高知「山のくじら舎」誕生秘話。皇室愛用品のきっかけは「ママ友の相談」だった

高知県 安芸市「山のくじら舎」

「子どもがお風呂で遊べる、木製のおもちゃが欲しい」

そんな知人のお母さんの声から作った手作りのおもちゃが、あっという間に口コミで人気となり、起業。今や全国にファンを獲得する木のおもちゃメーカーがあります。

高知県の安芸(あき)市に工房を構える「山のくじら舎」。

高知県は森林率84%を誇る森林県。昔から耐水性・耐久性に優れた「土佐ひのき」が豊富で、寺社仏閣にも使われてきました。

そんな高知の木を生かしたおもちゃは、起業から10年後には皇室ご愛用の栄誉にもあずかることに。

山と海のちょうど真ん中に位置する小さな町で作られる木のおもちゃ誕生のお話を、代表の萩野和徳さんに伺います。

田舎暮らしを求めて両親の故郷、高知へ

代表の萩野和徳さんは大阪府出身。新聞社に勤務し、毎日忙しく働くなかで、田舎暮らしへの思いがつのり2000年、夫婦で安芸市に移り住みました。

「山のくじら舎」代表の萩野和徳さん

「毎日あくせく働くなかで、十分な給料をもらっても自分はなんのために生きているのかなと思って。高知は両親の故郷なので、小さい頃から遊びに来ていました。こういう田舎っていいな、と心のどこかで漠然とした想いがあったのだと思います」

田舎暮らしをするにも、生きていくためには働かなければなりません。ものづくりが好きだった萩野さんは移住後は大工として働くべく、会社を退職後、和歌山の大工訓練校に1年間通いました。

卒業後、すぐに高知に移りましたが、ここで大きな誤算がありました。それは思ったより大工の仕事が少なかったということ。

「アルバイトはあったのですが、弟子をとるほどではないというところがほとんどでした。だいたい親子でやっているところが多かったですね」

そこからアルバイトで大工や農業、木工の下請け、養鶏場、ゆず農家の手伝いなどさまざまな仕事を転々とし、2年が経った頃、萩野さんに大きな転機が訪れます。

アルバイトのかたわら、萩野さん自ら床を貼り、改修した築130年の建物。今は「山のくじら舎」の社屋になっている

ママ友からの口コミで大きな話題に

その頃、自分の子どもが遊ぶ用にと、木でおもちゃを作っていた萩野さん。奥さんである陽子さんのママ友達から「子どもがお風呂で遊べる、高知の木で作ったおもちゃが欲しい」と相談を受けました。

プラスチック製のおもちゃは世の中に溢れているが、割れると先が尖って危ない、高知らしい木のおもちゃがあれば……との親心から手作りしたおもちゃ。これが口コミで大きな話題となり、注文が殺到するように。

大ヒットになったお風呂用木製玩具「おふろでちゃぷちゃぷ」
大ヒットになったお風呂用木製玩具「おふろでちゃぷちゃぷ」
お風呂やお水に浮かべて網ですくって漁師さんごっこに。崩れないようにお魚を積み上げてバランス遊びや、箱に戻してパズル遊びとしても楽しめる
お風呂やお水に浮かべて網ですくって漁師さんごっこに。崩れないようにお魚を積み上げてバランス遊びや、箱に戻してパズル遊びとしても楽しめる

萩野さんと陽子さんの2人だけで作るには対応できない量の依頼が来るようになり、次第に事業として形を模索し始めます。

調べてみたところ、森林県である高知は製材屋は多いものの、木材を加工するメーカーが少ないことを発見。

これはチャンスだ!と萩野さんは2001年に会社を立ち上げます。ただものづくりを行うだけでなく、世間に知ってもらうための努力も怠りませんでした。

「大きく伸びたきっかけは高知空港のお土産店に商品を置かせてもらったことですね。空港は外から来る人にとって一番はじめに『高知』に接する窓口。空港での出品を機に県外のメディアに紹介してもらう機会が増えました」

皇室の方に使っていただけた!5年越しの想い

県外での知名度も次第に高まっていく中、2006年、秋篠宮ご夫妻の長男、悠仁親王が誕生。萩野さんには「悠仁さまにも使っていただきたい!」という新たな夢が生まれます。

望みを託したのは、高知県で皇室が宿泊される高級旅館『城西館』。この宿に商品を置いてもらい、目に止まる日を待ちました。

それから5年ほど経った2010年。紀子さまと秋篠宮殿下が来られた時に、悠仁さまへのお土産に購入されたと連絡が入りました。

「知らせを聞いた時は本当に嬉しかったですね。待っていてよかったと思いました」

その時にお買い上げされた商品の一つ「ベビーそろばん」
その時にお買い上げされた商品の一つ「ベビーそろばん」

皇室ご愛用は何よりの品質の証。我が子や友人のお子さんに高知らしい豊かな恵みをと思いを込めた木のおもちゃたちは、こうして全国的な支持を得ていくことに。

その「選ばれる」おもちゃづくりの原点は、「我が家」の中にありました。

アイディアの源泉は我が家から

「うちの息子は4月現在、高校1年なのですが、彼が0歳の頃からずっとおもちゃを作り続けてきました。息子の反応も、今のものづくりに大いに生かされています。実際に商品化されたものもありましたね」

息子さんの反応をもとに商品化した「ちびっこ大工道具セット」
息子さんの反応をもとに商品化した「ちびっこ大工道具セット」

起業する以前、我が子のためにおもちゃを作っていた時代から、木には子どもの感性を育てる力があると実感していたそうです。

あたたかみのあるデザインは、陽子さんが担当。これまで描きためたスケッチには、商品化するまでの道のりが残されていました。

陽子さんにスケッチを見せていただきました
これが最初のヒット商品「おふろでちゃぷちゃぷ」を生んだスケッチ
これが最初のヒット商品「おふろでちゃぷちゃぷ」を生んだスケッチ
アイディア段階では、おふろで遊ぼう、というシリーズだったようです
アイディア段階では、おふろで遊ぼう、というシリーズだったようです
現在の商品にはない釣竿のアイディアも
現在の商品にはない釣竿のアイディアも
数冊に渡るアイディアブックには、時折お子さんの落書きも
数冊に渡るアイディアブックには、時折お子さんの落書きも
大学では保育の勉強をしていた陽子さん。当時つくった木のパズルは、今の商品の原点になっています
大学では保育の勉強をしていた陽子さん。当時つくった木のパズルは、今の商品の原点になっています

「自分の子どもが男の子なので、男の子向けが多かったかな。でも結局は、自分が小さいころに夢中になったものがアイディアの元になっていますね」

子どもの人気者、恐竜のおもちゃのデッサン
子どもの人気者、恐竜のおもちゃのデッサン
商品になった時には、タマゴからかえる仕掛けが加わっていました
商品になった時には、タマゴからかえる仕掛けが加わっていました

陽子さんがデザインし、萩野さんがブラッシュアップして商品化するというのが、起業当時から変わらない基本スタイルです。

例えばタコは、イラストでは口と手が離れていますが‥‥
例えばタコは、イラストでは口と手が離れていますが‥‥
商品化の段階で、加工しやすく衝撃にも強いよう、胴体と一体に
商品化の段階で、加工しやすく衝撃にも強いよう、胴体と一体に

さらに木のおもちゃには「手ざわり」も大切なポイント。ここにも、「山のくじら舎」のおもちゃが愛される秘密が隠されています。

陽子さん曰く、

「削り方はイメージしながらやっていく感じ。作業する者の『感覚』でやっています」

とのこと。

かわいらしい平面のデザインが、どのような『感覚』を通して立体のおもちゃになっているのか。

後編は「山のくじら舎」のものづくりの現場を訪ねます。

後編はこちら

<取材協力>
山のくじら舎
0887-34-4500
http://yamanokujira.jp/

文:石原藍
写真:尾島可奈子

※こちらは、2018年4月9日の記事を再編集して公開しました。

<掲載商品>

【WEB限定】山のくじら舎 赤ちゃんの宝石箱 袋入

山のくじら舎 おふろでちゃぷちゃぷ

一生ものの日用品を探すなら富山へ。「現代の荒物」が揃う〈大菅商店〉は必訪です

「さんち必訪の店」。

産地のものや工芸品を扱い、地元に暮らす人が営むその土地の色を感じられるお店のこと。

必訪 (ひっぽう) はさんち編集部の造語です。産地を旅する中で、みなさんにぜひ訪れていただきたいお店をご紹介していきます。

“現代の荒物屋” 高岡の大菅商店へ

今回訪れたのは富山県高岡市にある「大菅商店」。“現代の荒物(あらもの)屋”をコンセプトに、2016年4月にオープンしたお店です。

「荒物」とは、ほうきやちりとり、ざる、たわしなど、どこの家にもある日用品。

大菅商店

ひと昔前は、町の商店街に必ずと言っていいほど荒物屋さんがありましたが、今ではお目にかかることが少なくなりました。

現代の暮らしにフィットした日用品

日本三大仏の一つ、高岡大仏から歩いてすぐ。白いのれんが目印の「大菅商店」が見えてきました。

築約110年の土蔵づくりの建物
築約110年の土蔵づくりの建物

店の中に入ると、“荒物”がいたるところに並べられています。

大菅商店

季節の花々がさりげなくお店を彩ります
季節の花々がさりげなくお店を彩ります

ほうきやちりとり、鍋やザル、桶などおなじみの日用品は、種類が豊富で値段もリーズナブル。

こちらは掃除の時に使いやすそう
こちらは掃除の時に使いやすそう

食器や花器にも使えるちょうど良いサイズの耐熱グラス
食器や花器にも使えるちょうど良いサイズの耐熱グラス

熱燗に欠かせない「ちろり」。日本酒が美味しい富山の必需品!?
熱燗に欠かせない「ちろり」。日本酒が美味しい富山の必需品!?

掃除機もいいけれど、ほうきとちりとりも意外と便利なんですよね
掃除機もいいけれど、ほうきとちりとりも意外と便利なんですよね

「現代でも暮らしのなかでしっかり使えるものや、生活をちょっと豊かにしてくれるような愛着が持てるものを選んでいるんです」と教えてくれたのは、店主の大菅洋介さん。

大菅さん
大菅さん

どこか懐かしい感じがする「大菅商店」の荒物たち。しかし、不思議と古びた感じはしません。むしろ、「こんな風に使うと面白そう」と思わずワクワクしてしまいます。

大菅商店
大菅商店

全国シェア9割。菅笠の技術を使った新しい提案

店に並んでいる商品のなかでも、大菅さんがおすすめするのが「菅笠」シリーズ。

「高岡市は銅や錫などの伝統産業が有名ですが、実は日本最大の菅笠(すげがさ)の産地なんです。『越中福岡の菅笠』と呼ばれ、現在でも年間3万蓋(かい)を制作しています」

400年ほどの歴史を持つ「越中福岡の菅笠」。国の伝統工芸品にも指定されています
400年ほどの歴史を持つ「越中福岡の菅笠」。国の伝統工芸品にも指定されています

菅笠は竹の骨組みに菅(すげ)を編み込む二重構造で、被っていることを忘れるほど軽く、しかも涼しいため農作業に使われることが多かったそう。

ミリ単位で菅をすくって縫い合わせる高い技術が必要です
ミリ単位で菅をすくって縫い合わせる高い技術が必要です

ところが、現代になると日常的に菅笠を使う人は少なくなり、産地にも関わらず、高岡市内で菅笠を目にすることが減っていきました。

そこで大菅さんは、菅笠の利点や構造を生かし、現代の暮らしにも取り入れやすいプロダクトを提案。新しい用途やデザインを開発し、菅笠の魅力も発信しています。

こちらが新たに提案した菅のカゴ。防虫効果もあるので野菜入れや洗濯カゴにもぴったり
こちらが新たに提案した菅のカゴ。防虫効果もあるので野菜入れや洗濯カゴにもぴったり

建築士が荒物屋を始めた理由とは

ところで、大菅さんの本職はなんと建築士。

富山で生まれ育ち、東京の設計事務所やゼネコンを経て独立しましたが、東日本大震災を機に奥さんの地元で大菅さん自身も高校時代を過ごした高岡に拠点を移しました。

なぜ建築士の大菅さんがこの場所で荒物屋始めることになったのでしょうか?

「高岡市は、江戸時代からものづくりが栄え、歴史情緒もあるまち。これまでの歴史や古いものに価値を見出しながら、にぎわいをつくりたいなと思っていました」

大菅商店

「大菅商店」の建物は、もともと大菅さんの自宅兼事務所として購入した場所でしたが、調べてみると、この建物が大正時代からの荒物屋だったことを知ります。

「ずっとカーテンが閉まっていた場所だったのですが、ここに荒物屋があったということは、まちのなかで必要とされていたからだと思ったんです。それならここで荒物屋を始めてみようと思いました」

とはいえ、昔の形態をそのままトレースするだけでは面白くない。現代のかたちに合わせた店舗にしようというところから、「現代の荒物屋」というコンセプトが生まれました。

たくさんの釘が刺さっていた天井は昔の荒物屋の名残。当時と同じように商品を吊り下げています
たくさんの釘が刺さっていた天井は昔の荒物屋の名残。当時と同じように商品を吊り下げています

お店をやってよかったこと

現在も建築士と荒物屋の店主の二足のわらじを履いている大菅さん。同じ高岡市内の山町筋には元パン屋をリノベーションした「COMMA,COFFEE STAND」をオープンし、バリスタでもある大菅さんの奥さんが店を切り盛りしています。

COMMA,COFFEE STAND
COMMA,COFFEE STAND

たくさんの野菜が使われたご飯メニューは栄養たっぷり
たくさんの野菜が使われたご飯メニューは栄養たっぷり

高岡で夫婦ともにお店を開いた大菅さん。お店を始めてよかったことが2つあるといいます。

「1つは職住の近さ。今は親がどんな仕事をしているかわからないという子どもたちが多いと聞きますが、高岡に来て、子どもたちに親の仕事を見せられる環境になったのはよかったと思います。

現場に子どもを連れて行くこともありますし、お店をつくるときも家族みんなで解体したり壁を塗ったりしました。以前から試してみたいと思っていた生活を実践できたのはとてもよかったと思っています。

2つ目は、『お店を開きたい』という相談が増えたこと。これまでは建物の相談だけでしたが、スタートアップに関することや事業計画、経営の相談まで受けるようになりました。

実際に自分たちでお店をやっているから商売のリアルもわかる。お店を始めるには覚悟がいりますが、僕らでやれるなら誰でもできると思うんです」

大菅さん

「たとえ困難なことがあっても、やっていける方法をみんなで探せばいいんじゃないかな」

現在大菅さんからお店の店長を任されている荒幡さん。商品の仕入れも一緒に行っている
現在大菅さんからお店の店長を任されている荒幡さん。商品の仕入れも一緒に行っている

まちのみんなが立ち寄りたくなる場所に

オープンして早2年。すっかりまちに溶け込んだ「大菅商店」は、まちの人たちの交流の場となっています。

「COMMA,COFFEE STAND」のコーヒーを気軽に飲めるコーナーも。夏はかき氷スタンドになるそう
「COMMA,COFFEE STAND」のコーヒーを気軽に飲めるコーナーも。夏はかき氷スタンドになるそう

「地元の方も観光客も、いろんな世代の方がふらっと立ち寄ってくださるようになりました。店の奥はレンタルスペースになっていて、ここでイベントを開くこともあるんです。まちのサロンのような感じになっていますね」

座敷になっているレンタルスペースでは昼寝しに来る人、いつの間にか宴会を始める人などさまざま
座敷になっているレンタルスペースでは昼寝しに来る人、いつの間にか宴会を始める人などさまざま

実は少し前に「大菅商店」の隣の物件も購入したという大菅さん。

元文房具店だったことから、新たに“現代の文具屋”をコンセプトにしたお店を開く計画も進んでいます。ここもどんな場所になっていくか、期待が高まります。

まちの歴史を見つめ、かたちを変えて新たな価値を生み出す。「大菅商店」の、そして大菅さんの挑戦は、これからも続きます。

<取材協力>
大菅商店
富山県高岡市大手町12-4
12:00〜17:00
火曜・水曜休み
http://oosuga-syoten.com

文:石原藍
写真:浅見杳太郎

富山を愛する地元メーカーが選んだ、おすすめローカルスポット5選

旅先でどこに行こうか迷った時、私はいつも地元の人に聞くことにしています。

もちろんガイドブックの情報も参考にしますが、地元の人がおすすめする場所なら確かだと思うからです。

高岡にある鋳物メーカー・能作本社の一角には、いつも人だかりができているコーナーがあります。

toyamadoorsの人だかり

「TOYAMA DOORS」と掲げられた場所には壁一面にカードがずらり。

能作がおすすめする富山の観光情報「TOYAMA DOORS」

ここは能作の社員がおすすめする富山県内のスポットを、カードにして閲覧できるようになっています。

その数なんと、200カ所以上。

カードは地域ごとに色分けされていて、なかには観光ガイドブックには載っていないような穴場も。地元に住んでいるからこそ知っているニッチな情報やおすすめポイントが書かれています。

カードなので一目瞭然。なんと千春さんをはじめ、産業観光部のみなさんが取材をして制作しました

カードは持ち帰りもOK。これまで知らなかった新しい富山の魅力を発見できます。

能作に聞く、富山でおすすめの場所は?「TOYAMA DOORS」ベスト5

200枚以上ある「TOYAMA DOORS」のなかでも、特におすすめの場所5カ所を仕掛け人である専務取締役の能作千春さんに選んでもらいました。

どれもおすすめだから迷うなぁ、と千春さん
どれもおすすめだから迷うなぁ、と千春さん

能作のぐい呑みで試飲もできる「若鶴酒造」

若鶴酒造

1つ目は「若鶴酒造」。富山県砺波市の酒造メーカーで、日本酒だけでなくウイスキーや焼酎などの蒸留酒もつくっています。能作でぐい呑みをつくり、若鶴酒造で酒造りを見学して試飲するツアーも大人気だそう。

若鶴酒造
富山は地酒も美味しいんです

目の前に高岡大仏が見える老舗旅館「角久旅館」

角久旅館
ガラスに映りこむのは‥‥

2つ目は「角久(かどきゅう)旅館」。高岡駅からも徒歩圏内にある角久旅館は、明治元年創業の老舗旅館。建物の目の前にはなんと高岡大仏がある、泊まるとご利益がありそうなロケーションが自慢です。

大仏が目の前にある旅館なんて、なかなかないですよね
大仏が目の前にある旅館なんて、なかなかないですよね

国内最大級の鐘がある、知る人ぞ知るドライブコース「二上山万葉ライン」

二上山の鐘

3つ目は「二上山万葉ライン」。高岡にある二上山は千春さんのドライブコースにもなっているそうで、晴れた日の景色は最高とのこと。観光客にはあまり知られていませんが、国内最大級の鐘があって鳴らすこともできます。

鐘はもちろん高岡でつくられたもの!

子どもたちも大好き!ドラえもんと遊べる公園「高岡おとぎの森公園」

おとぎの森公園でドラえもんと遊ぼう

4つ目は「高岡おとぎの森公園」。高岡といえば漫画家・藤子不二雄さんにゆかりのある場所としても有名で、園内にはドラえもんと遊べる場所もあります。千春さんもお子さんを連れてよく遊びに行くそう。

小さなお子さんのいる家族連れの方にぴったりですね
小さなお子さんのいる家族連れの方にぴったりですね

能作の職人たちも通うカレーうどんの店「吉宗」

カレーうどん吉宗

5つ目は「吉宗」。能作の職人さんたちも行きつけのカレーうどんのお店です。濃厚なカレーうどんはごはんと一緒に注文するのがおすすめ。県外から訪れている人も増えているそうです。

読むだけでおなかが空いてきました
読むだけでおなかが空いてきました

現在もカードの数が少しずつ増えている「TOYAMA DOORS」。

ゆくゆくは「子どもと一緒に楽しめるコース」「雨の日も楽しめるコース」など、カードを使って1日の過ごし方も提案していくそうです。

ちなみに、カードには能作の「てのりごちさん」がさりげなく隠れているので、ぜひ探してみてください

それにしても、ここは鋳物メーカーの能作の社屋。誰がなぜ、どうやって200軒以上もおすすめ観光先を選び、取材しているのでしょうか?

鋳物メーカーが観光に力を入れる理由とは

能作は1916(大正5)年の創業。真鍮や錫を使った茶道具や仏具、花器、テーブルウェアなど、さまざまな製品を展開する鋳物メーカーです。

「弊社は2017年に本社工場を現在の場所に移転しました。その時にものをつくるだけではなく、背景にある『こと』と『こころ』を伝えようと、『産業観光』をテーマにした新社屋をつくることになったのです」

完成した新社屋では工場の見学や鋳物製作体験ができるほか、カフェやショップが併設されるなど、規模が拡大。今では高岡を代表する観光スポットとして、全国から年間10万人以上が訪れる場所になりました。

えんじ色の巨大な建物が目印
独特な雰囲気の鋳物場。上から覗くと人の動きや作業の流れがよくわかります

工場見学ツアーの様子はこちら:「来場者は年間10万人以上!たった3人のスタッフから始めた人気ファクトリーツアー成功の舞台裏

「毎日たくさんの方に来ていただくなか、『次はどこに行ったらいいと思う?』とお客様から聞かれることが増えました。弊社に来てくださった後も、富山をまるごと楽しんでいただきたい。そこまで関わってこそ本当の観光だなという思いが強くなり、社員のおすすめを紹介することにしました」

千春さんたちはすぐに社員全員にアンケートを実施。本当におすすめしたいと思うスポットを書いてもらい、得票数が3票以上の場所だけを「TOYAMA DOORS」で紹介することにしました。

紹介する際には、なんと能作の社員たちがその場所を取材しているそう。実際に200カ所以上足を運び、テキストも自分たちで執筆しています。

toyamadoorsのカード
愛情たっぷりに紹介しているからこそ、思わず読み込んでしまいます

「お店に問い合わせると、『鋳物のメーカーが取材?』と不思議に思われる方も多かったのですが、趣旨をお話しするとみなさんとても協力的で。みんなで富山を盛り上げようという思いが伝わったのだと思いました」

「TAKAOKA DOORS」ではなく「TOYAMA DOORS」にしているのは、「富山全体の認知度を高めたいから」と語る千春さん。

富山県15の市町村の情報を取り上げています

手軽でおすすめしやすい上に、お客様が自分の好みに合わせてセレクトできるよう、観光ガイドブックのような形態をとらず、あえてカードにしました。

「能作に来て、富山のいろいろなところに行ってみたくなった」「今日は時間が足りなかったから、また富山に来たい」「今度は富山でもう一泊しよう」

「TOYAMA DOORS」がスタートしてから、そんな声を聞かれることが多くなったそう。

能作の取り組みは近隣にも波及し、近年では産業観光に力をいれる富山県内の企業も増えています。

ローカルな情報が満載の「TOYAMA DOORS」は、先陣を切って「産業観光」の分野に轍をつけ、ものづくりと観光を掛け合わせた能作のビジョンの賜物。

カードはここでしか手に入らないので、ぜひ、現地に行ってお気に入りを見つけてみてくださいね。

<取材協力>
株式会社能作
富山県高岡市オフィスパーク8-1
www.nousaku.co.jp

文:石原藍
写真:浅見杳太郎

合わせて読みたい

〈 旅先は、その土地の「通」に聞く。 〉

その土地に詳しい人から聞く話は興味深く、安心感も手伝って、それなら行ってみたいと感じる場所も多いもの。そんなおすすめ「さんち旅」、いくつかご紹介します。

奈良をよく知る人が勧める「奈良旅行」の観光地めぐり

奈良観光

協力してくれたのは、ご当地限定ものを中心に扱うお店「日本市 奈良三条店」スタッフのみなさん。他にも、奈良に詳しいさんち編集部員から「ここもぜひ!」とコメントをもらった、おすすめをご紹介します。

→記事を見る

伊勢神宮から行ける日帰り旅。地元「ゑびや」おすすめ5つのスポット

伊勢志摩スカイラインの天空ポスト

江戸時代から定番の旅「お伊勢参り」。せっかく訪れるなら、周辺のスポットも一緒に巡りたいですよね。そこで、伊勢神宮のそばで創業100年の「ゑびや」さんに、おすすめの見どころを5つ教えてもらいました。

→記事を見る

出雲大社のお参りにおすすめ。出雲松江の「いいもの」と縁結びできる5つのスポット

出雲松江の観光スポット

今回ご案内するのは出雲大社へのお参り旅。さんち編集部が取材で出会った、出雲松江のおすすめスポットをご紹介します!

→記事を見る

お祝いや贈答品に選ばれる能作の「酒器」は、こんな風に作られていました

春は新しい生活が始まる季節でもあり、お祝いごとが多い季節。

お世話になった方や目上の方など、フォーマルなシーンのプレゼントに選ばれている人気のブランドが「能作」です。

真鍮でできた「能作」の文字が目立つエントランス

富山県高岡市の鋳物(いもの)メーカーとして、1916(大正5)年に創業し、茶道具や仏具、花器、テーブルウェアなどさまざまな商品を展開しています。

真鍮 (しんちゅう) の花器
真鍮 (しんちゅう) の花器

2017年には本社工場を移転。製造現場の見学や鋳物製作体験ができるほか、カフェやショップが併設された施設へとさらに規模を拡大させました。

工場見学ツアーの様子はこちら:「来場者は年間10万人以上!たった3人のスタッフから始めた人気ファクトリーツアー成功の舞台裏

えんじ色の巨大な建物が目印
移転した本社工場

人気NO.1アイテムは「酒器」

能作ではさまざまな製品をつくっています。なんとその数は400近く。特に金、銀の次に高価な金属“錫(すず)”を使った「酒器」が人気です。

錫の酒器
錫の片口

「錫はイオンの効果が高く、水を浄化するため、錫の器に入れた水は腐らないと言われているんです。お酒の味も、雑味が抜けて味がまろやかになるので、昔から酒器として使われていたんですよ」

と語るのは、専務取締役の能作千春さん。

産業観光を担う能作千春さん
能作千春さん

新しい素材として採用したのが錫

もともと能作では真鍮の鋳物製品をつくっていましたが、あるとき食器をつくれないかという問い合わせがあったそう。

真鍮の材料となる銅では食品衛生上、食器をつくることができません。そこで生まれたアイデアが、「錫の食器」でした。

通常なら硬度を保つためにほかの金属を加えるところ、能作では純度100%の錫のやわらかさに注目。

特性を生かした曲がる「KAGO」シリーズは大きな話題となり、国内外から注目を集めています。

曲がる器「KAGO」シリーズ
曲がる器「KAGO」シリーズ

錫製品の製造をはじめて15年ほどで、今では生産の7割以上を錫製品が占める、会社の看板商品に。

中でもぐい呑みやタンブラー、片口など、錫ならではの効果が感じられる酒器は、性別問わず広い世代にプレゼントできる贈り物として、春は特に選ぶ人が多いそうです。

そんな錫製品、一体どのようにつくられていると思いますか?実際に現場をのぞいてみましょう。

一秒をあらそう錫の鋳込み

一般の方も見学できる能作の製造現場。日々多くの製品が誕生しています。

独特な雰囲気の鋳物場。上から覗くと人の動きや作業の流れがよくわかります
独特な雰囲気の鋳物場

約60名の職人が鋳造に携わっていますが、中でも「鋳物場」はベテランの職人が担当。真鍮と錫で作業する場所が分けられています。

錫のプレート
鋳物場に掲げられている真鍮製の「錫」のサイン

金属材料を熱して液体にし、型に流し込んで冷やし固める鋳物。能作ではさまざまな製法を使い分けていますが、砂を押しかためて型をつくる「生型鋳造法」がベーシックな方法です。

まずは砂に少量の水分と粘土を混ぜ、製品の木型に鋳型用の枠を乗せてその周りを砂で固めていきます。真鍮と錫で使う砂も異なるそう。

きれいな型
砂と型がくっつかないよう貝殻の粉末をまきます
枠をはめると、まず砂と型がくっつかないよう貝殻の粉末をまきます
ふりかける
どんどん砂をふりかけていき……
体重をかけて砂を押しかためていくと‥‥
型から溢れるくらいまでいっぱいになりました
体重をかける

体重をかけてギュッギュッと砂を押しかため、手早く表面を平らにします。

表面がきれいに均されました
表面がきれいに均されました

木型を抜き取ると、あっという間にご覧のようなきれいな型に。

外側の凹んだ部分は、鈴を流し込む道
外側の凹んだ筋は、錫を流し込む道。この雄型・雌型を合わせて、錫を溶かし入れていきます

いよいよここから金属を溶かし、型に流し込む「鋳込み」を行っていきます。

成分によって溶ける温度が異なる金属。真鍮の場合は1000度以上に熱さなければならず、大きな炉を使って溶かしていきます。

もうもうと煙があがり、迫力満点!
高温で溶かされ、もうもうと煙があがる真鍮

一方、錫の溶解温度は約200度と真鍮よりかなり低い温度。炉は使わず、小さな鍋で溶かしていきます。

鍋で溶かす

まるで料理をつくっているようにも見えますが、これにはちゃんとした理由が。

錫は溶解温度が低い分、1、2度の温度変化によってすぐに固まってしまうため、溶かした後は手早く型に流し込むことが大切。だから小さな鍋を使っているんですね。

錫を型に流し込む様子
型から溢れ出るギリギリまで錫を流し込みます
型から溢れ出るギリギリまで錫を流し込みます

錫を流し込んだあと、冷え固まるまでわずか5分ほど。職人が手早く型から取り出していきます。

5分も経たないうちに次々に型から取り出していきます

型をポンと床に当てると、崩れた砂とともに銀色の錫製品があらわれました。

型から取り出す
型から取り出した錫
錫を流し込んだ道が取っ手のようになっていました

ここから仕上場に運ばれ、バリを取って整えていきます。

ここから加工場へ

金属なのに暖かみのある風合いは、手作業から

鋳込みが終わったあとは、仕上げ加工へ。

加工場のサイン
仕上場のサイン。工程がよくわかります

能作ではすべての製品を、最後は職人の手作業によって仕上げます。特に純度100%の錫はとても柔らかいため、微妙な磨き具合など、人の手による調整が必要。

磨きの作業

錫製品が手になじみ、金属なのにどこか暖かみのある印象なのは、人の手を介しているからなのかもしれません。

酒器をはじめとしたテーブルウェアなど、幅広く展開しています

こうして完成した錫の酒器。

熱伝導率が高いので、冷蔵庫で1〜2分冷やすだけでキンキンに冷えたお酒を楽しむことができます。また、変色しにくいのでお手入れも簡単。使うほど、愛着のある酒器になっていくはずです。

機能面に優れ、自宅にいながら贅沢な味わいを楽しむことができる錫の酒器。

目上の方や大切な人への贈りものにも喜ばれそうなその佇まいは、老舗メーカーのアイデアと、人の手から生まれていました。

文:石原藍
写真:浅見杳太郎

<取材協力>
株式会社能作
富山県高岡市オフィスパーク8-1
www.nousaku.co.jp

合わせて読みたい

〈 贈りものにしたいうつわ 〉

酒器やグラスは贈りものの定番。いくつか知っておくと便利です。全国の贈りものにしたいうつわを集めました。

 

江戸切子の進化系がここに。美しき日本のグラスには、金魚が泳いでいた

江戸切子

 

直線を中心とした伝統的な文様と、やわらかな曲線が組み合わさった斬新なデザイン。従来の江戸切子とは、ずいぶん違います。

一体どのように生み出されているのか?作り手である但野硝子加工所2代目、伝統工芸士の但野英芳 (ひでよし) さんにお話を伺います。

→記事を見る

 

新成人のお祝いに。めでたくて美しいガラスの贈り物

富士山グラス

 

成人式や、卒業のお祝いに。こんなおめでたい「富士山グラス」はいかがでしょうか。

→記事を見る

 

見てよし、飲んでよし、使ってよし。佐賀の地酒を有田焼で味わえるカップ酒

有田焼のカップ酒、NOMANNE(のまんね)

 

ずらりと並んだこの華々しいカップたち。焼き物に詳しい方なら、「有田焼かな」とピンとくるかもしれません。

でも、このカップ、ただの有田焼のカップじゃないんです。カップの中身は、お酒。何とも豪華な有田焼のカップ酒なのです。

→記事を見る

 

中川政七商店「ごはん粒のつきにくい弁当箱」をお弁当好きが使ってみた

お弁当をつくるのは好きですか?
自分のため、家族のため、毎日早起きしてお弁当をつくっている方も多いかもしれません。

私は何を隠そう、大のお弁当好き。

普段、取材に出かけたり、部屋にこもって原稿を書いたりしていますが、会社のようにお昼休みの時間が決まっていないので、つい適当に済ませてしまいがち。

そんな時、朝にお弁当をパパッとつくっておけば、気持ち良さそうな場所でお弁当ランチを楽しめて、気分転換にもなります。

ある日のお弁当。曲げわっぱの弁当箱がお気に入りです

最近のお弁当箱は種類が豊富。
見るとついつい欲しくなってしまい、いつの間にか数が増えていきました。

我が家にあるお弁当箱の一部

お弁当箱の素材は、何がいいのか

いろんな素材のお弁当箱を使っていると、長所や短所が見えてきます。

例えば、プラスチック製は手軽だけど少し安っぽい感じがしてしまうし、わっぱや竹製はごはんが美味しそうに見えるけど、汁こぼれが心配。アルミ製は丈夫だけどごはん粒がくっつきやすいしレンジにかけられない……などなど。

これらの短所を解決する、新しいお弁当箱に出会いました!

山中漆器の産地、石川県加賀市にあるお弁当箱メーカー「たつみや」さんと中川政七商店がつくった「ごはん粒のつきにくい弁当箱」です。

ごはん粒のつきにくい弁当箱/ 2,800円(税抜)。朱・薄墨・紺の3色あります

名前の通り、“ごはん粒がつきにくい”のは、樹脂の素材に熟練の塗師が塗りと特殊加工を施しているから。洗う時も汚れが落ちやすく、傷がつきにくいので耐久性も高いなど、いろんな素材のいいところだけを集めたお弁当箱なのです。

蓋にはしっかりとしたパッキンがついているので、汁こぼれの心配もほとんどありません

製造の秘密を追って現地にお邪魔した記事はこちら:老舗弁当箱メーカーが極めた「スルッと洗いやすい」一段弁当箱。秘密は漆器産地の技術にあり

使って良さを実感

このお弁当箱を、実際に使ってみました。

じゃーん、出来上がりです。

適度に深さがあるので、ごはんも意外とたくさん入ります。少々大きな具を入れても蓋がしまらないことはありません。ちなみにお弁当箱のサイズは、女性だと十分食べ応えがある大きさですが、男性の場合は少食な人向きかもしれません。

驚いたのは蓋のパッキン。
お弁当を詰め、蓋の部分を持ち上げてもご覧の通り、しっかり密着されています。

お弁当のバンドが見つからない!という時も安心

さらにこのお弁当箱、漆器のような風合いにも関わらず、レンジにかけられるんです。温めた後も、名前の通りごはん粒はまったくお弁当箱にくっついていませんでした。傷もつきにくいので、毎日気軽に使えそうですね。

面倒な後片付けも楽チン

お弁当にまつわるもう一つのお悩みが、「後片付けの面倒さ」。ごはんの跡がこびりついてなかなか取れなかったり、油がすっきり落ちなかったり……。お弁当箱の形状によっては角が洗いにくいこともあります。

このお弁当箱は食洗機にかけられますが、手洗いでもストレスなくスルッと汚れが落ちました。

角は丸みがあるので、四隅も洗いやすいです

その秘密は塗りを施した内側の塗料。粒子を極小にすることで、汚れがつきにくいそう。おっくうな洗い物もぐっと楽になるはずですよ。

スルッと汚れが落ち、ツルツルに

春の足音が近づき、これからお弁当を食べるのが楽しみになる季節。どんな食材とも調和するお弁当箱は、屋内屋外問わずさまざまなシーンで活躍してくれそうです。毎日気軽に使えるお弁当箱で、楽しいランチタイムを過ごしてみませんか。

お弁当

<掲載商品>

中川政七商店のお弁当箱

ごはん粒のつきにくい弁当箱 朱/薄墨/紺(中川政七商店)

文・写真:石原藍

合わせて読みたい

〈 春に使いたい食卓の道具 〉

お花見にあると嬉しい「かご」や「ぬの」集めました

花見の弁当箱・籠

もう少し暖かくなれば、お花見の季節。今日は、お花見にあると「おっ」と一目置かれるようなアイテムを紹介します。

→記事を見る

使いやすさ最高峰。ふだんも使えるおせちのお重を見つけました

お重・おしゃれ

漆器の産地である福井県鯖江市の「松屋漆器店」さん。
100年以上の歴史を持つ、越前漆器の老舗メーカーがつくる「お重」が、ふだん使いもできる良い工芸でした。

→記事を見る

皇太子も愛用したバスケット

お重・おしゃれ

現皇太子がこどもの頃に愛用され「なるちゃんバスケット」と呼ばれ、多くの幼稚園で採用されていました。
素材やデザインは異なりますが、「大正バスケット」と呼ばれ当時大流行した、蓋付きカゴも数多く豊岡で作られていたそうです。

→記事を見る

ホテル「KUMU 金沢」で、上質ローカルな滞在を

みなさんは、旅先でどんなところに泊まりますか?

老舗旅館からオシャレなゲストハウスまで、さまざまな選択肢がありますが、そのまちの歴史や文化、人のあたたかさが感じられる宿は、旅をより思い出深いものにします。

やってきたのは、石川県金沢市。

JR金沢駅前の大きな鼓門を出て近江町市場方面へ。そこから香林坊に向かうオフィス街の大通りを歩いていると、今回ご紹介する「KUMU 金沢」が見えてきました。

「KUMU 金沢」は2017年にオープンしたリノベーションホテル。1972年に建てられた建物で、もともとは繊維関係の企業が入るオフィスビルでした。

「KUMU」という名前には、昔から根づいてきた金沢の伝統を“汲む”場所、地域の人たちとチームを“組む”場所、茶の湯を“酌む”場所など、さまざまな意味が込められています。

エントランスでお茶を点てるKUMUのスタッフ。国内外のさまざまなゲストを迎え入れます

建物に入って目を引く大きな木“組み”の天井も、「KUMU」のコンセプトを表現したもの。

この天井は茶室の美学である「不完全さ、簡素さ」を表現

元の建物の表情を生かしつつ、細部に取り入れられている金沢の工芸技術を見つけるのも、このホテルの楽しみ方の一つです。

目的に合わせて選ぶ宿泊スタイル

早速宿泊フロアへ行ってみましょう。

客室はすべて、最大4人まで泊まれる個室。茶会もできるような炉がある畳敷きの部屋から、2段ベッドのあるリーズナブルな部屋まで、目的に合わせて部屋を選ぶことができます。

立体的なお部屋で上下段計4つのシングルベッドのある「LOFT4」

どの部屋も天井が高いので、2段ベッドが並んでも圧迫感はありません。

広々と開放感のあるウェスタンスタイルの「STANDARD4」

カップルや家族、グループでも楽しめそうです。

リビングや小上がりの畳スペースがある「JUNIOR SUITE:Japanese Style Room」

3階と5階にある共有スペースには、大きなティーテーブルがあります。宿泊客同士が今日の旅の出来事を話したり、明日行く場所の情報交換をしてみたりと、新たなコミュニケーションが生まれそうです。

屋上のルーフトップでは、定期的にヨガのクラスを開催。天気の良い日は白山が見えることも。

オフィス街にも関わらず高い建物が少ないので、金沢のまちが見渡せます

館内には気軽に使えるシェアスペースも兼ね備えています。

最上階には8名まで利用できるミーティングスペースが。宿泊者以外もレンタルが可能です

各フロアをめぐりながら金沢アートを堪能

「KUMU金沢」では、1階から6階の各フロアに金沢ゆかりのアート作品が展示。階が変わるごとに趣が異なり、訪れる人を驚かせます。

ロビーには、KUMUのグラフィックデザインを手がけた田中義久氏と飯田竜太氏によるアーティストデュオ「Nerhol」の作品

こちらの塔は、よく見ると、一つひとつのパーツが洗濯バサミで組み立てられているという驚きの作品。金沢美術工芸大学出身のアーティスト高本敦基氏によるもので、洗濯バサミはランドリースペースの目隠しにも使われています。

一輪のスイセンの花。こちらは何でできているかわかりますか?

正解は、鹿の骨と角。細かい部分まで、まるで本物のように表現されています。こちらは彫刻家・橋本雅也氏が手がけました。

書家の華雪氏による「牛」という書は、「十牛図」という禅の思想をモチーフにしたもの。

金沢の工芸品である二俣和紙に書かれています

どの作品も空間に馴染むように展示されているのが、「KUMU 金沢」の特徴。アートホテルのように作品が主役ではなく、見る人の心にそっと語りかけてくるようなさりげなさが心地よいです。作品は全部で13点展示。館内を巡りながら鑑賞するのもおすすめですよ。

まちとの接点が生まれるTEA SALON

「KUMU 金沢」でぜひ利用したいのが、1階のTEA SALON「KISSA&Co.(キッサ アンド コー)」。「どうぞお茶でも召し上がれ」という意味を持つ、禅の言葉“喫茶去(きっさこ)”が由来です。

こちらは宿泊者以外のお客さんも利用できるカフェで、抹茶や加賀棒茶はもちろん、抹茶ビールなどのお酒やおつまみなど、金沢を感じられるメニューが揃っています。和菓子は地元金沢の和菓子店「茶菓工房たろう」のもの。茶の文化に和菓子は欠かせないですよね。

金沢のアンティークショップ「ENIGME」が選定したさまざまな器も美しい
地元の金工作家、竹俣勇壱氏がセレクトした茶釜や茶器が目を引きます

初めてここを訪れた宿泊客と地元の人たちとの出会いの場にもなるTEA SALON。地元の人しか知らないおすすめのお店や普段の行きつけの場所など、観光ガイドブックにはないような情報を知ることができるかもしれません。

イベントやワークショップなども定期的に開催しています

滞在することで、自然に金沢のまちとつながっていくような心地よさを感じる「KUMU 金沢」。いつもの旅をより味わい深いものにしたい方に、ぜひおすすめしたい場所です。

<取材協力>
KUMU 金沢 -THE SHARE HOTELS-
石川県金沢市上堤町2-40
076-282-9600
https://www.thesharehotels.com/kumu/

取材・文:石原藍
写真提供:KUMU 金沢

合わせて読みたい

〈 金沢に行きたくなったら 〉

春の旅行シーズン前に、こんな記事で金沢のおさらいをしてみてはいかがでしょうか。

見て、触れて、食べられる工芸品。金沢・ひがし茶屋街で金箔尽くしの旅

金沢・ひがし茶屋街で金箔尽くしの旅

→記事を見る

金沢・竹俣勇壱さんの手のひら「茶箱」で、旅先やオフィスでお抹茶を一服

金沢・竹俣勇壱さんの手のひら「茶箱」

→記事を見る


金沢民景

→記事を見る

80年間変わらぬ味でお客さんを迎える「おでん若葉」

おでん若葉

→記事を見る

金沢は、漆器なしで語れない。「まちのみんなが目利き」のご当地文化

金沢漆器

→記事を見る

金沢を旅するなら「石垣の博物館」へ。 金沢城のモダンな石垣、ダイナミックな庭園の謎多き魅力

金沢城のモダンな石垣

→記事を見る