【旬のひと皿】椎茸と鶏肉の照り焼き

みずみずしい旬を、食卓へ。

この連載「旬のひと皿」では、奈良で創作料理と玄挽きの蕎麦の店「だんだん」を営む店主の新田奈々さんに、季節を味わうエッセイとひと皿をお届けしてもらいます。



専門学校の2年生だった10代最後の年は、学校の制度を利用して海外へ留学していました。貴重な経験をさせてもらっていたのだから、もっと貪欲に、がむしゃらに頑張れればよかったなと今は思うのですが、当時は自分の知らない世界が広がりすぎていて、日常を送ることすらあやふやで。

まず言葉がわからない、そして伝えられない。もどかしい日々でした。

短い期間だったけど、とても長く感じられたあの時間。「良い時間だったな」と思えるようになったのは、ずいぶん時間が経ってからです。

留学直後のしばらくは、私とは別の料理学校の研修制度を利用して来られた、アメリカ人で元ダンサーのお姉さんと一緒に暮らしていました。とびきり明るい性格で、母国にいらっしゃるボーイフレンドとの電話を部屋で聞いた時には、映画の中かと思いました。

全力で感情を伝えている姿に「アイラブユーは日常だったんだと!」と、当時の私はとてつもない衝撃を受けたものです。

2人とも予定のないお休みの日には、近くにあるピッツェリアに行き、家族の話、日本ではどうなの?アメリカではどうなの?と、お互いの日常を聞き合って。貴重な同居生活でした。

しばらくして、彼女が研修期間の終わりを迎え帰国してしまうことに。急に静かになった部屋で生活することになりました。

そこからは寂しさとともに、全然成長のできていない自分に悔しさもつのり、辛い期間が続きました。まだしばらくは、どれだけ帰りたくても帰れない状況で、20歳の誕生日がきて。

そんなときに、スーパーでお醤油を見つけた時の喜びったら!日本を感じられる貴重なお醤油。高価だなと思いましたが、醤油味がどうしても恋しかったので一番小さなボトルを買い、親子丼風の料理を作って一人で誕生日のお祝いをしました。

「これから頑張っていこう」という前向きな気持ちと、目の前の生活に負けそうな気持ちが入り混じり、嬉しいだけではない誕生日の思い出です。

それから帰国し色々な経験を経て、今は奈良で楽しく暮らしています。ずいぶんと時間が経ちましたが、未だに誕生日が近くなると、「あの時、一人で作って食べたなぁ」と思い出しては懐かしい気持ちにかられます。

秋を迎えた今回のレシピ。何にしようかなと考えているときに、ご近所の美味しいすき焼き屋の女将さんが、東京へ異動されるとご挨拶に来てくださいました。

異動される前にと先日お店へ伺ったところ、お店の皆さんのおもてなしに感激。目の前でお話ししながら焼いてくださるすき焼きは、きっとここでしか体験できない素晴らしい時間だなぁと、嬉しく、美味しくいただきました。

近くにいる人がずっと近くにいるわけではない。日々に追われつつも、ちゃんと今を「楽しむ」ことを目標にしたいなと改めて感じた時間でした。

そんな、懐かしの「親子丼」と、女将さんに焼いていただいた「すき焼き」の美味しさを思い出しながら考えたレシピ。秋の食材・きのこに、すき焼き風の甘じょっぱいタレと親子丼に欠かせない卵を合わせたひと皿をご紹介します。

<椎茸と鶏肉の照り焼き>

材料(2人分)

・鶏もも肉…1枚
・卵…2個
・椎茸…4枚
・玉ねぎ…1/2個
・青ねぎ…適量
・天津甘栗(あれば)…適量
・蜂蜜…小さじ1
・万能醤油(作りかたは以下を参照)…大さじ2

◆万能醤油

醤油、酒、みりんを同量ずつ鍋に入れ、軽く煮立たせたら完成。今回は量を使わないので大さじ2と表記していますが、私は各100mlずつを合わせて火にかけ、冷ましたものを冷蔵庫で保管しています。多めに作って保存しておくといろいろな料理に使えるのでおすすめです。このたれに生姜を加えれば、生姜焼きのたれとしても。

作りかた

まずは鶏肉から。余分な脂や骨を取り除いてそうじしたら、肉の1%弱を目安にした重さの塩(分量外)をして、しばらくおく(ここまでを前日にしておくと味が染み込んで美味しい)。

調理の直前に、鶏肉を半分に切る。

続いて、ゆで玉子を作る(お好みの固さでOK)。今回は水から茹で始め、7~8分ほどで鍋からあげたものを使いました。

椎茸は軸をとる。玉ねぎは繊維に対して直角になるよう、大きめの輪切りにする。青ねぎをざっくりとななめ切りにする。

華やかになるよう、椎茸は飾り切りしても

フライパンを熱して鶏肉を皮面から焼き始める。余分な脂が出てくるので、キッチンペーパーに吸わせながらじっくり焼いていく(皮を下にしたまま)。

きれいなキツネ色に皮面の焼き色がついてきたら、野菜を入れて一緒に焼く。野菜に塩(分量外)をして、途中、鶏肉を野菜の上にのせて休ませながら焼いていく。

「全部に火が通ってきたな」というタイミングでフライパンの端を空け、蜂蜜を入れてブクブク沸くまで焦がす。甘さを加えるというより香ばしさをつけたい。

はちみつに泡が出てきたら、大さじ1〜2ぐらいの水を入れて、万能醤油を全体に回しかけ、味を見る。足りなければ足す。鶏肉や野菜には下味をつけているので、かけすぎに注意。

ねぎも入れて全体を軽く炒める。

火を止め、鶏肉を食べやすい大きさに切って野菜と共に盛り付ける。ゆで玉子も半分に割り、一緒に添える。甘栗もお好みで。

フライパンに余ったたれを全体に回しかけ、茶色い秋のお皿が完成!

うつわ紹介

美濃焼の平皿 土灰


写真:奥山晴日

料理・執筆

だんだん店主・新田奈々

島根県生まれ。 調理師学校卒業後都内のレストランで働く。 両親が母の故郷である奈良へ移住することを決め、3人で出雲そばの店を開業する。  
野に咲く花を生けられるようになりたいと大和未生流のお稽古に通い、師範のお免状を頂く。 父の他界後、季節の花や食材を楽しみながら母と二人三脚でお店を守っている。
https://dandannara.com/

【つながる、お茶の時間】「お茶、淹れよっか」が、家族団らんの時間を過ごすきっかけに(中川政七商店 渡瀬聡志さん、諭美さん夫妻)

「お茶にしましょう」。私たちがそうかける声は、何を意味するのでしょうか。

喉を潤すだけでなく、誰かと時間を共にしたり、自分自身の素直な声に耳を傾けたり。せわしない日々に一区切りつけて言葉を交わし合う、つながる時間がそこにあります。

皆さんがどんなお茶の時間を過ごされているのか。3組の方々の、それぞれのお茶の時間を覗いてきました。

この記事では、中川政七商店のプロダクトデザイナー・渡瀬聡志さんと、妻・諭美さんのお茶の時間を紹介します。

プロフィール:

渡瀬聡志・諭美
夫は中川政七商店のプロダクトデザイナー、妻は元中川政七商店で店長や茶道ブランドの企画運営などを担当。夫婦で奈良に暮らしながら、産地やギャラリーをまわって暮らしの道具を迎えたり、旬の食材を使った料理をしたりと、自分たちにとっての心地好い暮らしを愉しんでいる。



聡志さん:

普段は主に、プロダクトの企画、デザインを担当しています。転職前は文具のデザイナーでしたが、シンプルで生活とともにある、暮らしの道具の仕事がしたくて中川政七商店に入ったんです。

工芸の良さは、ものの根っこがある信頼感や面白さ。古い物を見ると「昔はどんな人が使っていたんだろう」とロマンを感じるし、紐解いていくと昔と今の違いに気付けたり、日本人が昔から大切にしてきた美意識や価値観が垣間見えたりするのも魅力ですね。

商品開発をするときは、そうやって人が過去から繋いできたものへのリスペクトを持ちながら、自分が使いたいと思えることも大切に、企画・デザインしています。

もともと家の設えや暮らしの道具が好きで、家具やうつわをよく集めていましたが、入社してからは拍車がかかって。特に、がちがちに決めてデザインされたものよりも、理屈がないものに惹かれることが多いですね。旅先で産地やものづくりの現場を見たり、作り手さんと話したりすると、ついつい買ってしまいます。

とはいえ、デザイン性のあるプロダクトも好きです。普段は手工芸のものを扱っているので、何となく自分の気持ちにバランスをとっているところがあるのかもしれません。

今はもう暮らしに必要なものは揃っているから、必要に駆られて買うことはほぼなくて。それよりも用途や機能に縛られず、迎えること・使うことによって新しい暮らしのイメージが開けるものに挑戦したくなるんです。

諭美さん:

私も、もともとは中川政七商店で働いていて、今は和菓子屋さんに勤務しています。

茶器やうつわでよく手にとるのは、やさしい印象で長く持てるもの。パッと見たときに心が穏やかになり、20年、30年と飽きがこず大事にしてあげたいと思えるものを選んでいます。ものに背景のある、作家ものや古物も好きですね。

父が美術工芸好きで、家族旅行では窯元見学をするような家で育ちました。幼いころから日常に手仕事のものが当たり前にあって、その影響なのか、特別に意識して工芸品を迎えているわけではありませんが、一つずつ表情が違う、人の手が入ったものの魅力に無意識に惹かれているのかもしれません。

茶器の蒐集は主に諭美さん。磁器・陶器・ガラスなどさまざまな素材のものが並ぶ

聡志さん:

お茶を飲むのは、食後やおやつの時間。夫婦で一緒に飲むことが多いですね。僕が静岡出身なので親が送ってくれた新茶を飲んだり、いい和菓子が手に入ったときは、せっかくだからと、妻が抹茶を点ててくれたりすることもあります。

茶道ブランドで働いていた経験を持つ諭美さん。気分をしゃんとしたいときには、抹茶を点てて飲むことも

諭美さん:

特におやつの時間が好きで。美味しいお菓子を手に入れては、何を合わせて飲もうか考えるのが楽しいんです(笑)。

抹茶や中国茶、日本茶など、その日のお茶選びはお菓子や料理に合わせて。夏はすっきり飲める水出し番茶、冬はほっこり飲めるほうじ茶など、季節でもよく登場するお茶は違いますね。

夫婦それぞれが本を読んだり洗濯物を畳んだりしていても、「お茶、淹れよっか」の言葉で一つの場所に集まって家族の時間が過ごせる。お茶の時間には、家族団らんに繋がる良さがあるように思います。


<関連する特集>

<関連する記事>

ume,yamazoe 梅守志歩さんのお茶の時間
つちや織物所 土屋美恵子さんのお茶の時間

【つながる、お茶の時間】一緒に時間を過ごす。お茶の時間が持つその営みに意味がある(つちや織物所 土屋美恵子さん)

「お茶にしましょう」。私たちがそうかける声は、何を意味するのでしょうか。

喉を潤すだけでなく、誰かと時間を共にしたり、自分自身の素直な声に耳を傾けたり。せわしない日々に一区切りつけて言葉を交わし合う、つながる時間がそこにあります。

皆さんがどんなお茶の時間を過ごされているのか。3組の方々の、それぞれのお茶の時間を覗いてきました。

この記事では、木綿を主な素材として手紡ぎ手織りの布づくりを行う「つちや織物所」代表、土屋美恵子さんのお茶の時間を紹介します。

プロフィール:

つちや織物所 土屋美恵子
奈良市内の平城宮跡近くに工房を構え、緑豊かな場所で手紡ぎ手織りの布づくりを行う。主宰する「木綿手紡ぎの会」では、工房近くの畑で綿花栽培から取り組み、糸を紡ぎ布を織る過程を参加者と共有する。
http://www.tsuchiya-orimono.com/



土屋さん:

母がいつも着物を着ていたので、呉服屋さんについて行くなど、幼いころから布が身近にありました。そのうちにいつの間にか布が好きになっていて、20代になり自分の生きかたを考えたとき、布を題材にものづくりがしたいと今の道に進んだのがはじまりです。

最初は絹を中心に、糸を購入して自分で染め、他の天然素材と合わせてストールなどを織っていました。ただ時代の変化で、心を惹かれる糸を作る方が少なくなってきて。自分が作るものには糸が一番大切なのに、その糸を外に頼っていてはいけないと思ったんです。自分で紡いだ糸で布を作るようになったきっかけですね。

その後、奈良に移り住んだことを機に、この地で昔から多く栽培されてきた木綿を素材の中心におきました。

それともう一つ、当時から社会への違和感を覚えていたんですよ。世の中は豊かになっていくけれど、大切なものが失われている気がして。何でも古いものがいいというわけではないですが、昔の日本人の美しい暮らしかたから、どんどん離れていくようで残念でした。 でも不満を言っても仕方がないので自分で手を動かしてものを作る人を増やしたり、そこに共鳴していただいたりすることが、世の中に向けて私ができることかなって。

昔ながらのものづくりである手紡ぎの糸は、大量生産・大量販売はできません。経済的に考えると遠ざかるのはわかるのですが、でも、なくなっていくのは残念。自分の身近な、限られた材料でものを作るからこそ出る力や魅力もあるし、シンプルにとても気持ちのいい作業だから、きっとやりたい人がいるだろうとも思いました。

そんな背景から、つちや織物所として手紡ぎ手織りの布で暮らしの道具を作るとともに、12年ほど前からは「木綿手紡ぎの会」も主宰しています。そして、私自身が織物の歴史や社会的な背景、奈良における木綿の歩みなどをもっと学んで、皆さんにお伝えしようと努めています。

手紡ぎの糸を作るのに欠かせない、奈良の職人による糸車
つちや織物所が手がける暮らしの道具

「木綿手紡ぎの会」は糸紡ぎを学ぶ人、織りを学ぶ人、合わせて30人ほどの方に参加いただいていて、皆さんには綿花の栽培から経験いただくんですよ。工房から徒歩7分ほどの場所に畑を持っており、そこで種を蒔いて草を刈り、自然農法で綿花を育てています。

自分の手で紡いだ糸で布を織ることに大きな喜びを感じる方もいらっしゃり、その様子にふれることで私自身がはっとさせられることもあります。

時間をかけてしか作れない手紡ぎ手織りの布は、現代では値段がつきにくいものかもしれないけれど、私は、いのちが感じられる布を自分で作って使って、また納得したものを作っていきたい。商品としては難しくても、だったら自分で作ってみませんか?って。そうやって届けることも織物の仕事の一つで、そんな風に布を作って人とつながっていけたらと思うんですよね。

綿花畑の草刈りも自分たちで
畑仕事の合間に皆さんとお茶。心がほどける時間

紡ぎの会の休憩時間には、皆さんとお話ししながらお茶を飲みます。お茶は淹れる行為自体も楽しかったりリラックスできたりするでしょう。だから淹れることからお任せしています。

休憩時間の話題はさまざまで、私は耳を傾けていることが多いですね。お茶って、飲むことそのものが目的になるばかりではなくて、誰かと時間を過ごすときの仲立ちとしての役割というか。

工房のスタッフと時々、仕事終わりにお茶するときもそう。少しリラックスした気持ちで、自分が思案していることをそれとなく問いかけてみたり、何でもない会話からお互いの気持ちの共有につながることもあります。特別なテーマがなくても、一緒に時間を過ごせることそのものが、お茶の時間の意味だと思うんです。


<関連する特集>

<関連する記事>

ume,yamazoe 梅守志歩さんのお茶の時間
中川政七商店 渡瀬聡志さん、諭美さん夫妻のお茶の時間

文:谷尻純子
写真:奥山晴日

【暮らすように、本を読む】#15「本が語ること、語らせること」

自分を前に進めたいとき。ちょっと一息つきたいとき。冒険の世界へ出たいとき。新しいアイデアを閃きたいとき。暮らしのなかで出会うさまざまな気持ちを助ける存在として、本があります。

ふと手にした本が、自分の大きなきっかけになることもあれば、毎日のお守りになることもある。

長野県上田市に拠点を置き、オンラインでの本の買い取り・販売を中心に事業を展開する、「VALUE BOOKS(バリューブックス)」の北村有沙さんに、心地好い暮らしのお供になるような、本との出会いをお届けしてもらいます。

<お知らせ: 「本だった栞」をプレゼント>

ご紹介した書籍をVALUE BOOKSさんでご購入いただくと、同社がつくる「本だった栞」が同封されます。買い取れず、古紙になるはずだった本を再生してつくられた栞を、本と一緒にお楽しみください。詳細は、VALUE BOOKSさんのサイトをご覧ください。



閉じた世界に窓を開く、悩みに寄り添う「3冊の本」

奈良市内から車で約1時間半。奈良県東吉野村の森のなかに、「人文系私設図書館ルチャ・リブロ」はあります。著者で司書の青木海青子さんと夫の真兵さんは、築70年の平家に暮らしながら、「図書館」として自宅を開放しています。

この本は、夫婦で営む図書館の6年間の記録をつづった「エッセイ」と、身近な人からのお悩み相談に3冊の本で答える「司書席での対話」の2つからなります。

相談内容は、コロナ禍における仕事のあり方から、働かない夫への愚痴、SNSとの付き合い方など、どこかで耳にしたことのあるようなものばかり。しかし、悩みに対する返事としてふたりが差し出すのは、ちょっと意外な本でした。

社会や政治に対して自分の考えを持ちたい、という相談に対しては「ミステリー小説」を、新天地で婚活で悩む女性に対しては「仏教学者による学術書」を紹介していきます。悩みに対して、直球の回答を投げかけるのではなく、新たな世界へ連れ出してくれるようなページを開くことで、相談者の悩みに優しく寄り添っているのです。

小説から哲学書、絵本、漫画まで幅広いジャンルで登場する本は、相談者ではない読者にとっても、思わず手に取ってみたくなる魅力があります。うれしかったのは、本の書影を引用した画像ではなく、一冊一冊撮影したものを掲載していること。時には付箋がぎっしり貼られ、読み込んだ跡がわかるその写真からも、本への信頼と愛情を感じます。

子どもの頃、人と接するのが苦手で、安心できる心地のよい居場所がなかった著者にとって、本を読むことは「窓を持つ」ことだったと話します。窓の外から吹いてくる風、差し込んでくる光や音を感じながら、何度も心に明かりを灯してきました。そしていま図書館を開くことで、自分自身のためだけでなく、みんなで外を眺められるような広くて大きな窓をつくろうとしています。

図書館に訪れることができなくても、この本を通して、私たちはきっと同じ窓を持つことができるはず。心が疲れたとき、閉塞感を感じるとき、窓を開ければ心地よい風が吹くことでしょう。

ご紹介した本

青木海青子『本が語ること、語らせること』

本が気になった方は、ぜひこちらで:
VALUE BOOKSサイト『本が語ること、語らせること』

ご紹介した書籍をVALUE BOOKSさんでご購入いただくと、同社がつくる「本だった栞」が同封されます。買い取れず、古紙になるはずだった本を再生してつくられた栞を、本と一緒にお楽しみください。詳細は、VALUE BOOKSさんのサイトをご覧ください。

VALUE BOOKS

長野県上田市に拠点を構え、本の買取・販売を手がける書店。古紙になるはずだった本を活かした「本だったノート」の制作や、本の買取を通じて寄付を行える「チャリボン」など、本屋を軸としながらさまざまな活動を行っている。
https://www.valuebooks.jp

文:北村有沙

1992年、石川県生まれ。
ライフスタイル誌『nice things.』の編集者を経て、長野県上田市の本屋バリューブックスで働きながらライターとしても活動する。
暮らしや食、本に関する記事を執筆。趣味はお酒とラジオ。保護猫2匹と暮らしている。

【あの人の贈りかた】いつもより少し特別な気持ちに、おまけを添えるつもりで(スタッフ奈部)

贈りもの。どんな風に、何を選んでいますか?

誕生日や何かの記念に、またふとした時に気持ちを込めて。何かを贈りたいけれど、どんな視点で何を選ぶかは意外と迷うものです。

そんな悩みの助けになればと、中川政七商店ではたらくスタッフたちに、おすすめの贈りものを聞いてみました。

今回は商品企画・デザイナーの奈部がお届けします。

気軽に贈れる、くつろぐ時間のお供「番茶 小袋」

久しぶりに友達と会えるとき、「ありがとう」や「お疲れさま」を伝えたいとき、いつもよりちょっとだけ特別な気持ちに、おまけを添えるつもりで渡したくなるのが小さな贈りもの。

ポケットからポケットへ、ちょっと取り出して渡せるような、贈る側にとっても、受け取る側にとっても気軽なものを選びたいと思っています。

そんなとき大活躍するのが、「番茶 小袋」。本当によく利用しているので、もしもこの記事を読んでくれたなら、「ああ、確かに私も貰ったことがあるな!」と思い返してくれる友人が何人もいるはずです。

カフェインが入っていないうえに、ティーバッグになっているので飲みやすく、「番茶」という日常の風景をイメージする、気を使わせない存在がちょうど良いのです。

茶畑の景色や素材のイラストが描かれた薄くて軽い紙のパッケージは、まるで手紙のようにそのまま手渡せて、受け取ったらポシェットに入るぐらいのサイズなので荷物になりません。手紙に添えて郵送しやすいところも花丸です。

贈る際は、奈良本社の皆で茶畑に行き、茶摘みから番茶づくりまでを体験したときの話をしながら渡すことも。その日の思い出や、残したい風景を思う気持ちのお裾分けでもあり、「お茶を囲んで、安心してくつろぐ時間を過ごしてもらえたらいいなあ」と思いながら贈っています。

<贈りもの>
・中川政七商店「番茶 小袋」

ふかふかの気持ちよさと、愉快な気分がお気に入り「お顔の蒸しタオル」

初めてこの蒸しタオルを使ったとき、ふかふか気持ちいいタオルに包まれて、全身が緩む感覚になりました。

温かいタオルが気持ちいいのは知っていたけれど、期待以上の使い心地だったのです。

この中川政七商店の「お顔の蒸しタオル」はフェイスマスク専用で、息がしやすいように切れ込みが入っています。お多福のお面のような形になっているところも、なんだか愉快な気分になれるのでお気に入り。これはぜひ、みんなに味わってもらいたい!そう思って、すぐに家族へ贈りました。

タオルは贈りものの定番ですが、たくさん持っていることも多いため、普段はあまり選びません。けれど形や素材が変わるだけで、こんなにもいい気持ちになれるのならば贈りたい!と思わせられる、改めてデザインのちからを感じるアイテムとの出会いでした。価格も、一般的なタオルを一枚贈る程度でちょうどいいです。

一日の終わりにホッと一息、緩める時間。今度は、誰に贈ろうかな?

<贈りもの>
中川政七商店「お顔の蒸しタオル」

しみじみ旨味を噛みしめながら、ゆっくりおしゃべり「ほたるいか素干し(醤油漬け)」

ふるさと・富山のお土産として帰省のたびに買っているのが、「ほたるいか素干し(醤油漬け)」。海のまちである富山県氷見市で、江戸時代から150年以上商いを営んできた釣屋魚問屋さんが作る保存食です。身が大きくて味もしっかり食べ応えがあるので、個人的ほたるいか素干しランキングでは1位に光ります。

アウトドアで過ごす日や、持ち寄りごはん会の手土産にもピッタリで、お酒の好きな人にはもちろん、飲まない人にも好評です。少しだけ火に炙ると香ばしく、中がジュワァっとなってなおおいしい!そんな裏技もおすすめです。

贈りものらしい華やかさはないけれど、誰かと一緒にほたるいかをひとつずつ摘まみ、しみじみと旨味を噛みしめながら、ゆっくりおしゃべりして過ごす。そんな幸せな時間のお供になる一品です。

<贈りもの>
・つりや「ほたるいか素干し(醤油漬け)」
・公式サイト:https://tsuriya-iwase.com/

贈りかたを紹介した人:

中川政七商店 商品企画・デザイナー 奈部遥佳

【はたらくをはなそう】小売課 大越洋介

大越洋介
小売課

新卒で百貨店に入社し、婦人雑貨やアパレル部門で営業企画を経験。その後ベーカリーへ転職し、製造管理やブランドマネジャーなどを経て、2022年9月に中川政七商店に入社。
現在は小売課に所属し、スーパーバイザーとして直営店の運営に携わっています。



自分が良いと思うものがある世界、そんな世界が当たり前ではないということ」。
入社のきっかけは、そんな思いからでした。

これまで洋服から食品まで様々な商品に携わり、多くのお客様に届ける仕事をしてきました。時代の流れと共に市場が飽和し、販売チャネルや情報発信手段も多様化していくなかで、単純に良いものが売れるわけではなくなっている今の時代。規模や効率を軸に“良いはずのもの”が淘汰され、画一的になっていく社会の現状に疑問を感じていました。

生活をしていく上では便利かもしれないけれど、それが「豊か」だとは限らない。次は自分が良いと思うものを残せるような、そんな仕事がしたい。そう考えていた時に中川政七商店に出会いました。

現在は日本の工芸を未来に残すため、ものづくりをお客様に届ける最前線である、直営店の運営に関わっています。予算管理や売上対策などの各店舗ごとの対応から、全国の店舗にとって役立つような仕組みづくりまで、お店がお客様との対話に専念できるような、より良い店舗運営を目指して試行錯誤をしています。

仕事で大切にしているのは「正しくあること」。
中川政七商店の行動指針である「こころば」にある言葉ですが、入社前から自身でも大切にしていたことでとても共感しています。

正しくあるために重要なのは、正しさは常に変わるものだと心得ておくこと。
これは前職でパンづくりをしていた頃に身についたことです。

パンは酵母という生き物の活動を利用して作ります。日々変わる温度や湿度、生地のこね方などの条件が酵母の活動に影響するため、同じパン生地でも状態は毎日異なります。そのため作り手が「いつも通り」の作業をしてしまうと、パンは「いつも違うもの」が出来上がってしまいます。

狙い通りのパンを作るためには、作り手が五感を働かせ、生地の温度や弾力、発酵状態などを捉え、各工程での作業を加減し、調整していくことが求められるのです。

この経験から、物事にはセオリーや目安はあるけれど、それは万能ではなく状況を見て使いこなすものであるということ、使いこなすためには正しさは常に変化している認識を持つことが大切だと学びました。

お店も会社も、人という生き物の活動で成り立っています。立場も考え方も異なる人達が協力し合い、取り巻く環境の変化にも対応しながらビジョン達成に向かって進んでいきます。

それ故に複雑で、意見をまとめることなど難しい部分もありますが、だからこそ限りない広がりがある。多様な意見のなかで磨かれた答えは、ひとりでは辿り着けない未来につながりますし、それが仕事の醍醐味でもあります。

忙しかったり、余裕がなくなったりすると見方が偏ってしまいますし、慣れると前例通りでいいやとなりがちですが、目指すべき未来を見据えて、常に正しさとはなにかを問い直しながら、その時の最善を目指していたいです。

<愛用している商品>

波佐見焼の保存の器 中鉢

おすすめ理由:料理の保存、温め直し、食器の三役を担う実用性の高さ。加えて佇まいの良さも魅力的です。蓋もあるのでラップも不要、エコで手間いらずなど、とても理にかなった逸品です。

ゆずと花椒のぬか床

どんな人でも簡単にぬか漬けが始められるすぐれもの。ゆずと花椒入りで他とは一味違った風味豊かな仕上がりも良いです。定番の胡瓜や人参から、旬の季節の野菜までいろいろ試して楽しんでいます。

拭き漆のお箸

こだわり抜いて選ばれた四角・八角・削りの3種類の「持ち手のかたち」 と、太め・細めの2種の「持ち手の太さ」 から、きっとご自身のお気に入りが見つかります。
自分では持った時にやわらかみがあり、手に馴染む、「削り・太め」を使っています。



中川政七商店では、一緒に働く仲間を募集しています。
詳しくは、採用サイトをご覧ください。