さじ1
・バター…15g

◆トッピング用(あれば)
・生湯葉…適量
・そら豆…適量
・スナップえんどう…適量
・いんげん豆…適量
・ブラックペッパー…適量

作り方

玉ねぎは皮をむいて薄くスライスする。えんどう豆はさやと豆に分け、それぞれ洗う。トッピング用のそら豆は薄皮に切り込みを入れておく。スナップえんどうといんげん豆の筋を取る。

先ほど取り分けたえんどう豆のさやと水、塩少々(分量外)を鍋に入れ、弱火で火にかけ、さやのスープをとる。耐熱ボウルにキッチンペーパーを被せ、スープを濾す。

別の鍋を火にかけてオリーブ油をしき、玉ねぎと塩少々(分量外)を加えて色づかないように炒めていく。しんなりしてきたらバターとえんどう豆を入れ、蓋をかぶせたらきれいな緑色に変わるまで蒸し炒めにする。

炒めることで甘みが増す

さやのスープを注ぎ入れ、豆が柔らかくなるまで火を通す。きれいな緑色を残したいので、豆に火が通るまでを目安に火を通しすぎないよう注意。途中でアクをとりつつ、味を見ながら塩(分量外)を入れる。後からでも調整できるので、7割くらいの塩加減にしておくのがおすすめ。

熱いうちにミキサーにかけたらボウルに移し、色が飛ばないよう氷水をあてて十分に冷やす。塩味が足りないときはここで足す。

※温かいスープのまま飲みたい場合も、冷やすことできれいな色をキープできるので一度冷やすのがおすすめ。

冷やしている間にトッピングの準備。フライパンに油(分量外)をしき、そら豆を入れて軽く焦げ目がつくまで焼く。塩やクミン(いずれも分量外)を加えて味を調整するのもよい。焼けたら薄皮をむく。スナップえんどうといんげん豆は、沸騰したお湯に塩少々(分量外)を入れて軽く茹で、氷水にとったら食べやすい大きさに切る。

冷やしたスープに豆乳を加え、好みの濃度にのばす。仕上げにひと口大に切った生湯葉やトッピングの豆類を乗せ、ブラックペッパーを振ったら完成。豆乳の代わりに牛乳や生クリームを入れれば、よりリッチで濃厚な味に。豆乳でのばせば色々な“豆”を一皿で楽しめる。

うつわ紹介

益子焼の中鉢 青磁

写真:奥山晴日


料理・執筆

だんだん店主・新田奈々

島根県生まれ。 調理師学校卒業後都内のレストランで働く。 両親が母の故郷である奈良へ移住することを決め、3人で出雲そばの店を開業する。  
野に咲く花を生けられるようになりたいと大和末生流のお稽古に通い、師範のお免状を頂く。 父の他界後、季節の花や食材を楽しみながら母と二人三脚でお店を守っている。
https://dandannara.com/