1月22日、カレーの日。みんな大好き、日本の国民食

こんにちは。さんち編集部の杉浦葉子です。
日本では1年365日、毎日がいろいろな記念日として制定されています。国民の祝日や伝統的な年中行事、はたまた、お誕生日や結婚記念日などのパーソナルな記念日まで。数多ある記念日のなかで、こちらでは「もの」につながる記念日をご紹介していきたいと思います。
さて、きょうは何の日?

1月22日は、「カレーの日」です

今や日本の国民食ともいわれる人気料理、カレーライス。野菜ごろごろ系が好きな方、辛いのは苦手な方、好みはいろいろだと思いますが、カレー好きな方は多いと思います。はい、私も好きです。献立に困った時も、野菜がたくさん食べられるカレーは強い味方。カレーを食べるとなんだか元気がでませんか?

そして、きょう1月22日は「カレーの日」です。昭和57年(1982年)全国学校栄養士協議会が、学校給食の35周年を記念して1月22日の給食メニューをカレーにすることに決めました。この日は、全国の小中学校で一斉にカレーを食べたのだそう。それにちなんで、1月22日は「カレーの日」となりました。

カレーを美味しく食べるための器

美味しいカレーをさらに美味しく食べるのにおすすめしたいのが、器のちから。いい器でごはんを食べると、食べものがうんと美味しく感じられます。そこでご紹介したいのが、中川政七商店がカレーのことをまじめに考えてつくった器とカトラリーです。

三重県で明治時代より地場産業となっている萬古焼。菰野町で窯業を営む「有限会社 山口陶器」とともにつくった「萬古焼のカレー皿」は、カレー皿の定番とも言えるオーバル型で、ぬくもりを感じるこっくりとした色あいです。

お皿の縁を立たせ、少し内側に出しているのでご飯粒が最後まですくいやすいデザイン。縁をつかみやすくこぼれにくいのも特徴。
お皿の縁を立たせ、少し内側に出しているのでご飯粒が最後まですくいやすいデザイン。縁をつかみやすくこぼれにくいのも特徴。

そして、合わせて使いたいのが金属加工製品の一大産地である新潟県燕市のテーブルウェアメーカーとつくった「カレーのためのスプーン」。一般的なスプーンよりもくぼみを浅くしているので、口に入れやすいのが特徴。先端部を平たく仕上げており、お皿に残ったご飯粒をすくいやすくなっています。

浅めの形状は大きめの野菜やお肉をカットするのにも便利。つや消しでシンプルなデザインは、陶器のお皿とも相性が良さそう。
浅めの形状は大きめの野菜やお肉をカットするのにも便利。つや消しでシンプルなデザインは、陶器のお皿とも相性が良さそう。

美味しいカレーといい器があれば、週に1度はカレーが食べたくなりそう。今晩の献立はカレーに決まり、ですね。家族みんなで食べるカレーも、お仕事をがんばった後に食べるカレーも、カレーはきっと元気をくれるはずです。

<掲載商品>
萬古焼のカレー皿
カレーのためのスプーン

<関連商品>
産地のカレー

文:杉浦葉子

※こちらは、2017年1月22日の記事を再編集して公開しました

11月8・9日、いいパックの日。紙の可能性を探求した「紙器具」

こんにちは。ライターの小俣荘子です。

日本では1年365日、毎日がいろいろな記念日として制定されています。国民の祝日や伝統的な年中行事、はたまた、お誕生日や結婚記念日などのパーソナルな記念日まで。数多あるなかで、ここでは「もの」につながる記念日を紹介しています。

さて、きょうは何の日?

11月8・9日、「いいパックの日」です

11月8日と9日で「11・8・9 (いいパック) 」と読む、語呂合わせ。簡易包装を勧める日として、通商産業省 (現在の経済産業省) が1991年に制定しました。エコへの意識が高まるなか、現在では、シンプルな包装やエコバックの活用といった考えも浸透してきていますね。

これからの「紙」の可能性を考える

一方、デパートで販売されているお菓子や化粧品、大手テーマパークのお土産品の箱など、商品に付加価値や物語を与える役割を担うパッケージも存在します。

さらには、単に「包む」という役割を超えて、ファンデーションのコンパクトとしてそのまま使える紙箱を開発するなど、包材の次の一手を打ち出す会社もあります。

そのひとつが、TAISEI株式会社。精緻な設計と技術による、機能性とデザイン性を追求した美しいパッケージ作りで高く評価され、紙の印刷・加工の世界で確固たる地位を築いています。

製本の技術を活用して作られた化粧品の携帯ケースとして使える紙箱
製本の技術を活用して作られた化粧品の携帯ケースとして使える紙箱

今日は、パッケージ作りの第一線を走るTAISEI株式会社が新たにチャレンジした、時代と向き合って生まれた新ブランド「大成紙器製作所」が生み出した「もの」について紹介します。

「紙器具」を提案するブランド

TAISEI株式会社の1919年創業時の名前である「大成紙器製作所」を掲げたブランドは、紙から生まれる文化を耕し、作り手と使い手を繋げることを目指しています。

彼らがつくる「紙器具」とは、紙を私たちの暮らしに寄り添う道具と考え、その価値を再発見して「伝える・収める・設える」を理念において、つくられた新しい日用品のこと。

紙を筒状に成形する紙管 (しかん) の技術と手仕事を取り入れた小物入れ「TUBE STAND」。ペンを立てたり、机の上の小物をまとめやすいサイズで、2種類を組み合わせて使用することもできます。特許を持つ紙管の技術で型くずれしにくい、しっかりとした作り
紙を筒状に成形する紙管 (しかん) の技術と手仕事を取り入れた小物入れ「TUBE STAND」。特許を持つ紙管の技術で型くずれしにくい、しっかりとした作り
スリットのある引き出し型書類ケース「PULL SHELF」。前面のスリットは書類を入れる窓でもあり、引き出す取手にも。スタッキングした際にも引き出しやすい形
スリットのある引き出し型書類ケース「PULL SHELF」。前面のスリットは書類を入れる窓でもあり、引き出す取手にも。スタッキングした際にも引き出しやすい形
紙ひもの取手がついた書類ボックス「PULL BOX」。手元に引っ張りやすく、箱自体は縦・横のどちらで使っても裏が見えず美しい
紙ひもの取手がついた書類ボックス「PULL BOX」。手元に引っ張りやすく、箱自体は縦・横のどちらで使っても裏が見えず美しい

「『なぜ紙箱屋が一般向けのブランドを立ち上げたの?』とそこら中で聞かれました。
昔ながらの職人気質というか、保守的なところもある業界なので、紙箱を作るならそれに専念して追求するべきという考えの会社さんも多く、かなり特殊に映ったところもあるのでしょうね」

そう話すのは、紙器具の生みの親である、TAISEI社長の細水雄一郎 (ほそみず・ゆういちろう) さんです。

「私たちが大切にしている先代の言葉に“somethig different”というものがあります。

他とは違うこと、新しいことをやってみよう!という考えです。紙の価値を高めていこう、品質の高いものを広めていこう、というチャレンジ精神を持って取り組んでいます」

その言葉の裏には、TAISEIにとっての挑戦だけではない、わたしたち使い手と、業界全体にまたがる「考えのズレ」を埋めていこうという想いもありました。そのきっかけは、細水さんの子ども時代にまでさかのぼります。

妹の罪悪感と、エコ素材としての紙

TAISEI社長の細水雄一郎さん
TAISEI社長の細水雄一郎さん

「今では笑い話なのですが‥‥私の妹は幼い頃、わが家が悪いことをしていると悩んでいたそうなんです。環境問題が大きく取り上げられる時代に紙箱を作る家業に罪悪感があった、と。

でも実は、紙って非常にリサイクル率の高い素材なんです。紙製品全体の6〜7割がリサイクルされています。箱の内側に使われている厚紙などは、ほぼリサイクル紙。

省資源で軽くて、捨てやすい。そして何度も循環させられます。そのため、樹脂や缶などの素材から紙のパッケージに切り替える商品も増えています。何かを包む必要があるとき、紙は環境にとっても良い選択肢なのです。

ただ、デジタル化の波もあり、印刷物が全体的に減ってきているために、質の良い古紙が集まりにくいというのが最近の課題です。そうなると、循環が滞ってしまいますから、古紙でまかなえていたシーンであっても、新品の紙をつくるときの原料であるバージンパルプを使わなければならない状況すら生まれてしまう。

今の状況を見ていて、自分たちの会社のことだけでなく、業界全体を考えて元気にしなければならない。そして健全な循環をさせていきたい。そう考えるようになりました」

「自分たちが好調な時にこそ、業界全体を考えた次の一手に出たい」と細水さんはいいます。そうして考え抜いた末にたどり着いたのが、「紙の道具」だったのだそう。

生活で使われる道具から、紙の良さを伝えていきたい

大成紙器製作所

「化粧品のケースとして使える紙箱の開発などを通して、紙の利点や機能について改めて考えるようになりました。これを違う形でも活かせないか?と。

コストの低さ、素材の軽さ、気軽に扱えること、エコな点など紙の強みは色々とあります。紙の可能性はまだまだ広げられるはずです。

紙の価値をもっと高めて広げていけないかと考えた時に、パッケージのような間接的な商品だけではなく、一般のお客様にとっての直接的な商品そのものを作って魅力を伝えていくことを思い立ちました。もっと生活の中で役立ててもらえる商品が作れるのではないかと。

紙以外の素材で作られることが一般的な生活道具、たとえば収納アイテムなどを紙で作ってみてはどうかと開発が進んでいきました」

紙で作られた道具は、軽くて扱いやすく、素材ならではの風合いが空間に柔らかい印象を与えてくれるものでした。

紙の特性を生かした道具づくり。これから生まれる「紙器具」も楽しみです。

<取材協力>

TAISEI株式会社

<掲載商品>

PULL BOX (大成紙器製作所)

PULL SHELF (大成紙器製作所)

TUBE STAND (大成紙器製作所)

文・写真:小俣荘子

 

こちらの記事は2017年11月の記事を再編集して掲載いたしました

 

5月2日、緑茶の日。夏も近づく八十八夜におすすめのお茶

5月2日は、「緑茶の日」です

夏も 近づく 八十八夜~

「茶摘み」の歌にあるように、立春から数えて88日目のきょうは八十八夜。春から夏になる節目の日です。ちょうどこの頃、茶摘みが最盛期であることから1990年に日本茶業中央会が「緑茶の日」と制定しました。

お茶の葉にとって霜は大敵。この八十八夜までは遅霜が発生することがあるので、茶葉を守るために藁(わら)をかぶせて霜を防ぎ、八十八夜になると安心して新茶の摘み取りをはじめるのだそうです。

もちろん、お茶の産地によって温暖差があるので実際の時期はそれぞれかもしれませんが、八十八夜の日に摘んだ茶葉は不老長寿の縁起ものとして、昔からとても貴重なものとされています。

縁起をかつぐという意味合いだけでなくこの時期のお茶は極上品!お茶の新芽には、ひと冬の間じっくり蓄えられた成分がたっぷり詰まっています。やわらかく甘い茶葉は、うまみがあり若々しい香りも楽しめるのだそうです。

奈良最古の製茶問屋「北田源七商店」の緑茶

新茶ももちろん味わいたいですが、お茶は普段から気軽に楽しみたいもの。奈良最古の製茶問屋「北田源七商店」は、老舗の経験を生かした美味しいお茶を提供しています。

緑茶は通常、単一の茶葉だけではなく、産地や品種、季節などによって異なる茶葉の特長を見極めてブレンドするという「合組(ごうぐみ)」という技術によってつくられます。

核となる「芯」、風味を加える「添」、香りをひきたたせる「香」、色を決める「水色」において、バランスよく「合組」することで、より奥ゆきのあるお茶に仕上がるのだそうです。

「北田源七商店」が「合組」によってブレンドした毎年いちばんのお茶。味と香りはもちろんのこと、色の美しさも一見の価値あり
ていねいにつくられた本格的なお茶を手軽に楽しめるティーパック包装のお茶
合組茶2種に「北田源七商店」オリジナルの茶小紋柄の布がついたギフトセットも
白い花が愛らしい茶小紋柄の布は、湯のみや茶器を拭ったりするのに便利
白い花が愛らしい茶小紋柄の布は、湯のみや茶器を拭ったりするのに便利

忙しい毎日の中で、お茶を淹れてひと息つく時間ってわりと大切です。茶のみ仲間、なんて言葉もありますが気の置けない誰かと一緒に、ほんの少し気持ちをゆるめることでなんだかほっとしますよね。「緑茶の日」のきょうは、そんな時間を楽しめるといいなと思います。

<掲載商品>
大和冠茶/大和露地/源作焙(北田源七商店)
※ 現在は取り扱いを終了しています

<関連商品>
中川政七商店 ECサイトお茶

<取材協力>
北田源七商店
奈良県天理市蔵之庄町415-1
0743-65-1064
http://kitada-genshichi.jp

文:杉浦葉子

*こちらは、2017年5月2日の記事を再編集して公開いたしました

4月18日、お香の日。聖徳太子に献上された漂着物とは

淡路島に漂着したものは?

1992年に全国香物線香組合協議会が制定した記念日「お香の日」。なぜ4月18日かというと、時はさかのぼりはるか昔のお話に。

日本書紀によると、推古天皇3年(595年)の4月、「沈水、淡路島に漂着」と記されており、淡路島に大きな大きな香木が漂着したのだそう。

「沈水」というのは、今でいう「沈香(じんこう)」のことで、代表的な香木のひとつ。樹木の樹脂がさまざまな要因で固まり、長年の間に熟成されたもので、清く上品な香りがします。

当時「沈水」と呼ばれていたのは、この香木が樹脂を含むゆえに水に沈む重いものだったからだそうです。

長さ2メートルを超えるこの香木が淡路島に流れついたとき、島民がこの木を燃やしたところ、なんとも芳しい香りが広がって‥‥。あわてて火の中からひきあげて、この木を朝廷に献上したのだそうです。

仏教の普及につとめていた聖徳太子はこの木が沈香だと分かり観音像をつくったといわれており、今もこの香木は淡路島の枯木神社にご神体として祀られています。

この香木伝来の4月と、「香」の漢字を分解した「一十八日」から、4月18日を「お香の日」と定めたのだそうです。

420余年の伝統を誇る、日本最古の御香調進所

安土桃山時代1594年(文禄3年)京都西本願寺前で、薬種商として創業した「薫玉堂(くんぎょくどう)」。薫玉堂に代々伝わる調香帳(レシピ)には、長い年月をかけて自然が熟成させた香木をはじめ、薬種として漢方に使用される植物のことがたくさん記されているといいます。

京都の香老舗として長年の伝統を守りながら、儀式の場だけでなく日常の場でも、その時代時代の香りをつくり続けてきました。

伝統のレシピを基に現代に溶け込む新しい香りを調香
伝統のレシピを基に現代に溶け込む新しい香りを調香

お香は仏事のイメージがある方もいらっしゃると思いますが、今ではリラックスしたいときや、少し気分をかえたいときなど、香りを気軽に楽しめるお香がたくさんありますね。

天然の香料を主とした伝統の調香レシピと現代の香りの融合で、さまざまな香りを楽しめる「薫玉堂」のお香。その豊かな色合いも職人が何ヶ月もかけて色をだしたものだといいます。

京の香りをあらわした、色とりどりの線香。
京の香りをあらわした、色とりどりの線香
香料を押しかためてつくった印香。飾ったり火をつけて使います。
香料を押しかためてつくった印香。飾ったり火をつけて使います

大地の恵みを受けて育った植物には、人をやさしく癒し元気づける力が秘められています。自然の力を借りたお香が、はるか昔から現代に続いてきたのも納得。季節のうつろいとともに、生活にほのかな香りをそえたいものです。

<取材協力>
香老舗 薫玉堂
京都市下京区堀川通西本願寺前

075-371-0162
http://www.kungyokudo.co.jp

文:杉浦葉子
写真:中島光行、杉浦葉子

*こちらは、2017年4月18日の記事を再編集して公開しました。


<掲載商品>

薫玉堂 試香
薫玉堂 線香
薫玉堂 文香 朝顔
薫玉堂 線香 暹羅沈香

大掃除が楽しくなる職人の道具を、すす払いの日に使いたい

日本では1年365日、毎日がいろいろな記念日として制定されています。国民の祝日や伝統的な年中行事、はたまた、お誕生日や結婚記念日などのパーソナルな記念日まで。数多ある記念日のなかで、こちらでは「もの」につながる記念日をご紹介していきたいと思います。

さて、きょうは何の日?

12月13日は、「すす払いの日」 その歴史はいつから?

お正月を迎えるにあたり、家のすすやちりを払って掃除をする「すす払いの日」。

平安時代にはすでに行われていたといわれています。そして、12月13日に行われるようになったのは江戸時代。この頃使われていた「宣明暦」という暦では、12月13日は「鬼の日」という日で、婚礼以外は何をするにも吉という良い日でした。

そのため、この日を新年を迎える準備をはじめる日として江戸城では大掃除をしたのだそうです。

これは単なる大掃除ではなく、年神さまを迎えるための信仰的な行事でもありました。その年の厄をとり払うという大切な節目の日だったんですね。

「すす払いの日」には家族みんなで大掃除をして、それが終わると「すす払い祝い」として神さまに「すす払い団子」をおそなえしたり、「すす払い餅」「すす払い粥」といって一家でお餅やお粥を食べる習慣があったそうです。

また、すす払いの後にはお風呂「すす湯」に入り、身も心も住まいも清々しくきれいにして、年神さまを迎えていました。

この習慣は大正時代のころまで続いていましたが、13日に掃除をすると年末までにまた汚れてしまうため、次第に年末に大掃除をするようになったのだそうです。

白木屋傳兵衛の江戸箒で「すす払い」

「すす払い」は、「すす掃き」とも呼ばれていました。近ごろは良い掃除機もたくさんありますが、こんな行事の話を知ると昔ながらの箒(ほうき)を使いたくなります。

1830年(天保元年)創業の江戸箒老舗「白木屋傳兵衛(しろきやでんべえ)」の箒は、国産の「ホウキモロコシ」という植物を使い、熟練職人が素材を丁寧に選って編み上げたもの。

実用的でさっと使える箒は、やはり日本のお掃除には欠かせません。

使いやすい道具があればお掃除もなんだか楽しいもの。今年も気づけば12月。少しずつ新年の準備をはじめましょう。

<掲載商品>
(左から)
ひもはりみ・小(白木屋傳兵衛)
サッシ箒(白木屋傳兵衛)
掛け無精ほうき(白木屋傳兵衛)
江戸長柄箒・極上(白木屋傳兵衛)

<関連商品>
小掃除箒とはりみ
卓上箒とはりみ

白木屋傳兵衛中村商店
http://www.edohouki.com

文・写真:杉浦葉子

※こちらは、2016年12月13日の記事を再編集して公開しました。少しずつ準備して、気持ちの良い新年を迎えたいですね。

この暮らしの道具、ちょっと変わってるんです。どこが違うかわかりますか?

これからお見せする商品、普段よく目にするものと何かが違います。さて、どこが違っているでしょうか?

握ったところを想像してみてください。

カッター

これは‥‥、かなり難易度が高そうです。

一般的な急須に見えますが、パーツの位置が違う?

急須

メモリの数字の向きにご注目!

定規

さて、何か気づきましたか?

実はこれ、すべて「左利き用」に作られた道具なのです。

8月13日は「国際左利きの日」

きょう8月13日は、国際左利きの日。左利きの生活環境の向上に向けた記念日です。世界人口の約10%が左利きと言われています。

1992年8月13日、イギリスにある「Left-Handers Club」により、右利き用だけでない誰もが安全に使える道具を各種メーカーに対して呼びかけることを目的に提唱・制定されました。

今日は、左利きの道具について紹介します。

全国から左利き客が訪れる「駆け込み寺」

左利き用アイテムに詳しい方がいると聞き、お話を伺うことに。

訪れたのは、神奈川県相模原市にある文具雑貨店「菊屋浦上商事」。同店には「左利き用グッズコーナー」があり、その品揃えは約100種類!

「日本で一番左利きグッズが揃っている」と、全国からお客さんが訪ねてくる駆け込み寺のようなお店なのだそう。

棚には数々の左利き用の道具が並んでいます
棚には数々の左利き用の道具が並んでいます

社長の浦上裕生 (ひろお) さんは、左利きに関するデータを収集したり、海外に赴いて文具の買い付けや調査を行うなど、左利き事情に精通している方。

元SMAPメンバーで左利きの稲垣吾郎さんとラジオ番組で対談したり、人気バラエティ番組「アメトーーク!」で「左利きを幸せにするお店」として紹介されるなどを皮切りに、メディアからの取材依頼や企業からの相談も舞い込んでいます。国内だけでなく、海外メディアからの取材を受けることもあるのだとか。左利きへの注目の高さが伺えます。

1973年に開店以来40年以上の歴史を持つ文房具店「菊屋」(正式には菊屋浦上商事株式会社)浦上裕生さん
元々は左利きで、今は両利きという浦上裕生さん。「世界でこれだけ大きく専用コーナーを設置しているのはうちだけですよ」と自信たっぷり。左利きコミュニティでの交流や情報発信も積極的に行なっています

かつては左利き文具は在庫しつつも店頭には並べず、注文があれば出す程度だったという同店。ではなぜ、これほどに「左利き用グッズ」をたくさん揃えるようになったのでしょう。

左利きの弟が右手用の道具で大怪我

「25年以上前、左利きの弟が右利き用カッターを使って大怪我をしました。右手用に設計された道具を使うと刃が手に刺さりやすかったり、危険なことも多いんです」

カッター
こちらのカッターは左利き用。刃の向きが利き手によって異なるので、反対の手で使うときは注意が必要です

「弟の怪我を機に、当時店を経営していた両親が左利きのためのコーナーを設置しました。1998年に私が店を継ぎ、品揃えを充実させて今に至ります。

『左利きグッズがなんでもある』とネット上で話題になり、日本の方だけでなく、海外からのお客さんも来てくださるようになりました。調べてみると海外では日本より左利き用の道具が作られていないんです」

無理なく安全に使える向きに整える

それでは左利き用の道具について、浦上さんに詳しく解説していただきましょう。

「例えば、急須は左手で持って注ぎやすいように、取っ手が左側、注ぎ口が右側についています」

左手で持ちやすい急須

左利きの方が一般的な急須を使う場合、取っ手が右にあるため右手で持つか、左手で持って手をひねって注ぐ必要があるのだとか。それは使いにくそう。

「ハサミは刃の合わせに工夫があります。紙に刃を入れた時に、切っている部分が見えるように刃を合わせます」

左のハサミは左利き用、右のハサミは右利き用。それぞれ切っている面が刃の手前に見えるようになっています
左のハサミは左利き用、右のハサミは右利き用。それぞれ切っている面が刃の手前に見えるようになっています
こちらは浦上さんの私物。右利き用ハサミに慣れてしまったけれど、持ち手の穴の大きさが右手仕様だと指が痛くなる。そんな悩みに対応して、持ち手は左利き、刃の合わせは右利き用に作られていました。泣けます‥‥
こちらは浦上さんの私物。右利き用ハサミには慣れたけれど、持ち手の穴の大きさが右手仕様だと指が痛くなる。そんな悩みに対応して、持ち手は左利き、刃の合わせは右利き用に作られていました。泣けます‥‥

「こんなものもあります。扇子は右手で開いて使うようになっているので、左手で仰いでいるとだんだん閉じてきてしまうことがあるんです。だから、開く方向が反対になったものを作ってもらいました」

左利き用の扇子
左利き用の扇子
定規
左利きグッズの中で一番売れているのが定規。塾の先生がまとめ買いしていくことも。左手で線を引く場合、右から左へペンを進めるとスムーズ。線を引く向きに合わせて、目盛りの数字が右からついています。「右利き用の定規を使う時は引き算をしていた」なんて左利きの人の声も
速乾性の水性ボールペン
こちらのボールペンはインクに秘密があります。速乾性の水性インク。左利きの人は横書きで文字を書き進めると、書いた直後の文字をこすりながら手を移動させるため、手やノートがインクで汚れてしまうことが多いそう。すぐに乾くことでこの悩みを解決してくれると大ヒットしました

ロゴの向きが自分に合っていると嬉しい

ところで冒頭で紹介した鉛筆はどこが左利き用だったのでしょうか。

左利き用えんぴつ

「この鉛筆は、ロゴの向きが一般的なものと反対なんです。左手で持った時にロゴが正位置になるように作られています。なんてことないのですが、自分のための道具と思えて嬉しいという声を聞きます。

他にもマグカップの柄は右手で持った時に正面を向くように作られていたり、自動販売機の投入口は体の右側に設置することが一般的だったり。世の中には右手で扱うことを想定して作られているものが多いですから」

左利き用えんぴつ
ロゴの向きにご注目!

ロゴの向きだけで喜びを感じるなんて。左利きの方は道具に苦労されることが本当にたくさんあるんだろうなぁと改めて実感しました。

バターナイフ
お店にはこんなものもありました。向きの異なる2本のナイフをつなぎ合わせ、どちらの手でも使えるユニバーサルデザインのバターナイフ
バターナイフのロゴ
左手で持った時にロゴが正面に来る珍しい仕様です

浦上さんに解説していただきながら、たくさんの左利き用アイテムを試しました。私は右利きなので、左利き用の道具を使ってみるとその使いにくさに驚きます。つまり、左利きの人たちは日常的にこの使いづらさに向き合っているということ。知らなかった‥‥。

少数派にも使いやすい道具を

「昔に比べて矯正されなくなったこともあり、今、左利き人口は増えていると言われています。とはいえ全体の割合から考えると少数のため、まだまだ左利き用の道具は少ないのです。

道具の存在を知らない左利きの人もいますし、少量生産になるので在庫終了とともに廃番となってしまう商品も少なくありません。

でも、少数派だから不便なままで良いってことはないですよね。クラウドファンディングを活用して左利きグッズを作ることも企画中です」

左手用のおたま
浦上さんの提案で生まれた左利き用のおたま。給食の配膳でおたまが使いにくいという生徒の声を受けて、近くの小学校に寄贈したことも。このおたまがあることで、右利きの子どもたちが左利きの道具を体験する機会にもなっているそう

「必要としている人がいること、使いやすい道具があることをもっと発信して、広めていきたいと思っています」

そう熱く語る浦上さん。昨年2017年2月に新たな取り組みをスタートしました。

2020年東京五輪・パラリンピックを世界中の左利きの人が集まる機会ととらえ、メーカーと協業し、左利きグッズを充実させていこうという「レフティ21プロジェクト」。

浦上さんの呼びかけに応じて、文具メーカーのゼブラ、プラス、ライフ、調理器具メーカーのレーベン販売、ペンタブレットを手がけるワコム、輸入文具を扱うドイツ系のエトランジェ・ディ・コスタリカが参加を決め商品開発が進んでいるそうです。

自分にぴったりの道具があると、使うのが楽しくなったり、道具に愛着も湧きます。使いやすい道具の拡充、楽しみですね。

<取材協力>

菊屋浦上商事株式会社

神奈川県相模原市中央区相模原6-26-7

042-754-9211
http://www.kikuya-net.co.jp/

文・写真:小俣荘子